October 17, 2008

転職は1億円損をする

転職は1億円損をする (角川oneテーマ21 A 89)
転職は1億円損をする

キーワード:
 石渡嶺司、転職、人材ビジネス、損失、焼き畑農業
転職をすると、長期的には確実に損になるということが示されている本。以下のような目次となっている。
  1. はじめに 転職すれば人生は変わる!望まない方向に
  2. 序章 転職で人生をムダにした!―早期退職者の大失敗
  3. 第1章 転職は1億円損をする―定年退職組と転職組の損得勘定
  4. 第2章 10分でわかる人材ビジネスのカラクリ―転職市場はこうして儲ける
  5. 第3章 転職があおられるカラクリ―四兆円ビジネスは焼き畑農業だった
  6. 第4章 間違いだらけの転職観―だから転職希望者はカモになる
  7. 第5章 転職サバイバル!―それでも転職したい人のために
(目次から抜粋)
昨今では、入社3年以内で早期転職する人が多いし、転職雑誌、転職支援サイトなどを展開している人材会社の躍進によって、気軽に転職しやすい世の中になっている。しかし、実際は「転職すると損をする」という、人材会社、転職ビジネスに関わっている人なら誰でも知っている事実は、あまり世間では知られていない。そこで、この本は、転職によっていくら損をするのかをデータ面からまとめたもので、本書を読むことによって転職で損をしない情報が身につくと示されている。

結論から言えば、転職ビジネスの実態や転職でどのような損失があるのかということの網羅性にはなるほどなぁと思ったが、若干全体的な分析が甘いと思った。なので、読み物として転職の実態を知っておくには良い本だが、これを手放しで全面的に受け入れるということは少し考えたほうがいいかもしれない。

まず、転職で1億円の損失になるというのは、生涯賃金・退職金、年金、健康保険、生命保険、住宅補助、社宅、ローン、交通費など定量化できるものを定年退職組みと転職組みで算出し、それらの差額を出したときに1億円の差になるとある。正直この算出方法は結構突っ込みどころが多い。両者の項目で乖離の大きいケースを採用すると、1億9千万円の差になるので、2億円近くの差を話半分としても1億円の差になるとある。これでは定量化の信頼性が落ちる。コンサルタントであればこのような根拠の示し方は間違いなく突っ込まれる。なので、この本の1億円の損失というのは、話半分に受け止めておけばいいと思う。

自分としては、転職市場の実態がとても参考になった。転職は損であるということを隠しながら、「転職は得である」と示すことで、人材会社は人売りで収益を儲けていっている。その構造は、早期退職をしてもらったほうがより転職会社にとって儲けのチャンスになるので、転職をあおっているにすぎないとある。元関係者は、転職ビジネスが大きくなればなるほど早期退職者が増え、日本企業の活力が失われていくので、このような状況は、焼き畑農業のようなものだと危惧しているようだ。

また、他にも面白かったものとして、早期転職をする人のタイプ分けがあった。ジョウゲンタイプ、自己成長タイプ、ブラック企業タイプ、衝動タイプ、シュガー社員タイプとある。それぞれの特徴は示さないが、例えばジョウゲンタイプとは、社会人として優秀で、マネジメント能力の高い幹部候補生で、会社を踏み台としか見ていないタイプで、このタイプはどこに行っても通用するので、転職しても問題ないタイプらしい。反対に、最悪なのはシュガー社員タイプで、コミュニケーション能力が低く、モチベーションも低く、仕事ができず、残業や雑用を嫌がるくせに、目立つことはやりたがるタイプで、このタイプは転職で間違いなくキャリアダウンするらしい。自分はどれに当てはまるのかなと考えると、衝動タイプかなぁと思った。

一箇所なるほどなと思う部分があった。『早期退職者は「商品価値がない」』という部分で、転職ビジネス会社の担当者は以下のように語っている。
「個人事情があるにせよ、総じて言えば、早期退職者は社会人としてのマナーもスキルもないし、大学時代に卒業後のプランをきちんと考えていない、要するに欠陥が多い人材です。転職を市場に見たてた場合、人材ビジネス企業にとって、転職希望者は商品と言ってもいい。しかし、欠陥が多ければ商品価値がないのは当たり前です。」
(中略)
「企業にとって、転職者はある程度の専門性を持っているから評価できる。でも早期退職は一体何ができます?数年どころか数ヶ月で辞めて、技術や専門知識などろくにあるわけがない。そもそも、彼らは最初に入った会社にどれだけ損失を与えているか、わかっていない」
(pp.36-37)
これはなるほどなぁと思った。厳しい意見だが、客観的に見れば、そのとおりだなと思う。だから、自分自身まだ転職しないのは、転職先で自分の能力を使ってどのように貢献できるのか?ということがまだわからないし、まだ未熟な存在であるから。だから自分は3年は絶対転職しないと心に誓っている。なので、はっきり言って、『早期転職したら負けかなと思っているニート・無職頻出AA)』という考えで、あと1年は修行しようと思う。まぁ、自分自身に関して言えば、転職はないと思う。独立か、今の会社にずっといるかのどちらかしかないと思う。

転職するには、自分の強みがどこにあるのかをしっかり把握すると良いとあった。

いろいろ考えさせてくれる本で、これは本当なら就職活動直前の大学生が読んでおけばいいと思う。また、転職を考えている人も一読しておいたほうがいいと思った。



はてブトルネード発生につき、ここから追記。このラインより上は出社前に45分で適当に綴っていた部分なので、わかりにくい部分もあったので、文章を少しブラッシュアップした。また、やむなくそぎ落とした部分をもう少し示しておくことにする。

特に示しておきたかったのは、早期転職者のタイプ分けの部分。以下に、すべてのタイプの特徴を示しておく。

No.タイプよく言うセリフ主な特徴
1ジョウゲン
タイプ
「今の会社は踏み台」
「(前の会社には感謝しているが)自分のキャリアが優先」
・優秀な幹部候補生
・どの業界でも上にいけるタイプで、転職する方が得になる
・退職する企業に対しても心遣いを見せる
2自己成長
タイプ
「自分をもっと成長させキャリアアップしたい」
「愛社精神とか言われても困る」
・ジョウゲンタイプに似たタイプ
・見通しの甘さがあり、ジョウゲンタイプになりきれない
・売りとなるのは若さだけで、「自分は優秀」と誤解している
・転職ビジネスの最良の顧客で、長期的に確実に損をするタイプ
3ブラック企業タイプ「もっと普通の会社に移りたい・・・」
「辞めたくても辞められない・・・」
・無理に働き続けると体や心を壊してしまう可能性があるタイプ
・給料が安いので転職を考える
・ブラック体質に染まっており、「普通」が何なのか想像できていない
4衝動
タイプ
「とにかく疲れた、しばらく休みたい」
「二五歳までならやり直せるかもしれない」
・仕事への取り組みが熱心であり、優秀
・ジョウゲンタイプよりも独立・転職志向が低い
・仕事に対する相談システムの不備に不満がある
・一度思い込んだらダメで、疲れから退職、転職をしてしまう
5シュガー社員
タイプ
「多分、大丈夫」
「だったら解雇してください」
・周囲に迷惑をかけ続ける若手社員
・コミュニケーション能力、モチベーションが最低評価で仕事もできない
・ジョウゲンタイプと同様に能力が高く、ブラック企業と同様に酷使されているとの思い込みが強い
第四章 間違いだらけの転職観』を参考に作成

このように、タイプによって、仕事に対するモチベーション、思考、能力がぜんぜん違うようだ。転職して成功するのは、『ジョウゲンタイプ』だけと示されており、そのようなタイプは多分、かなりの少数派だろうなと思った。ちなみに、『ジョウゲン』とは早期退職を是とする論者である、城繁幸氏と山崎元氏の名前を取って命名されたようだ。

自分が優秀かどうかは別として、多分自分は『衝動タイプ』に当てはまると思う。疲れやすく、思い込みが激しいし・・・。しかし、今日の夜に上司とキャリアカウンセリングをしっかり行ってきた。上司曰く、『3年では何もわからないので、転職しないほうがいい』と。また、『3年目が1つの壁で、これを乗り切れるかどうか』というようなことを教わった。そういう観点からも、自分は相談システムをしっかり有効利用できているので、しばらくは転職はないと思う。

他にもそぎ落とした部分として、転職したいと思ったらどうするかという部分。まずは、自分の売りは何かをしっかり把握する必要があるらしい。それが分かっていない人は、転職を希望してもどこかで失敗しているようだ。また、自分の強みをしっかり理解できない人は、転職できてもまた繰り返すことになるようだ。ある転職コンサルタントは以下のようにアドバイスをしている。
「転職するなら、その前に自分の強みがどこにあるのか、きちんと棚卸しをして把握しましょう。自分では大したことがない、と思っていても実は求人企業が高く評価することがあります。転職は自分という商品をいかに高く売るか。それが『商品?さあ、なんでしょうね?』では買い手がつきません。もっとも、これをきちんとできる人は少ないですけどね」
(pp.171-172)
このように、自分の市場価値をしっかり把握する必要があるようだ。転職をしようと思ったら、一度かなり自分を深く分析する必要がありそうだ。

この本の特徴として、「ハミダシ転職情報」といって、奇数ページに転職を考える上で参考になる本が欄外に示されている。そこに本に対する著者個人の感想・疑問などが示されており、結構参考になる。この書評ブログでも取り上げているのは以下の本。特に、エンゼルバンクが本文の中でも取り上げられていた。

この本は、『あるあるwww』、とか『ねぇよ!!』とかいろいろ突っ込みながら読むことができる本で、いろいろと考えさせてくれる内容となっている。自分なりの結論を述べるなら、新卒採用で転職しなくてもいい企業に行けばいいということなになる。しかし、就職活動そのものが競争であるので、必ずしも希望企業にいけるとは限らないし、たとえ第1志望の企業に入社できたとしても、理想と現実のギャップに戸惑ったり、やりたいことが変わっていったり、労働環境が悪かったり人間関係のもつれなどと、転職する理由はいくらでも出てくる。なので、転職せずに1社の会社で定年まで勤め上げるのは、結構すごいことなのかなと思った。

転職とか人材ビジネスのビジネスモデルに関心がある人は読んだらいいと思う。

思いのほかにこの記事にはてブがついた。ここまで読んでくれた方、登録してくれた方、どうもありがとうございます。

読むべき人:
  • 転職考えている入社3年以内の人
  • 就職活動を始めた大学生の人
  • 企業の人事担当者の人
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