January 03, 2009

ムーン・パレス

ムーン・パレス (新潮文庫)
ムーン・パレス (新潮文庫)

キーワード:
 ポール・オースター、月、青春小説、親子、人生
自伝的な青春小説。以下のようなあらすじとなっている。
人類がはじめて月を歩いた春だった。父を知らず、母とも死別した僕は、唯一の血縁だった伯父を失う。彼は僕と世界を結ぶ絆だった。僕は絶望のあまり、人生を放棄しはじめた。やがて生活費も尽き、餓死寸前のところを友人に救われた。体力が回復すると、僕は奇妙な仕事を見つけた。その依頼を遂行するうちに、偶然にも僕は自らの家系の謎にたどりついた…。深い余韻が胸に残る絶品の青春小説。
(カバーの裏から抜粋)
ポール・オースター(ポール・オースター - Wikipedia)というか、アメリカ文学は今までほとんど読んだことがなかった。著者の作品も初めて読んだ。年末年始を通して読んでいたけど、この時期に読めてよかったのだと思った。

この作品は、新宿の紀伊国屋の文庫フェアで発見したものだった。文庫フェアの本棚には、古今東西の名作、古典作品が平済みされていた。それを見て、自分も何か名作とか古典を読んだほうがいいのかなと思い、いろいろと手にとって見た。この作品に惹かれたのは、単純に装丁の美しさだった。漆黒の表紙に細い線のような月のデザイン。まず、これに強く惹かれた。そして、カバーの裏を読むと、『絶品の青春小説』と示されている。ある一定周期で青春小説が読みたくなる自分としては、内容もAmazonの評価もまったく気にかけずに買った。

買ってしばらくは積読状態で、年末年始に向けて長編作品を読みたいと思っていたので、この作品を読んでみた。今年1年を生きていくうえで、これは良いタイミングだった思った。

舞台は1970年ごろのニューヨーク近辺。主人公はコロンビア大学に通う学生。母を事故で亡くし、父は行方知れず。そして伯父とともに暮らしてきた。しかし、伯父が亡くなり、お金の工面が出来ず、公園で野宿生活に陥る。そんな状況で死にかけているところを友人に助けられる。友人宅で居候しながら、アルバイト先を探していた主人公は、ある車椅子の老人の住み込みの世話の仕事を見つける。そして、その老人の世話から物語は進展する・・・。

ネタばれすると面白さが半減してしまうので、あまり内容には触れないでおこう。簡単に言えば、主人公と恋人、友人、父、そして母、伯父、祖父といった人間関係が肝になっている。それらの人間関係の真相が物語が進むにつれて判明していく。

400ページ超の作品で、1ページに改行が全くなく1ページあたりの文字数は多いのだが、全くページが進まないということはない。主人公の一人称で物語が進み、翻訳小説にありがちな変な表現や原文が想像できそうな日本語もない。かなり読みやすいほうだと思う。リズムよく読める。だから、気づいたら物語に引き込まれている。翻訳作品で、そういう作品はあんまりないので、これは良かった。

青春小説はハッピーエンドになるものだと思っていたので、そうではない結末に地味に切なくなった。解説にこの作品のメッセージ性について示されている部分があるので、その部分を抜粋。
 マーコはやがて美しく聡明な中国人キティ・ウーと出会い、奇妙な老人の家で住み込みで働くようになり、さらに、すさまじい肥満体の歴史学者と知り合いになる。フォッグを聞き手に、老人と歴史学者は自分の生涯を物語る。その意味でこの小説は、三つの違った世代の男たちの物語だともいえる。そしてその三つの物語に共通のパターンを探して、そこからこの小説のメッセージを読みとることも可能だろう。人はいったんすべてを失わなければ何も得ることはできない、とか、自分の死を実感することを通してはじめて生の可能性も見えてくる、とかいった感慨が、この小説にはくり返し出てくる。
(pp.440)
なるほどと思った。ちなみに、主人公のフルネームは、マーコ・スンタリー・フォッグ。

この作品を今日というタイミングで読めてよかったのは、物語の最後の時点で主人公が自分と同じ24歳だったから。自分は今月27日に25歳になるので、あと少し遅かったらそこまで主人公に投射できなかったと思う。また、結末では全てを失ってしまった主人公だが、絶望の淵からもまた自分の人生を歩んでいくという描写があり、何だか勇気付けられた。それが新年に読了できた良い点だと思った。自分の直感を信じてよかった。

長編の良質な物語を読むというのは、実にさまざまなカタルシスをもたらしてくれる。ビジネス書を読んでいるよりも、良質な小説を読んでいるほうが多くのことを深く考えられる気がする。ただし、難点はあまりにも時間がかかることだが・・・。しかし、読了後の余韻はなんとも言えない。静かに自分の内面の一部を良い方向に導いてくれる気がした。

今年はもう少し文学作品を多く読む予定。



ムーン・パレス (新潮文庫)
ムーン・パレス (新潮文庫)

読むべき人:
  • 青春小説が好きな人
  • 自分の父親が誰か分からない人
  • 多くのものを失ってもがんばって生きていこうと思う人
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