January 24, 2009

クオリア立国論

クオリア立国論
クオリア立国論

キーワード:
 茂木健一郎、クオリア、日本論、教養、総合知
脳科学者によって日本のすばらしさ、日本人の可能性について論じられている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 クオリア消費時代がはじまる
  2. 第2章 文化力を発信する
  3. 第3章 ビジネスとクオリアの交差点
  4. 第4章 クオリア立国のために
(目次から抜粋)
脳科学者である茂木健一郎氏は、クオリアの研究をしている。そして、この本では、クオリアが日本人の自己認識の鍵と捉えて、これからの日本のあり方、日本人の持つべき考え方が示されている。

そもそもクオリアとは何かというと、『脳科学の分野では、人間が心の中で感じる様々な質感のこと(pp.9)』とある。例えば、それは抜けるような青空、ヴァイオリンの音色、メロンの味、はてはオタク文化の「萌え」要素もクオリアに対する感性の表れと示されている。

過去バブル期の日本は、一流ブランドの服を着て、一流レストランで食事をするような記号的消費時代だった。しかし、今の日本ではそのような記号的消費の限界を体感しつつあり、そこからクオリアに根ざした消費へと移り変わってきたようだ。そこから、この本では、過去日本人が培ってきた伝統芸能や文化、トヨタなどの仕事論を軸に、日本の『クオリア立国』について論じられている。

そして、『クオリア立国』と日本が言うときに、以下のように2つの意味があるようだ。
  1. 日本のなかに存在する魅力的なクオリアを世界中に知らしめていくこと
  2. 日本発の新しい原理のようなものを発見していくこと
そのヒントが、例えばミシュランガイドで三ツ星がついた高尾山の話であったり、リッツ・カールトンのホテル論、日本料理屋のおまかせというスタイル、日本のコンビニの整然さ、そして日本とイギリスやフランスなどの対比から示されている。どの話も、へーと思うことが多い。単純に読み物としても面白い。

この本の本論とは少しずれるところだが、特になるほどと思った部分を以下に恣意的に抜粋。
 そうではなく、「恋愛というのは、お互いに自分自身ではコントロールできない気持ちが高まって、相手のことを好きになる。たまたまその気持ちが一致すれば、相思相愛ということになる。一方に気持ちの昂ぶりがなければ、恋愛というものは成立しない。それが分かることが大人になるということなんだよ。」と学生には言っている。要するに、自分のなかにある無意識というのは、決して自分ではコントロールすることができない。いや、コントロールしてはいけない。だから人間の脳はすべてをコントロールできないということになるわけです。
(pp.118)
自分は大人になれたのだろうか?

もう一箇所は、イギリスのオックスフォード大学の学者がさまざまな専門分野を持つ人たちと昼食をともにして議論をしていることから、日本と大違いであるというくだりから。
いかに専門分野があろうとも、その専門分野をさらに突き詰めるためには視野の広さが必要になってくる。高い専門性と広範囲に及ぶ視野。その両方が何かを生み出すには必要なのです。日本でも異業種交流会などというものが盛んに行われていますが、そのほとんどはただ集まるだけ。名刺を交換して、その会合に出席したというだけで満足している人が多い。それではまったく意味がない。アウェーの場に出て勝負をすることが大切なのです。アウェーで自分の力を試してみる。そういう発想をもって参加するべきでしょう。
(pp.132-133)
この部分は特になるほどと思った。この考えは、Cyanを設計した高校生、5カ月で5つの言語を習得 − @IT自分戦略研究所でLispハッカーの竹内氏の発言に共通すると思った。『見聞を広げる意味であえてコンピュータと密接に関係しないことを勉強した方がいいです。』とかとくにそうだと思う。

また、異業種交流会でのあるべき参加態度も参考になった。アウェーで勝負するということ。

そして、さらに学問的なことで、以下のように示されている。
 学問ということに目を向けると、これからのビジネスパーソンは広い意味での学問的素養がないと戦っていけません。根性や努力といったことだけでは、どうすることもできない時代に入ってきている。特にIT産業が経済の主流になって以来、ITイコール経済という構図がますます強まっています。
(中略)
そういう時代になったときに、学問的素養に欠けるビジネスパーソンはとても太刀打ちできません。IT産業と共に伸びている環境技術にしても、それこそレアメタルなど、非常に希少な元素についての知識も求められるわけです。つまり単一の得意分野ばかりでなく、ありとあらゆる学問的素養がないと、ビジネスを展開できない時代に入ってきたわけです。
(pp.140)
これは特に自分もそう思うようになってきた。一昔前、旧世紀はいわゆるT字型のタイプが言いといわれていた。しかし、T字だけでは突き抜けられない時代になっていると思う。そういう恐れや不安があるから、自分は常に多様性を意識している。なぜ、自分がこのブログで幅広い分野の本を読み込んでいるかというと、単純な知的好奇心もあるが、新世紀でのビジネスをよりよく展開していくためという部分がかなりある。だから、自分の専門分野であるITだけに特化しないし、古典文学作品であってり、経済であったり思想書も多く読むようにしている。

多様性を目指したときに、1つネックになるのは、成長スピードになる。ITで特化して突き進んでいくと、それだけ対象を絞っているから速く成長できる。多様性を目指すと、あれもこれもとやっていくので、どうしても成長が遅い。しかし、人生は長い、と考えて10年20年先を見据えて圧倒的に成功しようと思うなら、やはり多様性を自分の中に取り込んでおくべきなんだと思う。特に突き抜けて成功している人は、皆例外なく古典や歴史書、思想書など自分の専門分野とは違うものを多く勉強している。ということで、自分もそのスタイルを確立しようと思う。とはいえ、今年はITにも特化しなければならないが・・・。

茂木氏の本をそれなりに読んできたけど、なぜ文芸的なことや芸術的なことにまで言及されるかがいまいち分かっていなかったが、この本にその答えが示されていた。それはクオリアの探求のためであり、クオリアの探求には学問の境界線が存在しないので、文学や芸術や歴史さえもクオリアの問題とつながっていくと考えられているからのようだ。これはなるほどと思った。

茂木氏の本は、以下もお薦め。一番難解なのは、『クオリア降臨』になる。

茂木氏の本は、総合知的なものを得られて、とても知的刺激を受けるので好きだ。



クオリア立国論
クオリア立国論

読むべき人:
  • クオリアに関心がある人
  • これからの日本や日本人に関心がある人
  • 専門バカではダメだと自覚がある人
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