January 25, 2009

はつ恋

はつ恋 (新潮文庫)

キーワード:
 ツルゲーネフ、初恋、ロシア文学、崇拝、青春
ツルゲーネフ(イワン・ツルゲーネフ - Wikipedia)の古典文学作品。以下のようなあらすじとなっている。
16歳のウラジミールは、別荘で零落した公爵家の年上の令嬢ジナイーダと出会い、初めての恋に気も狂わんばかりの日々を迎えるが、ある夜、ジナイーダのところへ忍び込んでいく父親の姿を目撃する・・・・・・。青春の途上で遭遇した少年の不思議な”はつ恋”のいきさつは、作者自身の一生を支配した血統上の呪いに裏づけられて、不気味な美しさを奏でている。恋愛小説の古典に数えられる珠玉の名作。
(カバーの裏から抜粋)
主人公ヴラジミール・ペトローヴィチは40になったころ、16歳のころのはつ恋について友人たちに語る機会を持った。この物語は、その時の回想録になる。

16歳の主人公ペトローヴィチは、1833年の夏に、モスクワに住んでいたが、両親の持つ別荘に行くことになった。その別荘の向かえに、零落した公爵家が引っ越してきて、そのときに公爵家の令嬢、ジナイーダ・アレクナドロブナと出会う。ジナイーダは21歳で、年の差は5歳。ジナイーダは、高飛車で魅惑的で淡色の金髪を持ち、周りの伯爵や医者、詩人、退職大尉、軽騎兵などの男たちを虜にしていた。主人公ペトローヴィチも一目見て、ジナイーダに魅了され、やがて令嬢の家に通い詰めるようになり、はつ恋時の激しい恋情を抱き苦悶しつつも、ジナイーダに好かれようと奮闘している。しかし、あるとき、ジナイーダが恋をしていることに気づき、さらに、主人公の父がジナイーダのもとに通っているところを目撃し、主人公のはつ恋はいびつに幕を閉じる・・・。

物語の奥深さは、他の重厚なロシア文学に比べれば、そこまでない。ページ数も120ページであるし。しかし、この主人公の激しい恋情は、それなりに共感を得る部分が多い。いくつか抜粋しておこう。
 ジナイーダがいないと、わたしは気が滅入った。何ひとつ頭に浮かんでこず、何ごとも手につかなかった。わたしは何日もぶっつづけに、明けても暮れても、しきりに彼女のことを思っていた。わたしは気が滅入った・・・・・・とはいえ、彼女がいる時でも、別に気が楽になったわけではない。わたしは嫉妬したり、自分の小っぽけさ加減に愛想をつかしたり、馬鹿みたいにすねてみたり、馬鹿みたいに平つくばったり、――そのくせ、どうにもならない引力で彼女の方へ引きつけられて、彼女の居間の敷居をまたぐ都度、わたしは思わず知らず、幸福のおののきに総身が震えるのだった。
(pp.50-51)
誰かを激しく想ったときに、こういう経験は誰にでもあるのではないかと思う。特に、何も手につかなくなってしまうのが困る。

結局ジナイーダは、主人公も愛していると言うが、本当に愛していたのは主人公の父だったことにより、主人公のはつ恋はいびつに終わる。そして、青春についての激情が以下のように示されている。
 ああ、青春よ!青春よ!お前はどんなことにも、かかずらわない。お前はまるで、この宇宙のあらゆる財宝を、ひとり占めにしているかのようだ。憂愁でさえ、お前にとっては慰めだ。悲哀でさ、お前には似つかわしい。お前は思い上がって傲慢で、「われは、ひとり生きる――まあ見ているがいい!」などと言うけれど、その言葉のはしから、お前の日々はかけり去って、跡かたもなく帳じりもなく、消えていってしまうのだ。さながら、日なたの蝋のように、雪のように。・・・・・・ひょっとすると、お前の魅力の秘密はつまるところ、一切を成しうることにあるのではなく、一切を成しうると考えることができるところに、あるのかもしれない。ありあまる力を、ほかにどうにも使いようがないので、ただ風のまにまに吹き散らしてしまうところに、あるのかもしれない。我々の一人々々が、大まじめで自分を放蕩者と思い込んで、「ああ、もし無駄に時を浪費さえしなかったら、えらいことができたのになあ!」と、立派な口をきく資格があるものと、大まじめで信じているところに、あるのかもしれない。
(pp.130)
これが青春だとしたら、自分は青春を体感したのだろうか?「ああ、もし無駄に時を浪費さえしなかったら、えらいことができたのになあ!」と思うことは、頻繁にあるので、きっと体感していたんだろう。しかし、この青春はいびつだ。

はつ恋、初恋と言ったときに、たいていは甘酸っぱさを彷彿させるものだが、これは甘酸っぱいとは言えない。切なさはあるが、かなりいびつな関係なのだと思う。主人公と父がジナイーダに惹かれており、主人公の想いは遂げられることはない。現実でこんな状況になったら、苦悩すること間違いないだろう。この作品では、主人公はそこまで苦悩していないが。

120ページで、古典にしては読みにくいこともないので、集中して読めば1ページ1分ほどで読めると思う。なので、120分が目安になると思う。自分は3回くらいに分けて読んだが。

文学作品を多く読もうと思ったとき、物理的に薄い本を読めばいいと思ってこの作品を読んだが、けっこう共感できる部分があり、読んでよかったと思った。また、自分のはつ恋はどうだったかを想起するきっかけになると思う。

自分のはつ恋?誰を最初に想ったのかは、すでに記憶の彼方だ。



はつ恋 (新潮文庫)

読むべき人:
  • ロシア文学が好きな人
  • 自分のはつ恋について思い返してみたい人
  • 何も手につかなくなるほど誰かを想っている人
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