February 01, 2009

就活のバカヤロー

就活のバカヤロー (光文社新書)
就活のバカヤロー (光文社新書)

キーワード:
 大沢仁 / 石渡嶺司、就活、騙しあい、茶番劇、被害者
ジャーナリストよって、昨今の企業、学生、大学を含めた就職活動の茶番劇が示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 就活生はイタすぎる
  2. 第2章 大学にとって「就活はいい迷惑」
  3. 第3章 企業の「採活」真相はこうだ
  4. 第4章 インターンなんてやりたくない
  5. 第5章 マッチポンプで儲ける就職情報会社
(目次から抜粋)
2月になって、そろそろ就活が本格的になるころなので、この本を取り上げておく。

この本は現在の就職活動状況において、企業、大学、学生もみなどこかで騙しあいの茶番劇が行われていると示されている。そして、三者三様に不満を抱えながら採用活動、キャリア支援、就活を行っているということが示されている。この本の概要が以下のように示されている。
  本書は、企業の人事担当者、大学教職員、学生、就職情報会社、就活コンサルタントなどへの徹底的なヒアリングから得た「生の声」で構成している。
 普通の就活マニュアル本が絶対に書かない、就活の裏側を赤裸々に描き、そのうえで、ある意味青臭く、これからの就活のあるべき姿を提案している。
(pp.11-12)
『ヒアリングから得た「生の声」で構成している』とある通り、企業の人事担当者や大学の就職課、または学生などに実際に会って聞いたと思われる話やエピソードが多く示されている。

この本の対象読者が以下のように示されている。
  • 大学生・・・自分たちの就活がどう見られているか、就活を準備するためのガイドブック
  • 若手社会人・・・自分の就活を振り返り、就活の苦しさなどを再認識するための知的読み物
  • 親世代・・・我が子の就活を見守るための解説書
    それから、若手社員たちの現状を把握するための指南書
  • 企業の人事・・・採用活動をブラッシュアップするためのバイブル
  • 大学教職員・・・就職支援・キャリア教育をさらに進化させるための裏技本
    (pp.12)
自分はもう社会人になって3年目なので、若手社会人という立場でこの本を読んだ。この本が知的読み物かは微妙だが、就活の現状を把握し、自分の就活時代を振り返る良いきっかけになったなと思った。

いろいろと引用してつっ込みを入れたいところが多いんだけど、自分の年齢に近い学生の立場に立ってこの本の内容を一部示しておくことにする。ということで、『第1章 就活生はイタすぎる』を主に取り上げることにする。

1章では、最近の就活をしている学生がいかにダメかが示されている。勘違いをしている学生が多く生み出される原因が、『自己分析』にあると示されている。自己分析に関しては、以下のように示されている。
 さて、この「自己分析」こそが、学生を悩ませているうえに、無限に広がる可能性を奪っているという議論がある。それどころか、かえって早期転職の一因にもなっている、との評すらある。
 そもそも、今まで何も考えずに生きてきたバカ学生に自己分析をしろと言っても無理がある。「バカでした!」という答えしか出てこないではないか。
 具体的に説明しよう。これまで特に何も考えずに大学に入り、サークルやアルバイトなどを漠然とこなす日々を送ってきた人。もっと言うと、これまで平凡な人生を歩んできた人(あるいはそう思っている人)は、自己分析をしても、何も出てこなくて悩むことだろう。
 それはそうだ。自己分析の前は何も考えないで済んだのだから。それでも、それなりに幸せに生きてきたのもまた事実だ。
(pp.27)
学生のほとんどがバカであるというような記述はどうかと思うが、それでも自己分析をしても何も出てこなくて悩むというのはよくわかる。自分の就活時代も、自己分析なるものをやっていたが、何がやりたいのか、どういう方向性がいいのかといったことが明確には分からなかった。そのため、自己分析はある程度方向性だけを見出せたら、それ以上はやる必要はないと思う。

そもそも、入社して社会人になってからもずっと今の仕事は合っているのかどうか、好きなのかどうか?などといったことは思い悩むもので、漠然と志望する仕事をフルタイムで経験したことのない状況でやる自己分析ほど、単なる思い込みに過ぎない。自己分析をするくらいなら、企業分析、職種分析をするべきだと思う。自分のことなんか、考えただけで分かるわけではないんだよ。ある程度いろいろなことを経験していくうちに長い時間をかけて分かっていくんだよ、と思う。

また、『「みんなの就職活動日記」でみんな失敗』という節タイトルでは、就職活動時に得るネット情報について示されている。
 もっとも、ネット上で交わされている情報が選考通過に有益か無益かと聞かれれば、無益な情報ばかりだと言わざるをえない。
 そのそも、学生はまだまだ情報を見る視点や軸が定まっていない。就活はもちろん、世の中全体に対する知識もない。間違った解釈の情報が発信され、それをみんな鵜呑みにし、間違った知識が連鎖していく。
(中略)
 書き込まれている内容も、「学生の不安」が中心で、まったく参考にならない。
(中略)
 結局、「みんなの就職活動日記」でみんなが失敗という現象が起きている。
 これは「2ちゃんねる」やミクシィなどでも同様だと言えるだろう。
 暇つぶしで見る分にはいい。しかし、それを、最終選考のときまで必死になって見て、参考にしようとするのは愚かしいにも程がある。
(pp.57-58)
自分の就活時代も、ネット情報を活用していた。リクナビ、民衆、2chの就職板(就職板 - Wikipedia)が三種の神器のごとくであるかのように利用していたなぁ・・・。自分はほとんどネット情報ばかりを収集して就活していたけど、それはあまりよろしくないよ。本質的で有益な情報などネットにはまず出てこないもので、そういうバイアスがかかった情報をいくら取り入れても無駄に思い悩んだり迷ったりするだけだよ。特に就職板なんかは学歴至上主義、企業ランキング主義が横行しているので、そういうのはネタとして受け止めておかなければならない。自分が提案するのは、ネット上のクリックだけで得られる情報を収集するのではなく、自分の足で本質に近い情報を獲得しろということになる。つまり、企業説明会に1社でも多く参加するとか、OB訪問をするということだ。

自分はOB訪問を一切しなかったけど、今ならOB訪問の価値がよくわかる。有益な情報は人しか持っていない、ということが人脈本などに多く示されており、実際そうだなと実感することが多い。特に学生となると、社会人と話す機会はそんなに多くないものだから、例え選考にはまったく関係ないとしても、OB訪問をして社会人のリアルな声を聞いておいたほうがいい。そういう積み重ねが、コミュニケーション能力の向上にもなるし、自己分析の変わりに見えてくるものがあると思う。だから、自己分析、ネット情報を得るよりもまずOB訪問を積極的に行え!!ということが重要だと思う。まぁ、そういうことを学生時代の自分に言ったとしても、準ひきこもり(「準」ひきこ森―人はなぜ孤立してしまうのか?)に近いものがあったので、やったかどうかわからないけどね・・・。それでも、一度勇気を出してやってみて、うまくいったら好循環に乗れると思う。

ネット情報で有益だと思われる確率が高いのは、ブラック企業ランキングだと思う。これだけは、ある程度信用してもいいと思う・・・。人生のリスクを減らすという意味で。これだけやばいということがネットに書かれるというのは、やはり何かあるんだと思う。もちろん、ネタをネタとして(ry

次は面接の話題。『「好き」だけで一点突破しようとすする学生たち』では、面接で志望企業の商品やサービスを好きだからと主張してくる学生が多いと示されている。
 好きなだけでは決め手にならないのだ。
 知りたいのは、「好きな理由の本質」と、それをなぜわざわざ「仕事」や「職場」にしようと思っているものか、ということである。
 好きなことを仕事にすると、嫌な部分が見えてしまうことがあるのは言うまでもない。
(中略)
 それでも「好き」と言えるのか?その「理由」はなんなのだろうか?それを「仕事」にまでしたいと思うのはなぜか?
 面接官はここを知りたいと思っている。
(pp.64-65)
『好き』にもいろいろあって、表面的な部分だけを見て好きと言っているのか、それとも泥臭さやあまりよろしくない部分も認めたうえで好きと言っているのかが重要になる。そもそも、仕事を選ぶときに、『好き』というものを選択基準にするということが必要なのか?ということも一度考えたほうがいい。それは、養老孟司氏が言うように、やりたいこととか好きなことという観点から仕事をするのではなく、道に穴が開いていて、その穴を埋められるのは自分だからその仕事をするべきという考えに通じる。つまり、好きとかやりがいを基準に仕事を選ぶのではなく、自分のできることを仕事にするべきということになる。そういう考えは、以下の本に示されている。とはいえ、これからの競争の激しい時代では、『好き』を貫かなければ勝ち残れないという主張の本もある。そもそも、『好き』なことだと思っていても、好きじゃないこともあるし、やってみたら意外に好きだったかもということもある。だからあまり『好き』を軸にしすぎないほうがいいのだと思う。これらは、早期転職に陥る原因にもなるのではないかなぁと思った。

自分自身に関しては、ITが好きという観点で今の仕事、SEをやっている感覚はあまりない。たまたま大学時代に勉強したことがITだったし、適職診断をやったら必ずプログラマーとかSEが上位に出てくるから、志望業界はITしかないと思って就活した。そして仕事をしてみると、あんまりITが好きじゃないのかもしれないと思い悩んだりもした。今でもITが好きだと断言できない自分がいる。しかし、自分の理想どおりのシステムやプログラムを作れたときは、とても面白いと思える。それは多分、『好き』とは別の感情だと思う。まぁ、何が言いたいかというと、『好き』よりも『面白さ』を軸に考えたほうがいいと思う。

この本で面白いのは、各章のまとめにある。1章のみ一部抜粋。
  • 自己分析は「電気のように明るい性格のテレビっ子」を量産します。ラジオっ子はそれほどではありません。
  • 面接で珍しさを出したいのであれば、「趣味は女装、日常会話はビスマラ語、修行僧経験あり」くらいは言いましょう。
  • 「就活に有利な資格がある」と主張する人には、就職問題を語る資格はありません。
このように、皮肉たっぷりで示されている。

他の章もいろいろと引用してつっ込みたいのだが、あまりにも長くなるので、この辺で切り上げよう。

最後に、この本の青臭い主張を『おわりに』から引用しておく。
 青臭いことを言わせていただく。
 学生に強く言いたいのは、「就活に正解はない」ということである。
 答えは、「探すもの」ではなく、「探す」「考える」などの行為を経たうえで「決めるもの」であるということだ。
 だから、極論のようだが、本書では自己分析もマニュアル本もいらないと断言している。人生に”答え”はない。もっと言うと、人生とは、その”答え”をつくりだしていくものである。
 就活という茶番劇のなかで踊らされるのはやめて、人生というドラマを楽しむ勇気を持ってもらいたいものだ。
(pp.268-269)
これは自分もその通りだと思う。最低限の就活本を読んで、就活のルールを把握し、その後はひたすら行動しながら自分で考えるべきなんだよ。就活本をいくら読んでも、差別化にはならないから、就活本の読みすぎもどうかと思うよ。それよりも就活に関係ない本を多く読むほうがいい。そうすると、3年(修士1年)の秋から本を読み出したのでは、正直遅い。もっと言えば、就活は大学生になった瞬間から意識するべきで、さらに言えば、大学卒業後のキャリアを思い描きながら大学を戦略的に選ぶべきで・・・。

最近の就活本はまったく把握していないけど、自分が最後に読んだ就活本でよかったのは、以下の本。この本は、企業選びの方法、戦略的なエントリーの仕方、さらには入社後の働き方にまで言及されている。読んでおいて絶対損はない。

この『バカヤロー』本は、冒頭に対象読者が示されていたが、誰が読んでもいろいろとつっ込んだりできる部分や考えさせられたりする部分があると思う。社会人になって、就活本などもう読まなくてもいいかなと思っていたけど、たまに読むと、いろいろと今後のキャリアを考える上でも良いきっかけになると思った。

著者の一人、石渡嶺司氏は『転職は1億円損をする』の著作がある。社会人の人は、こっちを読めばいいかも。

学生はもちろん、自分のキャリアを考えたり転職を意識している社会人が読んでも損はない一冊だと思う。しかし、直接この本が役に立つことはあまりないが。



就活のバカヤロー (光文社新書)
就活のバカヤロー (光文社新書)

読むべき人:
  • 就活戦線に出陣する学生
  • 転職しようかと思っている若手社会人
  • 就活の問題点から日本全体まで考えたい人
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1. 大沢仁,石渡嶺司『就活のバカヤロー 』  [ itchy1976の日記 ]   August 14, 2010 19:53

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