April 02, 2009

教養脳を磨く!

教養脳を磨く!
教養脳を磨く!

キーワード:
 茂木健一郎 / 林望、教養、ケンブリッジ、対談、総合知
脳科学者と国文学者の教養についての鼎談本。以下のような目次となっている。
  1. 序章 教養という可能無限(茂木健一郎)
  2. 第1章 ケンブリッジ式「教養脳」の磨き方
  3. 第2章 古典が育てる「教養脳」
  4. 第3章 「教養脳」的に古典を読んでみる
  5. 第4章 日本の「教養脳」を磨こう!
  6. 終章 汲めども尽きず(林望)
(目次から抜粋)
現代では教養というものが形骸化されてきているが、この世界を生きるうえでのコモンセンス、つまり教養が必要であるということを示していかなければならない、と茂木氏は考えられているようだ。そして、国文学者で書誌学が専門の林氏と対談しながら、イギリス、特にケンブリッジ大学の教養的な風土、平安時代の国文学の話、古典、科学を引き合いにしながら教養についていろいろと示されている。

この本で494冊目。対談本なので、そこまで深いことが書いてあるわけではない。しかし、教養を考える上で、押さえておいたほうがよいことがいくつか示されていたので、そこを重点的に考察しておく。

まずは脳科学者、茂木氏の教養観は以下のように示されている。
 「教養」とは、一生をかけて必死になって醸成していくべきものである。何が起こるかわからない人生において、生きる上での道しるべを与えてくれるものである。それは、万人にとって必要なもの。決して、机に座って本を読むことによってのみ身につくものではない。私たちが生きる上で時々刻々経験すること。その細やかなひだの中から、次第に醸成されてやがて血肉になるのが、教養である。
(pp.2-3)
教養は、難しい古典的な本を読むだけではなく、生きていく上で経験することからも学ぶことができるようだ。しかし、それは一朝一夕では決して身につかず、軽々しく教養がある、とは言えないものだろう。それは、以下の部分にも通じる。
 教養を身につけているとは、すなわち、自分がどれくらいものを知らないかということを自覚しているということである。それでいて、決して投げやりになはならないということである。未知なものに対して、積極的に、かつ真摯に向き合う。そのような態度を身につけていることが、教養、すなわちコモンセンスなのである。
 (pp.6)
教養の定義は、人によってかなり違ってくる。そのため、これが絶対的なものである、という定義はないのだろう。茂木氏の場合は、『無知の知』が教養の基礎になるようだ。

そして、特に重要なのが、以下の部分。
 教養を考える上でもう一つ大事な点がある。すなわち、「広さ」だけでなく、「深さ」が大切だということである。この点においても、昨今の日本の状況には嘆かざるを得ない。
 実際的な意味で役に立つこと、わかりやすいことばかりがもて囃されている。少しでも難しいことだと、「私には関係ない」「私には無理だ」と拒絶する。それでいて開き直る。そのような姿勢で生きていては、ここで言う「教養」など身につかない。何よりも生きていく上で自分自身の可能性を活かしきることができない。もったいない。
 この世には、今の自分にはあずかり知り得ないような、凄いものがある。そのようなことに対する予感を抱くことこそが、教養というものの本質的な意義の一つである。自分の慣れ親しんだ日常の中にこもって井の中の蛙になってしまっていては、教養の天空のさわやかな空気をのびのびと吸うことはできない。
(pp.7)
より良く生きるために、そして自分の可能性を広げるために、教養が必要なのだ、ということだろう。そのときは、一点特化するのではなく、広く、深くの両方を目指さなければいけないようだ。そう考えると、どう考えても5年10年程度では、教養を身につけようとしても大したものは身に付けられない、ということになる。やはり一生かけて醸成させていく必要があるのだと分かった。

終章で、同じようなことを林氏が主張している。
 この複雑で不条理な人間の営為は単純な分析によっては解明されない。もっと広い見渡し、もっと透徹した考察、全体を総合して考える力が必要だと思うのである。
(pp.182)
これらを読んで、もう多様性を目指すことに迷いはない。21世紀は旧世紀のように単純な世界ではなく、複雑系である。その不条理さを孕む世の中をよりよく生きるために、総合的な知見を持ち、考える力を養っていかなければならないようだ。その走りが、やはり多様な本を読むことなのだ、と自分の中に結論付けた。

この本は新刊で、教養を身につける重要性を考えていたときに、電車の中の広告でこの本を知った。続けて教養に関する本を読んできたので、よい傾向だなと思った。

対談本なので、読みやすいし、ところどころに(笑)という記号も多くある。ケンブリッジ大学の図書館は独特の雰囲気で、中国哲学が専門のパンクロッカーの格好をした権威がいるとか、ケンブリッジのアカデミックな空気は日本とは大違いであるとか、和歌の本質的な詠み方など、とても興味深く読めた。

教養など役に立たない、という考えは浅薄で、そのような態度では、本質的に世界を知ることはできない。自分は世界を体系的に理解したい。だから、もっともっといろんなことを知りたい。そして、常に『無知の知』を基本とする謙虚で真摯的な態度でありたい。

林氏の本は、以下もお薦め。

教養脳を磨く!
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読むべき人:
  • 教養について考えている人
  • イギリスが好きな人
  • 分かりやすいものばかり求めている人
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