July 29, 2009

ふしぎな図書館

ふしぎな図書館 (講談社文庫)
ふしぎな図書館 (講談社文庫)

キーワード:
 村上春樹 / 佐々木マキ、図書館、ファンタジー、羊男、喪失
村上春樹と佐々木マキによる大人のためのファンタジー作品。あらすじをカバーの裏から抜粋。
図書館で「オスマントルコ帝国の税金のあつめ方について知りたいんです」とたずねたぼくに、老人の目がきらりと光った。案内された地下の閲覧室。階段をおりた奥から、羊男が現れて…。はたしてぼくは、図書館から脱出できるのか?村上春樹と佐々木マキが贈る、魅力溢れる大人のためのファンタジー。
(カバーの裏から抜粋)
501冊目は、図書館っぽい内容の本にしようと思っていた。読みやすく、再スタートを印象付けるためにこの作品を選んだ。しかし・・・。

主人公の『ぼく』は学校の帰りに、近くの市立図書館に寄って、『潜水艦の作り方』と『ある羊飼いの回想』を返却に行った。そして、帰り道にふと気になった「オスマントルコ帝国の税金のあつめ方」についての本を探しているうちに、地下の107号室に案内され、その部屋の老人に、図書館の地下の迷路の奥深くに存在する牢屋に閉じ込められてしまう・・・というお話。

羊男のクリスマス(書評記事)』のような展開を期待していたら、見事に裏切られて若干悲しくなった。この作品は、挿絵もあって読みやすいが、内容はどこかグロテスクで、村上春樹の世界観が凝縮されているような気がした。

来客を図書館の地下の牢獄に閉じ込めて、本を読ませてその知識が入った脳みそを吸いだそうとする暴力的な老人、それに従うしかないドーナッツ好きで友達のいない羊男、別の世界に存在する声帯がつぶされていて、目が痛くなるくらいのきれいな女の子。そして、家で母を待たせているぼく。一見意味のあるようでないような会話、舞台、そして登場人物によって、夢と現実が交錯するような物語。そこには、なんともいえない静寂と喪失が示されていた。

物語のグロテスクさや緊迫感を緩和するように、佐々木マキのほんわかとした挿絵が入っている。

特に印象に残った部分を引用しておこう。羊男とぼくが地下の迷路から脱出するときに、羊男がよく思い出せないけどなんとかなるだろう、と言った後の部分。
 ぼくはそれを聞いて、ちょっと不安になった。迷路のこまったところは、自分の選んだ道が正しかったのか正しくなかったのか、とことん進んでみないことにはわからないところにある。そしてとことん進んで、まちがっていたとわかったときには、もう手おくれになっていることが多い。それが迷路の問題点。
(pp.080)
きっと、『迷路』は『人生』の暗喩だと思う。人生もたぶん同じ。ただ、手おくれかどうかの判断は、きっとすぐにはできないのだろうけど。

もう一箇所引用。
 ときどきぼくは図書館の地下室に残してきた新しい革靴のことを考える。そして羊男のことを考え、美しい口のきけない少女のことを考える。いったいどこまでがほんとうに起こったことなのだろう?しょうじき言って、ぼくにはたしかなことはわからない。ぼくにわかっているのは、ぼくの革靴と、ぼくのむくどりがじっさいに失われてしまったということだけだ。
(pp.093)
この作品の核のような文章でもあり、村上春樹の作品の世界観を凝縮したような文章でもある。そんな喪失感を抱かせてくれる大人のファンタジーなので、501冊目の再スタートにこの作品を選んでよかったのかどうか若干戸惑い、僕はやれやれ、と思った。

1Q84』は、まだ買ってもいない。『1984』も手をつけていない。そういえば最近本屋に行ったら『1984』の新訳が発売されており、文字が大きくなって読みやすそうだった。でも、表紙は旧版のほうがいいと思った。

この調子では『1Q84』は今年中に読めないかもしれない。そうこうしているうちに、文庫版が出てしまうのではないかという危惧もある。

501冊目の更新の前に、ブログタイトルだけは変えるべきかと思ったが、なんとなく7月29日という月末に違和感を覚え、結局変えなかった。たぶんタイトルだけは8月になってから変更すると思う。

そんな感じで、今までと基本的なスタンス?、ポリシーは変わらずに更新していくと思う。更新頻度はちょっと上げる予定。

それにしても、この作品の読了後は、ハッピーエンドを期待していただけに、なんだか切なくなった。



ふしぎな図書館 (講談社文庫)
ふしぎな図書館 (講談社文庫)

読むべき人:
  • 村上春樹のファンタジーが好きな人
  • 切ない作品を読みたい人
  • 図書館ブログを運営している人
Amazon.co.jpで『村上春樹』の他の作品を見る
Amazon.co.jpで『佐々木マキ』の他の作品を見る

bana1 図書館ブログ再スタートクリック☆  にほんブログ村 本ブログへ



トラックバックURL

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星