September 06, 2009

スカイ・クロラ

スカイ・クロラ (中公文庫)
スカイ・クロラ (中公文庫)

キーワード:
 森博嗣、戦闘機、戦争、存在理由、永劫回帰
建築が専門の准教授によって書かれた戦争作品。以下のようなあらすじとなっている。
僕は戦闘機のパイロット。飛行機に乗るのが日常、人を殺すのが仕事。二人の人間を殺した手でボウリングもすれば、ハンバーガも食べる。戦争がショーとして成立する世界に生み出された大人にならない子供―戦争を仕事に永遠を生きる子供たちの寓話。森博嗣、渾身の一作!
(カバーの裏から抜粋)
リンクで示されている表紙は通常版のものだが、自分が読んだのはアニメ装丁版。主人公のカンナミ・ユーイチが表紙に示されているもののほうを読んだ。

この作品は、押井守によって映画化されている。去年の夏に公開されて、劇場で何の予備知識もなく鑑賞した。そしたら結構当たり作品だったので、いつか原作を読もうと思っていたので、去年を思い出しながら読んだ。細かいあらすじなどは以下を参照。映画を先に見ていたので、主人公カンナミ・ユーイチや女性上官草薙水素、同僚の土岐野、他にも戦闘機などの描写がすんなりと脳裏に浮かんだ。映画を見ていなかったら、戦闘機の交戦シーンなど想像しづらかったと思う。戦闘機の描写は短い文だが、それだけ臨場感あふれるものだったと思う。

この作品を読んでいると、戦争とは何か?なぜ戦争をするのか?そして、その戦争をあくまでビジネスとして報酬をもらいながら参戦している主人公のどこか覚めた感覚から、いろいろなことを考えた。

大人になれない子供、人為的に作られた戦闘要員、キルドレである主人公は、生きている間の行為すべてが退屈凌ぎに過ぎないと語っている。戦闘機に乗って、戦争で敵を殺すことさえも。
僕たちは、確かに、退屈凌ぎで戦っている。
でも……、
それが、生きる、ということではないかと感じる。
そう、感じるだけだ。
違うだろうか?
生き甲斐を見つけろ、と昔のマニュアルには書いてある。
見つけられなかったら、退屈になるからだ。
つまり、退屈を凌ぐために、生き甲斐を見つける。
結局、昔から何も変わってはいない。
遊びでも仕事でも勉強でも、同じだと僕は思う。
淡々と生きている僕たちには、それがよくわかる。
僕はまだ子供で、
ときどき、右手が人を殺す。
その代わり、
誰かの右手が、僕を殺してくれるだろう。
それまでの間、
なんとか退屈しないように、
僕は生き続けるんだ。
子供のまま。
(pp.124-125)
すべて退屈凌ぎに過ぎない。ここを読んで、本当だろうか?と自問自答してしまった。生き甲斐はあったほうがいいかもしれない。しかし、生き甲斐にとらわれすぎて息苦しくなるのはあまり心地よいものではない。だから自分も、あまり深く考えずに淡々と生きることを目指している。主人公のように。

物語の世界での戦争は、あくまでショーに過ぎない。民間企業の戦闘員が戦闘機で戦争をすることで、一般人は戦争の悲惨さを目のあたりにし、平和について考えたり、平和を維持しようとする。その戦闘員は、キルドレという、精神的には死なない子供という特性を持つ。肉体的に死んだら、同じような人格の戦闘員がまた作られて、戦争というショーが終わらないようにする。

しかし、主人公の女性上官である草薙は、その永遠に死ねない感覚から解放されたくて、常に死にたい衝動を内包している。
「自分の人生とか、運命とかに、多少は干渉してみたい。月並みだけれど、それが、つまり、人並み。わかる?人並みだよ。私たちって何?人間だよね?違う?自分の死に方について考えるのが、人並みなんだって、そう思わない?」
「わからない」僕は首をふった。「運命って?」
「人には、年をとって死んでいくという自然の流れがあって、それは誰にも変えられないもの。それが運命」彼女は目を細める。
「そんなものがあるんだ」僕は鼻息をもらす。
「私たちには、ないわ」
「ない?」
「そう、私たちには運命がないの」
「だから?」
「ときどき、死にたくならない?」
(pp.258-259)
草薙は運命がないことによる苦しみを解放してあげたくて、部下を殺したようだ。これもいろいろと考えさせられた。死もまた、生きていくうえで重要な要素なのかもしれない。

物語は、主人公の一人称で進むが、ときどき1行が詩のように10文字くらいの描写になる。そういう緩急がつくので、どんどん引き込まれていく。映画を見ていたから、結末がある程度分かっているのに、ページがどんどん進んでいった。

この作品は全6巻からなるもので、『スカイ・クロラ』が最初に出版されたものであるが、シリーズの最終巻的な位置づけになるらしい。続編もとても気になるので、全作品を読むことにしよう。

また、押井守氏の以下の本も読むとよいかも知れない。スカイ・クロラは、横田基地日米友好祭に合わせて読んだという側面がある。

F-22 Raptor with The Sky Crawlers

世界最強の戦闘機、F-22、通称ラプターを眺めながら、戦争って何だろう?何のためにするのだろう?このような戦闘機のパイロットは、主人公と同じようなことを考えているのかな?とかいろんなことを考えた。No more wars and I wish the world would become a peace.



スカイ・クロラ (中公文庫)
スカイ・クロラ (中公文庫)

読むべき人:
  • 戦争物語が好きな人
  • 人生など退屈凌ぎに過ぎないという考えに共感できる人
  • 戦争について考えてみたい人
Amazon.co.jpで『森博嗣』の他の作品を見る

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トラックバック一覧

1. スカイ・クロラ  [ 時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館) ]   October 11, 2009 12:47

 今日紹介する「スカイ・クロラ」(森博嗣:中央公論新社)というのは、ちょっと変わった小説のようである。このシリーズは、全五巻であり、本作品は、その第一作目だ。しかし、時間的な流れから言えば、この作品は、最終章に当たるとのことである。すなわち、しょっぱな...

コメント一覧

1. Posted by あみか   September 07, 2009 04:56

こんにちは。
スカククロラに関してはシリーズ全体を読んでもやはり私小説のようでどこか幻のようです。
ドラマチックに展開させれば某エヴァのようなサ散々なものになってしまうものを淡々と綴っているように感じました。
戦争に関しては世にはびこる日本人の拒絶反応からは見えてこないものが多々あります。押井守監督が毎年行っている「戦争を語る」というトークショーは戦争について考えるよい機会です。お時間が取れるのであれば一度参加してみてください。

2. Posted by Master@ブログの中の人   September 07, 2009 06:22

>>あみかさん

コメントありがとうございます!!

確かにスカイクロラは、主人公の心情が淡々と語られているように感じました。

また、押井守監督の「戦争を語る」、そんなトークショーがあるなんて知りませんでした。よい情報ありがとうございます!!ぜひ来年参加してみたいと思います

3. Posted by (・ω・)   September 09, 2009 07:05

戦闘機ってその時代の最高峰の機能美を具現化したプロダクトだと思うんだけど、
それが戦うための道具だって事実は意味深だよね。
戦いから逃れられない人の業なのか、人が戦う姿こそ美しいのか…。

4. Posted by Master@ブログの中の人   September 09, 2009 08:01

>>(・ω・) さん

ほんと、戦闘機は美しい造形物だったけど、これが人を殺すのかと思うと、なんとも微妙な気持ちになりました。

戦いから逃れなれないのかもしれません。

5. Posted by 風竜胆   October 11, 2009 12:45

はじめまして
私もこの作品を読みましたが、ヤマがなくって、淡々と話が進んでいるような印象でした。
森博嗣の作品でもS&Mシリーズは好きですが、これはちょっと苦手な感じがしました。

6. Posted by Master@ブログの中の人   October 11, 2009 21:56

>>風竜胆さん

コメントありがとうございます!!

確かにこの作品は、どこか抑揚がなく、淡々としているような感じでした。

自分はスカイ・クロラが森氏の最初の作品だったので、こんなものなのかなぁ〜と思いました。

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