February 27, 2010

クラウドの衝撃

クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった
クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった

キーワード:
 城田真琴、クラウド、サービス、脅威、創造的破壊
野村総合研究所に所属する著者によって、クラウド・コンピューティングが分かりやすく解説されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 姿を見せ始めた次世代コンピューティング・モデル
  2. 第2章 雲の中身はどうなっているのか
  3. 第3章 ネット企業がリードするクラウド・コンピューティング
  4. 第4章 ICT業界の巨人たちはネット企業に追いつけるか
  5. 第5章 クラウド・コンピューティング時代の企業IT戦略
  6. 第6章 クラウド・コンピューティングで何が変わるのか
  7. 第7章 クラウド・コンピューティング時代へ向けて超えるべきキャズム
(目次から抜粋)
数年前からIT業界だけでなく世間をにぎわせている『クラウド』という言葉(バズワード)、なんとなく概要を知っているが、その特徴などの詳細についてはあまり知らなかった。IT業界でシステム開発業をやっている自分としては、さすがにその知識レベルではなんだかまずい気がする、ということで、クラウド・コンピューティングについて示されている本書を読んでみた。

結論から言うと、今後SI業のビジネスモデルそのものが大きく変わってしまうんじゃないかと思った。

まずは、そもそもクラウドって何?それってFF7の主人公となんか関係あるの?wwwっていうところから示しておこう。本書での著者なりの定義は以下のように示されている。
 「クラウド・コンピューティング」とは、拡張性に優れ、抽象化された巨大なITリソースを、インターネットを通じてサービスを提供(利用)するというコンピュータの形態である。

 このように書いてしまうと難しく感じるかもしれないが、簡単にいえば、インターネット上に雲のように浮かぶ巨大なコンピュータ群を必要に応じて利用できるコンピュータの形態が、クラウド・コンピューティングとなる。
(pp.15)
もうちょっと簡単にイメージするなら、雲のあちら側にサーバやサービスがあり、ブラウザを通して、利用者はその雲からサービスを自社内のシステムを利用する感覚で使用できるという感じかな。ポイントは、全部自前でシステムを作ったりする必要はなく、雲の向こうのサービスの利用分だけ使用料を払えばよいという形態である。

もうちょっと詳しい説明はWikipediaを参照するとよいかもしれない。まぁ、FF7の主人公とクラウド・コンピューティングには『』という単語の意味しか共通点はないwwwちなみに、スコール、ティーダも天気系の名前。どうでもいいことだが。

そして、このクラウド・コンピューティングは、以下の2つの特徴があるようだ。
  1. 高度なスケーラビリティ(拡張性)を持つ
  2. 抽象化されたコンピュータ・リソースである
1は、アクセス数の増加に伴い、コンピュータ・リソースを追加したいとき、利用者は契約先にリソースの追加注文をするだけでよいということになる。

2については、コンピュータ・リソースがどこのデータセンターにあり、どのようなマシンでどのような処理をしているかということが抽象化されており、ユーザーは気にする必要がないということらしい。

そして、クラウドの利用形態は一般的にXaaS(X as a Service)として以下の3つに分類されるようだ。
  • HaaS(Hardware as a Service:ハードウェア・アズ・ア・サービス)
    サーバのCPU能力やストレージなどのハードウェアをインターネット経由で提供するサービス(例:アマゾンの仮想サーバのレンタルサービス「アマゾンEC2(Amazon Elastic Compute Cloud)」や同じくアマゾンのストレージのレンタルサービス「アマゾンS3(Amazon Simple Storage Service)」など)
  • PaaS(Platform as a Service:プラットフォーム・アズ・ア・サービス)
    アプリケーションを稼動させるプラットフォーム機能をインターネット上で提供するサービス(例:グーグルの「グーグル・アップエンジン(Google App Engine)」、セールスフォース・ドットコムの「フォース・ドットコム(Force.com)など」)
  • SaaS(Software as a Service:ソフトウェア・アズ・ア・サービス)
    アプリケーション・ソフトウェアの機能をインターネット上で提供するサービス(例:セールスフォース・ドットコムのCRM/SFA、グーグルのGmailなど)
    (pp.29-30)
ここら辺はググッたらいろいろと出てくるので、もうちょい詳しく、と思う人は先ほどのWikipediaの記事とか見たらよいと思う。

全体像はこの辺にしておいて、以下、SI企業でSEをやっている視点から気になった部分を抜粋しておく。まずは『ネットベンチャー、個人の開発者には理想的な時代の到来』から。
 一方、ネット系のベンチャー企業や個人の開発者は、HaaS、PasSの利用に目を向けるべきだ。
(中略)
 ベンチャー企業や個人の開発者は、HaaSやPaaSを利用すれば、サーバやネットワークなどのインフラ部分の構築や運用に頭を悩ませることなく、これまでより圧倒的に少ないリソースで起業が可能となる。優れたアイディアがあり、プログラミングさえできれば、一攫千金も夢ではない時代がやってくるのだ。第2、第3のミクシィがクラウド・コンピューティング・サービスを利用する企業から生まれても何の不思議もない。
 グーグルやアマゾンのインフラをうまく使えば、日本だけでなく、海外でも活躍できるチャンスが広がる。
(中略)
 ネットベンチャー、個人の開発者にとっては、起業の障壁が従来に比べ、格段に下がる。まさに理想的な時代の到来といえるだろう。
(pp.179-180)
これは、もしかしたら自分にもチャンスがあるのではないか!?とまじめに思った。将来自分が独立するとしたら、何かサービスを作ってそれを基に起業するというイメージが漠然とあった。また、自分自身、こういうサービスがあれば便利なのにと思うものがいくつかあるし。

そして、人並み以上にプログラミングと英語ができるのだから、本気で一攫千金を狙ってみようかと思ったりもする。まぁ、この辺は要調査だね。まだAmazon EC2とかGoogle App Engineとかまったく分からないし。それでも挑戦してみる価値はあると思う。

さきほどの話は開発者個人の視点だったけど、次は、所属組織全体の話。『システム・インテグレータ、レンタルサーバ事業者のビジネスが変わる』から。
 最適なIT基盤の構築を売りにしてきたシステム・インテグレータにとって、PaaSは大きな脅威となる。セールスフォース・ドットコムやグーグルが提供するPaaSを顧客が使い始めると、自分たちのコアであったIT基盤の構築というビジネスが奪われてしまうだけではなく、システム稼動後の運用・保守といううまみのあるビジネスまで消滅してしまうからだ。
(中略)
 結果的に、これまでパッケージ・アプリケーションの導入をシステム・インテグレータに任せていたケースも含めて考えると、システム・インテグレータの出番は確実に減少する。
 とくにPaaSの利用シーンが増えると「最適なIT基盤の構築」というシステム・インテグレータの腕の見せ所が少なくなるということは避けられない。大手システム・インテグレータとしては、こうした状況に陥る前に、積極的に自社のノウハウが詰まった「IT基盤」をPaaSとしてサービス展開するという思い切った戦略も必要だ。
(pp.195-196)
ここの部分が一番『衝撃』だった。これはSI業のビジネスモデルが大きく変わるじゃないか!?そして、クラウドが主流になっていった場合、この波に乗れないSI企業は淘汰されるんじゃないか・・・。クラウド・コンピューティングの一番の脅威って、あるクラウドサービスがある業界の標準になったら、それが業界全体に使われることになり、それはつまりサービスの独占が可能になるということだと思う。

逆に言えば、いち早く業界標準をクラウドで作ってしまえば、そのサービス利用料で儲けられるチャンスがあるということだろう。

また、すべてがクラウドに置き換わるわけではないので、ミッションクリティカルでセキュアなものは依然としてフルスクラッチ開発になると思うが、その案件自体はまず少なくなるので、競争が激しくなり、そうなるとますますSIerの開発力、技術力が求められることになるなぁ。

さらに、今後単なる人月いくらという開発費で受注するビジネスモデルでもう儲けられなくなるんじゃないかなぁ。

ということで、以下湧き上がってきた疑問、課題を整理しておこう。
  • クラウド開発が主流になってきたら、開発者一人当たりの人月単価は下がるのか?
  • クラウドサービスの開発、もしくは導入支援に必要な技術、知識はカスタム開発のようなものと大きく違ってくるのか?
  • SE個人としてクラウド時代に身につけるべき知識、技術は何か?
ここら辺がまだ全然分かってないので、今後もっと勉強していきたい。

IT系雑誌、ネット、社内でもクラウド、クラウドと言っているので、さすがに自分もクラウドについて知る必要に迫られてきたので、この本を読んでみた。クラウド本はたくさんあるようだが、この本自体は、アマゾンでの評価が一番高かったので買って読んでみた。内容は、図解も多く、かなり網羅的に示されていて、評価の通りだと思った。

IT業界の人なら読み進めるのが難しいと感じることはあんまりないと思うが、普通の人ならどうだろうか。まったく無理ということはないだろうけど、ちょっとカタカナ語が多くて苦手という人にはしんどいかもしれない。

SIerの人やユーザー企業の情報システム部門の人は絶対この本を読んでおいたほうがいい。少なくとも、クラウドっていう単語が話題に上がったときに、FF7の主人公しか思いつかないということはなくなるから(笑)



クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった
クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった
著者:野村総合研究所 城田 真琴
販売元:東洋経済新報社
発売日:2009-02-06
おすすめ度:4.5

読むべき人:
  • クラウドの波に乗っていきたい技術者の人
  • ワンランク上の情報システム部門の人になりたい人
  • 『クラウド』からFF7の主人公しか思いつかない人(笑)
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コメント一覧

1. Posted by 長谷川佳之@読書による経験価値   March 01, 2010 16:13

Masterさん、こんにちは!

私もMasterさんの
「結論から言うと、今後SI業のビジネスモデルそのものが大きく変わってしまうんじゃないかと思った。」
という意見に同感です。

クラウドにすべきシステム、従来通りスクラッチでやるべきシステムの
切り分けをキチンとお客様に提案できるSIerだけが生き残ることができる時代がきそうですね。

クラウドの技術面の概要を知るなら『クラウドを実現する技術』という本もお勧めです。

2. Posted by Master@ブログの仲の人   March 01, 2010 21:45

>>長谷川さん

貴重なご意見、ありがとうございます

同業の先輩の方に同意してもらえると、純粋に嬉しいです(笑)また、おススメ本の紹介もありがとうございます

クラウド、自分は結構注目しているので、いろいろと勉強してみようかと思います

3. Posted by たか   March 04, 2010 22:17

4 こんにちわ、Masterさん(^^)

俺もSEのはしくれなんでクラウドには注目しています。

Salesforceのクラウドみてて思いました。
俺の会社じゃ絶対に勝てないや、って(笑)
どうやら俺の勤めてる会社は淘汰される側みたいです(><)

このままじゃいかんと思い
「Google App Engine 実践クラウドシステム構築」って本読んでクラウド勉強しています。
Googleに特化した話ですが、結構面白いですよ(^^)

ちなみにクラウド開発が主流になってきたら、開発者一人当たりの人月単価はあがると思ってます。

理由は
・なんちゃってSEが淘汰され本物のSEしか生き残れないため、SEがコンサルタント並に重宝されるようになる。
(というか、コンサルタントの役割も果たせるSEしか生き残れない)

・プラットフォームの構築や運用に回していた費用がカットされるため、今よりは開発に資金を回すことができる(はず・・・)

・クラウド上で動かすサービスはCPU利用率やメモリの使用量で課金される。
そうすると、今みたいに動けば良い!!
ってコードじゃなく、実行効率とかが重視され、コーディングが新人ではなくプロの仕事になる。


つたない意見ですが、ご参考までに。

4. Posted by Master@ブログの中の人   March 04, 2010 22:55

>>たかさん

貴重な意見、ありがとうございます

自分も、Google App Engineにちょっと注目しておりますので、示していただいた本も含めていろいろとチェックしてみます〜。

また、人月単価が上がるというご意見、とても参考になりました

サービス課金でしか儲けられないなら、単純に単価が下がるのかなぁと思っていましたが、それはまだ本当のプロSEが以外が淘汰されていないという前提だったので、淘汰が進むと単価が上がるというご意見はなるほどと思いました

5. Posted by タカダヨシヒコ   March 09, 2010 22:06

4 初めまして!

この本私も読みました。

クラウドのどんなところがすごいのかわかりました。

じつは既にいろいろとクラウドのサービスってあるんですよね。

知らないところで物事が進むんですね〜。

6. Posted by 電車男。   March 03, 2012 04:53

5 別にクラウドは大好きですの。

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