December 23, 2010

1Q84

1Q84 BOOK 11Q84 BOOK 21Q84 BOOK 3
1Q84 BOOK 1
1Q84 BOOK 2
1Q84 BOOK 3

キーワード:
 村上春樹、空気さなぎ、リトル・ピープル、猫の町、物語
村上春樹の長編作品。目次は長すぎるし、目次の示唆的なタイトルだけを眺めたところでこの作品の概要が分かるわけではない。よって目次は省略することにする。あらすじも簡潔には書きようがない。

BOOK1が554ページ、BOOK2が501ページ、BOOK3が602ページの合計1,657ページの長編作品となる。過去の村上作品で一番長い作品となる。

この作品について何から書いて、どこまで書いていいのか分からなくなる。もちろん書くべきことはたくさんある。とはいえ、それらをまとめて、かつ文芸評論家や村上春樹作品研究家のように書評を書くことはできない。そもそもこのブログは書評を書いているつもりは微塵もない。ただの感想文に近い。だから書くべきこととして、自分が感じたことを綴っておこう。

もしかしたらネタばれを含むかもしれない。なので、この作品をこれから読むつもりでかつ先入観なしで読みたい場合は、ここから先は読まないほうがよいと思われる。この記事が先入観を植え付けるほどの影響力があるかどうかは分からないけど。

1984年は自分が生まれた年でもある。そしてこの作品のタイトルは『1Q84』。ジョージ・オーウェルのSF作品を示唆させるタイトル。物語の中で特にジョージ・オーウェルの作品についてはまったく触れられないと思っていたけど、しっかり触れられていた。偉大な兄弟、ビッグ・ブラザーの対比としてリトル・ピープルなる1Q84の世界に存在する善とも悪ともいえない神のような存在が示されている。1984年のビック・ブラザーは世界に君臨する独裁者だが、リトル・ピープルはそこまでの力はない。

そう、この物語はファンタジー的な要素を含んでいる。過去の村上春樹作品と同じようにね。また、一番SF的な作品でもある。主人公の一人、スポーツインストラクターでもあり、殺し屋でもある青豆はこの世界について以下のように示している。以下、その部分を引用。
 1Q84年――私はこの新しい世界をそのように呼ぶことにしよう、青豆はそう決めた。
 Qはquestion markのQだ。疑問を背負ったもの。
 彼女は歩きながら一人で肯いた。
 好もうが好むまいが、私は今この「1Q84年」に身を置いている。私の知っていた1984年はもうどこにも存在しない。今は1Q84年だ。空気が変わり、風景が変わった。私はその疑問符つきの世界のあり方に、できるだけ迅速に適応しなくてはならない。
(BOOK1 pp.202)
単純にこの作品のジャンルを示すならパラレルワールドSF作品となる。表層的にはね。しかし、自分はこれを二人の主人公、青豆(女性)と天吾(男性)のラブストーリーとして読んだ。いろいろな要素を包括しながら展開するラブストーリー。

ここまで書いてきたけど、これ以上何をどう書けばよいか分からなくなってきた。ただ言えることは、この作品にずっと没頭できたことだ。12月に入ってから読み始めて、約3週間で読了できた。今までそれなりに文学作品を読んできたけど、ここまで没頭してページが進んだ作品はあまりない気がする。

いろいろな要素、例えば、宗教法人、NHKの集金人、『空気さなぎ』というベストセラー小説、神話的なリトル・ピープル、猫の町、裏の世界の用心棒、超能力的なリーダー、ディスクレシアを持つ17歳の美少女ふかえり、緑色に輝くいびつな形をしたもう一つの月、マザ、ドウタ、そして空気さなぎなどなど、それぞれが物語を彩るためにそれぞれの役割を与えられている。けれど、それらのすべてが納得のいく形で説明されているわけではない。村上春樹作品によくあるぼやけた読後感がある。この作品が初めての村上春樹作品なら、きっと受け入れられないものかもしれない。

けれど、1,500ページ超のこの作品を読みきった後には、もやもやっとしたもの以上に何かが内に残るかもしれない。少なくとも自分には、1Q84の世界に引き込まれていたのだなぁという読後感が残る。これほど読んでいて続きが気になる作品は、過去の村上春樹作品にもあまりなかったと思うし。

村上春樹の過去のエッセイなどの著作を読んでいると、作品を書くときにはあらかじめプロットを立てないらしい。書いていくうちに世界観を構築していくようだ。過去の作品に比べてよりいろんな要素が重層的に、いうなればキューブのように構築されているような気がした。恐ろしい書き手だなぁと思った。やはりただの流行作家じゃないと思った。普通はこんなの思いつかないし、書ききれないと思う。

去年、そして今年ベストセラーになったから、読んでいる人も多いと思う。電車の中で読んでいる人も多く見受けられた。ただ単に話題性で売れているわけじゃなくて、やはり何かひきつける要素が必ずあるんだと思った。青豆と天吾の章が少しずつクロスしていくのがやはり面白かったと思う。

18歳のときに『ノルウェイの森』に運命的に出会って村上春樹作品を読み始めて、この作品を含めて長編はすべて読んだが、これが一番好きな作品かもしれない。なぜなら、唯一ハッピーエンドで終わった作品だと思うから。そして、これが今までの長編作品の最後に読めてよかったと思う。この作品を他の作品の前に読んでいたら、完全に消化しきれなかったかもしれない。

あと、自分の住み慣れた街が舞台になっていたのも没頭できた、親近感が沸いた理由かもしれない。杉並区の高円寺駅周辺が描写されている。自分が住んでいるところから高円寺駅まで大体徒歩20分なので、高円寺駅の近くの上島珈琲でこの作品を鑑賞したりもした。

また、17歳の美少女ふかえりと天吾が初めて出会う新宿中村屋にも行った。そこでカキフライ定食を食べながら(中村屋のカキフライ定食は値段に見合ったうまさだった)、ふかえりと天吾が交わす会話を想像してもみた。さらに、高円寺駅周辺をふらふら歩きながら、青豆が身を潜めているマンションにも想像をめぐらせてみた。そして月も見た。緑色の月が出ていないかどうかを確認するためにもね。

もうこれ以上この作品ついてうまく書けそうにない。書けば書くほどに散漫になって、魅力をうまく伝えられそうにない。面白ければ面白いほどに、そしてそれが自分の好きな作家であればあるほどに。

そうそう、普段は小説に線なんか引かないのだが、どうも村上作品には線を引く傾向がある。一箇所だけ示しておこう。青豆のセリフ。
「一人でもいいから、心から誰かを愛することができれば、人生には救いがある。たとえその人と一緒になることができなくても」
(BOOK1 pp.342)
だからこの作品に引き寄せられるのかもね。

Amazonでは3巻セットで、5,775円で売っている。もし没頭できるなら、約1ヶ月ほどこの金額で何よりも楽しめるだろう。一つだけコツを示しておくと、物語に対する客観性は捨てたほうがいい。物語に身をゆだねて、世界観を楽しむべきかな。天吾と青豆の境遇に共感するように。

もしこの物語に没入できるなら、かならず夜空の月を見上げる機会が増えるだろう。いびつな形をした緑色の月が出現して、自分が1Q84の世界に引き込まれてしまっていないかどうかを確認するためにね。



1Q84 1-3巻セット
1Q84 1-3巻セット
著者:村上 春樹
販売元:新潮社
(2010-05-29)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • パラレルワールドが好きな人
  • 重層的で上質な物語に没頭したい人
  • 子供のころから忘れられない人がいる人
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