August 17, 2011

物語が生きる力を育てる

物語が生きる力を育てる
物語が生きる力を育てる

キーワード:
 脇明子、物語、絵本、児童文学、生きる力
比較文学が専門の著者によって、子どもたちにとって物語がなぜ重要か?が示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 昔話の不思議な力
  2. 第2章 昔話のメッセージ
  3. 第3章 昔話から物語へ
  4. 第4章 感情体験の大切さ
  5. 第5章 物語で味わう自然
  6. 第6章 ゆっくりと、心にしみこむように
  7. 第7章 願いがかなうことと成長すること
  8. 第8章 鳥の目と虫の心
(目次から抜粋)
この本は松丸本舗の『本人(ほんびと)』コーナーで発見した。本の読み方とか読書論が置かれている本棚。最近自分自身は物語に引き寄せられるのはなぜか?そして、それは生きていく上でどういう意義があるのか?と考えていたので、内容をあまり確認せずにタイトル買いした。本書は、小説ではなく、神話や伝記、御伽噺といった物語に焦点が当てられている。物語には良質なものからダメなもの、毒になるものまであるので、子どもの読書は、何でも与えればよいというのではなく、適切に提供することが重要と示されている。そして、古今東西の絵本、児童文学が多く挙げられており、それらに対する子どもへの影響が解説されている。

内容をよく見ないで買ったので、示されている内容はどちらかというと学校の先生や子どもを持つ親向けなのではないかなと思った。まぁ、そこは大人になった自分自身に照らし合わせながら読んだ。

良質な絵本で得られるものがいろいろと示されている。例えば、『不快感情の体験と物語の役割』では、怒り、憎しみ、妬み、悲しみといった感情を増幅したり破壊的な行動に走ってしまわないようにするには、幼いうちから年長者相手にうまく手助けしながらそのような不快感情を処理するべきとある。そして、優れた物語でそのような不快感情を追体験することでその方法を学べるとある。以下その部分を抜粋。
優れた児童文学のなかには、子どもの心のなかで起こっていることがいきいきと描かれていて、感情移入しながらそれを読んでいると、自然にさまざまな不快感情を味わうことになるものがたくさんあります。もちろん物語での体験は実体験には及びませんが、不快感情の体験にかぎっては、物語で味わうほうがいい部分も多いことがわかってきました。まず言えるのは、子どもにいろんな不快感情をわざわざ体験させるわけにはいかないけれど、物語なら多様な体験ができる、ということです。大切な人を亡くした悲しみなどは、現実に体験しないですめばそれに越したことはありませんが、物語のなかでならそういうことにだって出あえます。もうひとつ言えるのは、現実につらい状況に陥ってしまうと、そこからいい形で抜け出せるとはかぎらないけれども、ちゃんとした物語なら納得できる形で抜け出せて、しかもその体験が意味のあることだったと感じることもできる、ということです。そんな物語に出あっていれば、現実に似たような出来事にぶつかったとき、たとえ対処の仕方の参考にはならないとしても、「いつかは抜け出せる」という希望を持つ助けくらいにはなるはずです。
(pp.84-85)
そして、そのような不快感情の体験をさせてくれるよい作品としていくつか挙げられている。それらを恣意的に一部以下に列挙。読んだことのあると思われるのは、「あーんあん」と「ぐるんぱのようちえん」くらいか。内容はさっぱり覚えてないけど、確か読んだ気がする。「ラチとらいおん」はよく本屋で見かけるので気にはなっている。

先ほど引用した部分は、子どもだけに限らず、大人が物語を読むべき理由にもなる。自分の内面が消化しきれない感情に覆われていると、どうにもならなくなってくることがある。そういうとき、優れた物語に没頭し、主人公に共感し、それなりに長い時間をかけて紐解き、結末を迎えてカタルシスを得る必要がある。このような過程で、やりきれない感情がちゃんと消化(もしくは昇華)される。

他にも現実に襲い掛かってくる不条理に備えるために、物語で疑似体験しておくというのもよい。もしくは、すでにそれが身に降りかかってきたのなら、そこから抜け出すためのヒントを得たり、精神的に強くなったり、自分の未来に希望を抱くことができる。だから生きていく上で、大人になってからも物語が必要で。

あと「速読という落とし穴」に物語を速読することの弊害が以下のように示されていた。
 そんなふうに筋だけを追う読書では、情景や心情を想像してみる暇などありませんから、想像力は育ちません。出来事のつながりを意識して、なるほどと納得したり、先を予想してみたりする余裕もありませんから、思考力も育ちません。なるべく短時間で読み終え、終わったらさっさと忘れて次の本を読むわけですから、記憶力も育ちません。想像力を働かさなければ、感情体験や五感体験はできませんし、ましてや「心の居場所」が見つかるはずはありません。さらに問題なのは、「何がどうしてどうなった」という大筋だけを拾っていたら、細部までしっかりと書かれ、ちゃんと読めば深い感情体験や五感体験ができるような作品も、矛盾だらけの薄っぺらな作品も、区別がつきにくいということです。それどころか、たとえ矛盾だらけでも、出来事のめりはりがはっきりしているほうが、筋が拾いやすくていい、ということにもなりかねません。
(pp.124)
対象は児童なのだけど、これは大人になっても言えることかなと思う。もちろん、ビジネス書とか他の分野の本であれば、必要に応じて速読して拾い読みするとよいときもある。けれど、小説などの物語に関しては速読すべきではないかなと思う。

物語に没入して、それを自分のものとするにはある程度の時間が必要じゃないかと思う。筋を追うだけならもちろん速読すればいいのだけど、情景を想像して、セリフ一つ一つに共感しながら読むと、時間がどうしてもかかる。しかし、そのかかった時間分だけ、主人公の体験を疑似体験し、それだけその物語を通して長く考えた、と言えるのではないかと思う。その積み重ねが自分の内面的なものを耕していってくれて、自分にとっての特別な物語になるのだと思う。

もちろん、推理小説とか面白い作品だとどんどん引き込まれてページが一気に進んで、結果的に速く読み終えてしまった!!ということはときどきある。なので、情景描写が難しい、古典文学作品とか良いかと思う。じっくり時間をかけて主人公を通して長く考えたい場合には。とはいえ、作品によっては、1ページ読むのに5分かかる場合もあって、挫折しやすいのだけど・・・。

本書は、教育者や子どもを持つ親である人にとってとてもよい本なのではないかと思う。子どもに何を読ませるべきかというのがこの本を読めば分かる。いろんな絵本とか物語のタイトルが列挙されているので、とても参考になると思う。

今は、夏休み中なので、物語、小説を読むようにしている。
今の自分に必要なのは、復活と栄光の物語。



物語が生きる力を育てる
物語が生きる力を育てる
著者:脇 明子
販売元:岩波書店
(2008-01-29)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • 幼稚園、小学校の先生の人
  • 小さい子どもを持つ親の人
  • 物語の力を確認したい人
Amazon.co.jpで『脇明子』の他の本を見る

bana1 物語案内本クリック☆  にほんブログ村 本ブログへ



トラックバックURL

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星