August 19, 2011

第四間氷期

第四間氷期 (新潮文庫)
第四間氷期 (新潮文庫)

キーワード:
 安部公房、未来、予言、SF、断絶
幻想的作家の異色SF作品。以下のようなあらすじとなっている。
現在にとって未来とは何か?文明の行きつく先にあらわれる未来は天国か地獄か?万能の電子頭脳に平凡な中年男の未来を予言させようとしたことに端を発して事態は急転直下、つぎつぎと意外な方向へ展開してゆき、やがて機械は人類の苛酷な未来を語りだすのであった…。薔薇色の未来を盲信して現在に安住しているものを痛烈に告発し、衝撃へと投げやる異色のSF長編。
(カバーの裏から抜粋)
この作品は実に面白かった。久しぶりに純粋に物語に没頭して、読了後になんとも言えない達成感と著者の作品特有の後味の悪さみたいなものを体感した。約50年ほど前に書かれた作品なのだけど、よくも半世紀前にここまでのものを書けるものだなと感嘆した。

この作品は自分の想像の斜め上を行く、ぶっ飛んだ内容であり、ネタばれすると面白さが半減してしまう。まぁ、ネタばれというほどのどんでん返しがあるわけではないのだけど、カバーの裏のあらすじ程度の予備知識だけで先入観なしで読んだほうが確実に面白い。最初はSF系サスペンスなのだと思っていたら、最後は全然違った。

主人公は妻子持ちの40代の政府系研究所の研究員で、肩書きはプログラマーである。扱う対象は今で言うところのスパコンのシュミレーターである。予言機械、モスクワ1号。それが対象の名前。この予言機械に雇用状況や次期総選挙の予想など政治に影響が出ないような予言のテストをすることになった。そこで偶然街で見かけた男の未来を予言させることになるが、その男が何者かに殺され、さらにその情婦までも死に至る。

主人公とその助手は死んだ男の肉体を手にいれ、その肉体の情報を予言機械に読み取らせ、人格を予言機械の中で再生することに成功し、そこから事件の真相を追うことになる。自分たちに嫌疑がかけられるのを逃れるために奔走している間、どこからともなく脅迫電話がかかり、主人公は殺し屋に狙われ、妊娠3週目の妻が何者かの組織によって堕胎させられる。主人公は、その鍵が別の研究所で進められている水棲犬にあると助手にほのめかされ、それを見に行く。

次第に自分自身が作り出した予言機械の描き出す未来に主人公は翻弄され、最後はまったく予想もしない展開になっていった。

この作品のテーマ性などはAmazonのレビューを見れば何となく分かると思う。自分はあまりこの作品のテーマ性をうまくここでは書けないので、この作品に似たものを示しておくことにする。

最初はサイバーパンク的なものだなと思った。徐々に攻殻機動隊を想起した。サスペンス要素が強く、どんどん続きが気になって物語を読み進めていくと、今度は手塚治虫的なSF作品を思い出した。どの作品かはあえて示さないけど、なんだか似たものを感じた。

見たこともない世界観をまるで見てきたかのように書かれている文章力は抜群なのではないかと思う。医学部卒で数学的なものにも造詣がある著者なので、生物の変態状況や予言機械の変数や函数(本文中の表記に習った)などの入出力的なもの割とイメージしやすく描かれている。その文体が実に精緻で、主人公が翻弄されていく心理描写もすばらしい。

物語を読む意義として、不条理な出来事が起こったときの対処法を学ぶという側面もあるが、このようなSF作品を読むことで、自分の発想力を飛躍させるということも期待できるのではないかと思う。特にプログラミングなど、ただの仕様をコードに落とすだけの作業ではなく、アート的に、もしくはまったく新しいサービスを展開させるにはこのような発想の飛躍を日ごろから鍛えておくのが良いのではないかと思う。その発想力を鍛えるのが優れていてかつ自分の想像力をはるかに超えるSF作品なのではないかと思う。

主人公は日本でも数えるほどしかいないプログラマーでプログラミングについて以下のように示している。
 プログラミングとは、要するに質的な現実を、量的な現実に還元してやる操作である―
(pp.159)
また、安部公房作品で過去に取り上げたものは以下となる。18歳のときに『砂の女 (新潮文庫)』を読んでからというもの、安部公房作品が好きで定期的に読みたくなってくる。大体それが夏だったりする。

夏休みに異次元に誘ってくれるSF小説を読みたかった。本作品はその要求を存分に満たしてくれた。本当に面白い。間違いなく今まで読んだ安部公房作品のベスト3に入る作品だと自信を持って言える。300ページほどの分量だが、たぶん一気に読めると思う。



第四間氷期 (新潮文庫)
第四間氷期 (新潮文庫)
著者:安部 公房
販売元:新潮社
(1970-11)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • プログラマーの人
  • 未来とは何か?を考えたい人
  • 自分の想像力を試して見たい人
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