October 29, 2011

パルムの僧院

パルムの僧院 (上) (新潮文庫)パルムの僧院 (下) (新潮文庫)
パルムの僧院 (上) (新潮文庫)
パルムの僧院 (下) (新潮文庫)

キーワード:
 スタンダール、イタリア、貴族、政治、恋情
スタンダールの文学作品。以下のようなあらすじとなっている。
イタリアの大貴族デル・ドンゴ家の次男ファブリスは”幸福の追求”に生命を賭ける情熱的な青年である。ナポレオンを崇敬してウァテルローの戦場に駆けつけ、恋のために殺人を犯して投獄され、獄中で牢獄の長官の娘クレリア・コンチと激しい恋におちる……。小公国の専制君主制度とその裏に展開される政治的陰謀を克明に描き、痛烈な諷刺的批判を加えるリアリズム文学の傑作である。
(上巻のカバーの裏から抜粋)
叔母のサンセヴェリーナ公爵夫人やその愛人で公国の宰相モスカ伯爵、クレリアらの助けでファブリスは脱獄に成功した。だが愛する人への想いに駆られ、自ら 牢獄へ戻る。やがて政争の果てに新大公が誕生、放免されたファブリスは聖職者となるが……。恋に、政治に、宮廷に生きる人々の情熱的な姿を鮮やかに描き、ル ネサンス期のイタリアを愛したスタンダールの晩年を代表する名作。
(下巻のカバーの裏から抜粋)
新潮文庫で、上巻359ページ、下巻435ページと文庫本としてはそこまで長編ではないが、6月ごろから読み始めてようやく今日読み終えた。4ヵ月ほどかかったことになる。それほど時間がかかった。

内容に関してはほぼ以下の記事で網羅されている。まぁ、最後はネタバレしているけど、ここを読めば大分物語の流れがよくわかる。というか、この記事を改めて読むと、なるほど、こういう物語だったのかと改めて分かった。それほど読んでいて、誰が何をしてどうなったのか?がよく分からなくなっていったので・・・。

また内容の解説的な部分は、下巻の訳者である大岡昇平氏の以下の部分が参考になる。
『パルムの僧院』もこれらの作品の執筆の着想を得、書かれた。正確にいうなら、口述された。それは一八三八年十一月四日から十二月二十六日まで、五十三日という驚くべき速さで、この間スタンダールはコーマルタン街八番地(マドレーヌ寺院付近)五階の部屋に閉じこもりきりで、この大作を口述したのである。
 すでに五十五歳、視力は衰え、健康も脅かされていた。スタンダールはこの作品の中に、彼の生涯で愛したもののすべてを盛り込んだ。イタリア、ナポレオン、恋愛、音楽、絵画―すべては戦争と警察と革命の影に浸されている。幼年時代の思い出、保護的女性に対する憧れ、一八一八―二〇年のミラノでのマチルドへの恋―マチルド・デンボウスキーは夏をコモ湖の南デジオで過ごした―が、グリアンタの生まれの若い主人公ファブリスの恋と冒険に一挙結晶したのであった。それは霊感と即興の尽きることのない連続で、五十三日の文学的奇蹟を生んだのであった。
(下巻 pp.430-431)
これが口述というのは初めて知った。よくもこんなものを全て口述できるものだなぁと。クレリアの控え目なファブリスへの恋情とかもスタンダールの口から語られたのかと想像すると変な感じだ(笑)。ファブリスは10代のうちはナポレオンに憧れて戦争に行くけど、結局は何も成果を出すこともなく帰ってくる。そのうちナポリに留学し、20歳を超えてから色気づいてくる。そして、道化役者のジレッチという男に切りかかられて、正当防衛としてその男をナイフで殺してしまう。

いろいろあって逮捕され、ファルネーゼ塔に収監される。ここらへんのクレリア・コンチとの恋愛模様がこの作品の見どころかなと思った。ファブリスは塔の窓から反対側の建物にいるクレリアと紙に一文字ずつ書いた交信をしてお互いの中を深めていく。その間にファブリスの叔母であるジーナに脱獄を勧められているが、この牢獄から出ることでクレリアを見ることができなくなるのなら、この場所から抜けたくない、この場所が一番の幸福の場であるとまで言っている。

毒殺されそうになったりで、結局脱獄するが、そのあといろいろとジーナの計らいによって、ファブリスが無罪となって主席大司教補佐となるが、クレリアは別の侯爵の婦人となってしまう。クレリアはファブリスを見ないことを聖母マリアに誓い、ファブリスを遠ざけようとしつつも、ファブリスのことが気にかかっている。そういう政略結婚的な部分がある中で、ファブリスを思い慕わずを得ない部分が何とも言えないなぁと思った。

今の時代はそういう政略結婚的な部分がないので、そういう制約条件とかがある中で想う人がいるというのはなんだか切ないものだなぁと思った。

ファブリスの一生の物語なのだけど、情熱的で感情的な部分もあり、その情動に終始常に突き動かされている感じがした。そしてクレリアはいけません、いけませんと言いながらもファブリスに惹かれている部分があって、もどかしい気もした。でもまぁ、自分の立場(父が牢獄の監督者)とかを考えなくては生きていけないのだから、それはそれでしょうがないねぇと同情もするね。

28章構成なのだけど、1日1章読むのもしんどかった。通勤時間の帰りの15分だけで読んでいたので、4ヵ月もかかった。独特の言い回しや年代が割と古いということや、耳慣れない名前の登場人物が多数出てきて、それぞれの思惑で長いセリフを言いたい放題言っているので、ちょっとでも気を抜くと字面を追っているだけで内容が全く頭に入ってこないことが多かった。なので、かなり集中して読む必要がある。

ところどころスタンダールが神の視点から、『わが主人公ファブリスは』といった表記もあったり、1行で突然年月が過ぎていることが示されていたりしてなんだか普通の文学作品を読んでいるような感じではなかった。

また、最後の章は早足で終結に向かっている感じがした。もうちょっと引き伸ばしてもよいか、ファブリスが無罪になり、クレリアが別の侯爵と結婚したあたりで終わっていたら違和感がなかったような気もする。

本作品は、いわゆる古典名作になるのだけど、そこまで面白い!!とまでは思えなかった。まぁ、もっと集中して全容が1回で把握できていたら違ったかもしれない。しかし、ファブリスの情熱的な行動に惹かれるものがあったのは確か。そういう風に生きられたらいいなぁとも思ったりする。

上下巻合わせて約1,000円で、数ヶ月は楽しめるかもしれない作品。無駄を排除し、徹底的に効率化、または速読が推奨される現代において、この作品を少しずつ長い時間をかけて読む意義は、情熱的な主人公ファブリス・デル・ドンゴの特性を自分に取り込み、さらに自分の人生についても考えることかもしれない。ここまで情熱に突き動かされて激しく愛せるだろうか?と思案したりとかね。

スタンダールの墓碑銘は、『ミラノ人アッリゴ・ベイレ 生きた、書いた、愛した』だってね。



パルムの僧院 (上) (新潮文庫)パルムの僧院 (上) (新潮文庫)
著者:スタンダール
販売元:新潮社
(1984-01)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • なかなか読み終わらない作品を読みたい人
  • 政略結婚をさせられそうになっている人
  • 激しい恋情を鑑賞したい人
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