November 13, 2011

生きるとは、自分の物語をつくること

生きるとは、自分の物語をつくること (新潮文庫)
生きるとは、自分の物語をつくること (新潮文庫)

キーワード:
 小川洋子 / 河合隼雄、対話、心理療法、物語、小説家
小説家の小川洋子氏と臨床心理学者の河合隼雄氏の対談本。以下のような内容となっている。
人々の悩みに寄り添い、個人の物語に耳を澄まし続けた臨床心理学者と静謐でひそやかな小説世界を紡ぎ続ける作家。二人が出会った時、『博士の愛した数式』の主人公たちのように、「魂のルート」が開かれた。子供の力、ホラ話の効能、箱庭のこと、偶然について、原罪と原悲、個人の物語の発見…。それぞれの「物語の魂」が温かく響き合う、奇跡のような河合隼雄の最後の対話。
(カバーの裏から抜粋)
雑誌での対話集が2編まとめられているのが本書であるが、3編目としての対話が始まる前に河合隼雄氏が亡くなられて未完となったようだ。本書は340円なのだけど、とても濃い内容で、いろいろと考えさせられて、最後まで読みたかったなぁと思った。実に残念。

第1章では『魂のあるところ』というタイトルで、小川洋子氏の作品『博士の愛した数式』の内容についていろいろと対談されている。河合隼雄氏は数学科卒であることから、数学者は美的センスがなくてはダメだとか、作品中の博士とルート君は友情が成立しやすいとかいろいろ。ここらへんは作品を読んだことがないので、正直何とも言えない。読んでたらきっとこの部分が興味深く読めたのだろうけどね。

博士の愛した数式 (新潮文庫)博士の愛した数式 (新潮文庫)
著者:小川 洋子
販売元:新潮社
(2005-11-26)
販売元:Amazon.co.jp


特に自分にとって興味深かったのは2章の『生きるとは、自分の物語をつくること』と小川洋子氏のあとがき、『二人のルート―少し長すぎるあとがき』の部分かな。特に後者。その部分で本書の核になると思われる部分を抜粋。
 河合先生の著作を読み、物語というものの解釈に出会ったのはちょうどその頃でした。
 いくら自然科学が発達して、人間の死について論理的な説明ができるようになったとしても、私の死、私の親しい人の死、については何の解決にもならない。「なぜ死んだのか」と問われ、「出血多量です」と答えても無意味なのである。その恐怖や悲しみを受け入れるために、物語が必要になってくる。死に続く生、無の中の有を思い描くこと、つまり物語ることによってようやく、死の存在と折り合いをつけられる。物語を持つことによって初めて人間は、身体と精神、外界と内界、意識と無意識を結びつけ、自分を一つに統合できる。人間は表層の悩みによって、深層世界に落ち込んでいる悩みを感じないようにして生きている。表面的な部分は理性によって強化できるが、内面の深いところにある混沌は論理的な言葉では表現できない。それを表出させ、表層の意識とつなげて心を一つの全体とし、更に他人ともつながってゆく、そのために必要なのが物語である。物語に託せば、言葉にできない混沌を言葉にする、という不条理が可能になる。生きるとは、自分にふさわしい、自分の物語を作り上げいくことに他ならない。
(pp.126)
この部分に自分が日頃からなんとなく考えていたことがまとめられていたような気がして、思考の断片が集約されて、腑に落ちた!!と思った。常々、自分には物語が必要だと思っていた。それは小説や漫画、映画のような楽しみのために消費されるようなエンタメ的な物語と、自分自身がよりよく生きるための支えになるようなものだと思っていた。また、なぜ自分は物語そのものに強く惹きつけられるのか?も考えていた。それらの一つの解答例がこれなのだと思う。

自分にとって物語がなぜ重要で、かつ必要かというと、引用部分の最後の『生きるとは、自分にふさわしい、自分の物語を作り上げいくことに他ならない。』に収斂されるのだ。表面上は悩みなんかないように思われるかもしれないけど、小川氏の示すように、深い部分では言語化できないような混沌とした夢のようなイメージがあったりする。それらをうまく消化(昇華)できなくて、ふとしたことで思い悩んで、さらには精神的に沈み込んで行ってしまうけど、それらのイメージの消化(昇華)の手助けをしてくれるものが優れた小説などの物語なのだ。

そしてその物語を助けに、自分自身がよりよく生きていくことができるのではないかなと思った。自分にとってのその代表作が以下の物語となる。さらに、今は自分が主人公の物語を紡いでいるのだと思う。リアルライフを送りながらね。

僕はなんとなくぼーっと何も考えずに生きられないタイプなので。だからこのような読書ブログを書き続けているという部分もある。そして、自分自身の人生を歩みながら、不必要に迷いすぎたりせずに活き活きと生きていくための自分が主人公の物語が必要なんだとも思う。そのシナリオ、プロットはまだ明確にはなってはいないけど、今年は震災後からいろいろと考えてようやく輪郭部分がぼんやりと見えてきたのではないかなと思う。

物語が完成するのはいつだろうかね?それは僕にも分からないよ。でもある程度区切りがついたら、きっと何かが大きく変わるのだろうね、ということはなんとなく予感している。例えばこのブログがその物語の構成要素になったりとかね。

340円で、150ページほどの内容ではあるが、すごくいろいろと深く考えさせてくれる良書だった。集中して読めば2時間くらいで読めると思う。事前に『博士の愛した数式』を読んでおくのもよいかもしれない。

物語とか小説家の書く理由とか、カウンセリングとか精神的な話に関心がある人は面白く読めると思う。



生きるとは、自分の物語をつくること (新潮文庫)
生きるとは、自分の物語をつくること (新潮文庫)
著者:小川 洋子
販売元:新潮社
(2011-02)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • カウンセラーになりたい人
  • 小説家になりたい人
  • 自分の人生について考えてみたい人
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コメント一覧

1. Posted by トーマス   November 13, 2011 22:57

面白そうですね。読んでみます!

2. Posted by Master@ブログの中の人   November 14, 2011 20:18

>>トーマスさん

コメントありがとうございます

面白い本なのでぜひ

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