August 05, 2012

自分をいかして生きる

自分をいかして生きる (ちくま文庫)
自分をいかして生きる (ちくま文庫)

キーワード:
 西村佳哲、自分、存在、仕事、手紙
働き方研究家による仕事や働き方について考える3部作の第2弾。目次は省略して、本書が書かれた動機について示されている部分を引用。
 どんなに成功しているように見える人でも、人生に「上がり」はない。植木さんのように多くの人から、その仕事を愛された人でも。あたり前の話だけれど、定年まで勤め上げたところでそこが上がりでもない。死ぬ瞬間まで「自分をどういかして生きていくか」という課題から、誰も降りることはできない。
 こうしてみると、人間の仕事とは「死ぬまで自分をいかして生きる」ことのように思える。文字にすると限りなくあたり前の話だけど、いま僕が試みたいのは、そのあたり前のことの再確認である。
(pp.12-13)
著者が20代のころ、勤めていた会社で働きづつける自分の将来像が思い描けず、自分はいったい何がしたいんだろう?ということに日々悶々としていた時に、コメディアンの植木等のセリフを聞いて、愕然と気づいたのが上記のようなことのようだ。

そして前著の『自分の仕事をつくる』の補稿として、<自分の仕事>とはなにかということ、またそれはどのように可能なのかという考えや逡巡を手紙のように書かれたものが本書となる。本書は、前著と同じように西新宿のブックファーストのフェアで手に入れた。さすがにお勧めされるだけあって、前著に続き内容がとてもよかった(それはそうと、西新宿のブックファーストは良いフェアを開催してくれる)。

仕事論などは、自己啓発書のようになんとかしたらよいというタイプのものや、社会学者が各統計データを基に世の中の傾向を一般化したり解説したりしたものが多いが、本書は手紙のようなとある通り、著者の個人的な考えがダイレクトに示されている。それが僕にはとてもよかった気がする。

本書の内容は割と話題が飛び飛びになるので、気になった部分を紹介しつつ、自分の考えも合わせて簡単に示しておきたい。

まずは「いい仕事」について。著者は初めてヨーロッパへ行き、大聖堂の圧倒的な仕事量に感服したり、日本の古い木造建築の細部に感じ入るようになるにつれて、自分は「いい仕事」を求めているんだ、そしてできればそれに関わっていきたいと少しずつ思うようになったらしい。
 でもその「いい仕事」とは、いったいどんなことを指すのか。これはなかなか言葉に出来ずにいた。今はこう思う。僕が魅力を感じ、満足を覚えるのは、「いる」感じがする仕事である。
(pp.039)
この「いる」という感覚が本書ではとても重要なキーワードとなる。そして次のように続いている。
 人間は基本的に、「いい仕事」をしたい生き物だと思う。給料や条件とかステイタスの話ではなく、他の人々に対して「いい影響を持ちたい」、という欲求があると思う。
「いい影響」とは、その仕事に接した人間が「よりハッキリ存在するようになる」ことを示すんじゃないか。「より生きている感じになる」と言い換えてもいい。
(pp.041)
自分の仕事でも少なからず「いい仕事」をしたいと思うけど、ここまで考えたことはなかった。自分の仕事に接したお客様が「よりハッキリ存在するようになる」とはどういうことなのだろうか?自分が構築に関わったシステムによって、よりお客様の業務の本質が改善されること、かなと思った。

他には『好きなことを仕事に』という言葉について、好きなことがないとダメなのか?という疑問から、以下の問いが示されている。
 あるいは「自分がお客さんでいられないことは?」、という問はどうだろう。
(中略)
 でも「好き」だけではすまない。
 今はお客さんの立場でも、ずっとそのままでいられるかというとそんなことはない。というか、そうありたくない。
 気持ちがザワザワする。落ち着かない。見たくない。悔しい。時にはその場から走りだしたくさえなるような、本人にもわけのわからない持て余す感覚を感じている人は、そのことについて、ただお客さんではいられない人なんじゃないかと思う。
(pp.073-074)
これをもうちょっと具体的な例として補足すると、例えば映画が好きで映画を見ているけど、もっとこういう映画のほうがいいんじゃないか?と思ったりして実際に作り始めたり、それが料理であったり、カフェや書店などのお店でもあり得る。そういうサービスや商品を提供する側に回りたいという気持ちが、自分の仕事につながっていくようだ。

これはB to Cのビジネスやサービスは分かりやすいと思う。普段の日常生活で接する機会がとても多いからね。逆にB to Bビジネスではその仕事、職種の存在すら知らなかったりする。そういう場合は、このお客さんではいられない状態になるというのはとても難しい気もする。そう考えると、自分の職業、仕事の決定要因は様々なのだなぁと思う。必ずしも好きとか、このお客さんではいられないという思いに囚われなくてもいい気もする。

自分の意にそぐわなかったり、好きな仕事をしていたとしても、最後に著者が示す以下のような気持ちでいたい。
 やらされてやるような労働はしたくないし、してほしくもない。どんな難しさがあろうと、一人ひとりが自分を突き動かしている力、この世界に生まれてきた力を働きに変えて、つまり<自分の仕事>をすることで、社会が豊かさを得る。
 そんな風景を本当に見たいし、自分もその一端で働き、生きてゆきたい。
(pp.190-191)
その通りだなと思った。

今年1年は自分なりに働くこと、仕事について考えていこうと決めたので、このような本を読むのはとてもよかった。いろんなことを考えさせられるタイプの本で、ゆっくり読むのがよいかな。

もちろん、本書は著者の個人的な考えがメインに示されているだけで、万人受けするような仕事に対する答えなどは示されていない。本書を読んで自分なりの働き方、自分の今の仕事を振り返りつつ、そしてこれからの自分の生き方までを考えるよいきっかけになる。

最近は仕事が徐々に楽しめるようになってきて、これが自分の仕事なんじゃないかと思えるようになってきた。しかし、それと同時に、今の仕事の延長線上に自分の仕事の未来があるのかどうかも分からなくて、若干の不安と迷いもあったりする。それはら常に自分に付きまとうような気もするので、深く考え込まなくてもいい気もするが。

30歳までを一区切りとして、自分をいかした仕事をして生きていたいなぁと思う。



自分をいかして生きる (ちくま文庫)
自分をいかして生きる (ちくま文庫)
著者:西村 佳哲
販売元:筑摩書房
(2011-06-10)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • 仕事について考えたい人
  • 何がしたいか分からない人
  • 自分をいかしたい人
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