October 06, 2012

愛のゆくえ

愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)
愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)

キーワード:
 リチャード ブローティガン、図書館、美女、中絶、引きこもり
リチャード ブローティガンの小説。以下のようなあらすじとなっている。
ここは人々が一番大切な思いを綴った本だけを保管する珍しい図書館。住み込み館員の私は、もう三年も外に出ていない。そんな私がある夜やって来た完璧すぎる容姿に悩む美女と恋に落ちた。そして彼女の妊娠をきっかけに思わぬ遠出をするはめになる。歩くだけで羨望と嫉妬の視線を集める彼女は行く先々で騒動を起こしてゆく。ようやく旅を終えた私たちの前には新しい世界が開けていた…不器用な男女の風変わりな恋物語。
(カバーの裏から抜粋)
本書は紀伊国屋の『ほんのまくら』フェアで手に入れた。そのカバー表紙は以下だ。

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『ほんのまくら』フェアは、このように最初の1行目が表紙のカバーとなっていて、タイトルと著者名が隠されている。1行目でピンと来るものを選ぶという変わったフェアで、『図書館』というキーワードに惹かれて買ってみた。この作品自体の存在はなんとなく知っていた。このタイトルと表紙ではあまり買う気はしなかったかもしれない。しかし、読んでみるとこれはこれで面白かった。

主人公は31歳の男で、アメリカの小さ目で古い図書館に住み込みで働いている。その図書館は、普通の図書館と違い、街の人が自分で書いた本が持ち込まれる。持ち込まれた本はノートに記録され、持ち込んだ人が自由に自分の本を本棚に置くことができる。そしてそれらの本がある程度たまると、どこか別の洞窟に大切に保管される。その役目(主人公で35人目か36人目)を24時間対応で担っているのが主人公となる。

持ち込まれる本、持ち込む人は実にさまざま。5年間ホテルで暮らしつつ『ホテルの部屋で、ロウソクを使って花を育てること』を書いた老婆、絵だけで描かれて言葉は1つもない5歳の著者による『ぼくの三輪車』、オートバイ狂の著者による『革の衣服と人類の歴史』、50歳の著者だが、17歳の時に書いてからずっと出版されることを望んでいた、『愛はいつも美しい』、ドストエフスキーの小説の中に出てくる献立の料理本らしい『台所のドストエフスキー』、1ポンドのベーコンのようで、フライにしていいのか棚に置いていいのか分からない若い婦人によって持ち込まれた『ベーコンの死』などなど。

ある日、もうすぐ20歳になる女によって本が持ち込まれる。その女の顔は完璧に美しく、脆そうな感じだが、体つきはそれとは別にプレイボーイに出てくるような官能的な肉体を持っている。そしてそのことが彼女の苦悩となり、持ち込んだ本が自分の体について書いた本となる。曰く『わたしは自分の体が憎いんです。わたしには大きすぎます。だれかほかの人の体なんです。わたしんじゃない』という。そんな女、ヴァイダと主人公は図書館で暮らし始め、やがてヴァイダが妊娠して、メキシコまで中絶しに行くというお話。

主人公とヴァイダの間にあまり感情の起伏がないように感じるし、なんだか淡々としている。堕胎に対して罪悪感というか、後ろめたさもあまり感じていないようだし。その反面、洞窟で本を保管する役目を持つ40歳くらいの髭でいつも半袖の男、フォスターは豪快で嫌ななことは嫌だとはっきり言ったりするし、ヴァイダを見て『こいつは驚いた、すごい別嬪さんだ!こん畜生、ここへ来てよかったぜ!』と言ったりするタイプで、主人公とは対照的だ。

主人公は3年ぶりくらいに図書館を出て、ヴァイダとメキシコに行くのだけど、その間にすれ違う人々はヴァイダに対しておかしな反応になる。特に男はみなヴァイダに反応する。主人公がトイレに行っている間に3人ほどに口説かれていたり、カフェに入って主人公との会話中に笑い出すと、その笑い声で近くの21歳くらいの青年が体中にコーヒーをこぼしてしまったり、4歳の少年は、すれ違っただけで首から上が動かなくなって、ヴァイダから目をそらそうともしなかったり。反面女からはヴァイダを見るなりとたんに嫉妬深い態度を示し、妬みでヒステリーを起こしそうだったりもする。

それが13歳くらいからずっと続いていて、こんなの耐えられないわと言っていたヴァイダ。しかし、主人公と一緒にいることでそれを徐々に克服しているようだ。

街を歩いているとついつい美女に目が引かれて見とれてしまうことがあるが、そういう人にとってはこのように感じられるのだろう・・・。反省というか少し気を付けようと思ったが、それはオスの本能的なものなのでどうにもならないと言ってみたりw

本書に共感できるタイプの人は2種類いるはず。一つは先ほど示したヴァイダのように圧倒的な美女の視点からの部分と(あるある、本当にうんざりだわ!!と共感できるかも)、もう一つは図書館に引きこもっていて、図書館の仕事が自分の人生のすべてだというような主人公の視点。僕の場合は間違いなく後者。そもそも美女じゃないし!?、何よりも図書館というところに強くひかれ、『図書館』とタイトルに持つこのようなブログをやっているのだし。

周りを翻弄するほどの圧倒的な美女と図書館に暮らしている引きこもり男の物語。不思議な感じな物語だった。二人の間にはあまり感情のやり取りがなさそうな感じだけど、お互い一緒にいるのが自然のように思われる。短い文章でテンポよく進み、2,3ページごとに節タイトルのようなものが挿入されている。不思議とページが進んでいく。

本書はハーレークインロマンス的なタイトルと表紙で大分損をしているように思われる。そもそも原題は『THE ABORTION: An Historical Romance 1966』で忠実に訳すなら『妊娠中絶―歴史的ロマンス1966年』となるし。なぜ『愛のゆくえ』となったのか少し理解に苦しむ。そもそもこの物語に愛はあったのか?単に僕が読み取れなかっただけなのかもしれないのだけど。

でも不思議と読後感は心地よく、自分の直感で選んだ本に間違いはなかった。



愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)
愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)
著者:リチャード ブローティガン
販売元:早川書房
(2002-08)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • 図書館が好きな人
  • 周りを翻弄するほどに圧倒的な美女の人
  • 引きこもり体質の人
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