November 04, 2012

マルドゥック・スクランブル [完全版]

マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)
マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)
マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)
マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

キーワード:
 冲方丁、サイバーパンク、復讐、卵、価値
冲方丁氏のサイバーパンクSF小説の完全版。以下のようなあらすじとなっている。
なぜ私なの?―賭博師シェルの奸計により少女娼婦バロットは爆炎にのまれた。瀕死の彼女を救ったのは、委任事件担当官にして万能兵器のネズミ、ウフコックだった。法的に禁止された科学技術の使用が許可されるスクランブル-09。この緊急法令により蘇ったバロットはシェルの犯罪を追うが、そこに敵の担当官ボイルドが立ち塞がる。それはかつてウフコックを濫用し、殺戮の限りを尽くした男だった。代表作の完全改稿版、始動!
(「圧縮」のカバーの裏から抜粋)
少女は戦うことを選択した。―人工皮膚をまとい、高度な電子干渉能力を得て再生したバロットにとって、ボイルドが放った5人の襲撃者も敵ではなかった。ウフコックが変身した銃を手に、驚異的な空間認識力と正確無比な射撃で次々に相手を仕留めていくバロット。しかしその表情には強大な力への陶酔があった。やがて濫用されたウフコックが彼女の手から乖離した刹那、ボイルドの圧倒的な銃撃が眼前に迫る。緊迫の第2巻!
(「燃焼」のカバーの裏から抜粋)
それでも、この世界で生きる―バロットは壮絶な闘いを経て、科学技術発祥の地“楽園”を訪れ、シェルの犯罪を裏付けるデータが、カジノに保管された4つの100万ドルチップ内にあることを知る。チップを合法的に入手すべく、ポーカー、ルーレットを制してゆくバロット。ウフコックの奪還を渇望するボイルドという虚無が迫るなか、彼女は自らの存在証明をかけて、最後の勝負ブラックジャックに挑む。喪失と再生の完結篇。
(「排気」のカバーの裏から抜粋)
初めに結論を一言で示しておこう。これはスゴ本!!以下読まなくてもいいから、全3巻、買って読め〜!!!!!ww

本書は、第1回目の早川書房しばりのスゴ本オフで存在を知った。そのときは、なんだか面白そうなSFだなという認識でしかなかった。それから半年ほど気になっていて、たまたま手持ちに本がなくて、新幹線の移動をしなくてはいけないという状況の時に、リスク回避のために1巻だけ買って読んだ。しかし、それは完全に失敗だった。一気読みして激しく続きが気になりだし、2巻購入までに悶々と過ごす羽目になってしまったので。

前置きはこれくらいにして、内容に入ろう。この物語は、虐げられていた少女の復讐の物語である。あまりよろしくないというか、崩壊した家庭環境で育った、主人公のルーン・バロット(15歳)は、家から出て施設で暮らしていた。しかし、そこでも性的虐待などの被害を受け、その施設を抜けて少女娼婦として暮らしていた。ある日賭博師シェルに買いこまれていたが、女を殺してその灰からダイヤモンドに変えて自分のものにするという、狂った性質からバロットは爆殺されそうになる。

瀕死の重傷の状態から、委任事件担当官のドクターとウフコックにより、軍事利用されていた超科学で周囲の状態を皮膚感覚で知覚できる人工皮膚を手に入れる。そしてあらゆる電子機器に干渉して操作(スナーク)できるような特殊能力を手に入れる。少女は委任事件担当官のドクターとウフコックと共に賭博師シェルを取り巻く犯罪、事件を自ら解決するためにさまざまな敵と対峙していくことになる、というお話。

この作品は自分の好きな要素がたくさん入っている。まず、戦闘美少女という要素。戦う少女の作品には、ナウシカとかエヴァとかまどか☆マギカとかいろいろあり、それらが好きなので、15歳の少女が自分の置かれた状況を受け入れて、次第に自分の意志で戦っていくというのがよかった。バロット自身は何の因果か、かなり目を背けたくなるような生い立ちで、とても普通の世界ではない状況にある。そこからだんだん戦闘能力的にも精神的にも強くなっていくのがよかった。

次は、サイバーパンク的要素。正直あまり日本のSF作家は全然読んだことがなかった。だからこの作品を読み始める前は躊躇していた。しかし、これは和製サイバーパンクとしてはあり!!だと思った。

サイバーパンク的と言っても、ニューロマンサー、マトリックス、攻殻機動隊のような電脳空間のやり取りはほとんどない。どちらかというと、高度に発達した軍事科学技術による個人戦闘の攻防がすごかった。その代表格が、ウフコックという存在。カバー表紙にある、金色のネズミが最強の白兵戦兵器となる。ネズミが兵器だと!?と思うのも普通の感覚であるが、このネズミは人間並み以上の知能を持ち、生態兵器として変身(ターン)し、あらゆる物体、銃火器、バロットの身を守る防御スーツになる。しかも、銃の場合は弾丸は無制限ときている。そのネズミのウフコックを巡って、バロットと元相棒のボイルドという巨躯の男と激しい死闘を繰り広げる。

敵も軍事兵器を身体に装備している。重力を操る能力。それで弾丸をはじいたり、壁や天井を自在に歩き回ることもできる。そして3つ目の要素ともなるが、その戦闘シーンが激しく臨場感あふれるものとなっている。自然と脳内に映像化される。これは完全版という著者の筆力によるものだろう。凡庸な作品だと、描写が脳内で再生されにくいのだけど、これは違う。もう映画を見ているようで、自分の脳を操作(スナーク)して映像を見せられているような感覚になる。(余談だけど、読んでいる途中で、夢の中にウフコックが出てきたw緑色だったけど。)

あとは、要素というか、賭博師シェルに勝つためには、シェルの経営するカジノでルーレット、ポーカー、ブラックジャックで勝って行かなくてはならないのだが、そのカジノの部分がとても面白い。ルーレットはなんとなくルールは分かる。どこに玉が落ちるかどうかを賭けるだけなのだし。しかし、ポーカー、ブラックジャックはルールを知らないとどういう状況か分かりにくい。僕はポーカーはせいぜいドラクエのカジノレベルのルールしか知らないし、ブラックジャックは全然知らなかった。それでもカジノ側のディーラーとバロット、ウフコックの超能力を駆使して攻防するシーンはルールを知らなくてもすごいことが起こっているんだなということがよく分かる。もう、これはすげぇ!!というのが率直な感想。

カジノでポーカーやブラックジャックをやりたくなってくるような、そんなスゴさ。もともと、007が好きだったり、ロバート・ハリス氏の本にもポーカーの話が出てきたりして関心があったり、しかも自分が見た夢でポーカーを教えてくれと誰かに頼んでいた状況もありw、この本でもポーカー、ブラックジャックが出てきたので、本書を読みつつポーカー、ブラックジャックを始めるべき時だという天啓なのだ!!と勝手に解釈したww

他にも、バロットに立ちふさがるいろんな敵が出てくるのだけど、やられ役のやつらでも、そこに至るまでの背景的な部分もしっかり書き込まれているのがよかった。目や髪、胸部、陰部などそれぞれ殺した人間のパーツをコレクションして、自分の体に移植して愛でるような狂った軍人上がりの敵たち。自分の記憶を取り出して外部記憶として保存している賭博師シェル、バロットと同じように軍事兵器を身にまとい、同じ化け物同士として共感しているボイルドなどなど。それらの立ちはだかる敵たちの出自などが描かれていて、物語に深みを演出している。敵をちゃんと描ける作品は映画でも小説でも良作だね。

最後の要素として、『なぜ私なの?』というテーマ性だ。全3巻を通して、なぜ自分が殺されるような状況になってしまったのか?、なぜ私が戦わなくてはならないのか?、そういう問が含まれている。それが単純なエンタメ作品に終わっていない、この作品が一線を画する大きな要素となる。そして、死闘の末に迎える結末はどこか切なさとやりきれなさが残る。

先日の早川書房 X 東京創元社スゴ本オフで、この『マルドゥック・スクランブル』を紹介したら、Dainさん曰く、スクランブル以前のお話の『マルドゥック・ヴェロシティ』のほうが面白いとのこと。ヴェロシティも読まなくてはだな。ちなみに、僕はこのスゴ本オフで他にも以下の本を紹介した。『マルドゥック・スクランブル』をリスク回避のために、1巻だけ買うということはするべきじゃない!!なぜ3巻を一気に買わなくてはならないかというと、間違いなく続きを買っておかないと後悔するから。この本は徹夜本だよ。いつも1時間あたり何ページ進んでいるかを気にするのだけど、それを気にしている余裕もなく気づいたら数百ページ進んでいる。読み始めたらページが止まらなくなるという稀有な経験をするだろう。そんな作品はめったにない。この作品を知らなかったことを悔やむくらい、そしてなぜもっと早く読んでいなかったのか!!と思うほどに面白い作品。Theスゴ本!!

なので、全3巻をまとめて買って読めぇ!!!!www



マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)
マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)
著者:冲方 丁
販売元:早川書房
(2010-10-08)
販売元:Amazon.co.jp

マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)
マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)
著者:冲方 丁
販売元:早川書房
(2010-10-08)
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マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)
マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)
著者:冲方 丁
販売元:早川書房
(2010-10-08)
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読むべき人:
  • サイバーパンク作品が好きな人
  • 徹夜するほど面白いSF小説を読みたい人
  • 自分自身の有用性を見出したい人
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