November 18, 2012

高い城の男

高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)

キーワード:
 フィリップ・K・ディック、日本、ナチス、工芸品、易
フィリップ・K・ディックのSF小説。以下のようなあらすじとなっている。
アメリカ美術工芸品商会を経営するロバート・チルダンは、通商代表部の田上信輔に平身低頭して商品の説明をしていた。ここ、サンフランシスコは、現在日本の勢力下にある。第二次大戦が枢軸国側の勝利に終わり、いまや日本とドイツの二大国家が世界を支配しているのだ--。第二次大戦の勝敗が逆転した世界を舞台に、現実と虚構との微妙なバランスを緻密な構成と迫真の筆致で書きあげた、1963年度ヒューゴー賞受賞の最高傑作。
(カバーの裏から抜粋)
舞台は1960年代で、日本とドイツが連合国に勝利し、日本とドイツがアメリカを支配下に置いている、という世界。ドイツは火星や金星など宇宙開発に進出しているが、日本はまだ宇宙に進出していない。そんな中、ドイツの首相が変わるという状況になった。このような仮想状況下で、たくさんの登場人物の思惑が織り成す群像劇が描かれている。

なんというか、この作品をうまく解説することもできないので、細かいことはもうAmazonのレビューを見たほうがいいかもしれない。個人的にはあんまりおもしろいとは思えなかった。割とすんなりとページが進んでいくのだけどね。

登場人物の視点が章ごとにころころ変わる。最初は、アメリカ人の古い美術工芸品を売るロバート・チルダンかと思われたが、そのチルダンに偽物を掴ませることになったユダヤ人のフランクに変わったと思うと、今度はそのフランクの妻、ジュリアナが出てくる。かと言えば、チルダンの取引相手の日本人の田上にも視点が変わる。さらにドイツのスパイのバイネスも登場する。

これは、表面上は主人公が不在の作品ともいえる。共通するのは、みな何か迷ったり、行動指針を決定するときに『易経』に頼っているということだ。占いの結果、卦によっていいことが起こるだろうとか、このままでは破滅だと決めつけたりする。それぞれがあまり自分で意思決定をしていない。そして、解説によると、この無生物である『易経』こそが真の主人公というようなことが書いてあった。

あとは、『高い城』の存在と『イナゴ身重く横たわる』という本の関係がある。タイトルにもなっている『高い城』というのはある小説家の住まいの通称で、その小説家が書いた、発禁にもなっている『イナゴ身重く横たわる』という作品がでてくる。この作品内では、ドイツと日本が連合国側に負けた状況が描かれている。その現実と虚構の世界の反転がこの作品の重要な要素となるようだ。

この作品が書かれた時代背景などを念頭に置いて読むと、より理解が深まっておもしろく感じるのかもしれない。正直、最後のところでこの物語の何か謎解きが行われるのかと期待していたけど、あまりなかった。いろんな登場人物の群像劇を楽しむ作品なのだろう。現実と虚構の歴史認識を持ちながら。

個人的にはカバーのデザインが好きだな。アンドロイドもね。ディック作品はどうも自分には合わないのかもしれないが、『流れよわが涙、と警官は言った』も気になるのでそのうち読むことにしよう。



高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)
著者:フィリップ・K・ディック
販売元:早川書房
(1984-07-31)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • 歴史改変SF小説が好きな人
  • 群像劇が好きな人
  • 易経に関心がある人
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