December 11, 2012

城 (新潮文庫)
城 (新潮文庫)

キーワード:
 フランツ・カフカ、城、職業、疎外、迷路
カフカの長編作品。以下のようなあらすじとなっている。
測量師のKは深い雪の中に横たわる村に到着するが、仕事を依頼された城の伯爵家からは何の連絡もない。村での生活が始まると、村長に翻弄されたり、正体不明の助手をつけられたり、はては宿屋の酒場で働く女性と同棲する羽目に陥る。しかし、神秘的な“城”は外来者Kに対して永遠にその門を開こうとしない…。職業が人間の唯一の存在形式となった現代人の疎外された姿を抉り出す。
(カバーの裏から抜粋)
フランツ・カフカの長編作品なのだけど、これが未完の作品だと知らずに読んでしまった。未完なので、最後は微妙なところで終わっている。そもそもこの作品は、カフカの遺言により燃やしておいてくれと友人に頼んでおいたものを友人が『城』とタイトルをつけて出版したものらしい。あらすじをもう少し補足すると、Kは村にある城の役人から測量師として招聘されるのだが、村に訪れると城へ入ることを許可されない。その村の村長にどういうことかと問いただしに行くと、村では別に測量師など必要とはしておらず、どうやらいつもは完璧な仕事で捌かれる事務処理のほんの手違いから、Kが間違って招聘されてしまったようだと説明される。村にはKの測量師としての仕事はなく、宿屋などを転々とし、城に入るべく様々な人物のところへ自分の要求を通そうとするが、目的をなかなか達成することができずに翻弄されるというお話。

登場人物はみな何かしらの職業を持っている。宿屋の御上、役人の長官、その秘書、従僕、学校の教師、村長、長官の使者などなど。それらはみな村の住人であり、それぞれの職業を実践している。しかし、部外者の主人公Kだけが測量師としての仕事を何も実践できずにいる。小学校での小使の職を得るが、そこでの人間関係のために、その職もまともに勤めることができないでいる。そして、この村では財産も人間関係もほとんどない中、招聘された測量師であるという事実だけがKのアイデンティティとなっている。名前も意図的にKと記号になっているしね。

Kが村にやってきて、最初のほうに出会った役人の長官の使者バルナバス、そして役人専用の宿屋で見染めたフリーダという女がKにとっての頼りになる人物として描かれている。しかし、最後のほうは、それらの人物もいろいろと思惑があって、Kを利用しようとしているらしいということが、その人物の口からではなく、第3者から語られる。それがサスペンス的で、それぞれの思惑の意図は何か?どれが真実か?と思案させられる。しかし、その意図が分かる前に、結末を迎えてしまう。

Kは結局不条理にも村に招聘され、そこで何物でもない存在になってしまい、目の前の城には入ることもできず、何処にも行き場もなく、頼れる人物も少なく、その村にはまり込んでしまう。結局読者も同じように、この物語の結末を知ることができず、それぞれの登場人物の思惑の意図も分からず、何処にもやりようのない何とも言えない気持ちだけが読了後に残り、放置されたようになる。果たしてこの物語は面白かったのか?Kはこの後どうなってしまうのか?これまでの経緯を鑑みても、どうにも心地よい結末を迎えそうにはならないということだけは予感できる。

今はVacation中なので、なんとか1週間で読了できたのだけど、このような状況でなかったら最後まで読み通せなかったかもしれない。別に文章は読みずらいということはない。案外すんなり物語は進んでいくのだけど、何もKにとってよい方向性への進展がない。そして後半は特に登場人物の会話が長い。改行なしで数十ページも続く。そういう部分に耐えて最後までたどり着けるかどうかがポイントで、暇でなければそこまで行くのは割としんどいかもしれない。物語の起伏があまりないし、読了後のカタルシスのようなものもない。

この作品を好き好んで読む人は相当の暇人か文学好きではないかなと思う。僕はたまたま前に買って積読していたので、今のタイミングなら時間を気にせず読めたから最後まで読んだというのがある。未完であるということも知らなかったし。しかし、読了してよかったのかと問われると、う〜む、物語の内容も含めて、よくわからないよ、と答えるしかない。

Amazonにある装丁はちょっと古いものだけど、新版の装丁のほうが好きかな。そのどちらもカフカの顔写真が載っているけど、何とも陰鬱な感じで、不安を誘う表情だね。カフカの物語の内容を暗示するように。

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城 (新潮文庫)
城 (新潮文庫)
著者:フランツ・カフカ
販売元:新潮社
(1971-04)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • 時間に余裕がある人
  • 袋小路にはまり込んでいる人
  • 自分の職業について考えてみたい人
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