January 20, 2013

プログラマーのジレンマ 夢と現実の狭間

プログラマーのジレンマ 夢と現実の狭間
プログラマーのジレンマ 夢と現実の狭間

キーワード:
 スコット・ローゼンバーグ、ソフトウェア、工学、プロジェクト、失敗
ソフトウェア開発プロジェクトの失敗記録が示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第0章 ソフトウエア時間
  2. 第1章 絶望
  3. 第2章 アジェンダの魂
  4. 第3章 プロトタイプとパイソン
  5. 第4章 レゴの国
  6. 第5章 犬とギークの扱い方
  7. 第6章 デザインへのこだわり
  8. 第7章 プログラマーとデザイナー
  9. 第8章 ホワイトボードと付箋]
  10. 第9章 開発手法をめぐる旅
  11. 第10章 エンジニアとアーティスト
  12. 第11章 ドッグフードへの道
  13. エピローグ 未来への掛け
(目次から抜粋)
本書は、チャンドラーというクロスプラットフォームで、オープンソースで、ピアツーピアの個人情報管理ツールで電子メールとカレンダー機能に重点を置いたソフトウェア開発記録を第3者の視点からまとめられた本となる。

チャンドラーはOASF(オープンアプリケーション財団)創立者にして元ロータスデベロップメント創立者でもある、ミッチ・ケイバーによるプロジェクトで、その開発メンバーには元マイクロソフトや初期MacOS開発者、ネットスケープ創業者のメンバーなどなど、ソフトウェア開発のエキスパートたちが集まったドリームチームという構成である。しかし、このプロジェクトは結局には失敗に終わっている。その失敗の軌跡がオンラインマガジン『サロン』の共同創設者によってウォッチされて、まとめられたものが本書となる。

ちなみに、Chandlerは以下からダウンロードできる。以下本書のまえがきから、概要が分かる部分を抜粋。
 つまり、この作品はプログラマーにも楽しんでもらいたいが、それと同じくらいに、あるいはそれ以上に、一般の人向けに書いたものである。本書は疑問を提示し、物語をかたる。なぜ良いソフトウェアを作ることがこれほど難しいのか。コンピュータ時代に入ってから五〇年たった二十一世紀初頭の現在でも、この問いに完璧に答えられる人はいないだろう、そこで、あるソフトウェアの開発物語を、実地調査にもとづいて書いてみることにした。これは、新旧さまざまな障害に行く手を阻まれ、役に立つもの、豊かなもの、永く続くものを作ろうともがきながら、ともにコードの巨石を動かし山の頂点をめざそうと挑んだ人びとの物語である。
(pp.3)
ミッチ・ケイバー自身はすでにある程度の金持ちであり、しかも資金調達などによってプロジェクトの資金は豊富にあった。メンバーもみなエキスパートばかり。作りたいものもある程度ははっきりわかっている。B to Bのシステム開発ではないので、デッドラインのように厳密な納期もない。しかし、思ったほど開発が進まなかったりする。ボトルネックになっている機能を実現できる人材がいなかったり、見積もりがあまかったり、プロジェクトの進め方が悪かったり、エンジニアリングの組織を作るのが予想以上に難しかったりとさまざまな要因により、プロジェクトは泥沼にはまっていく。

そうこうしているうちに、2005年ごろからAjaxを筆頭としたすべてWebのあちら側で何でも実現できるようなものが台頭してくる。PCのこちら側にダウンロードしてインストールするソフトであるチャンドラーの存在意義も危ぶまれてきてしまうという始末。

いわゆるSIなどの開発は競争入札によって受注できれば、開発したものがそのままお金になる。しかし、B to Cのようなある程度自由な感じのソフトウェア開発は、受注開発ではないので、リリースを急がなくては競合で似たようなものが出てきて商機を失ってしまうのだなぁということもよく分かった。

作っている物の違いはあれど、あるあるwと思う部分もたくさんあった。それと同時に、どんなにコンピューターシステムが発達しても、やはり人が作るものであるので、そこのマネジメントなどの部分がボトルネックになるのだなぁと思った。そして、そのどれらも終わってから対応策は練ることができるかもしれないが、現在進行形でそれらを回避する銀の弾丸は存在しない。なぜなら「典型的なソフトウェアプロジェクトなどない。プロジェクトは一つひとつ違う」のだから。

ソフトウェア工学的な内容も、過去の業界の偉人やエピソード、例えばブルックスの法則とかムーアの法則とかアラン・ケイによるオブジェクト指向の話とか、Texの開発者であるドナルド・クヌースの『ソフトウェアは難しい』と言った話も豊富で、ソフトウェアの話全般が割と分かりやすく示されていると思う。ただ、どうしてもマイSQLとかJavaスクリプトとかパール、パイソン、マックOSといった訳し方はいかがなものかと思う。いくら訳者がソフトウェア業界にそんなに詳しくないとしても、出版社がちゃんと技術者によるレビューをしてないことが丸わかりだなぁと。

これから何かスタートアップで開発をする人などはとても勉強になることが多いと思われる。そうでなくても、ソフトウェア開発がなぜこんなにも失敗ばかりであるのか?という参考事例として読んでみるのもよいかもしれない。
 現在のソフトウェアの壮大な構造物を引き裂き、新しいまったく違ったものに置き換えようと夢見る人がいる。人間の希望や行動の流れに柔軟に対応するプログラムや、言われたことだけをやって余計な邪魔をしないソフトウェアや、信頼できるコードにあこがれる人もいる。
 われわれはそんなものを夢見て、作ろうとする。そして混沌の闇に落ちる。
(pp.21)
やっぱり作るのは難しいね。



プログラマーのジレンマ 夢と現実の狭間
プログラマーのジレンマ 夢と現実の狭間
著者:スコット・ローゼンバーグ
販売元:日経BP社
(2009-05-21)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • ソフトウェア開発者の人
  • ソフトウェア開発がなぜ失敗するか考えたい人
  • スタートアッププロジェクトにいる人
Amazon.co.jpで『ソフトウェア』の他の本を見る

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コメント一覧

1. Posted by 図書館男子   February 18, 2013 20:59

はじめまして。
この度、相互リンクをお願いしたく書き込まさせていただきました。

当方は「よりみち図書館」という読書ブログを開設しております。小説や実用書を中心に、幅広いジャンルの本の感想をアップしております。現在では二日に一度ほどのペースで更新中です。

よろしければ、相互リンクお願いいたします。

2. Posted by Master@ブログの中の人   February 19, 2013 22:46

>>図書館男子さん

相互リンクの件了解いたしました

左のサイドバーのLinkの部分に追加させていただきました

3. Posted by 図書館男子   February 20, 2013 10:53

ありがとうございました!

今後ともよろしくお願いいたします!

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