July 06, 2013

サービスの達人たち

サービスの達人たち (新潮文庫)
サービスの達人たち (新潮文庫) [文庫]

キーワード:
 野地秩嘉、サービス、プロフェッショナル、人、都市
さまざまな職業のサービスのプロフェッショナルが紹介されている本。以下のような目次となっている。
  1. ロールスロイスを売り続ける男
  2. 東京っ子が通う「並天丼」の魅力
  3. ナタリー・ウッドの背中を流したかった
  4. チーフブレンダーの技と素顔
  5. 伝説のゲイバー、接客の真髄
  6. 命懸けで届けた被災地への電報
  7. 銀座より新宿を愛したナンバーワン・ホステス
  8. 「怪物」と呼ばれた興行師
  9. ヘップバーンも虜にした靴磨き
(目次から抜粋)
なんとなく本屋でバーテンダーの表紙とタイトルに惹かれて買って読んでみた。サービスのプロフェッショナルとしてバーテンダーは出てこないのだけど。

本書は平成11年に出版されたものが文庫本になっているもので、著者がそれぞれのサービスのプロフェッショナル達に会って話を聞き、それぞれの人物の生い立ちからその職業につくまで、そしてその仕事ならではのエピソードなどが著者の視点から示されている。

この本はなかなか面白かったね。世の中にはいろんな職業があって、それぞれが仕事にこだわりや哲学を持っておられるのだなぁと。しかし、今ではもう廃れてしまった職業もある。例えば、『ナタリー・ウッドの背中を流したかった』で紹介されているのは、まだ1家に風呂が完全に普及していない昭和の時代の銭湯で客の背中を流す『流し』と言われる職業だ。全盛期には1日100人をこなし、歩合制のため同じ年のサラリーマンの年収の5倍から10倍までになったらしい。へーと思った。

また、他にも廃れてきたものとしては『電報』もある。今では電報は母の日や父の日などプレゼントのような役割になっているが、昭和の時代では通信のかなめとして活躍していたらしい。電報は急いで配達しなくてはいけないという特性上、自転車をゆっくり走らせていたらダメらしい。そんなときに電報配達員に対して、すし屋、ラーメン屋、八百屋や酒屋などの足に覚えのある自転車配達員が街でロードレースの勝負をかけてくるらしいwwこれはなんか想像したら面白かった。漫画みたいだなぁと。

他にもゲイバーやホステス、興行師の話は自分の知らない世界であり、とても興味深く思えた。これらもどちらかというと廃れていった職業となる。

逆に今でもある職業としては、ロールスロイスの営業とウイスキーのチーフブレンダ―がある。特にこの二人の話が興味深く読めた。例えば、安くても1台2,200万円ほどするロールスロイスを売る飯島氏はセールスマンとして以下の点が優れているらしい。
  1. 商品の情報に強いこと
  2. 客との距離をうまく取っていること
  3. 長い目で仕事をしていること
1は説明はいらないが、2はどういうことかというと、ロールスロイスなどの高級車を買いに来る客を相手にして付き合うようになると、自分も羽振りが良くなったように錯覚し、個人で仕事を請け負っていくうちに、負債を背負ったりトラブルを起こしてしまって消えていくらしい。だから、そうならないためにも節度を保ちながら客と付き合わなくてはいけないようだ。

またウイスキーのチーフブレンダ―、稲富氏はサントリー山崎の蒸留所に所属している。そこで筆者とワインのソムリエとチーフブレンダ―はどちらが利き酒の能力が高いかという話になる。曰く、稲富氏はワインのソムリエで大切なのは利き酒能力ではなく、お客さんを見る目なんじゃないかと。そして筆者がブレンダーは人間を見る能力はいらないのか?という問い、それに対する稲富氏の以下の回答がとても参考になった。
「そうだ、そうだね。一人ひとりの顔を見ることじゃないけれど、ウイスキーを飲む人の顔を思い浮かべるというのがイメージの造形に役立つかもしれない。新しい酒を造ろう、造ろうと製品の方にばかり目がいっても駄目だ。ああ、そうだ、人間を見て、人間を面白がることがイメージをつくるのに一番いい、かもしれないなぁ。」
(pp.78)
これはシステム開発業でも同じだねと思った。技術偏重になり過ぎると、結局サービス享受者であるお客様の本来望んでいるものを実現できなくなるからね。

あと、最後に一つ面白い表現で興行師の定義が示されていた部分があったので、そこを引用しておきたい。
 では最後に、興行師というものの定義をしてみようか。両手に食パンを持って立っている男を思い浮かべてごらん。そいつが興行師の正体だよ。なかにはさむものでサンドイッチの値段は違ってくる。はさむものは何でもいいんだ。アイデアや夢をはさむんだ。はさんでいるものを見ればそいつの頭の中身がわかる。興行師の仕事とは何をはさむのかを考えることなんだ」
(pp.187)
ここはいいね!と思った。

サービス提供者としてのマインドを持てというようなことを上司などから言われたりする。そういうときに、他の職業のプロフェッショナルな働き方を知るのはとても参考になった。内容もとても面白かったし。



サービスの達人たち (新潮文庫)
サービスの達人たち (新潮文庫) [文庫]
著者:野地 秩嘉
出版:新潮社
(2008-10-28)

読むべき人:
  • サービス業の人
  • プロフェッショナルになりたい人
  • 自分の職業について考えたい人
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