August 11, 2013

レインツリーの国

キーワード:
 有川浩、障害、関係、歓喜、言葉
恋愛もの小説。以下のようなあらすじとなっている。
きっかけは「忘れられない本」。そこから始まったメールの交換。共通の趣味を持つ二人が接近するのに、それほど時間はかからなかった。まして、ネット内時間は流れが速い。僕は、あっという間に、どうしても彼女に会いたいと思うようになっていた。だが、彼女はどうしても会えないと言う。かたくなに会うのを拒む彼女には、そう主張せざるを得ない、ある理由があった――。
(カバーの裏から抜粋)
毎年恒例の夏の文庫フェアが各社によっていろいろと展開されている。その中で、新潮社は『ワタシの一行』というものをやっている。西新宿のブックファーストでは、フェアの本をテーマごとにジャンル分けしていて、確か『恋愛』ジャンルにあったこの本を買った。ちなみに脚本家の岡田惠和氏による『ワタシの一行』は以下となる。岡田惠和氏の選んだ一行に魅かれて、この本を読むことに決めた。

主人公は社会人3年目くらいの20代半ばの男性、伸行。ある日自分が昔読んだライトノベルのラストの終り方に納得がいってなくて、他の人はそれをどう思っているのだろう?と気になってネットで検索する。そしたら20代半ばのひとみという名の女性が運営する『レインツリーの国』という読んだ本の感想が書かれているブログにたどり着く。伸行からメールを送り、そして、だんだん仲良くなっていくうちに、実際に会うことになる。しかし、ひとみには聴覚障害があることを伸行は知ることになって・・・。

あまり内容について言及するのはよろしくはないが、健聴者と聴覚障害者の関係が描かれている。正直はたから見ていると、めんどくさい関係だなと思う。いろいろと気を使ったり、気を使わせたり、障害者特有の『どうせ健常者には自分のことはわからないでしょ!!』といったコンプレックスのような心情描写が多くあった。僕も健康体ではないのでそういう部分に共感しつつも、伸行視点からのひとみへのツッコミもなるほど、そういう観点もあるのだなと思った。

あとがきには著者は別に障害そのものをテーマとして描きたかったわけではなく、以下のように示されている。
 私が書きたかったのは『障害者の話』ではなく、『恋の話』です。ただヒロインが聴覚のハンデを持っているだけの。
(pp.226)
なので、あまり斜めに考えずにメールのやり取りから始まる二人の恋愛模様を堪能するのがいいね。もちろん、聴覚障害者の描写も自分の知らないことだらけで勉強になる部分も多いし。

ひとみと同じような本の感想をブログに書いている身としては、こういうネットワーク越しから始まる関係がとてもいいなぁと思った。このブログを8年やっているけど、そういうのは残念ながらなかった(笑)。でも、間接的にブログ経由でリアルで知り合いになった人は、結構多かったりするね。

『ワタシの一行』フェアは、自分で投稿もできる。僕が選んだ部分は以下(投稿には100字制限があるのだけど、その前後もいいね!と思ったので、そこも含めて引用)。
 どうしてひとみの言葉がこれほど好きなのか分かった。
 彼女は――彼女たちは、耳が不自由な分だけ、言葉をとても大事にしているのだ。第一言語として自分たちに遺された言葉を。その言葉を大事に使って、真摯に理屈を組み立てる。
 だから伸行はひとみの言葉に魅かれるのだ。あれほど真摯に使われる言葉はまたとないからだ。自分と似ていて少し違う心地よさ――それは、ひとみが言葉の限りある愛おしさを知っているからだ。
 その言葉で大切な思い出の本を語られたら、魅かれない奴はいないだろう。
(pp.184)
ここが一番魅かれる部分だった。これはやはり、僕もひとみと同じように、本の感想を綴っているから。僕は別に聴覚障害があるわけでもないけど、それでも話すのは得意ではないし、書く方がどう考えても自分の伝えたいことが伝えられるような気がしている。だから、書き言葉はそれなりに意図的に選んでいる。

それでも、自分が書いている言葉にネットワーク越しのどこかの誰かを魅了するような言葉づかい、真摯さなどが果たしてあるのだろうか?とも考えた。もともと読者を意識していないし、自分だけの記録として始めたブログなのだけど、それでも、自分がよかったと思える本をもっと共有できたらいいなとも思った。

とても読みやすく、どろどろもしていないので、割と読後感はよかった。なんだかこういう小説を久しぶりに読んだ気がする。それまでは変な、というか、読みにくかったりやたらと人が死んだりするものが多かったので・・・。夏の文庫フェアにぴったりのテーマと爽快感のように思えた。そして、いつか素敵な女性からメールが来ないものかと淡い期待を抱かせてくれるのであった(笑)




読むべき人:
  • 夏っぽい本を読みたい人
  • 読書ブログを運営している人
  • 障害のある人
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