November 03, 2013

都市と都市

キーワード:
 チャイナ・ミエヴィル、警察、都市、考古学、ブリーチ
SF小説。以下のようなあらすじとなっている。
ふたつの都市国家“ベジェル”と“ウル・コーマ”は、欧州において地理的にほぼ同じ位置を占めるモザイク状に組み合わさった特殊な領土を有していた。ベジェル警察のティアドール・ボルル警部補は、二国間で起こった不可解な殺人事件を追ううちに、封印された歴史に足を踏み入れていく…。ディック‐カフカ的異世界を構築し、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞をはじめ、SF/ファンタジイ主要各賞を独占した驚愕の小説。
(カバーの裏から抜粋)
本屋で帯付きで平積されていたのが気になっていた。その帯には『カズオ・イシグロ絶賛!!』と。あらすじを見ると、『ディック‐カフカ的異世界を構築し、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞をはじめ、SF/ファンタジイ主要各賞を独占した驚愕の小説。』とある。そして買った。スゴ本だった。

さわりだけほんの少し示しておこう。

舞台はバルカン半島にあると想定される架空の都市国家、べジェルとウル・コーマ。時代設定はiPod、スターバックスなどが存在する2010年前後。その2国はかつて分断され、2度ほど戦争があったらしいが、現在は友好関係を築いている。しかし、入り組んだ作りとなっている2都市の境界線上付近では、人々は相手国の人や建物を<見ない>ようにしなくてはいけない。もしそれをやってしまうと<ブリーチ>となる。許可された以外の場所で国境を超えることも<ブリーチ>となり、<ブリーチ>という2国間の超法規的で絶大な権力組織に捕らえられてしまう。

あるとき、べジェル側で若い女性の死体が発見された。その事件担当となった過激犯罪課のボルル警部補はその女性の死の真相を追うことになる。べジェル側で殺されたのか?その女性はいったいなぜ殺されたのか?事件の真相を少しずつ追うごとに2国間の歴史、統一をもくろむ集団たちの存在、2国間の間に存在するとされる寓話のさらなる都市の謎などが複雑に絡み合っていく。

表面上はSFではなくて、警察ミステリー小説なのだけど、この作品の何がスゴイかというと、架空の都市国家2つの緻密な設定、世界観としか言いようがない。2つの国の言語、べジェルはべジェル語、ウル・コーマはイリット語となっていたり、通貨も異なり、それぞれ身につけている服も異なる(着てよいものは規定されていて、それに違反すると<ブリーチ>)。考古学的な話も出てきて、2国間の分断前の遺跡からの出土品、<原形(ルート)>があるとか、さらには架空のアーティストやウル・コーマ風のお茶が出てきたりする。

そして、本作品のSF要素としての2国間の様子を表す<完全>な部分(相手国が見えない完全に自国の領土)、<異質>(完全に相手国の領土)、<クロスハッチ>(おそらく2国間の国境)、そしてどちらの領土とも確定していない<紛争地区>(括弧の説明は僕の解釈。どこにもそれらの説明が詳しく出てこないので。)があり、さらに<ブリーチ>という権力装置による2国間の監視がアクセントとなっている。

うまく言えないのだけど、舞台設定、そこでの2都市の文化、経済、政治もすべて架空なはずなのに、それが本当に存在するかのような細かい設定、描写が多く、SFであることを忘れるようなミステリー仕立ての作品となっている。さらに<ブリーチ>までもが本当にあり得るように思えてくる。そしてミステリーとしても犯人は誰でなぜ女性が殺されたのか?という謎がどんどん深まりつつ、2都市の構造、謎の権力組織<ブリーチ>も絡み合って続きが激しく気になっていく作品だった。

しかし、500ページ程の作品でページ数をあまり気にせずに読み進められる反面、集中して読めるのは1日3章、約60ページくらいでもある。舞台設定の描写が多く、その2都市間の舞台そのもの、つまり『都市』に関心がないと合わないかもしれない。また、Amazonのレビューにあるように、翻訳がよろしくないようだ。最初のほうはあまり気にならなかったのだけど、特にクライマックスあたりから会話の描写があれ?と思うような、一読しただけではよく分からない部分があったりする。最後の話は入り組んだ謎解明の部分なのだけど、純粋に日本語が変というか。

それでも久しぶりに続きが気になる!!っていう作品だった。こういうのは今まであまり読んだことがないほどで、スゴ本と断言してもいいだろう。ミステリー好きで特殊な都市の舞台設定、考古学、そしてディストピアSFによくある監視組織などが出てくる物語が好きな人は読んでおいて損はない。



都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)
チャイナ・ミエヴィル
早川書房
2011-12-20

読むべき人:
  • ミステリー作品が好きな人
  • 架空の緻密な舞台設定を楽しみたい人
  • 都市が好きな人
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1. チャイナ・ミエヴィル 「都市と都市」  [ 海へ出るつもりじゃなかった ]   September 14, 2014 17:48

チャイナ・ミエヴィル 「都市と都市」ハヤカワ文庫 読み終わりました。 あー、面白かった! さすが ヒューゴー賞 世界幻想文学大賞 ローカス賞 クラーク賞 英国SF協会賞 受賞作 という感じ。 物語は、ペジェルのローラースケート場に捨てられた若い

コメント一覧

1. Posted by Sima   September 11, 2014 20:14

はじめまして。
チャイナ・ミエヴィルという名前。
なんとなーく記憶にあるかも…
と思いながら、
面白そうな本だなと思ってました。
どうも
チャイナ・ミーヴィルとして
知ってた作家っぽいですね。
「キング・ラット」って本が非常にエグ面白かったです。是非こっちの本も読んでみたいです。

2. Posted by Master@中の人   September 12, 2014 22:34

>>Simaさん

コメントありがとうございます。
「キング・ラット」、チェックしてみます☆エグイの苦手ですがw

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