December 08, 2013

日本語の練習問題

キーワード:
 出口汪、日本語、論理力、感性、訓練
受験界のカリスマ現代文講師による日本語の練習問題本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 敬語で誰にでも好かれる人になる
  2. 第2章 主語と述語を「正しく」把握する
  3. 第3章 接続語で文脈力を鍛える
  4. 第4章 感情や意思を伝える表現を身につける
  5. 第5章 五感を言葉に取り入れて表現する
  6. 第6章 擬音語や比喩を使いこなす練習問題
  7. 第7章 総合問題
(目次から抜粋)
著者である出口氏は、大学受験の現代文カリスマ講師として有名で、参考書などでお世話になった人も多いと思います。僕も中学時代の高校受験のころに、初めて著者の読解トレーニングの問題集を買ってやりました。そのときに論理的に読解する基礎の基礎を身につけられたと思います。

著者によれば正しい日本語を使えない人が増加傾向にあり、そして日本語の乱れはそのまま国力の低下を招き、政治の乱れ、果ては日本の危機に陥ると危惧されております。そのため、それぞれ個人が論理力や感性を磨き、正しい日本語、そして美しい日本語を身につけ、より充実した輝く人生を送ってほしいという願いからこの日本語の練習問題が書かれているようです。

日本語の乱れの原因は日本語の構造を理解していないことと日本語の練習問題を行っていないことによるようです。そのため、日本語の構造を理解するには、「正しい日本語(論理語)」と「感性」の二つが重要となり、さらに美しい日本語で書かれた「名文」を読み、日本語の「練習問題」を解く訓練を行えばよいという主張から、問題集形式の本となっております。

僕はそれなりに読書量があるほうなので、正しい日本語を理解している、そして書けていると思っておりましたが、本書を読んでみた結果、それは思い込みに過ぎないと痛感しました。実際に敬語や主語述語、接続詞や助動詞などの問題を解いてみると、案外間違えるものがありました。正しい日本語を文法と言い換えてもよいと思いますが、正しい文法を身につけていないと、正確に読むことはできないということを、以前TOEICのトレーニングで実感しました。

TOEICなどの英語のリーディング問題は、文法が正確に理解できていないと文章問題がさっぱり分からないということになります。逆に文法が分かってくると、速く正確に読めるようになっていくのを実感しました。翻って日本語は、日本人にとっては母国語なので、一見読むことはそんなに難しくないかもしれません。しかし、実際に問題形式で自分の論理力と感性を試してみると、案外自分勝手に読んでいたのだなということに気付かされました。よって、本書のように問題形式である、というのはとてもよかったと思いました。

本書の前半はどちらかというと論理力、文脈力を鍛える問題となっており、後半は感性を磨くための詩や俳句、短歌、オノマトペを用いられた短編作品からの出題がありました。感性問題は論理力問題よりもさらに間違えているものが多く、まだまだ自分の感性も磨く余地がたくさん残されているなと思いました。

なぜ感性を磨くことが重要なのかが端的に示されている部分があるので、引用したいと思います。
 感性を磨くことは、人間や自然、社会に対して、深い洞察力を抱くことに他なりません。ものを見る深さ、鋭さが異なってくるのです。それはその人の人間力、魅力と密接に関わります。表面的な捉え方しかできず、手垢にまみれた言葉で通り一遍の感情を露わにするだけの人間に、私たちはどうしても人間としての深みを感じることはできません。
 豊かな感性は、凡庸な世界を絶えず瑞々しいものへと再構成します。そうした感性を抱いた人間が魅力的でないはずがありません。
(pp.115)
感性を磨く問題として石川啄木の短歌や中原中也の詩、梶井基次郎の短編などが多く取り上げられておりました。最近は翻訳された海外の文学作品、SF小説ばかりを読んでいたので、瑞々しい日本語が自分の中に逆輸入されたような、そんな新鮮さを実感しました。このような感性を磨くような詩、俳句、短歌などにはあまり触れてこなかったので、もう少し美しい日本語で書かれた、名文と評されるような日本文学も読んでいきたいと思いました。

あと、個人的な持論で何度かこのブログで書いたことがありますが、論理力と感性をしっかり持つ、日本語運用能力の高さがそのままプログラミング能力にも正の相関があると思っております。論理力はそのまま条件分岐、ループ処理によって構成された関数、メソッドの理解につながり、まはたクラス、インタフェース、オブジェクト間のやりとり、フレームワークを駆使した設計の全体像の把握の基礎となるのは間違いないでしょう。

感性に関しては、コードの見た目の美しさ、冗長な記述にならないような、つまり保守性につながるはずです。それらの影響はきっとITの分野だけにとどまらないはずです。よって、自分の仕事の能力の基礎の向上を目指して、正しい日本語、美しい日本語の習得が必要なのではないかと思います。

もっと日本語の練習問題を解いて訓練したいと思いましたので、これを機にシリーズ化してくれると嬉しいです。Amazonを見ると『教科書では教えてくれない日本の名作』、『「太宰」で鍛える日本語力』などもあるので、こちらも読んでみたいと思います。

最後になりますが、本書のあとがきを読んで、なぜこの本が書かれたのかがよく分かりました。本書で示されている問題そのものはそこまで難しくはありませんが、そこには出口氏の強い願いがあったからのようです。その願いのために、一切の手抜きも妥協もなく、全身全霊をかけて仕上げたとあり、胸を打たれました。その部分は買って読んでみることをお勧めします。

正しい日本語、美しい日本語を身につけて充実した人生を送りたい人は、ぜひ読んでみてください。



日本語の練習問題
出口 汪
サンマーク出版
2013-11-19

読むべき人:
  • 論理力と感性を試してみたい人
  • 仕事ができるようになりたい人
  • 充実した人生を送りたい人
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