December 19, 2013

塵に訊け!

キーワード:
 ジョン・ファンテ、作家、青春、熱量、黄金
アメリカ人作家、ジョン・ファンテの小説。

舞台はロサンジェルスで、主人公アルトゥーロ・パンディーニはイタリア系のアメリカ人でコロラド州からやってきて安ホテルに滞在して小説を書いている。パンディーニは20歳の女も知らない駆け出しの作家で、過去に一度短編「子犬が笑った」という犬が出てこない作品が文芸誌に載ったことがある。金もあまりない状態で、近くのカフェバーで出会ったメキシコ人のカミラという女に惚れるが、反発し合ったりする中で途中でカリフォルニアの大震災が起こったり、年上の老いはじめた女から見染められたりしつつもなんとか小説を書いて生計を立てているというお話。

主人公のパンディーニは惚れた女に電報で詩のラブレターを送ってみたり、そうかと思えば履いている靴をダメだししたり、自分の作品が載った雑誌を渡してみても破られたり、海で一緒に泳いだあと、うまくできなかったのだけど、あのときやろうと思えばやれたんだ!!と後悔とともに毒づいてみたりしているw

また、パンディーニの一人称によって、パンディーニの大げさなくらいの喜怒哀楽がよく分かる。書いている初めての小説が永遠の名作になるかもしれないと思い込んでいたり、契約が決まった後に鏡の前で拳をふって、諸君、偉大な作家を見てみろ!と言っていたりする。現実にそういう人が身近にいたら若干アレな人かと思われるのだけど、パンディーニ視点を通した間接的な経験から、不思議とそういう自分を信じぬいていくエネルギーのようなものを得た気がする。

まえがきに本作品の著者であるジョン・ファンテを敬愛するチャールズ・ブコウスキーという作家が『あとはこの本を読んでくれ!』と示している。特にその想いが語られている部分を引用しておこう。チャールズ・ブコウスキーが若いころ、作家になろうとして図書館で本を読み漁っていた時の部分。
 俺は大部屋を歩き回り、書架から本を引っ張り出して数行読み、数ページ読み、また戻した。
 そしてある日、俺はある本を取り出して開き、これは、と思った。立ったまましばらく読み続けた。それから、まるでゴミ溜めで黄金を見つけたように、その本を机まで持っていった。文章はページの上を軽快にうねり、流れていた。力のある行が次々と続いた。文章の中身そのものが、ページに形を与えていた。まるで、何かがそこに刻み出されているという感じだった。とうとう目の前に、感情を恐れない男が表れた。ユーモアと痛みが、素晴らしい簡潔さで表現されていた。俺にとって、この本の出だしは野蛮で強烈な奇跡だった。
(pp.4-5)
読みたくなったでしょう?僕は、読んでよかったよ。割と好きな作品だなと思った。また、主人公と同じ20歳くらいの人が読むともっと共感できると思う。

凄く面白いというタイプの作品ではないのだけど、どこか若さゆえの自分自身の過大評価と現実に置かれた状況のギャップに悩みつつも自分を誇示して何かになろうとする、そんなエネルギーが満ち溢れているような感じだった。

ジョン・ファンテの作品では、同じ主人公の『春まで待て、パンディーニ』というものがあるらしいが、まだ翻訳されていないようだ。これも気になるので、そのうち翻訳されるのを気長に待とう。



塵に訊け!
ジョン ファンテ
DHC
2002-10

読むべき人:
  • 20歳くらいの人
  • 精神的な若さを取り戻したい人
  • 小説家になりたい人
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