December 23, 2013

なんのための仕事?

キーワード:
 西村佳哲、仕事、デザイン、対話、出会い
働き方研究家による仕事についての考えやインタビューが示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 自分は
  2. 第2章 なんのために働くのか
  3. 第3章 出会いを形に
(目次から抜粋)
この目次だけでは本書の全体像が把握できないので、概要を補足しておこう。本書の執筆当初は副題として「デザインを通じて考える”仕事”のあり方」だったようだ。デザインは著者の専門分野で、大学でデザイン教育もやっており、「デザインってこんな仕事なんですよ」という紹介をしようとされていたらしい。しかし、執筆開始後に3.11の東日本大震災が起こった。

仕事を通して自分の居場所を感じられるようになりたいと思う人が多いが、実際には行政や企業には意味が感じられない仕事も少なからずあったりする。そこで、デザインを一つのモチーフに仕事のあり方をめぐって一種の告発をしたい気持ちがあったらしい。しかし、震災以後にそういう憤りの気持ちもなくなって、”デザイン”ではなく、自分自身のことを示さなくてはいけないと思い、著者がどんな仕事をしてきたか?、その中でいったい何を大切にしてきたのか?を自分自身に問いかけることから本書は始まっている。

今年は自分の仕事について考えるということを一つのテーマとしてきた。なので、今年は同著者の本を何冊か読んできた。著者が自分自身に問いかけた二つのことは、奈良県立図書館で開催された「『自分の仕事』を考える3日間」というフォーラムでの問いと同じとなる。よって、第1章は著者自身の話ではあるが、2章以降は以前取り上げた上記3冊と似た構成で、著者の知り合いのインタビューがメインとなっている。前作と違うのは、インタビューで取り上げられている人はみなモノづくりやデザイン系の人ばかりだということだ。そこは本書の当初のコンセプトに従っているのかもしれない。

インタビューされている人は、デザインスクールを作った人、元アップル本社のデザイナーだったが、京都でカフェを自作した人、ソニーなどのメーカーでプロダクトデザインをしていたが、保育園のスタッフとなり、保育園の本棚、ベンチから保育園全体をデザインする人だったり、新潟を拠点として友人同士でデザイン会社を作った人など。

著者がなぜデザインの仕事をするに至ったのかという部分が参考になった。高校生くらいから個人やサークルが作った映画上映会に通い、次第にそこの仕事を手伝ったりするようになる。そこで出会った「自分で考えたことをやる」、「好き好んで働いている人」たちに触発されて、美大のデザイン科に進学する。そして、就職してから30歳くらいに独立され、今では本などを書く仕事、大学で教える仕事、ワークショップ的な場づくり、デザインやモノづくりの仕事を手掛けられているようだ。前作までこの著者の経緯があまり示されていなかったので、分かってよかった。

著者の仕事観が示されている部分がある。著者の奥さんと二人で独立して3年たったころに友人に語ったこととして、以下のように示されている。
「仕事っていうのは興味があることに取り組めて、一緒に働いてみたい人と経験を共有出来て、上手くいけばお金ももらえる。自分のためのプレゼントのようなものだと思う」
(pp.021)
へーと思った。プレゼントなんだって。プレゼントというものはもらってうれしいものだったりするからね。仕事はそういうポジティブな面が多いという捉えられ方だなぁと。自分の興味があることではないと、こうは考えられないだろうなぁと思った。嫌な仕事、興味がない仕事だときっと苦行になってしまうだろうね。

本書のようなデザイン業界に限らず、世の中にどういう仕事があって、その仕事になぜ就いたのか?そして何を意識して仕事をされているのだろうか?ということに関心があったりする。別に隣の芝は青い、羨ましいということではなく、単なる好奇心と自分の仕事にも共通する部分はあるのかということや、自分の仕事にも活かせることはないかなと期待して読んだりする。本書はデザイン、モノづくりという観点から割と似た部分もあったし、全く違うなぁと思ったりする部分もあった。

何というか、自分の日々の仕事に追われていると、職業上の慣習、会社風土、自分の今までの経験などにとらわれすぎて、視野が狭くなったりする。そういうときにふと仕事ってなんだ?と考えたりして、堂々巡りをしたりして、嫌になったり苦しくなっていくこともある。そういう時に一歩引いて、視野を広げて他の業界、人、働き方を参考にすると、そんなに気負わなくてもいいし、いざとなったらその仕事を辞めて他のこともできるんじゃないかと思えるし、仕事をしていくうえでのヒントが得られたりもするんじゃないかなと思った。



なんのための仕事?
西村 佳哲
河出書房新社
2012-04-24

読むべき人:
  • デザインの仕事をしている人
  • デザイン系の仕事をしたい就活中の人
  • 自分の働き方を考えたい人
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