December 26, 2013

ぼくは猟師になった

キーワード:
 千松信也、猟師、山、命、生きる
猟師となった著者による猟師を始めてみました、というような本。概要は以下となる。
木についた傷や足跡からシカやイノシシの気配を探る。網をしかけ、カモやスズメをとる。手製のワナをつくる。かかった獲物にとどめをさし、自らさばき、余すところなく食べ尽くす――。33歳ワナ猟師の日常は、生命への驚きと生きることの発見に満ちている。猟の仕方、獲物のさばき方から、日々自然と向き合う中で考えたことまで。京都の山から生を見つめた若者猟師の等身大の記録。
(カバーの裏から抜粋)
著者の本業は運送会社の仕事ではあるが、京都の山のふもとのアトリエのような家に住みながら、山に行ってはワナを仕掛けてイノシシやシカを獲って自分でさばいて食べたりする。そんな著者によって、具体的な動物の捕獲方法、猟師になったきっかけ、なり方、さばきかた、調理法まで写真、図解付きで示されている。

著者はプロの猟師ではなく、獲った獣肉をどこかに卸して販売しているわけではない。「自分で食べる肉は自分で責任をもって調達する」ために猟をされているので、本業の運送会社の仕事の合間にワナを仕掛けに行って猟をしているようだ。ではなんでそもそも猟師になろうと思ったのか?そこが一番個人的には気になるところだった。

著者は子どものころから虫や小動物を飼っており、将来は獣医になろうと思っていたらしい。しかし、大学受験の直前に車にはねられた猫を見かけてから、獣医は向いてないと進路を変更する。そのときに柳田國男の『妖怪談義』で自然とのかかわり方に興味を持ち、京都大学の文学部に進学することになる。

そこからすぐに猟師になるわけではなく、大学を4年休学して世界を放浪して帰ってきた後に生活費を稼ぐために運送会社のアルバイトを始める。そこの従業員で現役の猟師の人がいて、中学のころから猟にも興味があったので、話を聞くうちに関心が増し、実際に狩猟免許を取得し、山の近くの家に住んで猟を始められたようだ。

プロの猟師ではないと自認していることもあり、趣味みたいなものかなと思った。なので、本書を読んでいると狩猟そのものやイノシシ、シカの解体などに論点、考えが行きがちなのだけど、個人的には本業とは別に好きなことをされていて、なんだかとてもうらやましいなぁと思ったのが一番大きい。なんだかとても楽しそうだなと。もちろん、イノシシに襲われて怪我をしたりする危険性もあるし、さばくのも一苦労らしいのだけどね。

散弾銃ではなく、ワナをしかけて獲物をとるワナ猟が著者の専門で、山での獲物はシカ、イノシイがメインで、水田では鴨やスズメを獲る。休猟期の春先には山でワラビやフキノトウなどの山菜を取り、桜やクワなどの実を使って果実酒を作ったり、夏には渓流でアユ、イワナを獲り、琵琶湖ではコアユを獲り、別の川でウナギを獲って食べたりする。なんとも贅沢な食生活だなぁと思った。もちろん、自分で獲るという仕事、労力が発生するのだけど、自分で獲って自分で食べる醍醐味がふんだんに示されている。

写真付きでシカとイノシイの解体の様子が示されている。逆さにつるされて、体を裂かれて内臓が飛び出していたり、頭部などをノコギリで切ったり。ナイフが刺さっている状態の写真もあって、やはり少しは残酷だなと思う。しかし、それが小分けに解体された肉塊になっていく写真を見ると、自然と残酷さは消えて、おいしそうという感覚が勝っているのに気づく。イノシシの牡丹鍋やばら肉のベーコンの写真は本当においしそうで、食べたくなってくる。

狩猟は残酷か?』という節に著者の考えが示されているので、一部抜粋。
 動物の肉を食べるということは、かなりの労力を費やす一大事です。ありきたりな意見ですが、スーパーでパック詰めの肉が売られているのを当然と思い、その肉にかけられた労力を想像しなくなっている状況はおかしいと思います。誰かが育てて、誰かがその命を奪い、解体して肉にしているのです。狩猟は残酷だと言う人がよくいますが、その動物に思いをはせず、お金だけを払い買って食べることも、僕からしたら残酷だと思います。
 自分で命を奪った以上、なるべく無駄なくおいしくその肉を食べることがその動物に対する礼儀であり、供養になると僕は考えています。だからこそ、解体も手を抜かず、丁寧にやります。獲れた肉をなるべくおいしく食べられるように工夫もします。
 なにより自分でこれだけ手をかけた肉は本当においしいです。こんなにうまい肉が一晩でこんなに大量に手に入るなんて、狩猟以外ではあり得ないことです。ちなみにイノシシの肉は買えば100グラム千円以上する場合もあります。
(pp.107,112)
無駄なく使えるものはすべて使うというのは終始一貫されており、動物の皮をなめしてバッグまで自作されていたりする。残酷かどうかは、実際に自分で獲ってさばいてみるということをやってみないと何とも言えないものだなと思った。いつか機会があれば、僕も実際に獲ってさばいて食べてみるという経験をしてみたいと思った。そしたら本質的に食べて生きていくとはどういうことか?がより経験的に腑に落ちるのかもしれない。

本書はスゴ本オフの『山』のテーマの時に頂いた。読む前は狩猟については漫画とかテレビの世界でしか知らずに、残酷なイメージが多かったのだけど、残酷さだけが狩猟の本質ではないのだなということがよく分かった。

また、本書は様々な観点から興味深く読める。例えば、動物そのものの命、食べること(グルメ)、山(自然)、仕事、生き方、豊かさとは?などなど。個人的にはやはり『食べる』、『生き方』という観点から興味深くかつ面白く読めた。




読むべき人:
  • 狩猟に関心がある人
  • 好きなことをして生きたい人
  • 食べること、生きることを考えたい人
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