May 18, 2014

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

キーワード:
 カレン・フェラン、コンサル、戦略系、ビジネス、人
経営コンサルタントによる懺悔録のようなコンサルティングビジネスの実情を暴いた本。以下のような目次となっている。
  1. はじめに 御社をつぶしたのは私です
  2. Introduction 大手ファームは無意味なことばかりさせている
  3. 第1章 「戦略計画」は何の役にも立たない
  4. 第2章 「最適化プロセス」は机上の空論
  5. 第3章 「数値目標」が組織を振り回す
  6. 第4章 「業績管理システム」で士気はガタ落ち
  7. 第5章 「マネジメントモデル」なんていらない
  8. 第6章 「人材開発プログラム」には絶対に参加するな
  9. 第7章 「リーダーシップ開発」で食べている人たち
  10. 第8章 「ベストプラクティス」は“奇跡"のダイエット食品
(目次から抜粋)
著者は米国で戦略系と言われるようなコンサルティングファームや事業会社を経て、30年のコンサルティング経験がある人で、その過去のコンサルティングで、結果的に会社をつぶしてしまうようなこともあったとある。要約すると、大体は以下のようなエピソードになる。

いわゆる優秀な大学を卒業した入社1,2年目で何もビジネス経験やクライアント先の業務知識、実務経験のないコンサルタントがビジネスプロセスリエンジニアリングのために派遣されたとしよう。そのコンサルタントがやることは現場の分析ではなく、過去誰かが開発したフレームワークや経営理論、ベストプラクティスなどを上司から使うように命令され、それに沿って改善案の提案をしたりする。しかし、実際はその提案では何の効果もなく、結果的にクライアントの業績は悪化し、買収されたりつぶれたりしてしまった!!というようなことが著者の経験からもあったようだ。

だからそういう定規杓子なフレームワークなどを使ったり、スプレッドシート上の数値を弄繰り回して分析したような気になっていたり、誰も後で読まないようなドキュメントを量産したり、難しいカタカナのコンサル用語を駆使してないで、ビジネスの本質は人材、つまり人そのものなのだから、もっと人に向き合って行きましょうと著者は示している。以下その部分が端的に示されている部分を抜粋。
 さて、ここで目的をはっきりさせておきたい。本書の要点は従来のビジネスの常識の誤りを暴くことであり、まちがっても与するものではない。私の提案は、役に立たない経営理論に頼るのはもうやめて、代わりにどうするかということだ。ともかく大事なのは、モデルや理論などは捨て置いて、みんなで腹を割って話し合うことに尽きる。対話や人間関係の改善がビジネスに利益をもたらすことを研究によって証明したわけではないが、真偽の判断は読者に委ねよう。
(pp.28)
僕は一応ファームと言われるような組織に身を置いている。とはいっても、ロール(役職)としてはコンサルタントではなく、技術者よりのITコンサルタントでもないSEである。それでも、今までMgrなど組織の上の人たちはどちらかというとコンサルタントが多かったし、企業文化などからなんとなくコンサルタントの仕事は経験則的に分かっている(それでもいわゆる戦略系の仕事はそこまで分からないけれど)。

なので、本書で示されている部分にあるあるある!!!!!!禿同!!!!!wwwと思うような部分がかなり多くて、共感できた。例えば、コンサルタントがいろいろと分析して戦略をクライアントに提示し、そのあと実働はやらずに去っていくと、残るのは75ページなど長くて誰も読まないパワーポイントの報告書だけが残っていたり(しかもあとから振り替ってみるとどう見ても絵に描いた餅だよなと思うようなものもあったり・・・)。

他にもコンサル企業の社員は上位何%からAとかランク付けされ、しかも評価の要因はその人の能力によるものよりもプロジェクトの環境(またはその人の得意分野かどうか)や景気の影響であったりするのに、上司の偏見に左右もされたりし、正しい評価とはなっていないと示されている。そして一度ダメなやつのレッテルを貼られるとそれを覆すのは難しくなるともある。これもあぁ、そうだよね・・・とかなり実感する。(しかし、半分は上司に恵まれるとか、儲かっているプロジェクトであるとか、自分の得意分野、やりたいことができるといった環境要因、つまり『運』であるかもしれないけど、もう半分はちゃんと自分の実力の反映の結果であったりするからね。自戒を込めて。)

共感できる部分もあるけど、やはりファームなど中の人の経験があると、本当に本書で示されていることがすべて真か?と言われると、違和感を覚える部分はやはりある。一番気になるのは、そんなにみんなコンサルタントは杓子定規に教科書通りの戦略を立案し、お客さんと対話していないのか?という部分かな。もちろんすべてのコンサルタントがそうだとは示されていない。けれど、著者の経験上、そういうことが多かったとある。でも僕の知る限りで言えば、みんなちゃんとお客さんに向き合って対話しているような気もする。日本に複数拠点ある工場を一人で歩き回って、そこの人たちの話を聞いてきて、最適な改善案をまとめ上げたとかいう伝説的な人!?もいたとか酒の席などで聞かされたりもしたので。

もちろん、結果的に絵に描いた餅で、赤字になって火を噴くプロジェクトも中にはある(いわゆる案件をとってくるような提案書をプロジェクトの中盤あたりで見てみたりすると、こんな机上の空論なスケジュール間でできるわけねぇだろ( ゚Д゚)ゴルァ!!と憤りたくなることもときには無きにしも非ずw)。

あとは、過去20世紀のアメリカでのコンサルティングビジネスではこういう傾向があったかもしれないけど、現在進行形の日本ではどうだろうか?とも思う。アメリカと日本での商習慣や企業文化も違うし、現状はもうそんなことはあまりないのではないかなと。もし、コンサルタントが入ることで会社がつぶれまくっていたら、コンサル企業自体も自然と淘汰されるはずだし(もちろん、吸収合併などはよくある)。

もうさすがにクライアントになるような大企業は、コンサルタントが入ればすぐに業績が上がったりするようなことは経験則的にないということは分かってきているので、盲信はしていないだろうとも思うし。結局自分たちのビジネスなのだから、自分たちで回していかなくてはというのも肌身て感じているはず(そして、コンサルタントたちの中には、提案だけして実働はやらないことにもどかしさや違和感を覚えて、事業会社に転職していく人も周りを見ていて多いと感じる)。

そして、本書を読んで一番感じたのは、われわれコンサル会社の存在意義は何だろうか!?と突きつけられたような気がした。それはSEでも同じ。単純に人月いくらでシステムを作って売ることが最終目標なのか?いや、そうではなく、お客様の業績向上になるようなものを提供しなくてはいけないなと、改めて考えさせられた。

本書は過去アメリカのコンサルティングビジネスの失敗事例集として読み、こうならないためにはどうするべきか?を意識して読むのがいいなと思った。あとは、巻末のコンサルタントが役に立つとき、役に立たないときの表や危険なコンサルタントの見抜き方も役に立つ。また、翻訳書としても違和感もなくとても読みやすいし、あまり難しい専門用語は使われていないので、気軽に読める。

コンサルを使うような事業会社の人は、コンサルに頼り切らずに自分たちのビジネスなんだから最後は自分たちで考え抜いていくという視点が役に立つし、コンサル会社の中の人たちにとっては、ちゃんとお客様と対話して企業価値を高めることを意識しているか?を考えるよいきっかけになる本だなと思った。



申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
カレン・フェラン
大和書房
2014-03-26

読むべき人:
  • コンサルタントになろうと思っている人
  • 事業会社でコンサルを使おうかと思っている人
  • ビジネスの本質は人だと思っている人
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