July 03, 2014

シップブレイカー

キーワード:
 パオロ・バチガルピ、船、解体、ジュブナイル、家族
ヤングアダルト向けSF小説。以下のようなあらすじとなっている。
石油資源が枯渇し、経済社会体制が激変、地球温暖化により気候変動が深刻化した近未来アメリカ。少年ネイラーは廃船から貴重な金属を回収するシップブレイカーとして日々の糧を得ていた。ある日ネイラーは、超弩級のハリケーンに蹂躙された後のビーチに、高速船が打ち上げられているのを発見する。船内には美しい黒髪と黒い目をした少女が横たわっていた……。『ねじまき少女』でSF界の頂点に立った新鋭が描く冒険SF。
(カバーの裏から抜粋)
本作品はローカス賞のYA長編部門を受賞しているらしい。YAはヤングアダルト、つまりティーン向けの作品らしい。

舞台は何年か未来のアメリカの海岸沿いのさびれた村で、地球温暖化で北極が溶けて海面上昇しており、都市の一部は水没している。その村では旧世代の動力源の石油で動いていた座礁している船を解体する作業員、つまりシップブレイカーたちが船から得た銅や鉄、ワイヤーなどを売って生活している。そこで15歳ほどの少年ネイラーは常に飢えており、体が大きくなるとシップブレイカーとして働けなくなり、また常に解体のノルマが課せられ、解体する船で危険な作業に従事している。

父親はドラッグ漬けで、ドラッグをキメているときはありえないほどの敏捷性を発揮し、誰も戦って勝てる者はいない。母親が死んでからネイラーは父親に常に殴られており、父親は自分の息子の命を何とも思っていなかったりする。村全体が貧しく、働けない場合、運がないヤツ、仲間を裏切ったヤツは死が近くなる。

そんなある日、村を大型のハリケーンが襲い、ハリケーンが去ったあと、普段解体する船とは別の新型の船が座礁しているのをネイラーは発見する。その船はどうやら金持ちの所有らしく、船員はほぼ死んでいるので、仲間と銀食器などの戦利品を物色していると、黒髪の美しい少女が一人生き残っており、その少女をとりあえず助けることにする。助けた少女は、北部の海運業者一族の娘であり、ネイラーはその娘を助けて報酬を得ようとするが、その娘を追っている一団がいることを告げられる、というお話。

ヤングアダルトというには割と主人公が置かれている境遇は過酷で、貧乏で文字もろくに読めず、父親から暴力を受けており、この村から一生抜け出せないでいる。15歳の主人公が殺人をせざるを得ない状況であったり、敵に襲われて痛めつけられたりする。そういう部分は、中学生には刺激が強いかも。高校生以上向けかな。

しかし、それなりに面白かった。割とすぐにページが進んでいき、主人公と囚われの少女の関係はどうなるのか!?という部分でぐいぐいと引き込み、そして船や海の独特の描写もすんなりイメージできて臨場感もあった。前作の『ねじまき少女』は読了済みで、『ねじまき少女』はかなり読みにくい作品であったが、本作はすんなり読める。また、『ねじまき少女』はところどころエログロな描写が出てくるけど、『シップブレイカー』は、ヤングアダルト向けなので、エロは皆無であるけど、ところどころ暴力的で血みどろな感じ。

物語としては、Boy meets Girlで『親方!空から女の子が!』のようなよくある構造w また、SF要素としては、石油が枯渇した世界であったり、『半人』と呼ばれる犬、虎、ハイエナ、人間の遺伝子を持つ人型で獣じみた奴らが出てきたりする。そいつらは知能も人間並みで普通にしゃべれるが、顔立ちは犬っぽく、獰猛でボディガードや戦闘向きで、主人に忠実な存在だったりする。あとは、車が走ってない道路には木々が生えていたり、ビルが水没した世界観である。しかし、アメリカのごく一部の世界の話で、世界観が案外広がっていなかった。

夏休みに読むには割と最適な作品かもしれない。何も考えずに、没頭できて、430ページほどあるけど、頑張れば1日で読めるかも。海とか船の描写が夏っぽいし、そしてSFだし、ジュブナイルだし。



シップブレイカー (ハヤカワ文庫SF)
パオロ・バチガルピ
早川書房
2012-08-23

読むべき人:
  • 夏休みっぽい作品を読みたい人
  • ジュブナイル的なSFが好きな人
  • 家族について考えたい人
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