July 06, 2014

人形つかい

キーワード:
 ロバート・A. ハインライン、SF、侵攻、ナメクジ、人間
ハインラインのSF小説。以下のようなあらすじとなっている。
アイオワ州に未確認飛行物体が着陸した。その調査におもむいた捜査官六名は行方不明になってしまった。そこで、秘密捜査官サムとその上司、そして赤毛の美人捜査官メアリは、真相究明のため現地に向かう。やがて、驚くべき事態が判明した。アイオワ州の住民のほとんどは、宇宙からやってきたナメクジ状の寄生生物にとりつかれていたのだ。人間を思いのままに操る恐るべき侵略者と戦うサムたちの活躍を描く、傑作冒険SF。
(カバーの裏から抜粋)
いつか読もうと思っていて、図書館で発見したので借りて読んだ。書かれたのは1951年と約60年前であるが、今読んでもまったく古びていなくて、そしてかなり面白く、楽しんで読めた。

舞台は2007年の7月12日のアメリカ(もう過去になってしまったね)で、主人公サムは秘密捜査官(エージェント)であり、上司に呼び出されて不時着したUFOの調査に向かう。そこで、UFOの周囲にいた人間の様子がどうやらおかしく、調査していくとナメクジ型の異星人に人格を乗っ取られていることが判明した!!ナメクジ野郎は自己分裂してどんどんアメリカの人間を支配していき、主人公が所属する特殊機関と軍、大統領を含めてアメリカ奪還を目指すというお話。

異星人侵略、寄生ものの古典的な位置づけらしい。ナメクジに支配された人間は、背中にとりつかれて、一応最低限の人間社会をそのまま維持し、意識はあるが、ナメクジを通して思考や行動を強制され、どんどんナメクジネットワークを広げられていく。ナメクジは人間だけではなく、必要あらば犬や猫、その他動物までに憑依して、支配者(マスター)としてそのホスト(宿主)を傀儡のように操る。

服を着ているとナメクジとりつかれているかどうかわからないので、アメリカ全土に大統領により<上半身裸計画>が発動される。それでも不十分なことが分かって、<日光浴計画>つまりほぼ全裸状態が発動されたりする。それでもアメリカの各州は次第に侵略されていき、アメリカ以外の衣服を簡単には脱がない国(イスラム圏とか)なども侵略されていく(なぜか日本に関しては、『日本人は平気で着衣を脱ぐせいで、助かった』と記述があり、いったいどういうことだ!?と思ったw今も昔もきっとそんなに人前では脱がないだろうw)。

ナメクジにどんどん侵略されていき、主人公も途中でとりつかれたりして危機が迫る。また、光線銃や空飛ぶ車、変装の特殊メイク、立体テレビなどもSFな要素がそれなりに出てくる。そして、誰がとりつかれているかの疑心暗鬼の様子、さらに侵略の危機をどうやって克服してナメクジ野郎たちを一掃するのか!?の攻防も面白く、なんだか上質なハリウッド映画を見ているような気になれた。ちなみに、個人的に異星人憑依系の映画で好きなのは、ロバート・ロドリゲス監督作品の『パラサイト』。『人形つかい』では、ナメクジの侵略の動機が憑依した人間の口から語られる部分があり、その部分を読んで、ナメクジは共産主義的なユートピアのメタファーなのだな!!と思って読んでいたら、解説に以下のように示されていた。
『人形つかい』を反共小説として読むのは簡単だし、ハインライン自身もそれを否定しなかったにちがいない。
 しかし、”ナメクジ”に乗っ取られた者と共産主義者とは、この作品では同一視されていない。はっきり別のものとして扱われている。そこに注意を払っておきたい。
 もし、”ナメクジ”が単純に共産主義のアレゴリーであれば、本書はベルリンの壁の崩壊やソビエト連邦の解体とともに過去の遺物と化していたことだろう。ソ連が存在する世界を描いていることで歴史的作品となっていることは間違いないが、ストーリーの本質は時代遅れになっていないのである。ハインラインが描いた「人間の心をもたない人間」の恐怖は、イデオロギーの異なる人間を排除する気持ちを超えた、さらに普遍的かつ根源的なものだった。
(pp.442-443)
なるほどなと思った。個人的には、ナメクジを機械に置き換えればマトリックスの世界かなと(じわじわ侵略されるという感じではないけど)。このように、ナメクジの侵略でいろんな読み方ができると思う。

ハインラインの作品は以下のものを読んだことがある。個人的には『人形つかい』が一番面白くかつ没頭して読めた。『月は無慈悲な夜の女王』はいまいち没入できず、『宇宙の戦士』はそれなりに面白いが途中説教くさい部分が多い。『夏への扉』は心地よい終わりでよいが、『人形つかい』ほどエンタメ性はそこまで高くないかなと。まぁ、人それぞれで評価はだいぶ変わると思うので、暇な人は全部読み比べて見たらいいかもね。他のハインライン作品なども。

難しい表現もあまりなく、主人公サムに割と心情を投射しやすく、没頭して読めるのでオススメ。



人形つかい (ハヤカワ文庫SF)
ロバート・A. ハインライン
早川書房
2005-12

読むべき人:
  • 異星人侵略ものが好きな人
  • マトリックスなど管理体制ものが好きな人
  • 人間の本質について考えてみたい人
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