July 13, 2014

世界のすべての七月

キーワード:
 ティム・オブライエン、村上春樹、群像劇、短編、人生
ティム・オブライエンの小説。翻訳は村上春樹。以下のようなあらすじとなっている。
30年ぶりの同窓会に集う1969年卒業の男女。結婚して離婚してキャリアを積んで…。封印された記憶、古傷だらけの心と身体、見果てぬ夢と苦い笑いを抱いて再会した11人。ラヴ&ピースは遠い日のこと、挫折と幻滅を語りつつなおHappy Endingを求めて苦闘する同時代人のクロニクルを描き尽して鮮烈な感動を呼ぶ傑作長篇。
(カバーの裏から抜粋)
書店でなんとなくタイトルが気になって買った。ちょうど七月だったし、翻訳が村上春樹だったということもあって。ティム・オブライエンはこれが初めての作品だな。本書はもともと短編作品だったものをいくつかまとめて長編として出版されたものらしい。主な章タイトルとその登場人物、簡単なあらすじを示しておこう。
  • 1969年7月・・・デイヴィッド・トッド。元野球選手だがベトナム戦争へ行き、死にかけて足を失う。そこでラジオを通して不思議な声を聞き始め、マーラ・デンプシーとの結婚生活がよくない方向に向かうと示唆を得る。
  • 勝ち続け・・・エイミー・ロビンソン。弁護士。夫と行ったカジノで人生の運をすべてそこで使い果たすように勝ち続ける話。
  • リトル・ピープル・・・ジャン・ピュープナー。元ストリート劇団員。大学生の時に始めたお金のためのヌード写真ビジネスがいろいろとトラブルを巻き込む話。
  • 二人の夫と暮らすのは・・・スプーク・スピネリ。二軒の家、二人の夫を持つ。協議して弁護士の夫と哲学者の夫と二重生活を送る。しかし、その二人以外にも男が現れて・・・。
  • ウィニペグ・・・ビリー・マクマン。徴兵を忌避してカナダのウィニペグへ行くが、その当時付き合っていたドロシー・スタイヤーがついてきてくれるものと思っていたが、結局来てはくれない。
  • 聞くこと、聞こえること・・・ポーレット・ハズロ。女性牧師。ある老婆の家に夜間に侵入してしまい、職を失う。
  • ルーン・ポイント・・・エリー・アボット。結婚しているが、不倫中ででかけた海で、不倫相手が溺死してしまう。
  • 半分なくなった・・・ドロシー・スタイヤー。ビリー・マクマンの元恋人。乳癌を患い、半分切除していて、余命5年だという状況。
  • ノガーレス・・・カレン・バーンズ。退職者コミュニティーに勤務。51歳の時にウォーキングツアーを引率中に死亡。
  • 痩せすぎている・・・マーヴ・パーテル。モップビジネスで成功し、また驚異的なダイエットにも成功。そして、自分の美人秘書に自分は作家でもあるとウソをついたことから、生活が一転する。
  • うまくいかなかったこと・・・デイヴィッドとマーラーの結婚生活の話。結局二人は別れる。
他にも『1969年度卒業生』という章が何度か繰り返し出てきて、その舞台は2000年の7月7日の金曜日の夜からの、30年ぶりの大学での同窓会。1969年度卒業生なのに、2000年で30年ぶりなのは、30年目に同窓会を開催するのを忘れたため。そのため、2000年に30年ぶりの同窓会ということになる。そこでは、各章の人物がみな52歳として登場している。

52歳。人生の後半戦に差し掛かっている年代で、全員に共通するのは、人間関係や健康などがいろいろと問題を抱え込み、思うようにいかなかったという現実が描かれている。持病を患っていたり、望んだ人間関係が築けなかったり、離婚していたり、どこか満たされず、失敗と挫折が多かれ少なかれそれぞれの人物に内在する。しかし、同窓会を通して昔からのつながりの人間関係の中で、見失ってしまった自分自身をここで再確認して、これから立て直していこうという感じもする。

読むのが少し早すぎたのかなと思った。僕は30歳になったばかりだし。約20年後の50歳前後の時に、これを読むと自分自身のこととして受け入れられるのかもしれない。しかし、今の時期に読んでも、こういう未来にならないようにしようと危機意識を得られるのもいいか。

面白くなかったわけではない。むしろかなり没頭して読めた。それぞれが短編小説として独立しているので、そこだけでも面白い。それ以上に、全編を通してそれぞれの人間関係のつながり、葛藤、生きていくうえでの困難や折り合いをつけなくてはいけないことなどが村上春樹の読みやすい翻訳によって描かれていた。簡単に言えば、いろんな人生が描かれていた。

村上春樹は、このティム・オブライエンの作品が特に同世代作家として気になっており、アメリカでの評判はいまいちだけど、どうしてもこれを自分で翻訳したかったとあとがきに書いてあった。

52歳だけど、まだ完全に終わっていない、まだ先があるというような感じで物語が終わる。切なさも残るが、割と心地よい結末でもあった。作品を通して自分の人生を振り返ってみるのにいいかもしれない。



世界のすべての七月 (文春文庫)
ティム オブライエン
文藝春秋
2009-06-10

読むべき人:
  • 50歳前後の人
  • 同窓会というイベントが好きな人
  • 自分の人生について考えたい人
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