December 16, 2014

酒仙

キーワード:
 南條竹則、酒、救世主、教養、阿頼耶識
ファンタジー小説。以下のようなあらすじとなっている。
酒星のしるしをおびた人間は、いずれその使命を果たすまで、酔って酔って酔いまくらなければならん――。こうして仙人に命を救われた暮葉左近は、酒飲み修行に明けくれる日々を送っていた。ところがある日、邪悪な<魔酒>を醸す三島業造が現れて……。古今東西の美酒珍味と、古典文学からの引用が満載された抱腹絶倒の「教養」小説。第5回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。
(カバーの裏から抜粋)
スゴ本オフ『食とエロ』のテーマの時に頂いた小説。ちょうど2年前に参加したので、2年近くも積んでしまったようだ。

主人公の暮葉左近は江戸時代から続く豪商の家系に育った30歳で、その家系は酒豪でもあった。しかし、代を重ねるごとに没落していき、主人公はとうとう60億円もの負債を抱えて自分の人生にけりをつけようと風呂場に老酒をためて、そこで酒池肉林のごとく酒池をやって死にかける。そんな状況で仙人に助けられ、主人公の酒飲みの気質を見出されて、ひたすら酒を飲んで酒徳積んだ救世主になれと言われる。そして、そのために必要な聖杯と聖徳利を手に入れようとするが、魔酒を広めようとする三島業造と奮闘するという話。

独特の世界観で蓬莱山の仙人や妖怪、天使などいろいろな人間以外の人物がたくさん出てくる。主人公自身も千年に一度の聖酒変化という儀式で世の中に酒を満たし、至福が訪れるようにするための酒仙となっている。そして主人公の太鼓持ちのどぶ六とひたすら飲み歩いている。ファンタジーな登場人物、仙界などが出てくる反面、小岩の中華料理屋、浅草の泡盛屋、新橋のショットバーなど現実的なところが舞台にもなっているのが面白い。それぞれの店名が出てきて、調べてみると実在する(すでに閉店していたりするけど)ものもあったりする。

いろんな人間以外の登場人物が多数出てくるから、『千と千尋と神隠し』のようなジブリアニメで映像化したらはまるだろうなと思った。20歳以上の酒飲みの大人のためのアニメとして映像化してくれないかなと思った。

また、この作品で特筆すべきは漢詩からペルシアの歌など古今東西の酒にまつわる詩歌や酒のうんちくの引用が満載となっている点。それらの過剰とも思える引用が一見衒学的で酒の席でうんちくを垂れたがるおっさんのような嫌味がしそうだが、キャラの特性もあって不思議とそれがない。むしろ文化や歴史も含めていろいろと勉強になるなぁと思った。

ゴルゴダの丘で貼り付けになったイエスも酒仙だったとか、おとものどぶ六が「酒(しゅ)よ、酒よ、なぜ旦那をお見捨てになったのですか?」と言うセリフがあるが、それは解説によると新約聖書のイエスが死の直前に述べた言葉「主よ、主よ、なぜ私をお見捨てになったのですか」というのがネタらしい。このような教養的なパロディ要素も多くみられ、自身の教養レベルが高ければ高いほど楽しめる内容のようだ。もちろん、歴史や文化、宗教に疎い僕はそこまで気付かないのだけど。教養を深めた後に再読すればきっと面白さも増すはず。

目的達成のために、主人公はひたすら道中で老酒や琉球泡盛、葡萄酒、マティーニ、ウイスキー、日本酒などなどを飲みまくっている。そして回りからは気持ちいいくらいにいい飲みっぷりだ評されるほどである。そして読んでいると飲んでいるわけでもないのにほろ酔い気分になってくるから面白い。また、酒だけではなく、一緒に食べている中華料理などの描写もおいしそうで腹が減ってくる。

読んでいたら間違いなく何かしら酒を飲みたくなってくることは間違いない。本書を酒の肴に読むのもよいし、その独特の世界観の中での主人公の飲みっぷりに一緒に酔いしれるもよし。忘年会シーズン突入中ということもあり、すべての酒好きにおすすめのファンタジー「酒」教養小説!!



酒仙 (新潮文庫)
南條 竹則
新潮社
1996-09

読むべき人:
  • お酒が好きな人
  • 中華料理や中国文化に関心がある人
  • 自分の教養レベルを試してみたい人
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