December 21, 2014

カウント・ゼロ

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キーワード:
 ウィリアム・ギブスン、SF、サイバーパンク、箱、伯爵
サイバーパンクSF小説。以下のようなあらすじとなっている。
新米ハッカーのボビイ、別名カウント・ゼロは、新しく手に入れた侵入ソフトの助けを借りて電脳空間に没入していた。だが、ふとしたミスから防禦プログラムの顎にとらえられ、意識を破壊されかけてしまった。その時、きらめくデータの虚空の彼方から、神秘的な少女の声がきこえてきた……!SF界の話題をさらった『ニューロマンサー』と同じ未来を舞台に、前作を上まわる衝撃的なヴィジョンを展開するギブスンの長篇第二作!
(カバーの裏から抜粋)
livedoorブログのAmazonリンクに書影がなかったから自分で撮って設定した。

『ニューロマンサー』がいろいろなSF作品に影響を与えたのは、SF好きな人にとって見れば語るほどのことでもない、常識的なものになっている。その『ニューロマンサー』をはじめとする<スプロール>3部作と言われる2作目が本書。『ニューロマンサー』の記事は以下。本作品では、『ニューロマンサー』とは別の人物が主人公となっている。主人公は3人いて、それぞれ章ごとに視点が変わる。

まずはタイトルにもなっている『カウント・ゼロ』のハンドルネームでハッキングの腕試しをしている新米ハッカーのボビイ。年齢は17歳ほどの少年で、ある日手に入れた侵入ソフトで電脳空間<サイバースペース>に没入<ジャックイン>して、映画データを盗み取ろうとしたところ、アイス(侵入対抗電子機器、攻殻機動隊の攻性防壁のイメージ)で自分の精神が破壊されそうになる。そしてマフィアのような組織に家を襲撃され、その仕事<ラン>を受けた人物たちに助けられる。

次の人物はターナーで、体躯のよい30歳くらいのフリーの傭兵。かつてインドで爆破されて肉体がバラバラになるが、バイオテクノロジーによって再生している。ある企業から別の企業に移籍をしたいという博士を安全に移送するための転職屋として、コブラのようなリヴォルバの銃を装備し、チームを指揮する。しかし、そこで博士の代わりにその娘と接触し、その娘と行動を共にしていく。

最後はマルリイ・クルシホワ。美術商で小さな画廊を営んでいたが、ある日肉体的には病で死んでいて、精神だけが電脳空間だけで存在する富豪で美術コレクターであるヨゼフ・ウィレクから、コラージュ作品のようなガラクタを詰めたような『箱』を探してくれと依頼される。その『箱』の作成者を巡って宇宙まで行く。

最後のほうまでそれぞれの人物が全く交差することなく、独立して物語が進む。それぞれの人物が電脳空間に常時没入しているという感じでもない。どちらかというと、電脳空間は物語での補助的な位置づけのように、現実世界でそれぞれの人物が動いていく。

Amazonのレビューには『電脳空間3部作の中ではいちばん詩的な作品だ』と評されている。なるほどなと思う。主人公たちを取り巻く周囲の些末な部分を含めた描写が細かく、個人的には三島由紀夫のような情景描写をSF風にしたような、そんな印象を受けた。

派手に爆発したり格闘するような部分は少ない。もちろんレールガンのようもので建物が吹っ飛ばされたり、レーザー光線で人の首が吹っ飛んだりする描写もあるが、それらは控えめ。サイバーパンク要素としては、デッキから伸びている電極を額に設定し、そこのコンソールをいじってマトリックスの世界にジャックインするし、精神だけの存在となった大富豪がサグラダファミリアを模した電脳空間で商取引をしたり、AIの暴走を監視するチューリングという組織があったり、耳の後ろのソケットにマイクロソフトと呼ばれるソフトを入れると飛行機の操縦が可能になったり、多言語の翻訳もできる。

あとは日立、富士通、東芝、朝日新聞、ソニー、千葉、東京、ヤクザなど日本的な固有名詞も多く出てきて、80年代のバブルのころに書かれたサイバーパンクのアクセントにもなっている。

『ニューロマンサー』は5年前に読んだのだけど、1日10ページほどしか読めず、読了に3ヵ月もかかった。しかもギブスンが示す電脳空間に自分の想像力が追い付いていかず、内容はあまり頭に入ってない。しかし、本作は割とすんなり読めた。もちろん、普通の小説、SF作品に比べて読みにくい部類だとは思う。それでも、1日数十ページは読めた。それでも、ちょっとでも気を抜くと独特の描写によって文章の森で迷子になってしまうようなことはよくあったけど。

本書は絶版になっている。たまたま近所の図書館に行ったら、3部作と『クローム襲撃』が置いてあったので借りて読んだ。これが絶版になっているのはもったいない。ぜひ復刊してほしいと思う。

サイバーパンクSFなんだけど、どこか純文学的でもあるような、そんな印象を受けた。また、それぞれの登場人物が最後には直接的にまたは間接的に交差する展開が面白かった。



ウィリアム・ギブスン
早川書房
1987-09

読むべき人:
  • サイバーパンクSFが好きな人
  • マトリックスが好きな人
  • 詩的な世界観を堪能したい人
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