February 15, 2015

こうしてお前は彼女にフラれる

キーワード:
 ジュノ・ディアス、ドミニカ、浮気、愛、半減期
ドミニカ系作家の短編集。9作品が載っている。著者は『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』のジュノ・ディアス。9編の作品の主な主人公は、『オスカー・ワオ』の親友で物語の多くの語り手であったモテ男、ユニオールとなる。そのユニオールが高校生くらいから常に誰かしら恋人がいるのに、他の女と浮気をして、最大同時に50人まで数をこなし、各タイトルごとに彼女が変わり、そして結局うまくいかずに彼女にフラれるというお話(正確には1タイトルは主人公がユニオールではないけれど)。

ユニオールは割と頭脳明晰で、14歳にして『ダールグレン』(この前本屋でSF作品特集でこの作品を見かけたが、この本単体でMASTERキートンに出てきたネクタイで本を縛って投擲武器にできるような分厚く威圧感のある、漆黒のハードカバー作品)を読んでおり兄のラファは常に女を部屋に連れ込んでユニオールの隣でやっている。そんで父親も愛人を連れ込む癖があり、母親は兄のラファを溺愛しているが、弟のユニオールはついでに世話をしなくてはいけないという程度の存在でしかない。兄や父親のようにはならないと思いながらも、半ば崩壊した家庭で育ったことにより、自身も頭でわかっていてもどこかでばれることを期待しているように浮気を繰り返してしまう。家系の呪いのように。

兄がガンで死亡したり、父親が失踪し、ユニオールはハーバード大学で教鞭をとるようになるなどいろいろと著者のこれまでの人生がネタになっている部分もある。実際は著者の兄は白血病で亡くなっており、父親は失踪、マサチューセッツ工科大学で教えている。著者の自伝的な内容なのかと思うが、前著の主人公『オスカー・ワオ』の要素もあるので、ほんの一部の設定だけなのだろうと思う。モテまくって浮気をしてばれるという経験を経てみないことには本当のところはわからないのだけどね。

一番切なくも感情移入できるのは『ミス・ロラ』というタイトルのもの。これは前著『オスカー・ワオ』の姉であるロラとの関係のことと思われる(オスカーについては全編を通して一度も出てこないが)。兄の死後、16歳の高校生の時に別の女と付き合っている状況でロラと出会い、どこかでロラのことが気になっているが、恋人の存在がそれを邪魔している。結局会えなくなって、どこかでロラのことを思い出している。起伏もあまりなく、淡々と一人称で語られているが、少し切ない読後感が残る。別に浮気の部分には全編を通してあまり共感はできないのだけど。

訳者は著者が来日した時にどうして浮気について書くのか、下北沢のB&Bで開催された東京国際文芸フェスティバルの場で直接訪ねてみたようだ。その答えが以下となる。
 きちんと親密さを感じて育むことができない、という男性たちについて語る、これ以上の方法はないからですよ。浮気とは親密さを避けるためのものなんです。ちゃんと感じたがらない、人とつながりたがらない、相手のことを想像したがらない男たちを示すための、話にして面白い、ものすごくあからさまな方法なんですね。
(pp.231-232)
なるほど、と実体験から共感できるものが何もないが、おそらくそうだろう。個人的には浮気というのは、自分がいかにモテる存在であるかというのを誇示するための結果ではなく、満たされないものを埋めようとした結果のどこか精神疾患に近いものだと理解している。

本書は『オスカー・ワオ』のようにオタク的要素がちりばめられたようなマジックリアリズムではない。物語中に出てくる小説作品などは、『ダールグレン』の他に『ニューロマンサー』くらいだった。内容としてもリアリズム的な作品で、ぶっ飛んだ神のような存在は出てこない。短編なので、タイトルごとに読み進められる。そして共感できる部分もあれば、できない部分にふと遭遇する。

本書も新潮クレストブックで、図書館で借りた。今日が返却期限なので今から返してくる。




読むべき人:
  • 浮気ばかりしている男性
  • 浮気男に翻弄されている女性
  • 愛について考えたい人
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