March 01, 2015

イノセント

キーワード:
 イアン・マキューアン、スパイ、トンネル、ドイツ、黄金作戦
イギリスの小説家によるスパイ恋愛小説。以下のようなあらすじとなっている。
終戦後のベルリン。世間知らずの英国人青年技師レナードは、戦争の傷跡がまだなまなましいこの街に足を踏み入れた時、自分の人生が大きく変わろうとしているのを感じた。だが、行く手に待ち受ける恐怖までは予測できなかった。レナードが来たのは、英米情報部の対ソ連共同作戦、トンネルを掘って東側基地の通信を盗聴する〈黄金作戦〉に参加するためだったが、美しいドイツ人女性マリアと出会い、うぶなレナードは激しい恋におちる―運命を知らずに。注目の作家の、エスピオナージュ仕立ての話題作。
(Amazonの商品説明から抜粋)
例によって近所の図書館で借りた。最初になんでこれを借りたのかは忘れた。確か著者のことも知らずに適当に取って本のそで部分に書いてあった各新聞の講評にスパイものと示してあったからだったはず。1回目に借りた時は、他の本を優先して読了したので最初の1行だけ読んで結局読めなかった。2回目に借りたのは、去年あたりに同著者のスパイ小説が発売されて、気になっていたので先にこちらの本を読了しておきたかった。ちなみに本書は絶版らしいので、書店ではたぶん手に入らないはず。舞台は1955年のアメリカ占領地区の西ドイツ。主人公はイギリスから派遣された通信省に勤めていたメガネをかけた25歳の青年である。実際にあった黄金作戦に参画するために、アメリカ陸軍のグラスという男の下、トンネル内のソ連の通信を傍受する仕事に就く。ある日、グラスたちとある酒場に行ったときに、30歳になる美しいドイツ人女性、マリアに見初められて、女を知らなかったレナードは次第に愛欲におぼれていき、やがてマリアの元夫とのトラブルに巻き込まれていく・・・。上質な小説だなと思った。描写がすっと頭に入ってくる。難しい表現はあまりない。主人公の目を通した情景や風景、心情が映像を見ているように脳内再生される。

地下のトンネルに入る前の最初は150台のテープレコーダーを箱から取り出してそれらを点検する仕事をする。淡々とこなし、終わったらマリアの部屋に行って情事にふける。時々二人で出かけてサイクリングに行ったり、踊ったり、流行りの曲に耳を傾けたりする。そしてトンネルに入るようになり、次第にソ連の通信を傍受する任務に就く。あるとき年上のマリアに対して乱暴な態度を取ったことから二人の関係に隙間ができ、関係が次第にすれ違っていくのが何とも言えない感じがした。

英国スパイ小説といっても、007のように派手な感じではない。銃撃戦などは皆無である。またMI6は少しだけ話題に上がるけど、特別そこの所属の登場人物が出てくるわけではない。CIAに関しても偉い人物が話の中で出てくるだけ。主人公に至っては別に軍所属でもない。それでも、最後は東西分裂しているドイツを交えた戦争なんだと思わせる展開で、だんだんとハラハラとさせられる。

そして想定外にエログロだった。その描写も脳内で自然と映像が思い浮かぶから困る。割とグロ中尉な作品。訳者あとがきによると、この著者の作品の傾向は割とグロテスクなのが多いようで、他の作品を読むのをどうしようかと若干躊躇する。一部の章だけなのだけどね。

しかし、読み終わってから、レナードとマリアの関係にどこか何とも言えない同情の気持ちと爽やかにも似た心地よさが残って、割と読んでよかった作品だと思った。ちなみにタイトルの英単語の意味は以下で、訳者によればそれぞれを包含しているらしい。映画化して脚本がよかったらきっと面白いだろうなと思って読んでいたら、実際に著者が脚本担当で以下のタイトルで映画化されているようだ。気になるので見てみよう。



イノセント (Hayakawa Novels)
イアン マキューアン
早川書房
1992-09

読むべき人:
  • スパイ小説が好きな人
  • 官能的な作品が好きな人
  • 忘れられない人がいる人
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