August 01, 2015

ガラスの街

キーワード:
 ポール・オースター、探偵、ニューヨーク、作家、迷子
ニューヨークを舞台とした小説。以下のようなあらすじとなっている。
「そもそものはじまりは間違い電話だった」。深夜の電話をきっかけに主人公は私立探偵になり、ニューヨークの街の迷路へ入りこんでゆく。探偵小説を思わせる構成と透明感あふれる音楽的な文章、そして意表をつく鮮やかな物語展開―。この作品で一躍脚光を浴びた現代アメリカ文学の旗手の記念すべき小説第一作。オースター翻訳の第一人者・柴田元幸氏による新訳、待望の文庫化!
(カバーの裏から抜粋)
まとめスレのおすすめ小説として、ポール・オースターのニューヨーク3部作が示されていたので、試に買って読んでみた。本作品が3部作の第1作目。

主人公は元ミステリー作家のクインという男。ある日夜中にかかってきた間違い電話に出ると、「ポール・オースター探偵事務所ですか?」という内容だった。何度かその間違い電話に出るうちに、クインはその探偵に成りすまして、電話の主の元を訪れる。電話の主はピーター・スティルマンで、幼少のころに父親に監禁されていたという話を聞く。そしてその父親がニューヨークに帰ってくるらしいので、父親を監視してほしいという依頼を興味本位から受けて、主人公はニューヨークの街を闊歩する依頼主の父親を尾行しはじめる。

主人公は依頼主の父親に気づかれないように尾行して、後筋をメモしていくとアルファベットのように見て取れることを発見したり、いつどこで何をしているかを逐一観察し、父親の素性を知ろうとしていく過程が探偵小説っぽい内容である。しかし、終盤に向けて探偵小説ではなくなっていく。次第に主人公が翻弄されていき、ニューヨークの都市に埋没していく。自分がやっていた探偵真似事が何の成果も見いだせないままに。

"ポール・オースター"という登場人物が出てくる。間違い電話の話題の人物であるが、実際には作家として妻も子供もいる。クインが実際に会ってその境遇に羨望のまなざしを抱くほどクインと対照的である。物語の視点は、クインの1人称でもなく、作中の"ポール・オースター"でもなく、別の誰かであることが最後に分かる。また、訳者あとがきには作者のポール・オースターは妻と出会えていなかったらどうなっていたかを思い描こうとして書いたとある。結局、"ポール・オースター"は現在の自分、クインはバッドエンドに向かう自分を描写したのだろうと想像できる。もちろん、他にもいろんな読み方はできるが。

この作品は特に文章に惹きつけられる。
 ニューヨークは尽きることのない空間、無限の歩みから成る一個の迷路だった。どれだけ遠くまで歩いても、どれだけ街並みや通りを詳しく知るようになっても、彼はつねに迷子になったような思いに囚われた。街のなかで迷子になったというだけでなく、自分のなかでも迷子になったような思いがしたのである。
(pp.6)
訳者の柴田元幸氏もこの部分を引用して、『圧倒的に惹きつけられたのは、その透明感あふれる文章である』と示している。海外文学は、文章が自分に合う、合わないがはっきりわかるが、ポール・オースターの文章は違和感もなくすんなり入り込んでいけた。もちろん、そうなるような秀逸な翻訳によるところも大きい。

ポール・オースターの作品は以下の青春小説を読んだことがある。これも読みやすく、なかなかよかった。

『ガラスの街』は、主人公が不条理に翻弄されて都市に埋没していくのが割と好きな内容だなと思った。



ガラスの街 (新潮文庫)
ポール オースター
新潮社
2013-08-28

読むべき人:
  • ミステリー小説が好きな人
  • ニューヨークに行ったことがある人
  • 埋没した感覚を味わいたい人
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