September 05, 2015

カンガルー・ノート

キーワード:
 安倍公房、かいわれ大根、夢、死、黄泉
安倍公房の遺作。以下のようなあらすじとなっている。
ある朝突然、“かいわれ大根”が脛に自生していた男。訪れた医院で、麻酔を打たれ意識を失くした彼は、目覚めるとベッドに活り付けられていた。硫黄温泉行きを医者から宣告された彼を載せ、生命維持装置付きのベッドは、滑らかに動き出した…。坑道から運河へ、賽の河原から共同病室へ―果てなき冥府巡りの末に彼が辿り着いた先とは?急逝が惜しまれる国際的作家の最後の長編!
(カバーの裏から抜粋)
そもそもの始まりは文具会社に勤める男が朝起きて、朝食を食べているときに脛にかいわれ大根が生えてくるところから始まる。そして病院に行くが、看護婦にぞんざいに扱われ、診断結果がよく分からないので硫黄の温泉療法がいいんじゃないかと医者に見放されるようにベッドに乗せられ病院を放りだされる。

そして、そのベッドが主人公の意識とシンクロして走りだし、三途の川のようなところにたどり着き、小鬼のような人物と出会ったり、死んだはずの母親と再開したり、交通事故を記録しているアメリカ人整体師、キラーと出会ったり、ミス採血娘に3年連続で選ばれたこともあるドラキュラ娘に遭遇したり、変なキャラや舞台がよく出てくる。

腹が減って他に食べるものがない時には、自分の脛から生えているかいわれ大根をむしって食べたりもするが、次第にかいわれ大根の精気も失われていき・・・。

この作品を前衛的と言ってしまえばその通りなのだけど、これは特にぶっ飛んでいる感じがする。三途の川のような幻想的なところにいたと思ったら、突然普通の街の道路であったり、踏切であったりするところにシーンが変わる。安倍公房の長編作品は他のものは一応すべて読了しているが、この作品は、その中で一番よく分からないというか、気持ち悪いカオスな夢をみているような感覚に陥る。よく酒を飲んだ後に追われたり不安を掻き立てられるような、不快な夢を見るのだけど、自分の夢が作品化されているような気がして変な感じがした。

三途の川であったり、病院のシーンが出てきたり、安楽死や尊厳死といったものも作中で語られていることから、確実に『死』が根底にあるテーマであるのは間違いない。この作品を面白いと感じるかどうかは別として、ブラックユーモアと幻想的な世界で不条理にも翻弄される主人公を通して『死』について考えさせられる。

安倍公房作品で一番衝撃を受けたのは、何度か示しているように『砂の女 (新潮文庫) [文庫]』だね。また、断然面白いと思うのはSF的な『第四間氷期』、あとはエロく気味の悪さが混在している『密会』とか、自身を都市で見失っていく『燃えつきた地図 (新潮文庫) [文庫]』なんかが好きだったな。あと、このブログで取り上げた安倍公房作品は以下。安倍公房の作品に初めて触れたのは高校の国語の教科書に載っていた『赤い繭』だった。そこから『砂の女』をどういう経緯で選んだのか忘れたけど、読んではまった。

一人の作家の長編をすべて読むということはあまりないのだけど、安倍公房の前衛的なよく分からなさと不安を掻き立てられる不条理さにどこか惹かれるのだと思う。




読むべき人:
  • 前衛的な作品が好きな人
  • よくカオスな夢を見る人
  • 死について考えてみたい人
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