September 08, 2015

掏摸

キーワード:
 中村文則、スリ、支配、塔、運命
スリをテーマにした小説。以下のようなあらすじとなっている。
東京を仕事場にする天才スリ師。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎―かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」運命とはなにか、他人の人生を支配するとはどういうことなのか。そして、社会から外れた人々の切なる祈りとは…。大江健三郎賞を受賞し、各国で翻訳されたベストセラーが文庫化。
(カバーの裏から抜粋)
最近は時間的に余裕があるというか、暇なので図書館に行った。借りたい本はあらかじめ決めていたが、文庫コーナーの本棚の中に少し隙間があるところに本書が置いてあって、なんとなく惹かれるように手に取って裏のあらすじを読むと、なかなか面白そうなテーマなので借りて読んでみた。

タイトルの読みは「スリ」で、主人公は東京で金持ちばかりをカモに狙う天才スリ師である。電車の中やデパートで身なりの良いカモに目をつけ、財布のありかを把握し、そっとカモに近づき、時には相手に軽く接触したり自分の身にまとっているコートで周囲の視界を遮り、親指は使わずに人差し指と中指でカモの財布を気付かれないように素早く抜き取る。財布から現金だけを抜き取り、財布をポストに入れておけば持ち主のところに自動的に届けられる。主人公は、スリは生計を立てるためというよりも、その瞬間にスリルと生きがいをどこかに感じているようでもある。

ある日、主人公はかつてのスリ仲間に会い、その男から別の仕事、強盗をやるように依頼される。正確にはスリ仲間を使っている別の男、木崎という男がある政治家の家から現金と重要な書類を手に入れる計画を立てており、主人公は木崎に魅入られ断ることもできずにその仕事を引き受けてしまう。そして主人公の生殺与奪、今後の人生が木崎に握られてしまう・・・。

スリの描写がとても生々しく感じて、本当に著者が経験してきたかのようだった。主人公曰く、スリは本当は1人でやるものではなく、3人が基本で、ぶつかる役、周囲からその瞬間を隠す役、取る役と分担するのがいいらしい。そういうテクニックとか他にもスーパーでの万引きのやり方などもなんだか説得力があるので参考になった(もちろん実際にやるわけないし、やってもそんな簡単にうまくいくはずないし、ばれてタイーホされるでしょw)。一応最後に参考文献が載ってた。『スリのテクノロジー』とか。しっかり研究されているようだ。

あとはスリよりも重罪で凶悪な、強盗、殺人などを裏社会で仕切っている木崎という主人公よりも絶対的な悪、支配者が出てくるのが不気味だが、物語に重要な人物として出てきてよかった。この男が主人公に3つの仕事を強制させるが、主人公は断ることができない。断れば主人公が死ぬからだ。木崎は他人の人生を意のままに操ることをほかのどんなものよりも快感としている。そして木崎は主人公にこう言う。『お前は、運命を信じるか?お前の運命は、俺が握っていたのか、それとも、俺に握られることが、お前の運命だったのか。

裏社会の様相やそこに出てくる人物たち、そして自分のテリトリーではないやばい世界に足を突っ込んでしまった主人公の緊張感が何ともハラハラさせられ、ページも一気に進んだ。こういうのは『闇金ウシジマくん』みたいな感じで、怖い世界だなと思った。

この作品の兄妹編として『王国』というものがあるらしい。気になるのでこっちもチェックしてみよう。

著者の作品は他に読んだこともなかったので、本書はあまり期待してなかったけど、最近読んだ中で一番熱中して読めた作品かな。187ページと多くないのでさくっと読めるし、後半戦からスリルが増していって、なかなか面白かった。



掏摸(スリ) (河出文庫)
中村 文則
河出書房新社
2013-04-06

読むべき人:
  • スリ師の手口を知りたい人
  • 闇金ウシジマくんが好きな人
  • 運命に翻弄されている人
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