September 11, 2015

はじめての文学講義

キーワード:
 中村邦生、文学、小説、読む、書く
中高生向けの文学講義がまとめられた本。以下のような概要となっている。
読むことを楽しむにはどんな方法がある?魅力的な文章を書くにはどうしたらいい?その両面から文学の面白さ、深さを構造的に探っていく。太宰治をはじめ多種多様な文学作品をテキストにしながら、読むコツ、書くコツ、味わうコツを具体的に指南する。「文学大好き!」な現役の中学・高校生を対象にした「文学講義」をまとめた一冊。
(カラーの裏から抜粋)
なんとなく書店の新刊コーナーで見かけたので買った。岩波ジュニア新書は分かりやすくて、読みやすいものが多いので。

「文学作品」と示すといかにも明治、大正の文豪が書くような、教科書的なものをイメージしがちだけど、もっと単純に小説ととらえるとよいだろう。しかし、文学作品、小説を好んで読む人は勝手に読むが、読まない人は実用書だけでまったく読まないという人も多い。そういう人が大抵考えることは「文学は実生活では役に立たない」である。

著者曰く、単純な役に立つ/立たないという二項対立そのものの有効性を疑い、問題の前提そのものを突き崩し、文学は虚構の言語によって新たな現実を突きつけるとある。そして、世の中に流通している価値観への疑念を提示する役割があると。例えば善と悪に関してならば、本当に分かりやすい勧善懲悪なのかと問いただし、その単純な対立の構図を超えた向こう側を示すものとある(文学作品ではないけど、分かりやすい作品例で言えば、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の自ら救世主と名乗っていたイモータン・ジョーは本当に悪か?とかね)。文学はそういうものが丸ごと面白いのだと示されていた。

個人的な考えていえば、役に立つ/立たないという面では、表面上役に立たせることはできる。初対面の人との話のネタ(合コンとかでw)になったりして、意外な側面を演出することもできるし、他にも会社とかで上司がやたら文学好きだったら飲みの席でその話に合わせれば気に入られて仕事がしやすくなるかもしれないし。あとは、齋藤孝氏が小説を読むことによってあらゆる人物への接し方のシュミレーションになるとかなんかの本で示しており、その通りだなと思った。

あとは、やり直しがきかず一回性の人生を生きる上で、自分以外の生き方はできないが、小説を読むことで他人の人生を間接的になぞったりすることができ、不要な失敗や選択ミス、こう生きたくない、この方向性で生きたいと教訓を得ることができ、結果的に即効性はないがより良く生きるために役にたつだろう。まぁ、これは実際に読んで実感してみないことにはなかなかわからない感覚かもしれないけどね。

単純に読んでも面白いものが多いし(もちろん途中で投げるのもあるけど)、あぁ、読んでよかったと心の底から思える文学作品に出会うと、望外の喜びを得ることもごくまれにある。そういう経験を一度でもすると、文学作品を読まないで生きるという選択はもうできないだろう。上記の作品は本当に読んでよかった。また今が転換期だから読み返してみるか。

あとは、物語の構図に関してや比喩の楽しみ方などが各作品を引用しながらわかりやすく示されている。また、読むだけではなく、実際に小説を書いてみることも読むことの一方法であるなどなど示されており、参考になる部分が多い。

書評を利用し、ファイルを作る』という節では、新聞の書評欄を読む習慣をつけ、印象に残ったものに実際にメモを書いてみるとよいと示されている。また、好きな書店を持ち、その書店を定点観測するのがよいと示されている。これは僕もやっている。そして以下のように示されている。
 私は若い人たちにもよく言うのですが、新刊本というのは生鮮食品なんですよ。だから、書店に足を運ぶか運ばないかで、思考力と感性への栄養に違いが生まれます。そういう習慣さえもてば、自分が読むべき本、いずれ役に立つ本、人に薦めたい本が自然とわかってくるようになります。読むべき本を自分がすぐれたソムリエになって選択していく能力をつけていくと、日々の生活に深度が増してくることは間違いありません。
 本というものは、最高の対話の相手であり、頼りがいのある味方です。問いかければ、いつも何かを語りかけてくれます。
(pp.102-103)
生活の深度がどれだけ増したかは自分ではわからないけど、自分が読むべき本、いずれ役に立つ本、人に薦めたい本はさすがにわかってきたかな。

中高生向けに講義している内容なので、とてもわかりやすくさくっと読めて、小説や文学作品に対する向き合い方が変わると思う。お勧めのブックリストもそれなりに示されているので、そこからまた文学の世界にダイブすることもできる。

中高生でこれを読める人は羨ましく思う。もちろん、大人になってあまり文学作品を読まない人が読んでも、文学作品を読みたいと思う気にはなれるだろう。そしてよりよい人生を。




読むべき人:
  • 中高生の人
  • 実用書しか読まない人
  • よりよく生きるヒントを得たい人
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