September 16, 2015

牡蠣礼讃

キーワード:
 畠山重篤、牡蠣、宮城、紀行文、森
牡蠣のことが一通りわかる本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 Rのつかない月の牡蠣を食べよう!?
  2. 第2章 おいしい牡蠣ができるまで
  3. 第3章 世界の牡蠣を食べる
  4. 第4章 知られざる「カキ殻」パワー
(目次から抜粋)
のっけからどうでもいいことを示すと、僕はいつからかカキフライが好物になってしまった。初めてカキフライをタルタルソースで食べてからというもの、そのジューシーさが口の中に広がる旨さにすっかり虜になり、飲食店でカキフライが食えるときはとりあえず食べるというくらいになった。それくらいカキフライが好きで、9(SeptemberとRのつく)月に入ったということもあるので、牡蠣についてのこの本を取り上げる。

著者は宮城県気仙沼市唐桑で牡蠣養殖業を営んでおり、牡蠣の生体や旬、宮城県のカキ養殖の礎を作った人々の歴史、世界の牡蠣養殖についてなどなどがとても面白くエッセイ調に示されている。

まず、牡蠣の旬については、一般的に英語で『Oyster should not be eaten in any month whose name lacks an "r".』という”Rのつかない月の牡蠣は食べるな”という諺があるように、5月(May)から8月(August)は旬ではないとされている。その時期は、産卵期で食べてもまずいし、食中毒の影響があるからと言われている。著者曰く、これはヨーロッパヒラガキの産卵期の身の状態から生まれた諺らしい。曰く、5月から8月のヨーロッパヒラガキを開けてみると、ドロドロとした液状の卵が流れ、見た目も白、灰色、黒と変化して食欲も減退し、おいしくないようだ。

日本で食されている大部分はマガキ(カキ (貝) - Wikipedia)で牡蠣本来の味が出てくるのは、厳寒の2月、3月らしい。また、日本列島は南から北まで長いので抱卵する時期がかなりずれるらしい。よって産地によって食べられる時期が違うようだ。気仙沼も3月が旬で、水温の低いところに垂下しておけばマガキでも6月いっぱいまで楽しめるらしい。そして暑い季節に冷やしたワインと生ガキの取り合わせは最高だって。羨ましいかぎりで。

今ではオイスターバーなどに行けば、基本的に年中牡蠣が食べられるようになっている。養殖技術が発達しているというのもあるし、世界中の産地から輸入してくるというのもあるだろう。しかし、カキフライとなると、僕の観測だと定食屋がカキフライを提供しているのは大体9月から3月までとなっているね。一部海鮮系のお店は年中食べられるが、それは産地ごとの違いで取り寄せているか、もしくは冷凍保存で食べられるようになっているのだろうね。

あとイワガキは5月以降の夏が旬らしい。しかし、大きくなるには3,4年かかり、全国的に天然イワガキ資源が枯渇しているらしく、大きめのものなら東京だと1個千円はする高級品らしい。これはまだ食べたことがないので、いずれ試してみたい。あと逸話として松尾芭蕉はイワガキの産地を行程に選んでおり、イワガキを堪能していたのではないかという説は面白かった。

世界の牡蠣の話としては、50年以上前にフランスはヨーロッパヒラガキが多く獲れていたが、ウイルス性の病気によってほとんど全滅状態になってしまったらしい。そのときに世界的に知られた牡蠣博士、今井丈夫が宮城にいたことから、宮城産のマガキがフランスに輸出され、フランスの牡蠣生産者を救ったらしい。へーっと思った。今でもフランスでは宮城産が原種のマガキ獲れるようだ。

牡蠣が育つには豊富なプランクトンが必要で、そのプランクトンは海の水質がよくないとダメらしい。それには、河口に流れ出る水質が汚染されてはダメで森林の腐葉土を通った養分が海に流れてくるのも不可欠なようだ。そのため、著者は『森は海の恋人』と銘打って大川上流の山に広葉樹の植林運動も地道にされているようだ。食物連鎖だね。

本書は牡蠣全般が詳しく分かると同時に、著者の紀行文のようにも読める。世界の牡蠣の生産地で会いたい人がいると、とりあえず出たとこ勝負で行ってみると必ず会えるという引き寄せが何度もあったりで面白い。また、エッセイ調の文体がとてもよく、読ませる内容となっている。ところどころ著者の人柄が分かる小ネタがあって読んでいて飽きない。

牡蠣料理もレシピとともに随所に示されている。これはと思ったのは、オイスターショットというもの。アメリカのオイスターバーで提供されているもので、グラスにオリンピアガキを5個ほど入れて、トマト味のジュースを少しと5種類のスパイスを入れ、最後にウォッカのストレートを注いで一気飲みするらしい。これはいつか絶対試してみたい!!

本書は2006年出版となる。なので、2011年の東日本大震災のことは当然ながら示されていない。やはり東日本大震災で被害にあわれたようで、それからの復興については最近出版された以下の本に示されているようだ、こっちも読んでみたい。

本書は牡蠣好きなら間違いなく堪能できる1冊だし、何よりも著者の牡蠣への熱意というか愛情があふれる内容だった。



おまけ
都内の牡蠣がおいしいお店をちょっとだけ紹介。

カキフライに関しては、チェーン店が意外に健闘してて、個人的にはやよい軒がお勧め。ただし10月の中旬から3週ほどしか実施しない期間限定メニューなので注意。

また、カキフライ発祥のお店が銀座の煉瓦亭 (レンガテイ) - 銀座/洋食 [食べログ]にあって、一回行ったことがある。恐ろしいことに時価という値段設定だけど!?、実際にはカキフライ定食で2000円ほどするので高め。老舗価格。味は、思ったより驚きがなかったが、カキフライマスターになるためには行かなくてはだったw

ここのカキフライが一番おいしい!!と思ったのは西新宿のOYSTERS, INC. - 新宿/オイスターバー [食べログ]というお店。個人的にはオイスターバーのカキフライはどこもおいしくないと思っていた。なぜなら揚げ物料理がメインではないので、とんかつ屋とか定食屋に比べて揚げ方がいまいちだから。しかし、ここは本当に(゚д゚)ウマーだった。1粒300円もするけど、大粒で食べて損はない。

あと、しゃれたオイスターバーで生ガキとシャブリでマリアージュを楽しんだりするならオストレア Ostrea|Oyster Bar & Restaurantがいいかな。値段高めだけどどれもおいしい。Ostreaというのはラテン語で牡蠣を意味するんだ、とか薀蓄を垂れるにはよいデート向け!?のお店w

意外にもカキの天ぷらがおいしいと思わせてくれたのは、牡蠣と魚 海宝 高田馬場店 - 高田馬場/魚介料理・海鮮料理 [食べログ]。和食系で、カキフライ以外はどれもおいしかった。

他にもいろいろと地味に開拓したい。あとは気仙沼や広島などの日本の各生産地、さらにフランスやアメリカなどの世界の各地の牡蠣を堪能したいなと思う。



牡蠣礼讃 (文春新書)
畠山 重篤
文藝春秋
2006-11

読むべき人:
  • 牡蠣が好きな人
  • 紀行文のようなエッセイを読みたい人
  • オイスターバーで薀蓄を垂れたい人
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