September 19, 2015

ぼくは本屋のおやじさん

キーワード:
 早川義夫、本屋、奮闘記、客、仕事論
元ロックミュージシャンが書店経営を22年間やった奮闘記エッセイ。単行本は1982年に出版され、この文庫版は2013年と出版となる。

著者は23歳のときにロックグループを辞めて、生活のことを考えた時に本屋を始めることになった。その動機も単純で、会社勤めが向いていないようなので、店は小さく、たばこ屋兼本屋みたいな、できれば、好きな本を集めて、あまり売れなくてもいいような、ネコでも抱いて1日座っていればいいようなのどかで楽なものを夢見ていたようだ。しかし、やってみると現実は全然違って大変だった、ということがいろいろなエピソードとともにエッセイ型式で示されている。まず、売りたい本が必ず回ってくるわけではないという仕組みがあるらしい。これはどういうことかというと、書店が売り上げスリップという本の間に挟まれている短冊の半券を1年間に何枚出版社に送ったかで、出版社はその書店をランク付けする。そして、新刊配本の部数を決められて、取次から送られてくるらしい。なので、本屋というのは、売れなければ欲しい本が回ってこない仕組みになっているらしい。今もそうなっているかは知らないけど。

また、本屋にはいろんな人がやってくるらしい。銀行やレジスター、床磨き、新聞などセールス関係の人がよく来て、自分が何者かを名乗ることなく、いきなり責任者の方いらっしゃいますかとくるらしい。しかも自分が主人でレジをやってても、ご主人に会わせてくださいとか言われるから大変だ。

他にも変な客としては、いつも酔っぱらってお店に来て自慢げに偉そうなことを言ったりして、他の従業員を泣かせたりして嫌な客であるが、毎日やって来て、割と結構買っていく上客でもあったりする人や百科事典で調べるようなことを訪ねてきて、ただ見ちゃ悪いからといって袋詰めの飴を置いていき、一度も買ったことがない客もいるようだ。あとは立ち読みしに来たり、本が綺麗ではないとクレームをつけられたり、この本まだ入ってきてないの?と尋ねる書店として普通の客も当然来る。

僕もよく本屋さんやってみようかなとか妄想したりする。著者と同じように、小さいけれど好きな本、売りたい本だけ並べて、お店は他の従業員に任せて自分はどこかでひたすら読書しているという道楽的なものを。でもこの本を読んでみると、本屋さんは大変だなと思う。取次とか出版社との昔からの商習慣で売りたい本がなかったり、ダンボールで配本された本を整理するのは肉体労働だし、接客業だからいろんな人と対面しなくてはいけないのだし。そんな個人書店の苦労とか本屋の仕組みがとてもよく分かる。しかし、苦労だけが書店経営ではないということもちゃんと示されている。

著者がまた歌手に戻ろうと22年間経営していた書店を閉店するときについて、以下のように示されている。
閉店の日、僕は泣いてばかりいた。棚を見ているだけで、涙がこぼれて来た。これまでに、一度も喋ったことのないお客さんからも「寂しい」と言われたり、「残念です」とか「元気でね」と声をかけられた。花束や手紙をもらった。いつもよりずっと長くいて、棚をひとつひとつ丁寧に見て回る人もいた。何も語らず、たくさん本を買っていく人もいた。
 本屋での「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」の世界にも感動はあったのだ。小説や映画やステージの上だけに感動があるのではない。こうした何でもない日常の世界に、それは、目に見えないくらいの小さな感動なのだが、毎日積み重なっていたのだということを僕は閉店の日にお客さんから学んだ。
(pp.237)
なるほどと思った。

解説は大槻ケンヂ氏で、その解説もすばらしい。一部抜粋。
 どんな仕事も楽じゃありません、でもね、どんな仕事にも良さがあるんです、だから、がんばりましょうよ、と、早川さんの教える本書は、やはりシンプルでストレートなメッセージに満ちた素敵な一冊であると思う。
(pp.244)
そうだよねと同意したくなる。大槻ケンヂ氏も24歳の時にバンドを辞めて本屋さんになりたいと思ったそうだが、本書を読んで辞めたらしい。その理由もまぁそうだよねと納得したのであった。

本屋をなんとなくやってみたらどうなるのか?と脳内妄想(シミュレーション)したときの一つの参考事例がこの本に示されている。結局僕も本屋さんやっていくのは大変そうだし、今のところやることはないだろうなという結論になる(でも将来のことは分からないよ)。気楽にこのブログで好きな本について書いている方があっているし、何も面倒なことはあまりない。ただし、金にはならないからこれだけで食っていくのは現状無理だけどね。

自分で本屋をやりたい人は絶対読んだほうがいい。あとは本好きな人は小さな個人書店に対する意識も変わって、そこで本を買いたくなるかもしれない。本を書く人、編集する人、売る人、買って読む人など本に関わる人みんな読めばいいね。




読むべき人:
  • 本屋さんをやりたいと思っている人
  • 大型書店ばかり利用している人
  • 本が好きな人
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