October 14, 2015

馳星周の喰人魂

キーワード:
 馳星周、エッセイ、美食家、狂乱、旅
小説家による食エッセイ。目次は多いので省略。著者はハードボイルド系の小説を多く書いているらしいけど、まったく読んだこともなく、なんとなく図書館で食エッセイが読みたいと思ってこれを借りてみた。日本の地方や東南アジア、サッカー観戦のついでに寄ったヨーロッパ各地で食べたおいしそうな料理について、著者の様々なエピソードとともに1項目3,4ページで示されている。

とても興味深く読んでみたわけだが、なんだかとても羨ましいというか、ズルい!!みたいな感想を抱いた。食べているものが割と高級なものが多く、普段生活していたら食べられないようなものがほとんどだったから。

例えば『奇跡の料理人』というタイトルでは、編集者にとんでもなくうまいレストランに行こうと誘われて訪れたお店でオムレツリゾットというものが出てくる。これは元アメリカ大統領のクリントンが来日した時に、そこのシェフが提供して「信じられない。こんなに美味しい料理を食べたのは生まれて初めてだ」といわしめたらしい。このオムレツリゾットにはフォアグラとトリュフが含まれており、著者もクリントンと同様の感想を抱いたようだ。本書の冒頭に一部の料理のカラー写真が載っているが、このオムレツリゾットがとてもおいしそうである。一応お店の名前が載っており、どうやら以下のお店らしい。いつか食べてみたい。食べログを読んでみると、客単価3万円くらいで、一見客はコースのみしか食べられない高級店のようだ。

香港では広東料理のレストランで食べたマンゴープリンによって新しい世界が広がったが、1年後また訪ねてみたらシェフが変わっていて、味も変わってしまい、楽しみにしていたのに食べられなくなった話もある。また、フランスW杯の日本代表の応援のためにマルセイユに7月ごろ滞在した時は、生牡蠣を食べようと思ってお店に行ったら、シーズンではないので、ないと言われるが、生で食えるものとしてムール貝を食べたら爽やかな風味が口の中に広がり、「うまっ!」と感嘆したとか。

いつも高級店ばかりかというとそうでもなく、タイ・バンコクでは伝説の牛すじ麺を探し求めてスラム街のようなところのハエがたかっている狭いお店に行ったりもしている。そのお店の夫人が提供する牛すじ麺に著者はうまい!と感嘆するが、それは本来の味ではなく、真の味は店主の夫が出せるが、いろいろあってもう作らないと言っているらしく、結局真の味にはたどり着けずにがっかりしているエピソードもある。

また、いつも美味しいものばかり食べているわけでもなく、イングランドにスポーツ雑誌の企画でカメラマンなどと仕事で行ったときは、著者はイングランドは美味しいものがないと分かっていてホテルのレストランでチキンを頼み、カメラマンはペンネ・ゴルゴンゾーラを頼む。チキンはまぁ食えないほどではないが、ペンネは煮すぎてすいとんのようになっていて、味がしなくて食えたものではなかったとか。著者曰く、パスタは基本的にイタリアと日本以外は美味しくないらしい。覚えておこう。

軽井沢のレストランの話では、冒頭のオムライスリゾットを作るシェフの弟子が作った最高級の仙台牛のみすじ肉のステーキが出てくる。これは若きシェフが思いつきで揚げてみたら美味しいのではないかと試してみたらびっくりするくらい旨かったとか。いったいどんな味がするのだろうか?これは想像できない。

著者はハードボイルド系作家だけになんだか傲慢な物言いも示されている。とにかくうまいものに対しては妥協せずに貪欲でどこまでも行くというようなタイプ。そんでまずいものを食わされたら激怒するような、手におえないような美食家。読んでいて本当に美味しそうなものばかり(たまには外れも)出てきて、本当に羨ましい限り。食事制限しなくてはいけなくて、好きなものを自由に食べられない身としては特に。

小説家らしく、いろいろなエピソードもあったり、料理にたどり着くまでの話も面白いし、何よりも無性に食べたくなるような描写となっている。写真が載ってないものがほとんどだけど、食べたときの味まで想像できそうな気がする(フォアグラとかトリュフとか最高級の肉とか天然で上質の松茸や鰻なんか食べたことなんかないけどね)。

著者はさんざんたらふくおいしいものを食べてきて、最後に行きつくところはマクロビオティックだった。そこかよ!!と思ったりw そこはハードボイルド系作家としては食いたいものを好きなだけ食べて、痛風になったり糖尿病になったり、健康診断でいつも数値がやばいけど美食ためには後悔はない!!というくらいに突き抜けてほしかったが、まぁ健康のほうが大事だよねと。

著者曰く、肉、魚を食べる量を減らし、野菜、玄米を食べて、調味料に砂糖を使わないという食事を続けたら半年で7キロも自然と痩せて体調も良く、たまに外食で肉や魚を食べるととてつもなくおいしく感じられるとか。これは食事制限をしているからなんとなくわかる。減塩生活をしていると味覚が鋭くなって、何食べてもおいしく感じられるよ。

普段満足に食べられないから、このような食エッセイを読みながら脳内補完して精神的に食べているみたいな感じだった。著者が終始うまい!と感嘆しているのが続いて、無性に美味しいものが食べたくなるので、特に空腹時に読むのは危険な1冊。

そして、世界中に存在するまだ見ぬ未知のおしいものを食べる旅に出たくなる。



馳星周の喰人魂
馳 星周
中央公論新社
2013-05-24

読むべき人:
  • 美味しいものに目がない人
  • 色気より食い気な人
  • 世界中を食べ歩きしたい人
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