November 14, 2015

ペンギンの憂鬱

キーワード:
 アンドレイ・クルコフ、皇帝ペンギン、追悼、疑似家族、不条理
ウクライナの作家によるロシア語小説。以下のようなあらすじとなっている。
恋人に去られた孤独なヴィクトルは、憂鬱症のペンギンと暮らす売れない小説家。生活のために新聞の死亡記事を書く仕事を始めたが、そのうちまだ生きている大物政治家や財界人や軍人たちの「追悼記事」をあらかじめ書いておく仕事を頼まれ、やがてその大物たちが次々に死んでいく。舞台はソ連崩壊後の新生国家ウクライナの首都キエフ。ヴィクトルの身辺にも不穏な影がちらつく。そしてペンギンの運命は…。欧米各国で翻訳され絶大な賞賛と人気を得た、不条理で物語にみちた長編小説。
(そでから抜粋)
新潮クレストブックは好きなレーベルであるが、大型書店でもまとまって置いてあるところは少ない。本書は地元の紀伊國屋書店で面陳されていた。タイトルとイラストを見て、もうこれは直観的に面白いに違いない!!と思ってジャケ買いした。

主人公は40歳くらいで、売れない小説家で、短編小説ならいくつか書いたことがあるが、長編は書いたことがなかった。一人暮らしで、動物園で規模縮小のために引き取った皇帝ペンギンを飼っている。しかし、その皇帝ペンギンは後になって憂鬱症を患っていると知る。また、主人公は新聞社に短編小説を売り込みに行ったら、文才を認められるが、生きているわけありの大物の人物たちの追悼記事を書く仕事を依頼され、淡々と書いて、新聞社に届けていたところ、あるときその人物たちが次々と実際に死に始める。

また、新聞社の編集長の知り合いの男が友人の追悼記事を書いてくれとやってきて、その男の4歳くらいの娘、ソーニャを預かってくれと言い、主人公は引き取ることになる。後でソーニャのペビーシッターとして20歳くらいのニーナという娘も加わり、皇帝ペンギンと幼女と若い女性との共同暮らしが始まって淡々と日常が進んでいくが、次第に主人公の周りで事件が起きていく。

不思議な雰囲気の生活が描かれている小説だなと思った。ウクライナの首都キエフ - Wikipediaというところはなんとなくロシア的な陰鬱な街並みなのだと勝手に想像するけど、そこで主人公は派手な暮らしでもなく、かといって貧乏というほどでもなく淡々と追悼記事を書いている。朝目覚めてコーヒーを飲み、ハムとかの食事を作り、皇帝ペンギンのミーシャには冷凍のタラとかサケを皿に入れてやると勝手に食べる。時折風呂場に水を貼ってやると水浴びしたりする。ソーニャがやって来てからはペンギンと出かけて散歩したり遊んだり、ソーニャはミーシャの意思が分かるようでもある。

皇帝ペンギン(コウテイペンギン - Wikipedia)のミーシャは1メートルくらいの背丈であるが、物言わずペタペタと部屋の中を歩き回っている。犬のように特に主人公に対して愛情表現とか従順な態度を見せるわけでもないが、たまに主人公の膝当たりを抱きついたりする。本来南極で群れで生活するらしいが、1匹だけ南極より暖かいところにいるので憂鬱症を患っているらしい。そういうのも含めて、この物語はミーシャがとても重要な役割を担っている。また、ペンギンを飼うのもいいな、と思うけど、ペンペンではあるまいし現実的ではない。

何気ない生活を送っている主人公なのだけど、やはりこの作品は不条理作品であるので、人が死んだり、主人公が自分のあずかり知らぬところでいろんなことが勝手に進んで巻き込まれていく。そういうのが僕の好みの展開とテーマ性であった。そして訳者のあとがきに以下のように示されている。
 最近、村上春樹の作品が数多くロシア語に訳され、ロシア語読者の間ではたいへんな人気なのだが、クルコフも『羊をめぐる冒険』が気に入っているとのこと。じつは、本書を訳している最中、どことなく村上春樹の雰囲気に似ているような気がしてならなかった。読者の皆さんはいかが感じられたであろうか。
(pp.315)
これは中盤あたりから感じていた。会話とか日常生活の描き方とかコーヒーを飲んだり、「やれやれ」と言う部分とか。ここら辺は読んでみればわかると思う。また、この雰囲気がやはり僕の好きな感じでもあった。

今年に入ってから新潮クレストブックを多く読んでいる。ほとんど当たり。以下読んだものを列挙。表紙と紙質がとてもよく、もちろん中身もよいので上質な小説を読んでいるっていう体験ができる。これは電子書籍では味わえない感覚である(もちろん電子は電子の良さはあるけどね)。

僕の直観は正しかった。面白かったし、不条理作品で何とも言えない読後感が残った。



読んでいるときについついペンギンが見たくなって、上野動物園に行って見てきた。いるのはケープペンギン - Wikipediaで一回り小さい。

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本物の皇帝ペンギンを見ようと思ったら南極に行くのがよいのだけど、旅費で最低100万円はかかるらしいので無理そうなので、現実的にはアドベンチャーワールド名古屋港水族館で見れるらしいのでそこに行くべきかな。いつか行こう。




読むべき人:
  • 不条理系作品が好きな人
  • ウクライナでの不思議な生活を体験したい人
  • ペンギンが好きな人
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