January 22, 2016

Yコンビネーター

キーワード:
 ランダル・ストロス、ポール・グレアム、ハッカー、シリコンバレー、スタートアップ
Yコンビネーターというシリコンバレーのスタートアップ企業に投資するベンチャーキャピタルの実情が取材によってまとめられた本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 面接
  2. 第2章 YCパートナー
  3. 第3章 シリコンバレーに来い
  4. 第4章 女性起業家はなぜ少ない
  5. 第5章 クレージーだがまとも
  6. 第6章 アイデアに行き詰まる
  7. 第7章 新しいものを作り続けろ
  8. 第8章 エンジェル投資家
  9. 第9章 契約は必ず成立させろ
  10. 第10章 営業マン探しは難しい
  11. 第11章 プロトタイプ発表
  12. 第12章 ハッカソン
  13. 第13章 ピボットの決断
  14. 第14章 リスクと変曲点
  15. 第15章 共同創業者がすべて
  16. 第16章 残りあとわずか2週間
  17. 第17章 最終リハーサル
  18. 第18章 離陸準備完了
  19. 第19章 デモ・デー
  20. 第20章 最後の夕食会
  21. 第21章 ソフトウェアが世界を食う
(目次から抜粋)
Yコンビネーターというのは、ハッカーであり自身もスタートアップ企業Viawebを作成してYahoo!に買収されたポール・グレアムが率いるベンチャーキャピタルである。Yコンビネーターが投資して大化けした会社はDropboxHeroku Airbnb が代表格だ。Yコンビネーターはシリコンバレーにあり、スタートアップを志望する各ハッカーが所属するチームなりがこのベンチャーキャピタルのスタートアップ養成プログラムに応募する。そこでポール・グレアムたちによる面接で『新しいユーザがこのプロダクトを使ってみようと思う理由は?』など15の質問がされる。応募数約2000のチームから約64チームほどに選抜され、それらのチームは夏休みの3ヵ月間にそれぞれのアイディアを元に寝る、食べる、時々運動する以外の起きている間はひたすらプログラミングをしてサービスを作り上げる。

ポール・グレアムはスタートアップの創業者になるのに最適な時期を以下のように示している。
「32歳はおそらく25歳より優れたプログラマーだろうが、同時に生活コストがはるかに高くなっている。25歳はスタミナ、貧乏、根無し草性、同僚、無知といった起業に必要なあらゆる利点を備えている」
(pp.44-45)
集まってくるチームは大体20代が多く、一番若いメンバーでも18歳で、もちろん妻子持ちの30歳過ぎのメンバーもいる。参加者のほとんどはハッカーである。また、クラーキーというチームは面倒な法的な書類手続きを自動化するサービスを開発しており、メンバーはハッカーでかつ弁護士という強みを持つ。基本的にどのチームもプログラミングができるハッカーで構成されているが、他分野の研究者などでハッカーではないメンバーも含まれているチームもある。

Yコンビネーターは大学院の研究室のような集まりでもあり、オフィスアワーが設けられており、予約さえすれば各チームはポール・グレアムの助言を受けることができる。アイディアに行き詰まったチームは、ポール・グレアムに相談に行く。そして、アイディアを生み出すための3ヶ条としてポール・グレアムは以下のように示す。
  1. 創業者自身が使いたいサービスであること
  2. 創業者以外が作り上げるのが難しいサービスであること
  3. 巨大に成長する可能性を秘めていることに人が気づいていないこと
    (pp.127)
ポール・グレアムは客観的に時には過去の経験からの直観で各チームのアイデアや方向性に将来性がないものはダメだしをする。しかし、各チームのメンバーはダメだしされた後でも、ポール・グレアムとの相談のあとはやる気に満ちている。

また、ポール・グレアムは「急いでローンチしろ」が口癖である。
なにかアイデアを思いついたら最小限動くモデルをできるだけ早く作れ。作りかけのプロトタイプでもかまわない。とにかく現実のユーザーの手元に届けて反応を見る。そうして初めてそのプロダクトがユーザーが求めていたものなのかどうかがわかる。急いでローンチすることによって人が求めているものがわかるのだ。
(pp.142)
さらに「数字で測れるものを作れ」と示す。

各チームはそれぞれの当初のアイデアがそのまま進められるわけではない。大体3分の1ほどが方向転換を迫られて、急いで作り直しを要求される。そして3ヵ月の期間の最後のデモ・デーでは各チーム2分半ほどの時間が与えられ、他のベンチャーキャピタルなどが多数集まる前でプレゼンする。そこでうまくいけば、さらに数十~数百万ドルの資金を調達し、起業にこぎつけられる。2011年の学期ではデモ・デーの1週間前にはまともなコンテンツもなくプログラミング学習をオンラインでやるというチームがあったが、ローンチしてみるとユーザー数を劇的に獲得し、250万ドルの資金を獲得して成功した。それが Codecademyとなる。

これらのYコンビネーターのスタートアップ養成プログラムの内情が著者の綿密な取材によってノンフィクションとしてまとめられている。これはシリコンバレーに行ってそれぞれのスタートアップチームと一緒にひたすらプログラミングをし、行き詰ったらポール・グレアムのところに相談に行き、他のチームのプロトタイプ発表を聞きながら称賛を送ったり自分たちと比較して焦ったりし、最後のプレゼンでベンチャーキャピタルから投資を受けるまでを一緒に疑似体験しているような本で、これはスゴイ!!と思った。

60チーム近くのスタートアップが一同に集まってひたすら3ヵ月間缶詰になってプログラミングできるシリコンバレーのこの環境がとてもうらやましいと思った。別に僕はハッカーでもなく起業精神も皆無なのだけど、なぜこの場にいないのだろう!?と思わされた。こんな環境にいられたらたとえ失敗しても(ポール・グレアムはもほとんどは失敗するだろうと示している)人脈も含めて大きな経験になるだろうなと思った。また、このような場が提供されているからこそアメリカのスタートアップ文化は強いのだろうなと思った。

ポール・グレアムの的確な意見がとても勉強になっていろいろと線を引きまくった。ハッカーというとプログラミングだけに精通しているイメージがあるが、サービスなりをローンチして、顧客と話をしろ、営業に強くなくてはダメだという助言や人間系の部分や経営についても言及されており、スタートアップ起業家のハッカー像は全然別物なのだなとわかった。そして、それらの助言はWebサービスをやっている人やこれから起業しようとする人には間違いなく勉強になる内容だ。

また、本書を読んでいると自分も何かサービスなりを作って起業してみたいと触発される。しかし、ポール・グレアムは以下のように示している。
スタートアップの創業者、すくなくともYCが求めているようなハッカーの創業者は13歳ごろからプログラミングを始めている必要がある。
(pp.102)
むしろ13歳は遅いくらいだ、とも示していて、18歳からプログラミングを始めてそこまで入れ込んでプログラミングができない自分にはもう手遅れだなと思ったのであった。しかし、2015年の冬季では参加者の平均年齢が約30歳とあり、もしかしたら必ずしも13歳からプログラミングに触れていることが必須ではないのかもしれない。なので、今大学生くらいでプログラミングをガッツり勉強していて、将来は自分で起業したいと思う人は絶対これを読め!!と言っておこう。これを読んでシリコンバレーに行くという選択肢が目の前にあるということを知っておいて損はない。

ちなみに本書は前回読んだ以下の本で取り上げられていたので、気になって買ってみた。また、本書を読む前提としてポール・グレアムがどういう人物かを知っておくのがよいので、以下のエッセイをあわせて読むのがよい。本書はアメリカのシリコンバレーのスタートアップがどのように生まれているのかがよく分かるノンフィクションであり、またWebサービスなどを従事している人にはとても勉強にもなるし、アメリカのスタートアップへのベンチャーキャピタルの実態も分かるし、起業経営的な部分も勉強になるし、Yコンビネーターのプログラムを疑似体験しているようですごく面白い。なによりも、読んでいると野心に火をつけられるような、そんな1冊。

大抵のビジネス書はそんなにお勧めはしないのだけど、これは絶対勉強になるし面白いのでMust Buyだ!!




読むべき人:
  • ハッカーを目指している人
  • 将来Webサービスなどで起業したい人
  • くすぶっている野心に火をつけたい人
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