April 24, 2016

リーン・スタートアップ

キーワード:
 エリック・リース、MVP、仮説検証、ピボット、スタートアップ
リーン・スタートアップというビジネスの開発手法について解説されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1部 ビジョン
    1. 第1章 スタート
    2. 第2章 定義
    3. 第3章 学び
    4. 第4章 実験
  2. 第2部 舵取り
    1. 第5章 始動
    2. 第6章 構築・検証
    3. 第7章 計測
    4. 第8章 方向転換(あるいは辛抱)
  3. 第3部 スピードアップ
    1. 第9章 バッチサイズ
    2. 第10章 成長
    3. 第11章 順応
    4. 第12章 イノベーション
    5. 第13章 エピローグ ― ムダにするな
    6. 第14章 動きに参加しよう
(目次から抜粋)
リーン・スタートアップというのは、『リーン(lean)』、つまり「余分な肉がなく細い」意味の語源からきているビジネス上の開発手法であり、元シリコンバレーのエンジニアである著者によって提唱された。詳細については以下参照。ソフトウェアの世界では開発手法としてアジャイル開発手法がある。本書そのものは、どちらかというと著者のアジャイル開発経験をもとに、プロダクトそのものの開発や企業の在り方までに対象を広げ、起業という分類にとどまらず、企業の規模や発展段階を区別せずアントプレナー的に何か製品開発をする人に向けてリーンスタートアップとして再定義されたものとなる。

著者はインスタントメッセンジャーの開発をするときに、事前に練った事業戦略と製品開発の無駄をなくせるはずだ、と信奉していたアジャイル開発手法で作っていった。しかし、そもそもの仮説が間違っており、実際の顧客となる人に使ってみてもらったところ、顧客が欲しいと思っている機能ではなく、6か月分に及ぶコード量は無無用の長物となってしまった。その経験から、リーン・スタートアップの中核として以下が示されている。
リーンな考え方における価値とは顧客にとってのメリットを提供するものを指し、それ以外はすべて無駄だと考える。
(pp.69)
言われてみれば、まぁ、そうだよねと思うのだけど、実際に製品開発時の始まりでは何が顧客にとっての価値か、メリットか?などは分かるものでもない。なので、以下のように仮説と検証を随時やっていくことが重要になるようだ。
 一番のポイントは、どのような業界であれスタートアップは大きな実験だと考えることだ。「この製品を作れるか」と自問したのでは駄目。いまは、人間が思いつける製品ならまずまちがいなく作れる時代だ。問うべきなのは「この製品は作るべきか」であり「このような製品やサービスを中心に持続可能な事業が構築できるか」である。このような問いに答えるためには、事業計画を体系的に構成要素へと分解し、部分ごとに実験で検証する必要がある
(pp.79)
検証には定量的にデータを取っていく必要があるようだ。

そして、次のステップで構築フェーズに入り、実用最小限の製品(minimum viable product)、通称MVPを作っていく。これは、最小限の労力と時間で開発できるもので、最低限必要な機能のみを実装し、すぐに顧客に見せて反応を得るというフェーズである。XPなどの開発手法ではYou Aren't Going to Need It.(必要なことだけ行う)やオンサイト顧客ですぐ見せられる状況にしておくなどが近いプラクティスとなる。

そもそもなぜ本書を読んだかというと、転職してそうそう所属部署での新規事業プロジェクトの中核要員としてアサインされて、このリーン・スタートアップの考え方で行こう!!となったので、プロジェクトメンバーの共有認識としての必須図書となったからである。2011年提唱なので、あまりまだ一般的に浸透していないのもあって、あまり知らなかった概念ではあるが、XPベースのアジャイル開発を少し経験したことがあり、ケント・ベック本を読んだことがある身としては、割とすんなり受け入れられる概念だったと思う。

ただアジャイル開発手法は、ある程度要件が固まっているもの(もちろん変化を受け入れつつ柔軟に対処するのが前提だけど)に対して『どう作るか?』に主眼に置いているが、リーン・スタートアップはどちらかというとビジネスモデルやアイデアの部分の『何を?』をメインで扱っているのが異なる。そのため事業がある程度進んでスケールできず収益が見込めないとなると、思い切って『Pivot(方向転換)』が必要になってくる。そういうソフトウェアの開発とビジネスの開発の微妙な違いがあったりする。

本書の内容自体は著者の実体験やその他シリコンバレーのさまざまな企業の事例が載っており、その辺は参考になるが、ボリュームが多く、一気に読まないと内容を忘れてしまいがち。あとは図解が少なく、全体像を把握するのに若干時間を取られる気がする。

まだ転職して2ヵ月も経ってはいないのだけど、こういう新規事業に携われるチャンスが巡ってきた。転職活動中に『Yコンビネーター』を読んでいたのも影響してそこに引き寄せられていったのかもしれない。さらにもっと言えば、Yコンビネーターを読むきっかけとなったのは今年の年始に読んだ『戦略読書』であり、ここからリンクして今に至っている気がする。ちなみに『戦略読書』にも本書『リーン・スタートアップ』が起業・応用編として取り上げられている。

まだプロジェクト自体は始まったばかりで、要件定義や仮説を設定している段階で、MVPを回すまでに行っていないのだけど、いろいろな経験が積めそうで不安よりも期待のほうが上回っている。社内ベンチャー的でもあり、大変なのは間違いないが、ここでビジネス観点でもシステム開発観点でも経験値を積んでおきたい。

類似のリーン・スタートアップ本はいろいろあるが、オライリー社から出ているものがより実践的、システム開発よりの内容のようなので、こちらも合わせて読んでおきたいところ。

直近1年、このリーン・スタートアップを基本に新規事業を回せていけるかどうか、確かめていきたい。



リーン・スタートアップ
エリック・リース
日経BP社
2012-04-12

読むべき人:
  • リーンスタートアップについて知りたい人
  • アジャイル開発を経験したことがある人
  • スタートアップビジネスをやりたい人
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