August 07, 2016

マシアス・ギリの失脚

キーワード:
 池澤夏樹、政治、日本、魔術、運命
幻想的な長編小説。以下のようなあらすじとなっている。
南洋の島国ナビダード民主共和国。日本とのパイプを背景に大統領に上りつめ、政敵もないマシアス・ギリはすべてを掌中に収めたかにみえた。日本からの慰霊団47人を乗せたバスが忽然と消えるまでは…。善良な島民たちの間でとびかう噂、おしゃべりな亡霊、妖しい高級娼館、巫女の霊力。それらを超える大きな何かが大統領を呑み込む。豊かな物語空間を紡ぎだす傑作長編。谷崎潤一郎賞受賞作。
(カバーの裏から抜粋)
去年の9月に休職しているときに池澤夏樹の作品である『バビロンに行きて歌え』を読了したときに、『マシアス・ギリの失脚』もスゴ本だからとおすすめされたので、買っておいて、積んでおいた本。また、絶版になる可能性があるから見つけたら買っておいたほうがいいという助言もいただいた。Amazonで買ったけど。現時点で3冊在庫アリっぽい。

長い小説をなんとなく読みたかった。そろそろ読み時かなと思って読んだ。読了には2ヵ月も要した。2ヵ月もかかったらあんまり没頭できていないような感じもするが、そうではない。やはり文庫で600ページ超と長いからというのも大きな理由だけど、熱中して読みすぎると疲れるというのがあった。不思議な魔力が込められているような感じで、精神力を要する、そんな作品。決して読みづらいという感じではないのだけど。

主人公のマシアス・ギリは60歳過ぎの小柄なナビダード共和国の大統領であり、その国はかつて太平洋戦争時に日本軍が占領したとされている。日本から47人の慰霊団がやってきて、その慰霊団を乗せたバスがどこかに消え去り、島の民家そばや海の上を走る姿など不思議なところで目撃される。マシアス・ギリは日本からやってきた政府系企業の使者と会い、またほれ込んでいるアンジェリーナという女が経営する娼館に入りびたり、そこでエメリアナという少女と出会い、マシアスの運命は失脚に向けて動き出す…。

あらすじを示そうにもあまりにも重厚でいろんな要素が盛り込まれている作品なので、なんとも形容しづらい。この作品はマジックリアリズム的で、読んでいる途中でも日本人でもこのようなものを書けるのか!!と感嘆していた。間違いなく『百年の孤独』を意識しているというか、それをベースとした著者なりのマジックリアリズムを紡ぎだしている。『世界文学を読みほどく (新潮選書) [単行本]』で確か『百年の孤独』を傑作と称賛していたので(10年くらい前に読んだのでうろ覚え)。

200年前にこの国にいた幽霊がマシアスの意見役でいろいろと議論していたり、その島の神話的な話が挿入されたり、消えたバスの動向が示されているリポートも独立して存在したり、島の祭事をつかさどる巫女の存在、魔術的な力を持つ人物なども出てきて、現実的な政治の話と超現実的な見えない力に翻弄される話が入り混じっている。また、マシアスも含めた人物の背景描写も延々と長く続いていくので、物語を奥行きを演出し、そして超現実的な事象もさえもそこに当然のようにあるように仕立てられ、ナビダード共和国が構築されている。

1点読み始める前に注意が必要なのは、物語の終盤の盛り上がっているところに唐突に『薔薇の名前』と思われる作品のネタバレ的な内容があるキャラの会話によって示されていること。リアルでファッ‼!!?って声を出しそうになったwいくら著者が世界文学に精通されていても、ネタバレ的な要素で盛り上がりを演出するのはいかがなものかと思った。それは積読してて未読なんだけど…。もうしばらく塩漬けにしておく必要がありそうだ。しかし、未読なのだから本当にその作品のネタバレなのかは確信がないのだけど、十中八九そうだろう。

暑い南の島の話だから、夏休みに一気に読むのがいいかもしれない。はまれば徹夜本らしいので。速く読んでもゆっくり読んでも、どちらにしろ読むのには時間がかかるが、神話的で幻想的でもある物語の世界にしばらくダイブしたままになれる。




読むべき人:
  • 長い物語を読みたい人
  • 幻想的な物語が好きな人
  • 夏休みに運命を感じたい人
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