学術系

April 21, 2007

格差社会スパイラル


格差社会スパイラル コミュニケーションで二極化する仕事、家族

キーワード:
 山田昌弘、伊藤守、格差、コミュニケーション論、ビジネス、社会学
格差論の第一人者の社会学者とコーチングが専門の経営者の共著。コミュニケーション論を軸に格差論が展開される。

世の中格差が広がっているが、コミュニケーション能力があるかどうかで仕事、家庭、教育においても格差が広がっていきますよという内容。コミュニケーション能力があるというのは、ぺらぺらしゃべれることではなく、人が何を欲しているのかを察知し、真摯に聞いたり適切に質問できることというようにある。この能力があるかどうかで、大きく稼ぐことができるかどうかが決まってしまうようだ。

そして社会で成功するには以下の3つの『C』が必要とある。
  1. 「クリエイティビティ(Creativity)=創造性」
  2. 「コミュニケーション(Communication)=相手の欲求を見抜く」
  3. 「クール(Cool)=美的センス」
社会学者である山田氏が世の中の格差の現状を解説している。例えば、正社員よりフリーターのほうがパソコン能力が劣るということや、グローバル化による情報が瞬時に流れる経済システムであるニューエコノミー時代において、単純労働者は使い捨てにならざるを得ないということなど。これらが統計情報とともに示されている。また、一度フリーターになるとそこから抜け出すことは難しく、再チャレンジが難しい社会であり、そのようなフリーターは単純労働を誇大妄想的な夢によって耐えている現状があるとある。厳しい世の中だなと思った。

一方、コーチングが専門である伊藤氏は組織内においてのコミュニケーションのあり方などを論じている。例えばコミュニケーションにおいてはフィードバックが重要であるとあったり、上司は部下に対して質問するときにYESと強要することはするべきではないとある。経営者らしい視点だと思った。

それぞれ別の視点から論じられていて参考になる部分もあるが、逆になぜ共著にしたのだろうかと思わないでもない。なんというか、各章ごとに著者が変わっているので、全体的に内容の流れが悪い気がする。

読むべき人:
  • コミュニケーションについて知りたい人
  • 格差論に興味ががる人
  • 下流になりたくない人
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February 12, 2007

働こうとしない人たち


働こうとしない人たち - 拒絶性と自己愛性

キーワード:
 矢幡洋、心理学、就業、自己愛、個性、輝き
臨床心理士による、働こうとしない若者たちの心理状態を分析した本。以下のような内容となっている。
  1. 二人のパラサイト―やりたいことの「なさすぎ」対「こだわりすぎ」
  2. 依存性から反社会性までの各パーソナリティーの布置
  3. 拒絶性スタイル―消極的抵抗
  4. 自己愛性スタイル―ファンタジー
  5. 「私らしさ」飢餓社会の落とし穴
若者が就職しない理由としては、就業環境が悪いという側面もあるが、心理的な問題もまったくないわけではなく、本書ではその心理的側面を分析している。そしてその心理状態を分析することで、自立的グループと依存的グループがいるということが示されている。自立的グループが自己愛性スタイルとなり、「自分がやりたいこと」にこだわりすぎて仕事が選べないという状態になる。また逆に依存的グループは拒絶性スタイルとなり、「自分がやりたいこと」がなさすぎて仕事につけないと示されている。

正直あんまり得るものが少ないかなと思った。カウンセリングにやってくる人たちとカウンセラーとのやり取りが多く示されている反面、それらの人に対して具体的にどのようにすればよいのかといったことがあまり示されてない。

最終的には、個性個性と人と違うことをよしとする消費社会に影響を受けた若者がこのような側面に陥っていることは否定できないとあり、それはその通りなのかなと思った。個性個性というが、何が個性なのか示してこなかったしわ寄せが若者に来ているのかもしれない。

読むべき人:
  • なぜか働きたくない人
  • 心理学が好きな人
  • 個性的であることが全てだと思う人
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January 29, 2007

社会人のための「本当の自分」づくり


社会人のための「本当の自分」づくり

キーワード:
 榎本博明、心理学、自己物語、自分、過去、解釈
心理学者による自分らしい人生を創造していくのに有効な「自己物語」を提唱している本。昨今の30代まで含めた若者は、自分がなにがしたいのか分からず、このままではダメだと焦ったり不安になったりしているが、具体的にどのように行動すればよいか分からないという状態なったりしている。そして自分自身である自己が安定せず、空虚感に犯されて自己の希薄化が進むと、充足した人生を歩めなくなってしまう。そこで、そういう状態に陥らないために「自己物語」という方法が提唱されている。

自己物語というのは、自分自身はどのような生き方をしたいのかといった個人の生き方を主眼に置き、生活するうえで起こるさまざまな出来事に自分なりの解釈をして意味を見出すことで、アイデンティティは物語として保持されているという考えのようだ。そこから日々の行動に意味を与えることができる自己物語の形成が人生の充足につながるとある。

生きるうえで降りかかってくる不幸な出来事なども過去の出来事になる。そのときにその過去をどのように解釈するかで、前向きに生きられるかどうかが変ってくるようだ。以下その部分についての引用。
 過去に経験したことがらを消し去ることなどできないし、別の出来事と置き換えることもできません。でも、過去を振り返る視点が変ることで、想起される過去の様相が大きく変化することがあります。人は振り返ることによって自分の過去のもつ新たな意味を発見することができるのです。
 つまり、不幸な色づけをされた出来事を自伝的記憶として抱えている人も、今の視点を変えることによって、その出来事のもつ肯定的な意味に気づき、不幸な過去へのとらわれから解放されることができるのです。そして、ずっと楽な姿勢で生きられるようになったり、力強く前向きに生きる姿勢がとれるようになったりするのです。
(pp.96-97)
ここが一番なるほどと思った。

そして現状に満足できないことから自分を受身的に探したりするのではなく、自分から動き出して自分をつくることが重要だとある。具体的には、例えば消極的な自分を積極的に変えたいと思うなら、演技をするように積極的に振舞うようになれば少しずつ積極的に変わっていけるということや、人生設計において、仕事や自分の能力性格、自分が何をしたいのかを明らかにしていく必要があるとある。

最後には、現在の自己物語をチェックする質問項目がいくつかある。今の生活のどんなところが不満なのかといったことや、将来にどのような夢があるのかといった項目であり、それらの答えを書き込めるようになっている。なんだか就職活動中に行った自己分析のようでもある。

過去の記憶の解釈しだいで今の現状をよりよいものにしていけるという考えが分かってよかった。

読むべき人:
  • 空虚感や満たされない思いに覆われている人
  • 就職活動中の人
  • 自分自身が分からないと思う人
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January 21, 2007

「普通がいい」という病


「普通がいい」という病―「自分を取りもどす」10講

キーワード:
 泉谷閑示、心理療法、マイノリティ、言葉の手垢、角
精神科医である著者が、普通である存在として生きにくさを感じているマイノリティの心理状態を分析している本。かなりよい本だと思う。線を引く部分が多かった。

精神科医としてカウンセリングを行ってきた立場から、世間一般で考えられている普通という状態や、わがまま、絶望という状態を一度疑ってみるという立場から、それらの言葉の手垢をそぎ落とし、よりそれらの本質を突き止めていこうとしている。そこで、それらの状態を図解することで、精神世界の現象を一般人にも分かりやすく説明している。内容的には以下のようになっている。
  1. 不幸印のギフト〜病・苦しみの持つメッセージ〜
  2. 言葉の手垢落とす
  3. 失楽園〜人間の苦しみの起源〜
  4. 捻じ曲げられる人間〜コントロールという病〜
  5. 精神の成熟過程〜駱駝・獅子・小児〜
  6. 愛と欲望
  7. 内なる太陽〜自家発電する愛〜
  8. 生きているもの・死んでいるもの
  9. 小径を行く〜マイノリティを生きる〜
  10. 螺旋の旅路〜自分を求め、自分を手放す〜
どこかで講演や講義をしたものがベースとなっている。どの章も人間の精神の本質が紐解かれているような気がする。

最初の章では、健康であることや葛藤することはどういうことかが示されている。健康に関しては、健康であることを意識しすぎていることが不健康であり、それを忘れている状態が健康であるといったことや、葛藤できるという状態は、自分の望むものと相容れないものが抑圧されず意識されている状態で、悩める状態こそが健康な状態であると示されている。つまり病的な安定よりも健康な不安定に持っていくことが治療本来の姿であると示されている。そんなものなのかと思った。

また、病気に関することで、病気をどのように捉えるべきかということが示されている部分がある。以下にその部分を若干長いが引用する。
私は「病気に何らかのメッセージが込められている。そしてそのメッセージを受け取ることが出来れば、その病気は消えていくはずだ」と、考えるようになりました。
 そう考えるようになってから、
<病気や苦しみとは、天からのギフトのようなもので、その中にとても大切なメッセージが入っている。だが、それは《不幸印》のラッピングペーパーで包まれているので、たいていは嫌がって受け取られない。しかし、それは受け取らない限り何度でも再配達されてきてしまう。
 思い切って受け取ってその忌々しい包みをほどいてみると、そこには、自分が自分らしく生きていくための大切なメッセージが見つかる>
(pp.35-36)
そんなものなのかと思った。ここが一番強く印象に残っている。自分自身腎臓を病んでいるので、そこから何かメッセージを受け取らないといけないようだ。

他にも、人間の仕組みとして、「頭」と「心」と「身体」の役割と関連が図解されていてなるほどなと思った。

また愛と欲望、孤独であるということについて、それらはどのような状態であるのかということが示されている。これらはやはり世間一般で通用する定義とは違い、著者独自の定義となっていて、なるほどなと思った。

また、マイノリティとして生きるとはどういうことかということも説明されている。マジョリティとして生きるということは、自分の人生に責任を負っておらず、他者に追従するだけの去勢された状態で歩いているという存在であり、マイノリティとして生きるということは、どちらの道へ進もうかということを自分で判断しながら一つ一つ選択して、道なき道を行くことだとある。これこそが、自分らしく生きることであるというように示されていてなるほどなと思った。

さまざまな心理状態や考え方を示すためにあらゆる分野からの引用がある。詩であったり、ニーチェであったりルソー、フーコー、夏目漱石、聖書、歎異抄、インタビュー記事など。特に詩が多く引用されている。なぜ詩なのかということが示されているが、著者によれば、正常と異常の境界線上にあるような視点や言葉が、詩で作られているからであるとある。また、詩に限らず、このような境界線上にいるような視点で物事を見ることが出来るということが力強く生きていくうえで必要なことだとも示されている。

どこもなるほどと思うような部分が多かった。特に、自分自身はマイノリティなのだということを再認識した。生きにくさを感じていたけど、それはそれでいいんだと思えるようになった。ただ、このようにすれば生きやすくなるというようなマニュアル的なことは一切か書かれていない。それに従って生きるということは、自分の人生を放棄するようなものだからだろう。そんなことはカウンセリングを行う立場である著者は望んでいないようだ。

読んでよかったなと思った。気が楽になった。なんだかカウンセリングを実際に受けたような気がした。

読むべき人:
  • マイノリティとして生きにくさを感じている人
  • 弁証法的な考え方が好きな人
  • カウンセリングや精神世界に興味がある人
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January 20, 2007

欲望解剖


欲望解剖

キーワード:
 茂木健一郎、田中洋、ニューロマーケティング、欲望、不確実性
脳科学者とマーティングが専門のビジネススクールの教授による人間の欲望について論じている本。なかなか興味深い内容だった。

はじめに茂木健一郎氏が脳科学者の立場から欲望の根源的な部分について論じている。例えば、欲望を感じるときには脳内物質ドーパミンがA10神経を刺激しているといったことや、何かを生み出したりする時に必要な創造性というものは体験と意欲のかけ算による部分が大きいといったことや、夢と記憶の関係などを科学者らしい視点で解説している。

一方2章では田中洋氏がマーケティングの歴史的な背景からiPodやディズニーなどに見られるような情報を物として売ることで、希少性を高めることで成功したということなどを解説している。

そして3章では両者の対談形式によって人の消費スタイルや大学などの学校制度や消費行動においての自己のアイデンティティなどについて議論されている。

自分が特になるほどと思ったのはマーケティングの本質について田中氏が語っている部分。以下その部分を抜粋。
そういう意味で、商品の物性的な作用は同じであっても、そこにどう意味付けをしていくかによって、我々が接しているものの意味がまったく変ってしまったり、意味付けをうまくマネージメントすることによってものが売れたり売れなかったり、というところが、マーケティングの非常に面白い点ではないかと思うんです。
(pp.104)
ここがブランド的な価値に通じるのだなと分かってなるほどと思った。

143ページしかなく、図やイラスト、脚注があるのでそこまで難しくはない。とはいっても思想家や科学者や社会学者の名前が多く出てくるので、そこは気後れするかもしれない。

読みやすい反面、対象としているものが結構散漫な気がした。もっと深く突き詰められたものが出てきたら、それはそれで面白いかもしれない。この分野はまだ始まったばかりのようなので、今後に期待しよう。

読むべき人:
  • 脳科学が好きな人
  • マーケティングについて知りたい人
  • 欲望について知りたい人
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January 02, 2007

どんな時も、人生に意味がある。


どんな時も、人生に意味がある。―フランクル心理学のメッセージ

キーワード:
 諸富祥彦、心理学、フランクル、人生論、意味、カウンセリング
カウンセラーで大学教授である著者の人生論の本。以下のような内容となっている。
  1. なぜ、すべてがむなしいのか
  2. 欲望を満たしても、心は満たされない
  3. ”生きている実感”を取り戻したい
  4. 「生きる意味」は、すでに与えられている
  5. 自分の「なすべきこと」を見出す方法
  6. あなたを必要とする”誰か”のためにできること
  7. 「運命の受け止め方」次第で、人生は変わる
著者の中学生くらいの苦悩体験から、ヴィクトール・E・フランクルの考え方を取り入れた著者の考え方が述べられている。

著者は若いあるときに生きる意味を問い続ける苦悩の状態にい陥り、そこからその意味が自分なりに納得する過程が載っていてなるほどと思った。また、幸福を求めれば求めるほどに逃げていくというパラドックスも示されている。

最終的には、肯定的に自分の人生を受け止めて行くことが重要とある。また、人生の意味はすでに与えられていて、それを見つけられるようにじっくりと待つことも重要だと示されていた。

また、一番なるほどと思った部分を以下に抜粋。
 そして、これもクライエントの方々から教わったことですが、今は変われないとしても決して人生を諦めてしまわないこと。
 あんまり頭で考えて、自分を追い込んでしまわないで、”この人生には、よくわからないあいまいなことがたくさんある”ということを覚えておいて、チャンスが訪れるのを辛抱強く”待ち続ける”ことです。
(pp.246)
著者の本はよく読むが、『人生に意味はあるか』のほうが、自分にはぴったりだった。こっちもお勧め。

読むべき人:
  • むなしさや寂しさを時折感じる人
  • 生きがいや充実感が感じられない人
  • 人生に意味はないと絶望している人
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December 05, 2006

新平等社会―「希望格差」を超えて


新平等社会―「希望格差」を超えて

キーワード:
 山田昌弘、希望格差、格差社会、不平等、社会学、構造的閉塞感
希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』の著書がある、社会学者の本。『希望格差社会』が格差の現状を分析した本なのに対して、この本は、その現状を踏まえて具体的にどのように対処すればよいかということが主に書かれている。

希望格差がこの本のキーワードになるが、希望とはどのようなものかが分かる部分を以下に引用。
「希望とは努力が報われると思うと時に生じる、絶望は努力してもしなくても同じだと思う時に生じる」という社会心理学者、ランドルフ・ネッセの言葉をよく引用してる。自分の努力が、周りの人から評価される、将来評価されると期待されるとき、人々は希望をもって人生を生きていくことができるだろう。しかし、自分の日常生活で努力しても、しなくても同じだと思ったり、努力が無駄だったと思う機会が増えれば、絶望感が人生を支配するだろう。
(pp.123-124)
希望格差社会というのは、努力をしても報われる人と報われない人に分裂する社会のことで、社会システムの変化が原因のようだ。そして、その希望格差が根本的原因になり、フリーターと正社員の格差、高等教育を受けても必ずしも報われない格差、収入が多くないと結婚できない格差、また、結婚したとしても安定した生活を気づけるとは限らない格差などが出現してくる。この本は、それらの格差の根本的原因を分析しつつ、ではそこからどうすればよいのかといったことが示されている。

例えば、フリーターや派遣社員などの昇進や能力開発の機会がない「非正規雇用」の人々の支援では以下のようなことが提言されている。
  1. 生産性の低い職に就く期間を短くする
  2. 生産性の低い職の中で徐々に昇進できる道をつくる
  3. 生産性の高い職に就くための教育訓練の機会と「報い」を保証する
  4. 生産性の低い職を少なくし、生産性の高い職を増やす
これらの提言がどこまで効果が出るのかは正直分からない。そもそも、この格差構造は一面的ではなく、重層的な構造になっているので、これらを改革するのはかなり難しいのではないかと思う。また、日本はそこまでおかしな社会構造になっているんだとも思う。

最終的には、単純な格差が問題にならないような、希望格差が起こらない社会構造を作ることが重要だとある。

学術書らしく、統計結果を示しすために表やグラフが多く出てくる。ところどころで著者の私見が入るが、かなり客観的な分析なのではないかと思う。

確かに努力が報われる社会のほうが健全だとは思う。しかし、この本の本質は希望格差について論じられているが、何を持って努力というのかという部分についてはあまり書かれていない。時代や社会システムが変遷すると、過去に認められていた努力が現在では通用しないものとなる。例えば、いくら日本史などの暗記力が高くテストで高得点を取れるとしても、Googleなどの検索技術の出現により、いかに情報を引き出すことができるかということに価値が見出される世界では、記憶力などそこまで重宝されない。重要なのは、世の中の社会情勢を把握しつつ、ニーズに合った適切な努力をすることなのではないかと思った。つまり、無駄な努力をしないことが重要なのだと思う。

格差問題は、いろいろ考えされられることが多い。日本の複雑な社会構造を知るにはよい本だと思った。

読むべき人:
  • 格差問題に関心がある人
  • 最近努力が報われないと思っている人
  • 下流的な生活を送りたくない人
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November 03, 2006

「準」ひきこ森―人はなぜ孤立してしまうのか?


「準」ひきこ森―人はなぜ孤立してしまうのか?

キーワード:
 樋口康彦、ひきこもり、孤立、大学生活、空虚、社会不適応
ひきこもり的な状態の人はどのような特性を持つのか、またそれによってどのようなよくないことがあるのかといったことが解説されている本。

本屋に行くと、タイトルを見た瞬間、直感的に読まなければならないと思う本がある。これはまさにそれだった。

まず、「準」ひきこもりとは何かを内容に沿って説明すると、主に大学生の大学生活において、とりあえず大学には行っているが、講義中や昼食時に孤立する傾向が多く、サークルやバイトもやらず、それによって社会に出る前に身につけるべき人間関係能力が欠如している状態を指すようだ。その「準」ひきこもり状態のままでいることが、就職や結婚も出来ないということになり、この世界を生きるうえでかなりのハンデになると警鐘を鳴らす内容となっている。また、以下に準ひきこもりの人の特徴を抜粋しておく。
  • 外見は、暗くて人を寄せつけない雰囲気を持っている。
  • キャンパスではいつもひとりでいる。講義はひとりで受け(たいてい前の席)、昼食もひとりでとる。
  • 携帯電話を持っていない。持っていたとしてもほとんど使っていない。
  • 冗談を言わない。おせじも言わない。自分から話しかけることはめったにない。また、おもしろいことがあってもクスリと笑う程度で、ゲラゲラ笑うことはない。
  • アルバイトをしていない。
  • 人付き合いの方法を知らないため、つい不適切な(常識はずれな)言動をとり、他者を不快にさせてしまう。そして、集団の中で浮いてしまう。
    (pp.4)
この特徴を読んだとき、まさしく大学時代の自分のことだと思った。

著者は大学の教員という立場から、このような特徴を持つ学生と多く接してきたようだ。最初のほうは、準ひきこもりの大学生の日常生活を細かく説明している。そのときに、これでもかというほど客観的にかつ厳しくその学生のダメな点を指摘している。自分も似たような傾向があるので、正直ページをめくるのが辛かった。いかに自分がダメな存在だったかを認識させられるから・・・。

準ひきこもりがなぜ大学生に多く現れるかというと、小中高はクラスや時間割や校則に縛られる面があり、孤立することはあまりないが、大学では行動の自由度が増し、受身のままでは適切な人間関係を築けず、孤立しがちになり、ひきこもり体質の側面が強く浮き彫りになるようだ。

準ひきこもりになると何が一番の問題かというと、社会で生きていくうえでのコミュニケーション能力や人間関係を築く能力が欠如していることによるハンデということになる。例えば、独りよがりな話をしたり、相手の話題に無関心であったり、常識不足であったり、人との距離が測れずに空気が読めない存在になったりする。それらを無自覚のままでいることが多く、また、社会適応能力の欠如から就職がまったくできず、かつ異性に気持ち悪がられ、結婚も出来ないという絶望的な状態になってしまう。そして孤独感や空虚感に覆われて、毎日どうしようもない自分自身に自己嫌悪し、自分との戦いを死ぬまで繰り返すことになる。

しかし、根本的な原因や改善方法がまだ確立されていないので、いったんこの状態に陥ると、人生を棒に振ることになりかねない。

結構大げさに書かれている面もあるが、かなり的確な指摘だと思う。人間関係を形成できないということは、社会的に生きられない存在であることと同義だと改めて認識した。それだけに、自分自身の大学生活を振り返ってみると、かなり紙一重だったのではないかと思う。もし、一歩間違っていたら、今頃就職も出来ず、どうなっていたものか分かったものではない。とはいえ、完全にひきこもり状態から脱却したわけではないが。少なくとも自覚があった分、そこまで完全な準ひきこもりではなかったようだ。

最後のほうに対策が簡単に述べられている。まず、ファッションに無頓着ではダメなので外見から変えることだとある。さらに、社交的になるように努力すること、就職したら多少辛くても絶対にやめないこと、自分の内面にある独房を打ち壊すことだとある。それらはもっともだと思う反面、もう少し詳しく提言されて欲しいとも思う。

各章のはじめに、著者自作の「準ひきこもりの詩」が載っている。とても痛々しい内容だ。あまりにも共感できすぎて・・・。

著者自体も大学時代や20代は準ひきこもりだったようだ。それだけにこのような研究が出来たのだろう。また、それだけにこのような生々しい内面をえぐるような分析が出来たのだろうと思う。

漠然と自覚していた自分のダメな部分を改めて指摘されることはとても辛い。それでも、現状ではダメだと思っていて、何とかしたいと思うから、しっかり受け止めて改善していこうと思った。それだけに、少しでも自分はひきこもりでやばいと思う人は、迷わずこの本を読むべきだと思う。これを読んで自覚するかどうかで、今後の人生の幸福度が変わるような気がするから。

読むべき人:
  • 孤独や空虚感にあえぐ大学生
  • 社会に出ることはとても恐ろしいことで、就職できないのではないかと思っている人
  • もてたい人
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September 06, 2006

本の読み方 スロー・リーディングの実践


本の読み方 スロー・リーディングの実践

キーワード:
 平野啓一郎、本の読み方、読解方法、鑑賞方法、スロー・リーディング、アンチ速読
芥川賞作家、平野啓一郎氏による本の読み方指南書。小説の鑑賞方法から、論理的な文章の読み方まで幅広い。単純に、自分の本の読み方は今のままでよいのかといったことを漠然と考えていたときに、このタイトルに惹かれて買ってみた。

スロー・リーディングとは、ゆっくり時間をかけて本を読むことで、小説ならそれをおこなうことでしか深く鑑賞できないもので、また、深く論理的な文章を読解するためにも役に立つという読み方である。これはアンチ速読的な読み方でもあると著者は主張する。曰く、速読ではどうしてもいかに書いてある内容を記憶するかといったことに主眼が置かれがちで、それにともなって深く鑑賞すべき部分を見落としかねない、といことからこのようなスロー・リーディングが提案されている。以下のような3部構成になっている。
  1. 量から質への転換を―スロー・リーディング基礎編
  2. 魅力的な「誤読」のすすめ―スロー・リーディンテクニック編
  3. 古今のテクストを読む―スロー・リーディング実践編
    • 夏目漱石 『こころ』
    • 森鴎外 『高瀬舟』
    • カフカ 『橋』
    • 三島由紀夫 『金閣寺』
    • 川端康成 『伊豆の踊子』
    • 金原ひとみ 『蛇にピアス』
    • 平野啓一郎 『葬送』
    • フーコー 『性の歴史機|里悗琉媚屐
第1部はスロー・リーディングの概要、2部はそのテクニックとして助詞に気をつける、辞書を引く、類似した本を比較して読むといった内容で、3部はそれらを実際に試してみるといった内容。

3部で挙げられているテクストで読んだことないのは、著者の『葬送』とカフカの『橋』、フーコーの『性の歴史機戮澄B召楼貭未衞椶鯆未靴討△襦L椶鯆未靴討△襪箸いΔ里蓮∧未紡読したわけでもない。ただ、著者の提案するスロー・リーディングができていなかったんだなと痛感した。へーそういう作者の意図が隠されていたんだといった発見が多かった。例えば、『こころ』は5W1Hに気をつけて読むと、全体の構造が把握できるといった具合。

小説家である視点から小説の鑑賞方法が示されているのがとても勉強になる。一見何気ない文章の奥にそんな意図があるのかと思い知らされる。また、フーコーのような哲学書を読み解くにも、接続詞や代名詞に気をつけて丁寧に読んでいけば、理解できるといった内容で、国語の読解にも役に立つ。

いろいろ線を引く部分が多かった。特になるほどと思った部分を抜粋。
だが、量の読書は、もう終わりにしたい。これからは、自分にとって大切な本を大切に読む読書をこそ心がけよう。そもそも、今の世の中に溢れかえっている膨大な本は、どうがんばっても、一生の間に、その極々一部しか読み切れないのである。
(pp.97)
この部分はもっともだと思う。しかし、積読状態になっている本たちを見ると、あぁ、もっと読まなければと強迫観念に駆られ、また本屋に行くとまだまだ読まなければいけない本がいっぱいあるなと途方に暮れる・・・・。そう思って、フォトリーディングをはじめとする速読本も多く読み、表面的に読むのは速くなったが・・・。多くを読む必要はないと割り切ってしまえば楽なんだけど。そのためにも、この部分を自分に刷り込んでおく必要がありそうだ。

あともう一ヶ所抜粋。
読書の感想をブログに書く、というのも、いいアイディアだ。いざ書こうとすると、必ず筆がよどむ場所がある。そこを埋めておけば、内容の全体像がしっかりと定着する。ブログを見る人は、誰か分からないが、その本を紹介するつもりで書こうとするなら、まず自分自身のしっかりとした理解が必要だということが実感されるだろう。
(pp.87)
これは実際にこのようにブログに書いている身から言わせてもらえば、その通りだと思う。特に、一言でこの本はどういった内容かということをまとめるときは、理解していないとあやふやなものになりがちだ。また、あまり理解していない本はどうしても書く内容が散漫で短いものになりがちだ。逆に言えば、長く書評されている本は、よい本か、または衝撃を受けた本ということになる。じゃ、この本はどうかというと、それは言うまでもない。

著者の本は『日蝕』しか読んだことなくて、難解な印象があったが、これはかなり分かりやすくまた論理的な内容だった。ところどころにイラストも入っている。

久しぶりに良書を読んだ気がする。また、いつももっと読まなければと思っていたが、こういう読み方もあるんだなと分かってよかった。どこまで自分がこのスロー・リーディングを実践するかは分からないけど・・・。少なくともエッセイや学術書、文学作品はスロー・リーディングをしようと思った。

読むべき人:
  • 本の読み方が分からない人
  • 速読に疲れた人
  • 強迫観念に駆られて本を読みすぎている人
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August 27, 2006

学問の力


学問の力

キーワード:
 佐伯啓思、学問、教養、主義、思想史、日本
現在学問全体が深刻な閉塞状況に陥っていて、それを打破するには日本の現状を文化的な側面から「故郷」となる「知」、「情」、「意」を認識し、それらを取り戻すことが重要という主張の本。以下のような内容となっている。
  1. 学問はなぜ閉塞状況に陥ったのか
  2. 体験的学問論―全共闘と教養主義
  3. 「知ること」と「わかること」
  4. 現代はなぜ思想を見失ったか
  5. 「保守主義」から読み解く現代
  6. 学問の故郷
どちらかというと、学問の歴史を論じで今の学問の現状を認識しようというのではなく、日本を取り巻く思想や社会情勢を関連させて今の学問の現状を認識していこうという内容。そのため、最初のほうは構造主義がどうのこうのといった思想史的なものが多いが、後半は戦争認識や現在進行形で起こっている日本のアメリカ追従の外交政策などの批判などに話が変っていく。学問とは何かといったことはほとんど触れられていない。

この本の主張が一番まとまっている部分を抜粋。
今日、学問が深刻な危機に陥っているという意味は、まさに、この内面の感受性を育て、その感受性に耳をすます余裕がなくなっている、ということです。知識のグローバリズムや覇権主義や競争主義や成果主義がますますその風潮に拍車をかけているのです。そのなかにあって、何とか、内面の感受性を取り戻すことが、これからの学問の重要な課題でしょう。したがって日本の学問というのは、日本人が自分のなかに日本人の宗教観や歴史観、美意識があることを見出して、それを「知」というものの拠点にすることから始めるほかないでしょう。学問には「故郷」はどうしても必要なのです。
(pp.281)
思想史や日本の歴史的な側面から論じられていて面白かった。それと同時に、自分が日本人として文化的素養を磨いていくことも重要なんじゃないかとも思った。

この本は語りおろしとなっているので、難しい文章や表現はほとんどない。ただ、やはり宗教や思想、歴史などの基本的な概念を理解していないと、さっぱり分からないと思う。

読むべき人:
  • 学問について感心がある人
  • 歴史や思想に関心がある人
  • 日本はこのままじゃダメだと思う人
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July 04, 2006

生き方のスタイルを磨く


生き方のスタイルを磨く

キーワード:
 齋藤孝、スタイル、コミュニケーション論、技、学術
齋藤教授の本。学術的な内容。正直、すべて完璧に理解していないので、詳しく書評するのではなく、適当な感想を綴っておく。

『スタイル』を一言で言うと、その人らしい存在感といったものやその人特有の一貫性のようなものらしい。それがあると人生を味わい深く生きられるようだ。

最初のほうは、文学作品の登場人物を例にスタイルとはこういうことだということが示されている。後半では、より学術的な内容となっている。そのため、後半は少し難解。

面白かったのは、『魔の山』のスタイル間コミュニケーション論という部分で、主人公ハンス・カストルプを取り巻く濃い人物たちとのやり取り(コミュニケーション)を解説しているところ。これによれば、ハンス・カストルプはやがて療養生活を終えて、他の療養患者にとってはまだ未来のある希望であるために、人文主義者セテムブリーニやナフタがハンスに教育しようといろいろ論議をするといったことが主張されている。前に『魔の山』を読んでいたが、いまいち内容が飲み込めなかったので、なるほどと思った。

どうでもいいが、この記事がこのブログでの100投稿目となった。

読むべき人:
  • コミュニケーション論が好きな人
  • スタイルを確立したい人
  • スタイルとは何かを知りたい人
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June 26, 2006

本を読む本


本を読む本

キーワード:
 読書技術、学術書、本の読み方、分析読書、シントピカル読書
60冊目は、本の読み方の本。改めて、自分の本の読み方はどうなのかということが気になったので読んでみた。

この本は、1940年にアメリカで初版が発行されたようだ。原題は『HOW TO READ A BOOK』。大学教授2人が論理的に本の読み方を示している。

4部構成になっている。
  1. 読書の意味
  2. 分析読書――読書の三レベル
  3. 文学の読み方
  4. 読書の最終目標
また、この本によれば、本の読み方には4つのレベルがあり、それらを使い分けることが重要とある。以下にその4つを示す。
  1. 初級読書
  2. 点検読書
  3. 分析読書
  4. シントピカル読書
初級読書とはとりあえず文字が読めて、普通に本が読めるレベルである。

そして点検読書は、拾い読みなどをして概要をつかむことができるレベルである。

また、分析読書は、より一冊の本を深く読むためのレベルで、その中でさらに3段階レベルがあり、1段階目は『何についての本であるか見分ける』ことであり、2段階目は『内容を解釈する』ことで、3段階目は『知識は伝達されたか』ということである。

最後のシントピカル読書というのは、同じような主題の本を複数弁証法的に読みこなすことである。大学生レベルならこのシントピカル読書ができなければならないとある。

読書、本の読み方の核心が書かれているような気がする。こういうことは、日本ではほとんど学ばない。せいぜい大学に入ってから、少し文献の読み方をやるだけだろうから、読んでみると参考になる部分が多く、とても勉強になった。

特に批評の仕方について書かれている部分があり、ある程度わかったと言えるまで批評態度を下すべきではないといったことや、どのような判断でも根拠を必ず示せという部分。これらは、本の読み方に影響するだけでなく、このように書評ブログを書いている観点からもとても勉強になる。

また、文学作品の読み方もとても参考になった。文学作品とはどのようなものかということもあらためて示されている。

60年前に出版されているが、本質的な部分はそれほど変わっていないと思われる。しかし、著者はなるべくシントピカル読書をするべきだというようなことを主張しているが、21世紀の現代では書籍に限らず情報量が桁違いになっている。そのため、どうしても時間的制約がある。もちろん、研究者や学生はそのようにすべきだけど、一般的な仕事をして生活する人にはそれは少し難しいと思われる。

また、個人的な読書傾向というか、ポリシーを言えば、良書に出会うためにも多量の本を読まなければならないと思う。そのため、一冊にそんなに多くの時間をかけていられない。少なくとも20代のうちは、本をあまり選ばず、点検読書のように片っ端から読んでいけばいいかなと思う。30代ぐらいになってから、分析、シントピカル読書に移行していけばいいと思う。

この本を読むことで、読解力がかなり増すと思われる。読んでおいて損はない一冊。

読むべき人:
  • 文献や論文を読まなければならない大学生や研究者
  • どうやって本を読んでいいかわからない人
  • 書評の仕方を知りたい人
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June 13, 2006

カリスマ受験講師細野真宏の経済のニュースがよくわかる本 日本経済編


カリスマ受験講師細野真宏の経済のニュースがよくわかる本 日本経済編

キーワード:
 細野真宏、経済、ニュース、教科書、バブル、デフレ、銀行、わかりやすい
カリスマ受験講師、細野氏の著作。細野氏は、大学在学中にいかに受験数学をわかりやすく解くかということから、面白いほどほどわかる本シリーズなどのベストセラー参考書を生み出した人物。

この本は、最新版ということで、以前に出たものの全面改訂版となっている。旧版は初版が1999年で288ページほどだが、最新版は、初版は2003年で、340ページほどに増量している。

まえがきにこの本の目的が書かれているので、その部分を抜粋。
そこでこの本では、若者の視点に立って
全く予備知識を前提にしないで読める」ようにし、
できるだけ「難しい概念や言葉や数式は用いない」で
厳密性よりもイメージを重視してできるだけ「直感的にも理解できる」ように心掛けて作りました。
この本をきっかけに少しでも経済や政治問題に興味を持ってもらえたらうれしく思います。
(pp.6)
このまえがきの通り、かなりわかりやすい内容となっている。1ページの文章量はそれもど多くなく、著者が描くイラストつき。また、語り口調なので小学生にもわかるようになっている。さらに、参考書のように、重要なポイントは繰り返しまとめられている。

具体的な内容は、以下のようになっている。
  1. 円高と円安と日本の景気について
  2. 日銀の仕事について
  3. バブル経済について〜マネー経済への導入〜
  4. バブル崩壊後の日本と景気対策について〜景気対策の効果とその問題点〜
  5. 借金大国日本の現状について
  6. 政府の財政政策と日銀の金融政策の現状について〜国債の大量発行の問題点とは?〜
新版になって、あらたにゼロ金利政策や量的緩和の部分が追記されている。最初の2章はそれほど変更はないように思われる。

とてもわかりやすかったので、経済の理解が深まった。ここまでわかりやすくするのは相当の技量だなと思う。

また、経済は複雑系で『風が吹くと桶屋が儲かる』状態だよなと思った。日銀が何か1つ景気対策を行うと、さまざまなところに波及するのだから、大変だよなと思った。

あと、バブル経済の異常さがわかり、日本全体で日本をだめにしたんだなと思った。自分たちの世代は明らかに負の遺産を押し付けられたわけだ。それに昨今は、自己責任の時代なので、しっかり世界を読んで負け組みに陥らないように対処していく必要があると思った。

銀行って恐ろしい職種だよなと思った。いろんな意味で・・・。銀行に就職したいと思う人の気が知れない・・・。

どうでもいいけど、本のカバーのイラストは、漫画家の江川達也氏。

この本は絶対お勧め本。あと世界経済編、株編でも読むか。

読むべき人:
  • わかりやすく経済について知りたい人
  • 負け組みに陥りたくない人
  • 金持ちになりたい人
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June 11, 2006

人と接するのがつらい―人間関係の自我心理学


人と接するのがつらい―人間関係の自我心理学

キーワード:
 心理学、人間関係、自我、生きるヒント、ストローク
心理学者の著書。人接することが辛い、緊張する、苦手意識を持つのはなぜかということを明確にし、さらにどのようにして人と接していけばよいかということが書かれている。5章立てになっていて、次のような内容となっている。
  1. 人と接するのがこわい
  2. 人との接し方は人生を決める
  3. なぜ人と接するのがつらいのか
  4. 人のなかで自分らしく生きる
  5. 人と楽に接するためのヒント
2章、3章で原因が解明されている。親にどのように育てられたかということが主な原因らしい。

例えば、遠慮が強いられる養育環境で育った場合、自分を監視がちになり、集団で疎外感を感じたりするといったことが傾向として現れる。

解決策として、どのように振舞えばよいかということが示されているが、前提として「性格は変えられない」ということが示されている。なんでも幼少期にだいたい決まってしまうらしく、さらに青年期で内向的な性格になると一生そのままらしい。そこで、自分自身を変えようとして徒労に終わるのではく、自分自身を受け入れて自分らしく生きていくことが大切だと主張されている。具体的には以下のようなことが示されている。
  • いまの自分を好きになる
  • 自分の素直な心で人と接する
  • 自分を責めない
  • 好きなことに力を注ぐ
  • 自分を守ろうとしない
  • 逃げない、背伸びしない
こういったことが4章、5章で述べられている。

なんだかとても気が楽になった。自分自身、かなり人付き合いが悪いし、そこまで人間関係形成が得意ではないので、こういう風に生きていけばいいんだなということが分かってよかった。よく、自己啓発本で自己改革が必要だということが主張されているが、そうではなく、必ずしも自分を変える必要はなく、あるがままの自分を受容していけばいいんだといことが分かった。

また、生き方そのもののヒントのようなことが書いてあって、参考になった。人間関係を悪化させてまで、会社勤めに固執しなくてもよく、生活費を稼ぐ方法なら他にいろいろあるなど、なるほどと思った。

著者自身カウンセラーらしいので、この本を読むことでなんだかカウンセリングを受けたような気になった。あと、心理学の本は学術的なことが多く書かれがちだけど、これはそこまで多くない。むしろ読みやすい。

人間関係に悩んでいる人にぜひ読んでもらいたい。

読むべき人:
  • 人と接するのが苦手、または苦痛を感じる人
  • なぜ自分は人と打ち解けにくいのか知りたい人
  • 心理カウンセラー志望の人



June 08, 2006

よりよく生きるということ

よりよく生きるということ

キーワード:
 エーリッヒ・フロム、精神分析、心理学、存在、所有
フロムの著書。

正直、読んでいて、内容が頭に入ってこなかった。一文一文は理解できないものではないけど、全体としていまいち漠然としたものしか分からなかった。だから今回は書評できない・・・・。

詳しくは、アマゾンのリンク先でも参照してほしい。

フロムの本をこの本から読むべきではないということだけは理解できた。前著の『生きるということ』を先に読んでいるべきであるということが書いてあった。そっちを読んでから『よりよく生きるということ』をまた読んでみようか。

読むべき人:
 フロムが好き、精神分析、心理学が好き、安易な自己啓発本は信用できない人


June 03, 2006

映画の構造分析


映画の構造分析

キーワード:
 映画論、現代思想、構造主義、デリダ、ラカン、ハリウッド映画
著者はフランス現代思想が専門の内田樹氏。

内容は、映画を題材にした現代思想の入門書である。まえがきのそのことについて言及している部分を引用しておく。
 この本の目的は、「ラカンやフーコーやバルトの難解なる述語を使って、みんなが見ている映画を分析する」のではなく、「みんなが見ている映画を分析することを通じて、ラカンやフーコーやバルトの難解なる述語を分かりやすく説明すること」にあります。
 これは、「現代思想の述語を駆使した映画批評の本」(そんなもの、私だってよみたくありません)ではなくて、「映画的知識を駆使した現代思想の入門書」なのです。
(pp.8-9)
はじめのほうで、あらゆる物語には「構造」が存在するといたったことが示されていて、そのあとから具体的な映画をもとにした隠された構造を解釈していくというような内容となっている。

この本に取り上げられている主な映画は以下のものである。
  • 『エイリアン』
  • 『若き勇者たち』
  • 『大脱走』
  • 『北北西に進路を取れ』
  • 『ゴーストバスターズ』
他にも、小津安二郎、アルフレッド・ヒッチコックの作品などいろいろ。

解釈の例として、『エイリアン』は成功した最初のフェミニズム映画だとあり、怪物のエイリアンはその様態から男性の性的攻撃の記号であるといったことや、『大脱走』では、収容所から脱出するためのトンネルは、「女性器」の象徴でアンチ・エディプス的なドラマであるといった調子。どちらかというと、構造主義的に分析しているというよりは、フロイトなどの精神分析的な手法で映画を解釈している。

なるほど、そうだったのかと思う反面、そのように映画を見なければいけない気がしてきて、楽しめなくなりそうだ。村上春樹的に考えれば、物語に意味づけすることは、受け手の自由なので、そのように解体、解釈することは無意味だということになるだろう。難しいところで。確かに、そのように解釈することは説得力があるけど、実際に作った人々はそれを本当に意図していたのか?ということも気になる。

見たことのある映画は『エイリアン』、『大脱走』、『ゴーストバスターズ』だけである。他にもいろいろ映画名が出てくるが、見たことないものばかりだった。そのため、どうしても解釈上カットの位置やカメラワークの話になると、自分の想像力に頼るしかなく、分かりにくいものとなる。どうしてもその部分の解釈は理解しづらかった。

映画1つ取ってみても、いろいろな隠された意味があるんだなということが分かって面白かった。

読むべき人:
 映画が好き、何かと隠された象徴などの意味づをけするのが好き、フロイトなどの精神分析などが好き


June 01, 2006

教養のためのブックガイド


教養のためのブックガイド

キーワード:
 教養、教養主義、ブックガイド、東大教養学部、旧制的
東大教養学部の教授が集まって、教養とはどのようなものかを議論したり、またそれを体得するためにおすすめする本などが挙げられている。

教養とはどのようなものかを端的にあらわしている部分を引用しておく。
すなわち、ほんとうの意味で教養なるものがあるとしたら、それには終わりがありません。これだけ学ぶと習得できて単位がもらえるというものではないのです。そうではなく、何かの役に立つからでも、なんらかの利益があるからでもなく、ただ純粋に、みずからの存在の深さを耕すためにのみ学びつづけようとすることなのです。それ故にそれは、ほんとうは、自分自身を大切にするひとつの仕方にほかならないのです。
(pp.9)
この本ですすめられている本は難しそうなものばかりで、岩波文庫にあるようなものを想像すれば分かりやすいだろう。また、人文学的なものだけでなく、宇宙論、遺伝、認識論などの分野もある。

東大教養学部ということもあり、いかにもな教養主義的な面もないではないが、体系的に教養を身に付けようとなったら、この本に載っているものを読んでいけばよいと思う。また、最後のほうに何を読むべきか迷ったらとりあえず岩波文庫を読めとあった。たしかにそうかなと思った。

読んではいけない15冊というものが挙げられていて、それらは健全な教養を身に付けようとしているものにとっては、自分の地盤を揺るがすような毒になりえるので読むべきではないとある。そのラインナップを列挙しておく。
  1. われらの時代』・・・大江健三郎
  2. 北回帰線』・・・ヘンリー・ミラー
  3. 夜の果てへの旅』・・・ルイ=フェルディナン・セリーヌ
  4. 地下室の手記』・・・ドストエフスキー
  5. 死霊』・・・埴谷雄高
  6. ツァラトゥストラ』・・・フリードリッヒ・ニーチェ
  7. 悪徳の栄え』・・・マルキ・ド・サド
  8. 眼球譚(初稿)』・・・ジョルジュ・バタイユ
  9. 』・・・谷崎潤一郎
  10. サンクチュアリ』・・・ウィリアム・フォークナー
  11. ブレストの乱暴者』・・・ジャン・ジュネ
  12. 地獄の季節』・・・ランボオ
  13. 二十歳のエチュード』・・・原口統三
  14. トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す』・・・トーマス・マン
  15. 『マルドロールの歌 ロートレアモン全集』・・・ロートレアモン伯爵
このようなリストとなっている。実際に自分が読んだことのあるものは、1,4,6,14の4作品。『われらの時代』は途中で投げたけど・・・・。あまりにも受け付けなくて・・・。毒物を読んでしまったのかね・・・。

教養のためのブックガイドということなので、教養そのものについてはあまり述べられていない。教養そのものを考えたい場合は、以下のものをお勧めする。教養を身に付けるには、一朝一夕では無理なような気がしてきた。それでも、虚栄心のために、もしくは無条件な知的好奇心を満たすために、がんばってこの本に載っているものを少しずつ読んでいこうかなと思った。

読むべき人:
 教養を身に付けたい人、何を読むべきか分からない人、旧制的な教養主義的なものにあこがれる


May 20, 2006

小説の自由


小説の自由

キーワード:
 保坂和志、小説家による小説論、哲学的、小説とは何か?
小説家による小説論。

はじめに断っておくが、この本は結構難解だった。そのため、自分自身どこまで把握できたかは分からない。しかし、知的刺激はかなり受けた。かなり面白い本だということは確かである。

内容は、小説家による小説とは何なのかということを考えたものである。こればっかりはうまく要約できないので、まえがきの著者の言葉を引用しておく。
もっとも、読者自身に、小説について真摯に考えようという気持ちがまったくなければ、最初から通読してみても理解できない、ということはあらためて言うことではないが、小説とは何か?小説とはどうしてこういう形態なのか?なぜ人は小説を必要とするのか?ということを真剣に考えている人に向かっては、私は私に書けるかぎりの力を振り絞って、毎月真っ正面から応えるつもりで書いてきたし、今もそれをつづけている。
(pp.10)
毎月とあるのは、雑誌『新潮』誌上で『小説をめぐって』という連載をしていたものが書籍になったからである。

最初は音楽の話を例に二つの領域の隙間の第三の領域で何が起こっているのかということを考え始めている。そして三島由紀夫や小津安二郎の作品などを例に取り、風景描写からの作者の心情化などを考察している。他にもいろいろさまざまな引用を挙げて論じている。全て挙げることはできないが、終始、小説の根本的な価値などを小説家の視点から論じている。

著者自身、かなり試行錯誤しながら毎回書いているので、話がころころ迂回してしまう。そのため、その章の主題が分かりにくくなる。それはそれで扱うテーマがそうだからしょうがないと著者は述べているが。

この本はゆっくりと熟考しているようでは、メリーゴーランドに乗っているような堂々巡りに陥りかねない。そこで、ジェットコースターに乗った気分で、分からないようなところもとりあえずスピードに乗って読みこなすという作業が必要な気がする。ゆっくり読んでいても分からない部分は分からない。それよりも後で再読することが必要な書だと思う。

結局何が書いてあるのかというと、
私がこの連載で書きたいのは、小説家の思考様式や小説を小説たらしめている何かということだけだ。
(pp.213)
ということらしい。小説家が小説をどう考えているのかを知るにはよいかもしれない。しかし、最後に明確にその答えが出るわけではない。どちらかというと著者が述べているように、思考プロセスに価値があるということらしい。

あと個人的になるほどと思った部分は、読書は単位時間当たりの生産性を問われるような労働ではなく、効率を求めるようなものもないという主張だった。これは正直耳が痛かった・・・。もちろん、効率を求めるべき本もあるけど、小説は例外ということにしておこう。

難しい内容だったけど、小説に対する見方が変わるような本だった。読了後にあまりにも漠然としか内容が残っていない・・・。また読書レベルが上がったときに再読したら、発見があったり理解ができるのかもしれない。

読むべき人:
 小説家志望の人、カフカの『城』の城に意味があると思っている人、小説家がどう小説を書いているか知りたい人、自分の教養レベルを試したい人


April 27, 2006

「わかる」技術


畑村式「わかる」技術

キーワード:
 分かる、問題提起、考え方、テンプレート

機械工学が専門の著者による分かるとはどういうことかということを書いてある本。例えば物事には構造があるのでそれを分解していけば分かりやすいといったものである。あらゆるものは要素、構造、機能の3つに分けられるようだ。そういうことを意識していけば分かりやすくなる。また、思考のテンプレートを持っておくことも重要といったことなどが述べられている。

さらに、昨今では課題を解決する能力よりも課題を自ら設定する能力のほうが重要であるといった主張もある。

物事を理解しよう、勉強しようとしていくときにはどうしても分かりにくいものがあるので、そういったものを理解する助けになると思う。

割と分かりやすい内容だった。すぐに読めた。

読むべき人:
 物事の理解が進まない、テンプレート思考を身につけたい、課題を設定する能力が知りたい


April 15, 2006

希望学


希望学

キーワード:
 希望、社会学、統計処理、東京大学

東京大学社会学研究所がはじめた新たな学問が『希望学』。内容はどちらかというと、アンケート調査から統計分析を行っている部分が多く、希望とは何かという部分にはあまり触れられていない。

希望学とは『事実にもとづきながら、社会と希望の関係を明らかにしていくこと。(pp.6)』とある。そういう関係から、どうしてもアンケートの分析結果が多く載っている。

内容は、希望とは何かということよりも、どのような性質を持つ人が希望が持ちやすいかといった調査がメイン。例えば、性格、幼少期の親の期待度、恋愛の成否、挫折経験、昔になりたい職業があったかどうか、富裕かどうかなど。それらがロジスティスク回帰分析などから明らかになる。それぞれの章に担当者が分かれているのが特徴。

希望は絶望と表裏一体といったことが書かれていて、また、希望がなくなった、つまり挫折した後に希望が持ちやすいといったことが明らかにされている。しかし、まだこの学問領域は始まったばかりなので調査データの分析がそこまで詳細ではなく、結論らしい結論が出ていないのが現状である。

なんでこんな本を読むかというと、希望って何だということや、自分が抱いている情感は希望なのかということを知りたかったから読んだ。一番面白かったのは、最後の対談の部分だった。そういう部分がもっとあってもよかったと思う。

また、あわせて希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂くを読んでおいたらよいと思われる。『希望格差社会』の著者とこの本の編著者との対談が載っているし、冒頭で挙げられているので理解の補助になると思う。希望格差社会も現代の社会状況をよく説明していてよいと思う。

読むべき人:
 希望について考えたい、統計はばっちり、社会学が好き、自分の抱いている情感は希望なのか迷っている人など