ノンフィクション

January 22, 2016

Yコンビネーター

キーワード:
 ランダル・ストロス、ポール・グレアム、ハッカー、シリコンバレー、スタートアップ
Yコンビネーターというシリコンバレーのスタートアップ企業に投資するベンチャーキャピタルの実情が取材によってまとめられた本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 面接
  2. 第2章 YCパートナー
  3. 第3章 シリコンバレーに来い
  4. 第4章 女性起業家はなぜ少ない
  5. 第5章 クレージーだがまとも
  6. 第6章 アイデアに行き詰まる
  7. 第7章 新しいものを作り続けろ
  8. 第8章 エンジェル投資家
  9. 第9章 契約は必ず成立させろ
  10. 第10章 営業マン探しは難しい
  11. 第11章 プロトタイプ発表
  12. 第12章 ハッカソン
  13. 第13章 ピボットの決断
  14. 第14章 リスクと変曲点
  15. 第15章 共同創業者がすべて
  16. 第16章 残りあとわずか2週間
  17. 第17章 最終リハーサル
  18. 第18章 離陸準備完了
  19. 第19章 デモ・デー
  20. 第20章 最後の夕食会
  21. 第21章 ソフトウェアが世界を食う
(目次から抜粋)
Yコンビネーターというのは、ハッカーであり自身もスタートアップ企業Viawebを作成してYahoo!に買収されたポール・グレアムが率いるベンチャーキャピタルである。Yコンビネーターが投資して大化けした会社はDropboxHeroku Airbnb が代表格だ。Yコンビネーターはシリコンバレーにあり、スタートアップを志望する各ハッカーが所属するチームなりがこのベンチャーキャピタルのスタートアップ養成プログラムに応募する。そこでポール・グレアムたちによる面接で『新しいユーザがこのプロダクトを使ってみようと思う理由は?』など15の質問がされる。応募数約2000のチームから約64チームほどに選抜され、それらのチームは夏休みの3ヵ月間にそれぞれのアイディアを元に寝る、食べる、時々運動する以外の起きている間はひたすらプログラミングをしてサービスを作り上げる。

ポール・グレアムはスタートアップの創業者になるのに最適な時期を以下のように示している。
「32歳はおそらく25歳より優れたプログラマーだろうが、同時に生活コストがはるかに高くなっている。25歳はスタミナ、貧乏、根無し草性、同僚、無知といった起業に必要なあらゆる利点を備えている」
(pp.44-45)
集まってくるチームは大体20代が多く、一番若いメンバーでも18歳で、もちろん妻子持ちの30歳過ぎのメンバーもいる。参加者のほとんどはハッカーである。また、クラーキーというチームは面倒な法的な書類手続きを自動化するサービスを開発しており、メンバーはハッカーでかつ弁護士という強みを持つ。基本的にどのチームもプログラミングができるハッカーで構成されているが、他分野の研究者などでハッカーではないメンバーも含まれているチームもある。

Yコンビネーターは大学院の研究室のような集まりでもあり、オフィスアワーが設けられており、予約さえすれば各チームはポール・グレアムの助言を受けることができる。アイディアに行き詰まったチームは、ポール・グレアムに相談に行く。そして、アイディアを生み出すための3ヶ条としてポール・グレアムは以下のように示す。
  1. 創業者自身が使いたいサービスであること
  2. 創業者以外が作り上げるのが難しいサービスであること
  3. 巨大に成長する可能性を秘めていることに人が気づいていないこと
    (pp.127)
ポール・グレアムは客観的に時には過去の経験からの直観で各チームのアイデアや方向性に将来性がないものはダメだしをする。しかし、各チームのメンバーはダメだしされた後でも、ポール・グレアムとの相談のあとはやる気に満ちている。

また、ポール・グレアムは「急いでローンチしろ」が口癖である。
なにかアイデアを思いついたら最小限動くモデルをできるだけ早く作れ。作りかけのプロトタイプでもかまわない。とにかく現実のユーザーの手元に届けて反応を見る。そうして初めてそのプロダクトがユーザーが求めていたものなのかどうかがわかる。急いでローンチすることによって人が求めているものがわかるのだ。
(pp.142)
さらに「数字で測れるものを作れ」と示す。

各チームはそれぞれの当初のアイデアがそのまま進められるわけではない。大体3分の1ほどが方向転換を迫られて、急いで作り直しを要求される。そして3ヵ月の期間の最後のデモ・デーでは各チーム2分半ほどの時間が与えられ、他のベンチャーキャピタルなどが多数集まる前でプレゼンする。そこでうまくいけば、さらに数十~数百万ドルの資金を調達し、起業にこぎつけられる。2011年の学期ではデモ・デーの1週間前にはまともなコンテンツもなくプログラミング学習をオンラインでやるというチームがあったが、ローンチしてみるとユーザー数を劇的に獲得し、250万ドルの資金を獲得して成功した。それが Codecademyとなる。

これらのYコンビネーターのスタートアップ養成プログラムの内情が著者の綿密な取材によってノンフィクションとしてまとめられている。これはシリコンバレーに行ってそれぞれのスタートアップチームと一緒にひたすらプログラミングをし、行き詰ったらポール・グレアムのところに相談に行き、他のチームのプロトタイプ発表を聞きながら称賛を送ったり自分たちと比較して焦ったりし、最後のプレゼンでベンチャーキャピタルから投資を受けるまでを一緒に疑似体験しているような本で、これはスゴイ!!と思った。

60チーム近くのスタートアップが一同に集まってひたすら3ヵ月間缶詰になってプログラミングできるシリコンバレーのこの環境がとてもうらやましいと思った。別に僕はハッカーでもなく起業精神も皆無なのだけど、なぜこの場にいないのだろう!?と思わされた。こんな環境にいられたらたとえ失敗しても(ポール・グレアムはもほとんどは失敗するだろうと示している)人脈も含めて大きな経験になるだろうなと思った。また、このような場が提供されているからこそアメリカのスタートアップ文化は強いのだろうなと思った。

ポール・グレアムの的確な意見がとても勉強になっていろいろと線を引きまくった。ハッカーというとプログラミングだけに精通しているイメージがあるが、サービスなりをローンチして、顧客と話をしろ、営業に強くなくてはダメだという助言や人間系の部分や経営についても言及されており、スタートアップ起業家のハッカー像は全然別物なのだなとわかった。そして、それらの助言はWebサービスをやっている人やこれから起業しようとする人には間違いなく勉強になる内容だ。

また、本書を読んでいると自分も何かサービスなりを作って起業してみたいと触発される。しかし、ポール・グレアムは以下のように示している。
スタートアップの創業者、すくなくともYCが求めているようなハッカーの創業者は13歳ごろからプログラミングを始めている必要がある。
(pp.102)
むしろ13歳は遅いくらいだ、とも示していて、18歳からプログラミングを始めてそこまで入れ込んでプログラミングができない自分にはもう手遅れだなと思ったのであった。しかし、2015年の冬季では参加者の平均年齢が約30歳とあり、もしかしたら必ずしも13歳からプログラミングに触れていることが必須ではないのかもしれない。なので、今大学生くらいでプログラミングをガッツり勉強していて、将来は自分で起業したいと思う人は絶対これを読め!!と言っておこう。これを読んでシリコンバレーに行くという選択肢が目の前にあるということを知っておいて損はない。

ちなみに本書は前回読んだ以下の本で取り上げられていたので、気になって買ってみた。また、本書を読む前提としてポール・グレアムがどういう人物かを知っておくのがよいので、以下のエッセイをあわせて読むのがよい。本書はアメリカのシリコンバレーのスタートアップがどのように生まれているのかがよく分かるノンフィクションであり、またWebサービスなどを従事している人にはとても勉強にもなるし、アメリカのスタートアップへのベンチャーキャピタルの実態も分かるし、起業経営的な部分も勉強になるし、Yコンビネーターのプログラムを疑似体験しているようですごく面白い。なによりも、読んでいると野心に火をつけられるような、そんな1冊。

大抵のビジネス書はそんなにお勧めはしないのだけど、これは絶対勉強になるし面白いのでMust Buyだ!!




読むべき人:
  • ハッカーを目指している人
  • 将来Webサービスなどで起業したい人
  • くすぶっている野心に火をつけたい人
Amazon.co.jpで『ランダル・ストロス』の他の本を見る

bana1 スタートアップクリック☆  にほんブログ村 本ブログへ



December 28, 2015

ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!

キーワード:
 4Gamer.net編集部 / 川上 量生、ゲーム、経営、廃人
4Gamer.netで連載されていた記事が書籍になったもの。本書の内容は以下で読める。簡単に概要を示すと、ドワンゴの川上氏が自分のゲーマー人生の自慢をしたいだけで始まったゲーム関係者などと対談、鼎談している内容となる。

連載の建前上のテーマはゲーマーの戦略性や一定のルール化で思考(試行)しながら最適解を導いてプレイする能力が実社会、例えば会社経営にも通じるところがあるのではないか?というものが設定されているのだけど、連載初期で早くも川上氏によって完全否定されていたりする(笑)。連載途中でも全然テーマとは関係ない話題にもなって、そもそもテーマってなんだっけ?みたいなことになるのだけど、全連載を通関して読んでみると、そのテーマの設定がすごくよかったと思う。

個人的な感想を最初に示しておくと、今年読んだ本の中で一番面白くて、共感できて、そんでかなりマニアックで、そして勉強にもなるスゴ本!!今年の優勝本!!

この連載をリアルタイムでウォッチしていた人にとっては何をいまさら感があるかもしれないけれど、僕は本書の存在を最近まで知らなかった。そんで年末恒例となっている西新宿のブックファーストの書店員が勧める今年の本というようなフェアで本書が置いてあって、買って読んでみたらガチャで超激レアカードを引いたような、そんな感覚w西新宿のブックファーストの店員さんマジ神!!!!

内容がかなり多岐にわたってかつマニアックな内容なので、どこを個別に取り上げるかはすごく迷う本。上に示したリンク先でどういう人が川上氏と対談しているかわかる通り、ドワンゴの身内の人やはてなの伊藤直也氏とか今ではフリージャーナリストとしてテレビコメンテータにもなっている津田大介氏や将棋棋士・谷川浩司氏、SF作家・藤井太洋氏などいろいろな人がゲームプレイ遍歴やビジネスや会社組織やその人の興味関心のあるテーマについて語っている。

連載初期の方はみんなゲーム廃人みたいな人ばかり出てきて、マニアックすぎると思うと同時に、あるあるwwと共感しつつも読める。「Ultima Online(ウルティマオンライン - Wikipedia)」や「Diablo(ディアブロ (ゲーム) - Wikipedia)」にハマってリアルでの生活に支障をきたすくらいとか。川上氏は3日連続で寝ないでぶっ続けでやってやばいと思ってなんとかアンインストールしたらしい。

僕はオンラインゲームをやったことがないけど(絶対ここに出てくるような人のように廃人になるのが目に見えてたからなんとか自重したw)、そういうゲームのはまり方はよくわかる。特に中高時代はダビスタで最強馬生産に明け暮れてたなぁとか(そのために視力と成績がガタ落ちになった!!w)読みながら自分のゲーム遍歴をオーバーラップさせてた。他にもファミコンを買ってもらえなかった人はよりコアでマニアックなPCゲームにはまっていき、ゲームを卒業できずに大人になってダメ人間になるとかなんとかw

ファミコンの懐かしいソフトやオンラインゲーム、ほかにもボードゲーム(そこに将棋も含むからプロ棋士の谷川浩司氏の対談もあり、将棋ソフトと絡めた話も面白い)、カードゲーム、最近のソシャゲについて多岐にわたり、そのゲームリストが最後に載っているのもよい。

僕は1984年生まれで、一応ファミコン世代であるので、リアルタイムでファミコンをやっていた最後当たりの世代になり(おそらく僕の2,3歳下の世代からはスーファミからの世代)、本書に出てくる人たちよりも15歳以上若いので、ファミコンを含めたコンピュータゲームの興隆をリアルタイムで体感してはいないが、その空気は十分に感じることができた。40歳以上のゲームにはまったおっさん世代は絶対懐かしくも興味深く読めるはず。そんで俺にもなんかゲームについてちょっと語らせろ!!みたいな気持ちになれると思うw

また、ドワンゴの経営方針というか、内情が川上氏の視点から語られて、ニコニコ動画とかニコニコ超会議の裏話的な話もとても面白い。ドワンゴ大丈夫か?みたいな感じだけど、何となく結果的にうまくいっていて、それが川上氏の手腕なのか魅力なのか確かなところはわからないが、変だけどスゴイ会社だなと思った。

さらに、川上氏の考え方や持論もとても興味深い。特に激しく同意!!と思った部分は連載初回のテーマのあとからコラム1の最後の部分(ちなみにあとからコラムはWeb連載上にはなく、書籍版のみ収録)。
 ちなみに。連載のこの回のタイトルは「世の中で一番面白いゲームは『現実』」とありますが、本音を言うと現実はクソゲーだと思います。だって「現実のゲーム」は自分ではコントロールできない変数が多すぎて、ほとんど「運ゲー」ですからね。ゲームバランスもなにもあったもんじゃありません。
(pp.28)
ほんこれ!!と日ごろから考えたいたことが同じように明言されていて、一人でうなづいていたのだったwまぁ、クソゲーでどうにもならなくて詰んだら死ぬじゃん、みたいなところはあるし、まだ積んでる状況でもないし、バグってても何とかプレイできるし、先が見えないゲームだから楽しむ余地もたくさんあるじゃないか!?と前向きに考えて生きていきたいと思う。

ゲーマーが経営者となるべき、を体現しているのが、連載の最終回の任天堂の岩田 聡氏の回。ちょうど去年の年末の今頃に公開されており、確か読んだ記憶がある。しかし、岩田氏の書籍化を望まれていないという意向もあってこの回は本書には収録されていない。そしてさらに残念なことに、岩田氏は本書が出版された後の今年7月に若くしてお亡くなりになられてしまった。この回はWeb上でしか読むことはできないので、この回だけでも読んでおく価値はあると思う。経営論としても本書の連載のテーマに一番沿った内容でもあるし。

なんというか、本書の面白さはいろんな要素が含まれまくっていてうまく伝えきれないので、もうゲーマーというかゲーム好きな人はさっさと連載記事を読めばいいんだよ!!みたいな感じ。ゲームにかかわらずWebサービスやコンテンツビジネスをしている人も面白くかつ勉強になることも多い。でもビジネス書のように読むと、内容がマニアックすぎてなんじゃこりゃ!?と面食らうかもしれないwでも経営論というか組織論とかもところどころで論じられていて、そこも勉強になる。

個人的な話をすると、今年はいろいろあって、休職することになり、その間は暇なので久しぶりにゲームの封印を解いて(ゲームよりリアルをプレイしなくちゃと思って自重してたわけだ)PS4を買ってプレイしてみたらやはりゲームは面白いなと思った。あとは東京ゲームショーにも行ってみて、ひと昔前はゲーム業界はもう落ち目だと思っていたけど、全然そんなことはないなと実感した。

自分の今後のキャリアについて考えて、好きなことをやるべきかなと思っていたときに本書を読んで、来年は思いっきりゲーム漬けになろう!!と腹をくくれたわけだ。そんでなんとかゲーム業界に逝こう!!、そしてゲーム廃人になろう!!を来年のテーマとしていきたいと思うww

(゚Д゚)

ちなみに本書の単行本は560ページと分厚く、値段も2000円ほどする。タダで読みたい人はWeb上の記事を読めばいいし、もっと便利にかつあとからコラムも読みたい人はKindle版がよいと思う。Kindle版は1000円以内で買えるし。

とにかく、ゲーム好きな人は絶対読め!!な1冊で、読んでいるだけでニヤニヤできるし、なんというか、昔感じたゲームのときめきみたいなものを思い出せたとても良い本だった。

(追記)
この記事を更新してからちょうど翌日、任天堂の岩田氏の追悼特別記事がアップされてた。本当にスゴイ人だったんだなと思わされる超良記事。そして合掌。




読むべき人:
  • ゲーマー(廃人)の人
  • 経営者の人
  • ゲームを作りたい人
Amazon.co.jpで『川上量生』の他の本を見る

bana1 ゲーマークリック☆  にほんブログ村 本ブログへ


April 26, 2015

読書で賢く生きる。

キーワード:
 中川 淳一郎/漆原 直行/山本 一郎、読書論、自己啓発、コンテクスト、人生論
賢く生きるための読書論。以下のような目次となっている。
  1. はじめに 
  2. 第1章 ネット時代こそ本を読むとトクをする。 中川淳一郎 
  3. 第2章 捨てるべきビジネス書、読むべきビジネス書 中川淳一郎/漆原直行/山本一郎
  4. 第3章 駄本を見極め、古典を読破する技術 漆原直行
  5. 第4章 ビジネス書業界の呆れた舞台裏 中川淳一郎/漆原直行/山本一郎
  6. 第5章 人生に役立てるコンテクスト読書法 山本一郎
  7. 第6章 そもそも人はなぜ本を読むのか? 中川淳一郎/漆原直行/山本一郎
(目次から抜粋)
自己啓発書のようなビジネス書は、原典となる本がかならずあり、その内容を著者が改めて焼き直しているような内容のものだったり、明らかに読者をカモのように搾取して儲けることだけしか考えられてない駄本が多いので、そういう本から距離を置いて、もっと賢い読書をしてより良く生きましょうという内容。3者それぞれの読書遍歴や読書論、読み方、お勧め本がとても勉強になる。

著者3人の主催する阿佐ヶ谷ロフトAでやっている『ビジネス書ぶった斬りナイト』に以前行ったことがある。こじんまりとしたイベントスペースで、3人が壇上でビールを飲みながらネットでの話題や最近のビジネス書の傾向について言いたい放題言ってたり、お勧めのビジネス書が示されたりしていた。観客はビールとかつまみを飲み食いしながら爆笑しながら楽しめるイベントだった。著者3人とも別に面識はないけど、ぶった斬りナイトで一方的に生の3人を見たことがあり、そのライブ感が本書にも反映されていると思う。ところどころ出てくる(笑)という部分に共感してニヤニヤしながら読んだりもできて面白かった。

自己啓発書を筆頭としたビジネス書を多く読んだり、それを取り巻くセミナーイベントなどに参加したりと、実際に僕もどっぷりつかっていたので、あるあるwwという感じで読んでいた。いかに自分がカモられていたのかと改めて反省するばかりで。このブログの右の『ビジネス書、自己啓発』カテゴリはある意味自分の黒歴史みたいなものでwこの部分に関しては、本書の著者の1人である漆原氏の以下の本についていろいろと書いてある。ゴミみたいな自己啓発書をどれだけ読んだとしても、自分の血肉にはならずに、著者と出版社を儲けさせるだけのカモにしかならず、都市鉱山じゃあるまいし、そこから金が生まれることもない。仕事だけに関して言えば、安易な本に頼るのではなくて、目の前の仕事に集中して自分の頭で考えて、創意工夫してこなしていくべきで。そして自分一人の力でどうにもならない場合は、同期や上司など身近な人から知恵を借りていくのが一番確実だね。特に20代前半くらいまでの人はね。

まぁ、どっぶり浸かってから、やはりなんか変だなと思いつつ、いろいろと考えたり、他の本を読んだりして、結果的にもっと良書を読んでいくべきだなと20代終盤までに気づいて、今に至る。

あと山本氏の以下のコメントになるほどなぁと思った。
山本 あらゆる知識と技術は、人間がどうより良く――賢く合理的に生きるかということのためにあるわけです。知識は「より良い生を享受し、いかにあなたは死ぬべきか」ということを教えてくれるもの。進学、就職、結婚、出産、親の介護、自分の老い、そして死に支度。すべてのライフイベントがそうじゃない?
(pp.291)
僕が読書をこのブログを書き続けているのも、モテたいからとかアフィリエイト料(゚д゚)ウマーとか(月1万円も儲からないぞ!!w)、そういう低俗な理由だけではなく、根本的にはより良く生きるために尽きる。読書ブログをネットに更新するということは、自己顕示欲を示すようなものだし、そしてそこには誤読もあったり醜態や恥をさらしているような側面もある。しかし、それ以上に良い本を読んで、考えて、書き続けるという行為に自分の人生がより良い方向に向かう、と信じているからに他ならない。なので、9年目に突入したこのブログも、そう簡単には辞めることはないのだなと、改めて本書を通して思った。

本書は3人のそれぞれのキャラが全面的に出されており、それぞれ異なる視点からビジネス書、自己啓発書、読書を論じている。ネタっぽい話題も多く、それがまた面白い。そして3人に共通するのは、みな真摯的に読書について考えられているのだなぁと思った。似たような自己啓発書を何冊も読んでカモられるよりも、本書を読んだ後、良書を読み続けていくほうがよいに決まっている。そしてよりよく生きましょう。



読書で賢く生きる。 (ベスト新書)
中川 淳一郎、漆原 直行、山本 一郎
ベストセラーズ
2015-04-09

読むべき人:
  • 自己啓発書ばかり読んでいる人
  • 次に読むべき本を探している人
  • より良く生きたい人
Amazon.co.jpで『山本一郎』の他の本を見る
Amazon.co.jpで『中川淳一郎』の他の本を見る
Amazon.co.jpで『漆原直行』の他の本を見る

bana1 賢い読書論クリック☆  にほんブログ村 本ブログへ


October 13, 2013

サービスの天才たち

キーワード:
 野地秩嘉、サービス、接客、お客様、仕事
いろいろなサービス業に従事するプロフェッショナルを取材した本。以下のような目次となっている。
  1. 高倉健を魅了するバーバーショップ
  2. 「一杯のお茶」へのこだわり
  3. 日本一のキャディを育てるゴルフ場
  4. 人を安心させる温泉カメラマンの間合い
  5. 種牛「糸福」の一生
  6. ゴッドハンドは心まで揉みほぐす
  7. 有名人御用達タクシー、接客の極意
(目次から抜粋)
サービス業と言える職業は巷にあふれているが、それぞれの職業で一際優秀、プロフェッショナルであって、いろんなところから指名が来るようなサービスの達人たちがいる。その各サービス業に従事しているプロフェッショナルな人たちに、著者が密着取材してドキュメンタリー風にまとめられているのが本書となる。

この本は以下の前作からの続編となる。今回は理髪師、高齢者施設の料理人、ゴルフ場のキャディ、温泉カメラマン、マッサージ師、タクシー運転手という6人に焦点があてられている。

特に気になった天才たちを示しておこう。まずは温泉カメラマンの相沢さんという方。東京から鳥取に移り住んで、写真スタジオを経営しているらしい。結婚式などの記念写真なども撮っているが、それだけでは食えないので、温泉旅館に行って、旅館の宿泊客の宴会の様子などを写真に撮ってそれを翌日に1枚1000円で売るという仕事らしい。

相沢さんは特別カメラ技術に優れているわけではないが、全盛期は一晩で30万円くらい稼いでいたらしい。今ではもうケータイのカメラ機能やデジカメがあるのでそこまで稼げないが、それでも温泉カメラマンとして成功したのは、カメラ以外の技量があるからとなる。それは『田舎では安心できる人だと示すことが重要』らしい。そのため目立たない服装をし、写真を撮るときは自分を消し去るようにし、自然とお客さんの笑顔を引き出してそれをスナップに収めているようだ。日本の田舎でのコミュニケーションの要諦を理解していたことが成功につながったようだ。

また、『有名人御用達タクシー、接客の極意』では北海道のタクシー運転手、下川原さんという方がいる。この方はユーミンの札幌コンサートでは常に指名されるし、運輸大臣からも指名があったり、帝国ホテルの筆頭株主であった小佐野賢治などからも指名があったらしい。下川原さんのタクシーは、著者曰くとても乗り心地がよいらしい。それは良い車であるということではなく、著者によれば以下の点のようだ。
  • 観光地の知識以外の勉強
  • トイレ確保
  • 猥談なし
下川原さんはお客さんが車窓から見える花を見て「あの花きれいだな」とつぶやく声から、あれは西洋たんぽぽですと答えられるようにしている。仕事が終わった夜に植物の図鑑を開いて翌日のルートを頭に描いて予習に励むらしい。予習大事だね。

そして北海道ならではというのが、ジンギスカンとビールを楽しむお客さんが多いので、水洗で綺麗なトイレの場所を把握していることも重要らしい。また、猥談なしというのは、札幌の風俗産業目当ての客もいるが、「ソープへ連れてけ」と言われないような雰囲気で運転しているらしい。そういう話は一切しないらしい。

この3点を著者が下川原さんに指摘すると、特に自覚がなかったらしい。唯一気を付けていることは、以下のことらしい。
「私はお客さんの仕事を尋ねたことがないんです。一度もありません。それだけは私しかできないことだと思っています。タクシーを始めた頃の話ですが、運転手の溜まりに行ったら、仲間たちがお客さんについての噂話をしていました。あの客は社長のくせに、連れの女の子には一万円もチップをやったが、オレには1000円だった……。そんな話でした。私はこれはいかんと思った。自分がお客だったら、たまらんです。
 私たちタクシーはいろいろな方をお乗せするのが役目です。なかには仕事を聞かれたくない人だっています。そして、私は人間ができていないからお客の職業を聞いたら反応してしまう。えらいひとだったら卑屈になるし、水商売の人にはおおきな態度をとるかもしれない。私はそれがこわい。お客さんの職業によって自分の態度が変わるのがこわいのです。だから、職業を聞いてはいけないと今でも自分に言い聞かせています。それだけは今でもこれからも守ります。
 私は誰にも教わらずにタクシー運転手になったから、何かひとつだけでも、他の運転手と違う技術を身につけなければやっていけなかった。そうでなければ金がもらえないと思った。家族が暮らしていけなかった。それでお客さんの職業だけはずっと聞かないことにしたのです」
(pp.183-184)
タクシーにはあんまり乗らないけど、これは納得した。このような心がけがあるので植物の知識を勉強したり、あまりぺらぺらとしゃべり過ぎないようにしていった結果、いろんなところから指名が来るようになったようだ。

いろいろなサービス業、そしてそのプロフェッショナルが気を付けていることを読んで、さて、自分のサービス業はどうだろう?と考えたりする。システム開発業、運用が僕の職業であり、そしてそれはサービス業であり、この本に出てくる人たちのようにちゃんとお客様のことを考えられているか?と思った。

こちらの都合で『仕様です』とか言って面倒を忌避してはないだろうか?とか、テスト品質はどうだろうか?とかそもそもお客様が納得されるサービス品質はなんだろうか?SLA(情報システム用語事典:SLA(えすえるえい))を満たすことだけが品質を担保していると言えるのだろうか?もう一歩踏み込んだ、自分自身ができることもきっとあるはずだろうなといろいろと考えた。まだそれが何かははっきりとはしていないけど。

変な自己啓発本みたいにこうすればいいみたいなことが書いて無くて、淡々と著者視点の分析が載っているのがよかった。世の中にはいろんな職業があって、それらの職業で何に気をつけてお客様に評価されているのかが分かってとてもよかった。

多くの職業に就けるわけではないので、このようなお仕事紹介本はとても勉強になる。職業選択の際に参考になる部分もきっと多いだろう。

さて、今日はこれから本番リリース対応のために休日出勤ですぞと。




読むべき人:
  • サービス業に従事している人
  • 就職活動中の人
  • プロフェッショナルになりたい人
Amazon.co.jpで『野地秩嘉』の他の本を見る

bana1 サービス業クリック☆  にほんブログ村 本ブログへ


July 06, 2013

サービスの達人たち

サービスの達人たち (新潮文庫)
サービスの達人たち (新潮文庫) [文庫]

キーワード:
 野地秩嘉、サービス、プロフェッショナル、人、都市
さまざまな職業のサービスのプロフェッショナルが紹介されている本。以下のような目次となっている。
  1. ロールスロイスを売り続ける男
  2. 東京っ子が通う「並天丼」の魅力
  3. ナタリー・ウッドの背中を流したかった
  4. チーフブレンダーの技と素顔
  5. 伝説のゲイバー、接客の真髄
  6. 命懸けで届けた被災地への電報
  7. 銀座より新宿を愛したナンバーワン・ホステス
  8. 「怪物」と呼ばれた興行師
  9. ヘップバーンも虜にした靴磨き
(目次から抜粋)
なんとなく本屋でバーテンダーの表紙とタイトルに惹かれて買って読んでみた。サービスのプロフェッショナルとしてバーテンダーは出てこないのだけど。

本書は平成11年に出版されたものが文庫本になっているもので、著者がそれぞれのサービスのプロフェッショナル達に会って話を聞き、それぞれの人物の生い立ちからその職業につくまで、そしてその仕事ならではのエピソードなどが著者の視点から示されている。

この本はなかなか面白かったね。世の中にはいろんな職業があって、それぞれが仕事にこだわりや哲学を持っておられるのだなぁと。しかし、今ではもう廃れてしまった職業もある。例えば、『ナタリー・ウッドの背中を流したかった』で紹介されているのは、まだ1家に風呂が完全に普及していない昭和の時代の銭湯で客の背中を流す『流し』と言われる職業だ。全盛期には1日100人をこなし、歩合制のため同じ年のサラリーマンの年収の5倍から10倍までになったらしい。へーと思った。

また、他にも廃れてきたものとしては『電報』もある。今では電報は母の日や父の日などプレゼントのような役割になっているが、昭和の時代では通信のかなめとして活躍していたらしい。電報は急いで配達しなくてはいけないという特性上、自転車をゆっくり走らせていたらダメらしい。そんなときに電報配達員に対して、すし屋、ラーメン屋、八百屋や酒屋などの足に覚えのある自転車配達員が街でロードレースの勝負をかけてくるらしいwwこれはなんか想像したら面白かった。漫画みたいだなぁと。

他にもゲイバーやホステス、興行師の話は自分の知らない世界であり、とても興味深く思えた。これらもどちらかというと廃れていった職業となる。

逆に今でもある職業としては、ロールスロイスの営業とウイスキーのチーフブレンダ―がある。特にこの二人の話が興味深く読めた。例えば、安くても1台2,200万円ほどするロールスロイスを売る飯島氏はセールスマンとして以下の点が優れているらしい。
  1. 商品の情報に強いこと
  2. 客との距離をうまく取っていること
  3. 長い目で仕事をしていること
1は説明はいらないが、2はどういうことかというと、ロールスロイスなどの高級車を買いに来る客を相手にして付き合うようになると、自分も羽振りが良くなったように錯覚し、個人で仕事を請け負っていくうちに、負債を背負ったりトラブルを起こしてしまって消えていくらしい。だから、そうならないためにも節度を保ちながら客と付き合わなくてはいけないようだ。

またウイスキーのチーフブレンダ―、稲富氏はサントリー山崎の蒸留所に所属している。そこで筆者とワインのソムリエとチーフブレンダ―はどちらが利き酒の能力が高いかという話になる。曰く、稲富氏はワインのソムリエで大切なのは利き酒能力ではなく、お客さんを見る目なんじゃないかと。そして筆者がブレンダーは人間を見る能力はいらないのか?という問い、それに対する稲富氏の以下の回答がとても参考になった。
「そうだ、そうだね。一人ひとりの顔を見ることじゃないけれど、ウイスキーを飲む人の顔を思い浮かべるというのがイメージの造形に役立つかもしれない。新しい酒を造ろう、造ろうと製品の方にばかり目がいっても駄目だ。ああ、そうだ、人間を見て、人間を面白がることがイメージをつくるのに一番いい、かもしれないなぁ。」
(pp.78)
これはシステム開発業でも同じだねと思った。技術偏重になり過ぎると、結局サービス享受者であるお客様の本来望んでいるものを実現できなくなるからね。

あと、最後に一つ面白い表現で興行師の定義が示されていた部分があったので、そこを引用しておきたい。
 では最後に、興行師というものの定義をしてみようか。両手に食パンを持って立っている男を思い浮かべてごらん。そいつが興行師の正体だよ。なかにはさむものでサンドイッチの値段は違ってくる。はさむものは何でもいいんだ。アイデアや夢をはさむんだ。はさんでいるものを見ればそいつの頭の中身がわかる。興行師の仕事とは何をはさむのかを考えることなんだ」
(pp.187)
ここはいいね!と思った。

サービス提供者としてのマインドを持てというようなことを上司などから言われたりする。そういうときに、他の職業のプロフェッショナルな働き方を知るのはとても参考になった。内容もとても面白かったし。



サービスの達人たち (新潮文庫)
サービスの達人たち (新潮文庫) [文庫]
著者:野地 秩嘉
出版:新潮社
(2008-10-28)

読むべき人:
  • サービス業の人
  • プロフェッショナルになりたい人
  • 自分の職業について考えたい人
Amazon.co.jpで『野地秩嘉』の他の本を見る

bana1 サービスクリック☆  にほんブログ村 本ブログへ



June 22, 2013

仕事漂流 就職氷河期世代の「働き方」

仕事漂流 就職氷河期世代の「働き方」 (文春文庫)
仕事漂流 就職氷河期世代の「働き方」 (文春文庫) [文庫]

キーワード:
 稲泉連、転職、ロスジェネ、仕事、物語
ロスジェネ世代の転職事情をインタビューしてまとめられた本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 長い長いトンネルの中にいるような気がした
    第2章 私の「できること」って、いったい何だろう
    第3章 「理想の上司」に会って会社を辞めました
    第4章 現状維持では時代と一緒に「右肩下がり」になる
    第5章 その仕事が自分に合ってるかなんてどうでもいい
    第6章 「結婚して、子供が産まれ、マンション買って、終わり」は嫌だ
    第7章 選択肢がどんどん消えていくのが怖かった
    第8章 常に不安だからこそ、走り続けるしかない
(目次から抜粋)
著者は1979年生まれのいわゆるロストジェネレーション世代であり、その著者と同年代で一般的に勝ち組と言われるような企業に就職しているような8人の仕事観、転職事情がインタビューされたものがまとめられた本となる。

同著者の他の本に引きこもりやニートなど一般的な就職をしないで仕事をしている人たちに焦点を当てた以下の本がある。この本は世間一般的なレールを外れた人たちが出てくるが、そのレールをたどった人たちのことが気になって、本書が生まれたようだ。
 そしてこの本を書いて以来、僕にはずっと心の中に引っかかっていたことがあった。―では、当時の自分が描こうとしなかった同世代、あの就職氷河期の時代に「良い大学から良い就職」を勝ち取り、いま企業組織の中で二十代を終えようとしている同世代は、その後どのような世界を見ることになったのだろうか―。
 その風景を知ろうとするとき、いま目の前にある職場に何らかの違和感を抱き、次の職場でその違和感を相対化することになるに違いない「転職」は、確かに働く彼らの姿や思いを取材するうえで相応しいテーマになるように思えた。
(pp.343-344)
8人の内訳は以下のようになる(番号は目次の各章に対応)。
  1. 都市銀行→証券会社 大橋寛隆(33)
  2. 菓子メーカー→中堅食品会社 中村友香子(30)
  3. 中堅IT企業→人材紹介会社 山根洋一(30)
  4. 大手電機会社→大手電機会社 大野健介(32)
  5. 中堅広告代理店→大手広告代理店 藤川由紀子(29)
  6. 大手総合商社→ITベンチャー 今井大祐(29)
  7. 経済産業省→ITベンチャー役員→タイルメーカー役員 原口博光(32)
  8. 外資系コンサルティング会社→外資系コンサルティング会社→MBA留学 長山和史(33)
出版されたのが2010年で、本書は文庫化になったもの。8人の年齢は当時の年齢である。ちょうど今の僕と同じような年代となるので、とても興味深く読むことができた。

全員が最初に希望通りの就職をしているわけではないし、大学進学も必ずしも希望の大学に行けているわけではない人が多い。そして入社後の配属先や仕事なども同様となる。それから職場の雰囲気、評価制度、仕事の内容、人間関係などなど、それぞれが違和感を覚えるきっかけは様々。そんな8人が自分なりに試行錯誤しながら次の道に行くには何が必要で、どう考えていき、実際に何が決め手で転職を決意したのかがよく分かる。

一番共感できたのは2章の中村友香子さんの志向性かな。早稲田大学文学部でマスコミ、出版社志望で就職活動をするもうまくいかず、2年留年し、再挑戦するもうまくいかず。その間にアルバイトで培った惣菜屋の在庫管理経験をもとに洋菓子メーカーに就職するも、今までの経験が活かせず『使えない』と言われて体調も崩し、結局辞めてしまう。その後、大学のキャリアセンター経由で氷菓子を作る食品メーカーに就職し、総務部の経理部門にその当時会社では少ない4大卒の女性事務職として新たなキャリアを積み重ねていくというもの。

経緯などは全然僕とは違うけど、最後の著者を通した中村さんの姿勢が特に共感できた。
「自分のやりたい仕事ができるか」に固執するかつての姿は、そこにはもう見られない。
 社会に対して自分は何を加えることができ、そして何を期待されているのか―意識するにしろしないにしろ、「働くこと」の中にあるもう一つの意味を彼女は確かにつかみつつあるのかもしれないと、そのとき僕は思った。
(pp.95)
僕は一応第一志望と言える会社に入れた。しかし、順調に物事がうまく行ったことはなく、例え第一志望の会社に入れても、必ずしもやりたい仕事ができるということはほとんどなかった。経験も成果も出せていない下っ端はまず、仕事は選べない。そしてさらに根本的なこととして、そもそも何が本当にやりたかったのだろう?と思い悩むことも多かった。大体3,4年目くらいまでは特に。

大学で学んだことをそのまま役立てたいという志向性で今のSEという職種を選んだのだけど、そこには本当にやりたいとか好きという基準はあまりなかった。ただできそうなこと、という観点ととりあえずその道なら就職にはそれほど困らないというのもあったから。しかし、予想外の持病というハンデもあったりで結局思い描いた通りのキャリアは全く進めなくて、そろそろ8年目、ちょうど本書のような登場人物と同じ年齢に差し掛かっている。

しかし、今はそれほどやりたいことに固執はしていない。個人的にはやりたいことではなくても仕事はできるし、面白みもやりがい、充実感もそれなりに感じられるようにはなってきたなと思う。そこまでに至るにはそれなりの経験と思考過程が絶対に必要なのだけどね。求められること、自分のできることを少しずつ増やしていく過程で、自分のやりたいことをより明確化して、それが確定できたらそこに向かって努力すればいいのかなと。少なくとも20代ですべてを決められなかったし、決めなくてもよかったと思う。仕事の期間はそれなりに長い、マラソンみたいなものなのだし。

30歳前後というのは、学部卒で8年、院卒や浪人、留年だと5,6年の仕事経験を経ることになるのだけど、その過程で誰でも8人の登場人物と同じように迷ったり、うまくいかなかったり、思い悩んだり、なんか違うという違和感を覚えることは程度の差こそあれ、それなりにあるだろう。そういうときに、他の人は何がきっかけで、どういう志向で別の道に行ったのか?ということを知るのはとても参考になった。8人の転職の物語を読みながら、自分のこれまでを振り返って、そしてこれからどうしよう?ということを少なからず考えることになるだろう。

そして別に僕はまだ転職する必要性も意思も持ち合わせないことを再確認した。単に転職活動がめんどくさいというのもあるし、プロジェクト単位の仕事だから、プロジェクトごとに一緒に働く人、職場環境、仕事内容もガラッと変わるので、社内で転職しているようなものだし。何よりも一番の決定的な理由は、会社組織、仕事内容を変えるべき決定的な要因が何もないから。まだ外に出る前に自分のできることを地道に増やしていかなくてはいけない時期だなと。

本書は文庫本で350ページもある。そして、一応ジャンルはノンフィクションではあるが、なんだか小説を読んでいるような感覚になってくる。それは著者の筆力によるところが大きい。単純なインタビュー会話をそのまま文字にされているわけでもないので、筆者のフィルターを通して描かれている部分もある。それでも、8人の生い立ちからこれまでの働き方、仕事観はどのようなものだったのかがよく描写されていた。

著者を含めて8人の生きた時代はちょっと違うかもしれないけど、時代に影響されない根本的な仕事に対する感じ方などは、何年たってもそんなに変わらないので、転職しようかなと思っている人はぜひ読んでみたらよいね。



仕事漂流 就職氷河期世代の「働き方」 (文春文庫)
仕事漂流 就職氷河期世代の「働き方」 (文春文庫) [文庫]
著者:稲泉 連
出版:文藝春秋
(2013-04-10)

読むべき人:
  • 転職しようかと思っている人
  • 最近仕事がうまくいってないと思う人
  • 仕事って何だろう?と考えたい人
Amazon.co.jpで『稲泉連』の他の本を見る

bana1 漂流クリック☆  にほんブログ村 本ブログへ



June 17, 2012

自分の仕事をつくる

自分の仕事をつくる (ちくま文庫)
自分の仕事をつくる (ちくま文庫)

キーワード:
 西村佳哲、仕事、デザイン、働き方、こだわり
働き方研究家にるインタビューがまとめられた本。以下のような目次となっている。
  1. 働き方がちがうから結果もちがう
  2. 他人事の仕事と「自分の仕事」
  3. 「ワーク・デザイン」の発見
  4. 補稿 10年後のインタビュー
(目次から抜粋)
自分の仕事をつくる』というタイトルには、『他人事ではないこと、他の人には肩代わりできないこと、任せないこと、任せたくないこと、ほかでもない「自分の仕事」をしよう!』という願いが強く含まれているらしい。

この世界は一人一人の小さな「仕事」の累積なのだから、世界が変わる方法は一人一人の「働き方」が変わることから世界が変わる可能性もあるのではないか?という問を発端とし、著者の「働き方研究家」という肩書を活かし、デザインやモノづくりに関わっている人に「あなたの働き方について聞かせてください」とインタビューしたものがまとめられた本となる。

本書でインタビューされた人たちの職業は様々。インダストリアルデザイナー、建築デザイナー、PowerBook Duo(1992年)をデザインした人やサーフボードを作っている人、プラモデルを作っている人、雑誌編集者、パン屋さんなどなど。

みなモノづくりやデザインに関わっている人なので、自分のシステム開発業という職業上、とても参考になることが多かった。それぞれに仕事、働き方にこだわりを持たれているのだなぁと思った。

そのこだわりは一緒に働く人たちであったり、仕事場であったり、道具であったり、自分の仕事として提供している価値であったりで、なるほどなぁと思うことが多かった。例えば、映画『紅の豚』に出てくるポルコの飛行機をデザインされたプラモデル会社の人の話など、なるほどと思った。
「そもそも模型なんて生活必需品ではない。僕らのような仕事がなくなったところで、誰も困りはしないでしょう。だからこそ、つくる側が楽しんでいなかったら嘘ですよね。最初から遊びの世界なんだから、馬鹿みたいに思いっきりこだわった仕事をした方がいいと思うんです。」
(pp.224-225)
このプラモデル会社のこだわりはすごいなぁと思った。ポルコの飛行機は実在しないのだけど、実際に飛ぶことができる設計になっているらしい。実物エンジンの資料を取り寄せ、そして映画に出てくるデザインに仕上げ、そこからプラモデルになるという話はとても興味ぶかかった。そういう部分を楽しまれているのだろうなと。

またグラフィックデザインをされていて、ベネトンの香水のパッケージデザインをされた人の以下の言葉。
 そして観察精度が上がると、引きずられる形で、本人のデザインの精度も高まっていく。デザインに限らず、スポーツや料理においても、模倣は基本的な上達方法だが、そのポイントはまず観察を通じたイメージ精度の向上にある
 本人の「解像度」の高さが、その人のアウトプットの質を決める。
(pp.28-29)
僕は今は、システム開発で基本設計(basic design)フェーズからの仕事をやっているけど、同じようにデザイン(設計)をする観点からこれはなんとなくそうなのかなと思った。観察というか、お客様の業務資料などから読解してシステムに落とし込むときのイメージが重要で、表面的な部分だけに終始して設計すると例外パターンを抜け漏れしたり、使いにくいシステムになってしまうだろうし。

自分自身は同じようにモノづくりに関わる仕事だから、自分の仕事ではどうだろうか?と置き換えながら考えやすかったし、そのように読むとまたいっそう自分の働き方や仕事に対する意識が深まっていくと思う。

ただ、モノづくり、デザインだけが仕事のすべてではないので、このインタビューだけがすべて正しいというわけでもなさそうだなと。自分事として仕事をしている人だけが絶対的に正しい、というわけでもなさそうだし、仕方なく「こんなもんでいいでしょ」と人を軽く扱った仕事に従事しなくてはいけない読者からの意見の手紙が最後のほうに取り上げられていた。それに対する著者の真摯な回答も載っていて、なるほどと思った。

最後に著者の仕事観を引用しておきたい。
 仕事とは、社会の中に自分を位置づけるメディアである。それは単に金銭を得るためだけの手段ではない。人間が社会的な生き物である以上、その生涯における「仕事」の重要性は変わることがないだろう。自分が価値のある存在であること、必要とされていること。こうした情報を自身に与えてくれる仕事には求心力がある。あらゆる仕事はなんらかの形で、その人を世界の中に位置づける。畑仕事のような個人作業でもそうだ。自然のサイクルの中に、自分の存在を確かめることができる。
 人はどんなに大金持ちになっても、なんらかの形で働こうとする生き物だろう。お金持ちはお金持ちなりの仕事を、自分で作り出すはずだ。それは人間か、外の世界との関わり合いを通じてしか自分が存在する実感を得ることができず、またそれを常に渇望していることを示している。
(pp.256-257)
なるどどねと思った。

今年の初めから自分自身の働き方、仕事そのものを『ハタモク』という会に参加しつつ考えるようにしている。そもそも何のために働くのか?とか、今の仕事は自分にとってどういう意味があるのか?、そもそもこの仕事で良いのか?とか、どうやったらもっと仕事で充実感を得られるだろうか?といったことなどなど。それらをずっと考えていたので、この仕事観はとても納得がいった。

最近、7年目にしてようやく自分の仕事の意義などが分かりつつあり、そして楽しめるようになってきたなと思う。それまでは本当に苦行のようで、何のために働いているのかもわからず、それは自分自身が思うように仕事で成果を出せていなかったからだろうなと。そして、考え続けながらも、仕事を辞めず今まで来て、このような本を読むととても腑に落ちることが多かったなと。

まだまだ自分で自分の仕事のこだわりとか、本質的なことは何も語れないけど、いつかこんなインタビューを受けた時に、仕事とは〜ですよとか言えるようになっていたいなぁと思った。

本書はインタビュー記事なので雑誌を読んでいるような感覚になる。実際に初出は雑誌の記事だったものだし。それぞれのインタビューが数ページまとまっているので、読みやすかった。朝の通勤電車で少しずつ読むのがよいと思う。

あと、似たような本では以下のものがおススメ。著者の仕事に関連する本は他にも何冊かあるようなので、気になるので全部読んでみようと思う。



自分の仕事をつくる (ちくま文庫)
自分の仕事をつくる (ちくま文庫)
著者:西村 佳哲
販売元:筑摩書房
(2009-02)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • 働く目的を考えたい人
  • デザイン、モノづくりを仕事にしている人
  • 自分の働き方を考えたい人
Amazon.co.jpで『西村佳哲』の他の本を見る

bana1 働き方模索クリック☆  にほんブログ村 本ブログへ


May 17, 2012

僕らが働く理由、働かない理由、働けない理由

僕らが働く理由、働かない理由、働けない理由 (文春文庫)
僕らが働く理由、働かない理由、働けない理由 (文春文庫)

キーワード:
 稲泉連、働く、社会、不安、青春
不安な社会を生きる若者たちのインタビューがまとめられた本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 納得のいく説教をされたいんだ―無気力な大学生の曖昧な未来
  2. 第2章 あんな人間になりたくない―「営業」職への苛立ち
  3. 第3章 すべてを音楽に捧げて―エリート・コースからミュージシャンへ
  4. 第4章 友達の輪を求めて―楽しきフリーター生活
  5. 第5章 引きこもりからの脱出―彼が苦悩の年月を受け入れるまで
  6. 第6章 働くことは続けること―ヘルパーとして生きる
  7. 第7章 俺はなんのために生きているんだろう―若き学習塾経営者の葛藤
  8. 第8章 石垣島で見つけた居場所―サーファー、海人になる
(目次から抜粋)
本書は、2001年、著者が大学3年生のころに書かれた本となる。著者は高校を中退し、大検を経て早稲田大学第二文学部に入学し、しだいに「社会に出ていくことへの不安」を感じていたようだ。そして、その違和感を基に、自分の身近にいる若者たちはどんな子供時代、青春時代を送ってきて、これから社会へ飛び立とうとしているのかが気になり、7人の男たちにインタビューをしてまとめられたのが本書となる。

以下あとがき部分に本書の経緯を引用しておく。
 社会に出るための心の準備ができていないから不安なのか?それとも「働く」ことが嫌なのか?だいたい、その「社会」って場所に行くために人は心の準備などをするのものなのか?……そもそも社会ってなんだ?働くってなんだ?

 本書はそんな気持ちで取材を続けた結果生まれた。
 僕は、周りにいた友人や親戚や、偶然出会うことになった二十代〜三十代前半の人たちに、「あなたはどうしてそこにいるのか?どうして働いているのか?あるいは、なぜ働いていないのか?」といった問いを投げかけた。その答えを聞けば、「社会」に出るということがどういうことなのか、という曖昧な疑問を解くヒントが見つかるかもしれないと思ったからだ。
(pp.290)
7人の男たちの生い立ちは実にさまざま。大学5年生で、卒業後は就職せずにフリーターになる人、専門学校卒業後に自動車販売の営業職に就いているが、辞めたいと思っている人、名門中学に入学してバンド活動に目覚めた人。

さらには、ゲームが好きで専門学校に行くも、ゲームだけがすべてではないと悟り、そのままフリーターになった人、高校生から引きこもりになってしまったが、アメリカで空手に自分の道を探った人、高卒後、スキー用品店から老人介護のヘルパーになって活躍する人、ミュージシャンを目指していたが、塾講師として月収100万円を得るまでに成功したが、何のために生きているのだろうと悩む人、大検取得後、沖縄で漁師になった人などなど。

それぞれがいわゆる世間一般で言う、普通に小学校、中学校、高校も問題なく過ごし、そして大学生になって就職するというレールからは大きく逸脱している。みなどこか社会への不安や自分自身の中にあるうまく言語化できないもどかしさのようなものを抱えて、思い悩みつつも、それでもそれぞれの道で活路を見出されている。

客観的に本書を読むと『So What?』という部分もある。それぞれの生い立ちから現状までが淡々と著者の読ませる文章で書かれているが、特に彼らの生き方が劇的に好転したり、何か答えを見出せているわけでもないから。でも、その『So What?』の部分に対する純粋に共感できる部分、自分はどうなのだろう?と自然と考える部分を大切に読んだほうがよい気がした。

プロローグに以下のような部分が示されている。
 なぜこうまで自分が不安になるのかわからない。なぜ自分にとって社会がこうまで大きな壁となって立ちはだかっているのか。それは、社会に対して感じる圧倒的な違和感と言い換えることができるのだが、そうした違和感は僕だけが抱いているものなのだろうか。
(pp.15)
これは僕も大学生のころに常に感じていた。

大学1年生のころ、ちょうど季節的には今頃で、学生生活も少し慣れたころ、なんとなくこのままぼーっと大学生活を送っていくことに対するどうしようもない不安を感じていた。第1志望ではなかったし、入試科目も少なかったり、講義の教養科目もほとんどないので、専門バカになって社会に出てから全く通用しなくなるのではないか?と感じ、このまま社会人になっていくことに対して不安があった。そこから読書を始めるようになった。

それから大学3年生になって就職活動が始まり、より社会へ出るということへの意識が強まっていく中で、その当時講義をフルコマでこなしつつも19時から深夜までシステム開発のバイトをやっていて忙殺されており、将来はあんまり働きたくないなぁとも感じていた。ずっと好きな本を読んだり、映画を見たりしてゆっくり過ごせたらなぁと思っていた。それは今も変わらないのだけど。

常に不安で押しつぶされそうだった。何とか就職活動がうまくいって、卒業して社会人になったのはいいけど、そこからまた苦難が待ち受けていて、学生時代に感じていたものとは全く異質で、さらに強烈な不安に苛まれることになった。だから本書を読んでいると、昔の自分を思い出しつつも、現状の抱えている自分の不安がオーバーラップして共感できた。とはいえ、本書を読んでも社会への不安の対処法、働くことの意義などの答えなど何も得られない。

もともと何か答えを探そうと期待して読んだわけではなかったので、それでいいのだと思う。何かしら感じた部分、自分なりの働く意義やこれからの将来へ向けてどうするべきか?ということを考えるきっかけになると思う。

本書が描かれたのはもう10年前ほどの社会状況なのだけど、10代後半から20代を通して生きる若者たちの普遍的な社会への不安、体制への不満、ぼやけたアイデンティティ、空回りする情熱、思い通りにならない苛立ち、家族関係や友人関係などの葛藤、将来の見えない空虚感などはいつの時代にも共通認識としてあるのだと思う。そういうよい部分も悪い部分もひっくるめた、著者の読ませる文体よって描かれる『青春』が本書にはある。

同じようないろんな人にインタビューしてまとめられた本として、以下がある。これもレールから外れた様々な職業の人たちが出てくる。あわせて読んでおくとよいかも。

働く意義が見出せなかったり、自分自身が将来どうなっていくのかわからない不安というのは常に付きまとうもので、簡単に対処できるものではないなぁと実感している。しかし、活路を見出すというように、考えなくてはいけないし、かといって考えているだけでは何も始まらないので、行動しなくてはならない。考えながら行動していったら、あるとき、自然と不安が軽減されていたり、自分なりの働く意義が見出されているのだと思う。もしそうでなかったら、人生なんて不安と苦悩だらけでまったく残酷だよ。

社会へ出ることへの不安を感じている大学生や、すでに働いているけど何のために働いているのかよく分からない社会人の人は、読んでみたらいろいろと考えるヒントになると思う。



僕らが働く理由、働かない理由、働けない理由 (文春文庫)
僕らが働く理由、働かない理由、働けない理由 (文春文庫)
著者:稲泉 連
販売元:文藝春秋
(2007-03)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • 就職活動中の大学生の人
  • 入社3年目くらいの人
  • 不安の中で生きている人
Amazon.co.jpで『稲泉連』の他の本を見る

bana1 不安と青春クリック☆  にほんブログ村 本ブログへ



April 30, 2011

空気を読むな、本を読め。

空気を読むな、本を読め。 小飼弾の頭が強くなる読書法 (East Press Business)
空気を読むな、本を読め。 小飼弾の頭が強くなる読書法 (East Press Business)

キーワード:
 小飼弾、読書論、ツール、血肉化、遊び
プログラマでアルファブロガーである著者によって示されている読書論。以下のような目次となっている。
  1. 1章 本を読め。人生は変わる
  2. 2章 本を読め。答えは見つかる
  3. 3章 「手」で読め。そして「脳」で読め
  4. 4章 本を読んだら、「自分」を読め
  5. 5章 コストパフォーマンスを考えよう
  6. 6章 エロ本は創造力の宝庫だ!
  7. 7章 マンガは日本の国宝である
(目次から抜粋)
本書は出版直後に買っていたのだけど、ずっと読むタイミングを失っていた。しばらくTOEIC勉強に注力を注いでいたので、読書そのものの方法を忘れつつあったし、今後何をどう読むべきかを考えたくて黄金週間中の今、このタイミングで本書を読んだ。

まず、この本で一番重要だと思ったのは以下の部分。
 読書とは「遊び」。楽しみながら読むことが大前提なのです。
(pp.18)
やはりこの「遊び」の感覚が一番重要じゃないかと再認識した。

また、本書では読書後それを血肉化して自分のものとするには、アウトプットし、さらにそれによって自分を客観的に見る、つまり自分を読むという行為が重要と示されていた。なので、本書の客観的な評価や内容の網羅性はあまり重要ではなく、そもそも読書について自分が考えたかったことを本書を題材にして示しておく。

まず、自分の考えておきたかったこと、整理しておきたかったことを以下に示しておく。
  • TOEICトレーニングが終わり、読書する時間が増えた今、何を読んでいくべきか?
  • 今後読むべき本が分かったとして、選択と集中かつ目的志向で読んでいくのがよいのか?
主にこの2つに集約されると思う。

まず、『情報で溜まったクソを排泄せよ!』では、情報に飢えることはとても重要で、この体験から本当に求めているものがはっきり分かってくると示されている。これは自分も実感した。

2009年の夏ごろ、7月からTOEIC対策でずっと英語の勉強をしてきた。大体1,300時間は費やしてきて、今年の1月になんとか900点突破という目標を達成できた。しかし、そのために日々のインプットをTOEICの勉強だけに絞っていったので、読書はほとんどできなかった。

実際去年2010年の読了冊数は大体30冊までに減った。まがりなりにもこのような読書ブログを運営しているし、それ以前は年間平均200冊以上は読んでいたので、この冊数はとても心苦しいものでもあった。他の人が毎日いろんな本、流行の本、話題の本を読めているのに、自分はひたすら単語を覚えたり問題集を解きまくる日々だった。

本屋などに行ったり、弾氏のブログを見たり、他の読書ブログを見たりして、本当に読みたい本がたくさんあるのに、ぜんぜん読めなくてストレスも感じていたと思う。それが大体1年以上続いて、まさに著者が示すような情報に飢えるという苦行!?を経験したのだと思う。しかし、それが結果的によかったのかと今なら思う。

2008年ごろはいかに働きながらたくさん読んで、ブログを更新するか?ばかりに囚われていたと思う。そのため、どうしてもぜんぜん血肉にはなっていなかったと思う。一応アウトプットの形態はとっていたが、それでも自分なりに血肉になっているという実感は薄かった。

1,300時間のTOEICトレーニングを通して、英単語なり熟語表現を覚えてそれらをアウトプットすることの自分なりの方法論を習得できた気がする。そして、本書で示されている、本当に必要なものがわかってくるというのが、自分なりの言葉で言い換えると、選択と集中で徹底的に反復トレーニングをすること、だとなんとなく思った。

単純に読書で考えるなら、多くを読んだほうが理解も早まり、世界も広がっていくのは実体験からも間違いない。しかし、本当に血肉化して消化するには、読むべき本のジャンルを絞って、それがものになるまで徹底的に繰り返して読むことが重要だと思った。そして、そのジャンルをある程度の領域まで高められたら次に移るべきかなと。少なくとも自分は並列処理が向いていないタイプだし、それをやると何も血肉化できずに消化不良を起こすので。

読み方はとりあえず、選択と集中で分野を絞って血肉となるまで徹底的に繰り返す!!を実践してみようかと思う。

読み方は確定できた。ではそもそも今後何を読むべきか?が問題となる。

選択と集中で分野を絞ると示したので、どの分野かを考える必要がある。仕事に関係するもの、すなわちIT技術系の本をもっと読もうと思っている。今まで仕事に集中できずにいたので、27歳の今、今後のキャリアを考える上で、基礎スキルから根本的に鍛え上げる必要があるかなと思って。

しかし、著者によれば、読書はひきこもって自分中心ですべきとあり、続いて以下のように示されている。
 ここで注意しておきたいのが、なんらかの目的を持って読書をしないことです。読書を「〜しなければならないこと」、つまり仕事にしてはいけません。
 仕事の場合は目的を定めないとたいていうまくいきませんが、読書の場合はむしろ目的を持たないほうがいいでしょう。明快な目的を持ってしまうと、読書が「〜しなければならないこと」、つまり仕事になってしまうからです。
(pp.121)
意気揚々と技術本をたくさん読んで仕事で活かすぞ!!と思っていたところなので、若干出鼻をくじかれた感じがした(笑)。どうしよう?

まず、そもそも自分も読書は「遊び」が理想だと思うし、そういう観点からたくさん読んできたので、そうしたいと思う。けれど直近の仕事でValueを発揮するには、仕事に関係する本も読んで勉強していかなければならない。そしたら目的志向でいったほうがいい。そうなると、それは読書ではなく、やはり完全に仕事だ。

どうすればいいのか?そもそも技術本を読むことが仕事としか捉えられないことが問題ではないだろうか?だったらそれを「遊び」にすればよいのか!?ということになる。これで半分以上は答えが出たようなものだ!!

そう、今までどうしても遊び的な部分が足りなかった。一応大学4年間ソフトウェ工学を学んで、プログラミングもそれなりにやってきたけど、自分の生き方に迷い悩みつつ生きてきたので、どうしても仕事の糧としか捉えられずに楽しんだりする余地があまりなかったと思う。だから、今後、技術本を読んだり勉強することが、楽習になり、「遊び」的な要素を取り入れていけばいいのだと分かった。

もちろん最初は楽しめる余地があまりないかもしれない。しかし、何事もある程度自分を強いてやり続けなければ楽しみもわからないだろう。実際TOEICを通して英語勉強をするのは最初は苦行だったけど、だんだん楽しみにかわりつつあった。だから、IT技術系の楽習も問題なくできるだろう。

そういう本の読み方ができるなら、著者の示すように、人生の2割を仕事にあてて、残りの8割を遊びに費やすことができるようになるかもしれない。それこそが自分の理想でもあるし、これはぜひ時間をかけてでもそのように転換したいと思う。

ということで、本書を読んで、さらに自分を読んだまとめを簡単に示すと、以下のようになる。
  • IT技術系の本を選択と集中で徹底的に反復トレーニングして読み込み、自分の血肉になるようにする
  • IT技術系の本を読むことは仕事に関係することであるが、継続していくうちに徐々に「遊び」に転換させていく
これで自分の読書の方向性、さらにはこの読書ブログの方向性が決定したようなものだと思う。しばらくはこれで行ってみよう!!

今後の自分の読書方針を考えるきっかけとして、本書はとてもよい題材だったと思う。

本当はフィクションのくだりとか漫画についての部分なども、もっとたくさん引用していろいろと自分の考えを示しておきたかったのだけど、長くなりすぎるのでこの辺で。



空気を読むな、本を読め。 小飼弾の頭が強くなる読書法 (East Press Business)
空気を読むな、本を読め。 小飼弾の頭が強くなる読書法 (East Press Business)
著者:小飼 弾
販売元:イースト・プレス
(2009-10-22)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • 読書について考えてみたい人
  • 自分自身について客観的に考えてみたい人
  • 読書を「遊び」として楽しみたい人
Amazon.co.jpで『小飼弾』の他の本を見る

bana1 あくなき遊び読書クリック☆  にほんブログ村 本ブログへ



April 10, 2011

若者のための政治マニュアル

若者のための政治マニュアル (講談社現代新書)
若者のための政治マニュアル (講談社現代新書)

キーワード:
 山口二郎、政治、選挙、マニュアル、スキル
政治評論を多く執筆している大学教授によって、社会の荒廃で様々な被害を受けている若い人に対して、政治のスキルが示されている本。

政治のスキル、つまり選挙に対する考え方が10個のルールとして示されており、それが目次となっている。
  1. ルール1 生命を粗末にするな
  2. ルール2 自分が一番―もっとわがままになろう
  3. ルール3 人は同じようなことで苦しんでいるものだ、だから助け合える
  4. ルール4 無責任でいいじゃないか
  5. ルール5 頭のよい政治家を信用するな
  6. ルール6 あやふやな言葉を使うな、あやふやな言葉を使うやつを信用するな
  7. ルール7 権利を使わない人は政治家からも無視される
  8. ルール8 本当の敵を見つけよう、仲間内のいがみ合いをすれば喜ぶやつが必ずいる
  9. ルール9 今を受け容れつつ否定する
  10. ルール10 当たり前のことを疑え
(目次から抜粋)
一応東京都民なので、今日が都知事選なので、投票の前に政治リテラシーを少し上げるために読んでみた。以下、恣意的に特に勉強になった部分を取り上げることにする。

まずは著者なりに政治の目的が示されている。
 政治の最も大事な目標は何だろう。それは、なんといっても生命を尊重することである。
(中略)
衣食足りて、家族や仲間と楽しく生きることを最も大事だと考える普通の人の生き方を否定することは、政治において最もしてはいけないことである。
(pp.14-15)
そして、著者によれば、政治の第一の使命は、人間が人生をまっとうできるよう平和を守ることである、と示している。さらに平和に関して以下のように示している。
 平和とは、単に戦争がないという状態を意味するだけではない。人間が人間らしく生きることが当然尊重される社会こそ、平和な社会である。人間の尊厳が軽んじられるような社会は、たとえ戦争状態になくても、平和ではない。
(pp.23)
今の日本は本当に平和だといえるのだろうか?と振り返ってみると、怪しいね。毎年年間3万人も自殺してるような状況では、とても平和とは言えないね。また、1ヶ月前の東日本大震災で多くの方が亡くなられる状況もあって、平和ではなくなった人も増えたはず。

平和で健全な生活を送れるようにという政策のもとに政治家となるべき人を選挙で選ぶとき、理想はベンサムの示すように『最大多数の最大幸福』になればよい。しかし、それぞれ一人ひとりの利益と公共の利益が結びつくわけではないから、民主主義の仕組み、つまり議会でそれぞれの求める利益を語り、その中から公共の利益を見出すべきとある。そして以下のように示されている。
人々が政治にかかわりを持ち始める最初の動機は、高邁な理想ではなく、自分にこのようなことをしてもらえるとありがたいとか、このような仕組みがあると助かるといった自分の利益の主張でよいということを、まず強調しておきたい。
(pp.34)
これが、政治家を選挙で選ぶときの一つのわかりやすい基準だなぁと思った。正直、選挙公報とかに示されている提言が、誰をどの範囲で対象にしていて、その結果どういうよいことが期待できるのかといったことを完全に理解できるわけではないし、数年先のことまで考えてはみるが、やはりよく分からなかったりする。

なので、とりあえず、自分自身の生活がよくなる候補者はだれか?という基準で考えると、選挙を自分のこととして考えられて、候補者を選びやすくなると思った。これはあまり今までなかった視点だと思った。次回の選挙もこの基準で投票に行けばいいのだと分かってよかった。

あと、若者が政治に無関心な理由の一つとして、日本における政治教育が不毛であるからというのが示されていた。それによると、中学、高校で習う社会科、政治経済、現代社会は、文科省の学習指導要領を逸脱する内容ではだめだし、大学入試を意識した教科書構成となっている。そのため、本来政治経済という科目は、主権者として政治に参加するためのハウトゥーを学ぶべきなのに、暗記中止となっており、政治的素養を身につけるのが困難であると示されている。

そして、そうなった理由として、以下が示されていた。
 なぜこんなことになるのか。それは、文科省の役人をはじめとする保守的な大人たちが、若者に民主政治を支える公民になってほしいという建前を並べながら、実のところ若者に政治について関心を持ってほしくないと思っているからである。上に述べたように、若者が保守化してから久しいが、文科省の役人や自民党の文教族の政治家は、若者が政治に関心を持ったらまた反体制運動を行うのではないかと恐れている。だから、政治経済を退屈な暗記科目にしておいて、若者を政治から遠ざけたいと思っている。
(pp.138)
これが本当なら、都合のよいように教育が設計されているということになる。まぁ、自分も政治経済とか日本史とか暗記科目はまったく関心がなかった。だから選挙権を手に入れた20歳直後あたりは、投票に行くという概念がほとんどなかった。でも、昨今はそうも言ってられない状況になった。

個人的には、自分たち一人ひとりが選挙で適任な為政者を選びつつ、健全な日常生活を得るには、根本的な教育システムを変えるべきだと思う。もっと言えば、暗記中心の減点主義的な評価尺度ではなく、小、中、高、そして大学入試に至るまでの評価尺度を根本から見直すことが必要である。さらに、就職活動時の評価尺度、就職してからの仕事の評価尺度も見直して健全化すること。これによって大分変わるのではないかと、自分なりに仮説を立てている。

まぁ、そしたらみんな政治に無関心ではいられないでしょう。もっと世の中の事象に関心を持てるし、その上で、自分自身にとってどういう利益がもたらされるかを意識して投票に行けるようになるんじゃないかと思う。

そして、ルール7の最後に以下のように示されている。
 一票なんて無力なものだとみんな思うだろう。しかし、多くの人が一票を投じれば、それが未来の希望につながる道を作るのである。
(pp.148)
あと、ルール10に関して、特に重要だと思った記述を以下に引用。
 自分たちが困ったり悩んだりしていることを、当たり前とあきらめてはならない。そこであきらめると、弱者の苦境を利用して利益を得ている人々の特権や暴利を当たり前だと許すことにつながるのである。おかしな現実に対しては、当たり前だと引き下がらず、おかしいと声を上げることが重要である。
(pp.213)
そのためには、著者も示すように、ブログなどで書くというのも一つの手段であるとあった。まぁ、自分はそんなに政治的なことを個別に書いたりはしないと思うけどね。

本書を読んで政治リテラシーを少し上げられたのだと思う。ちゃんと今日の午前中に近所の中学校に行って投票したし。

また、政治リテラシーを上げるには、あわせて以下も読んでおきたいところ。本当は、この記事は昨日までには更新しておきたかったのだけど、ついつい漫画喫茶で紀元前250年前の中国、秦を舞台とした『キングダム』を読み始めて、あまりにも面白くて止められなくなって、更新タイミングを逃した(笑)。『キングダム』、兵法の勉強にもなるし、為政者としてトップに立つべき人物はどのようであるべきか?といったことも考えられて、本当に面白いと思った。14巻まで読んで、早く続き読みたくてしょうがない。

キングダム 1 (ヤングジャンプコミックス)キングダム 1 (ヤングジャンプコミックス)
著者:原 泰久
販売元:集英社
(2006-05-19)
販売元:Amazon.co.jp

さてさて、今日の都知事選を経て、誰が都知事になることやら。



若者のための政治マニュアル (講談社現代新書)
若者のための政治マニュアル (講談社現代新書)
著者:山口 二郎
販売元:講談社
(2008-11-19)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • あまり政治に関心がない若い人
  • 誰に投票すればよいか分からない人
  • 政治全般について考えてみたい人
Amazon.co.jpで『山口二郎』の他の本を見る

bana1 都知事選投票完了クリック☆  にほんブログ村 本ブログへ



December 18, 2010

エグザイルス

エグザイルス (講談社プラスアルファ文庫)
エグザイルス (講談社プラスアルファ文庫)

キーワード:
 ロバ−ト・ハリス、島流し人間、旅、自伝、人生
旅人でラジオのナビゲーターの著者による旅に関連した自伝。以下のような目次となっている。
  1. プロローグ 旅人の可能性
  2. 第1章 横浜少年時代
  3. 第2章 放浪人生の幕は上がった
  4. 第3章 心の旅とヒッピー文化
  5. 第4章 内なる砂漠
  6. 第5章 魂は彷徨する
  7. 第6章 友はエグザイルの中にいた
  8. エピローグ そして人生の旅は続く
(目次から抜粋)
著者の本は以前読んだことがある。『人生の100のリスト』だ。そして、最近、西新宿のブックファーストで、おススメ本フェアが開催されており、この本が取り上げられていた。誰が推薦していたのかは忘れてしまったが。『人生の100のリスト』が面白かったし、『人生の100のリスト』にも本書のことが言及されていたので、いつかは読もうと思っていたし、TOEIC後に何か面白いものを探していたので、著度よいタイミングで読めた。

本書は確実におもしろいと断言できる!!もう以下の記事を読まなくていいから速攻でアマゾってもいいくらいに(笑)そして、これがこのブログと取り上げる555冊目の本となる。ゾロ目にふさわしい。

簡単にこの本の概要を示すと、これは著者のこれまでの人生を振り返った自伝である。ハーフの父の元に横浜で生まれて、中学、高校とカトリック系の学校に通い、そこから日本をヒッチハイクして旅をして、高校卒業後はロシアから、スウェーデン、アフガニスタン、インドへと放浪の旅に出る。

1年にわたる旅の帰国後に上智大学に入学し、さらにはアメリカ、カリフォルニアへと留学、上智大学卒業後にシンガポール、ジャカルタ、バリ、シドニーへと放浪が続く。そこには、常に冒険、ドラック、ヒッピー、ボヘミアン、ギャンブル、危機、孤独、不安、そして恋や仲間、同士、家族があった。

それぞれのエピソードを一つずつ挙げて紹介したいほどに著者の人生は濃いものとなっている。冒険の旅に出るということは、ここまで面白いものになるのかといったことを知らしめてくれる。単純に日本で会社や社会のルールに縛られて生きているだけでは絶対に味わえないような経験ばかりだ。

本書のタイトルとしてある「エグザイル(EXILE)』は、某ダンスグループ名にも使われているが、著者は以下のように使っている。プロローグから一部抜粋。
 僕はたまらなくなり、日本を飛び出した。今逃げないと、自分が潰されてしまうのだと思った。
 旅の目標そのものは漠然としたものだった。
 名もない港町の怪しげなバーで、変な連中と朝まで飲み明かし、赤道直下のボロホテルの部屋でポーカーをやり、自分の名前を忘れてしまうような砂漠を歩き、世界の裏道で面白い話を聞きたい。
 とにかく、誰にも束縛されることなく、自分らしく、楽しく生きていければよかったのだ。
 やりたくないこともわかっていた。
 どこへ行こうが、くだらない奴らに媚びたり、敷かれたレールの上を往復するような人生は送りたくない、そう思っていた。
 この時点で、僕は故郷を捨て、「当てもなくさまよう者」という意味での「EXILE」になった。
 何かを捨てるということは、身軽になるということだ。そして新たなる何かを発見する可能性を持つということでもある。旅人にはその可能性が与えられる。勝負は自分をどれだけ裸にできるか、どれだけオープンに物事を吸収できるか。これにかかっている。
(pp.13-14)
そして、この『EXILE』という名前で、シドニーでブックショップを開く。カフェと本屋を合体させたようなスペースで、詩の朗読会をやったりボヘミアン達がコーヒーをすすりながら本を読み、新しい文化を語り合い、ブライアン・イーノやボブ・マーレーやクラシックを聴ける場所。そして、そこには詩人や画家、作家、俳優、歌手、写真家、映画監督、タクシードライバー、デザイナー、学生、ギャンブラー、弁護士、ゲイのカウンセラー、果ては最高裁の判事からドラッグ・ディーラーまで実にさまざまな人間が出入りしていたようだ。

これこそが自分の理想とする本屋なのではないかと思った。その実現例がここに示されている気がした。図書館型の大量に本がある空間も好きだが、自然と人が集まる空間のようなサロンというのもよいと思う。自分のハンドルネーム(Master)のごとく将来このような本(もしくはBar)を経営できたらと思う。野望の一つだ。

この本を読むと、無性に旅に出たくなる。このままでいいのかと問い詰められて、さらに自分の住んでいる世界はとても狭いことも突きつけてくる。旅には冒険があって、いろんな経験があって、恋もあったり仲間や同士もできると、旅の楽しい側面がとても魅力的にかつ読ませる文章で書かれている。

しかし、旅のすべてが楽しいことだけではないことも同時に突きつけてくる。著者自信のどうしようもなく不安で孤独を感じていた精神的に安定しない4年間であったり、日本に残してきた芸術センスあふれる弟が分裂病を患い、精神病院に入れられて、脱走を繰り返した挙句、最後は自殺までに至っている。そういう負の側面も全部ひっくるめて旅なのだと教えてくれた気がした。

『人生の100のリスト』に、「自伝を書く」という項目があり、その項目の成果物として本書があるようだ。『人生の100のリスト』には、この本を書くのは大変だったとある。もともと英語教育を受けていたから日本語で書くのが得意ではなかったし、弟の死を受け入れきれずに半年ほど執筆がとまったことなどが示されていた。そして2年かけて、最後はバリ島で書き上げられた本らしい。

本書のほうが先に書かれたようだが、『人生の100のリスト』にあまり示されていないことがこちらで詳しく示されていたりする。逆にこちらであまり触れられてない、人生の後半戦については『人生の100のリスト』のほうに詳しく示されていたりする。そのため、この二冊は絶対にセットで読んだほうがよい。そのほうがより楽しめる。以下はこのブログで取り上げた記事となる。自分で作った人生の100のリストで達成したのは、まだ「ウォッカマティーニを飲む」くらいかな。

最後にエピローグから、若者から「自分らしい生き方をするにはどうすればよいか?」の質問に対する著書の考えを示しておく。
 ドロップアウトにも、自分らしく生きることにも、マニュアルはないし、僕は具体的なアドバイスを送れるような人生を歩んでいない。僕の旅は何となく始まり、その何となくがいつしか、しなくてはならないものに変わっていた。そして気がついてみると、僕は所属する場所を持たない人間になっていた。
 僕に言えることは、「自分の道を行く」ということは、実際に旅に出るか出ないかという問題ではないということだ。自分らしく生きたいと願い、行動に出た人間は、みなその時点で、地図も海図も羅針盤も役に立たない、長い航海へとすでに旅立っているのだと思う。要はそんなことを願い、行動に出られるかどうかといことではないだろうか。
 まず、一歩踏み出すことだ、と僕は思う。その第一歩からすべての道は始まる。そして旅の途中、忘れてはならないのは、「自分らしさ」を、現実の社会で生きる大変さのせいで歪ませたりしてはいけないということだ。
 人間にはすべて、自由に、溌剌と、情熱的に、つまり自分らしく生きる権利があるんだ、と僕は信じてきた。この思いが僕を常に支えてくれたし、砂漠の中、闇の中での道標になってくれた。
 もうひとつ言えることは、どこにいようが、何をしようが、自分に忠実に生きていく者には運が味方してくれる、そして同じようなハートを持った仲間が集まってくるということだ。つまり「自分の道を行く」という旅は、決して苦悩だらけでも、孤独なものでもないということだ。
(pp.317-318)
ここが自分にとって一番重要な気がした。このように、自分自身はほとんど旅行にいったことがないので、直接的な旅はほとんどしていないが(いまだに海外旅行に行ったことがない)、精神的な旅をずっとしてきたのだと思う。その過程としてこの読書ブログがあったりするのだと思う。自分らしくかつ自分の道を行くためにね。そういった意味で、自分もまた精神的な『EXILE』なのだと思う。

でもまぁ、来年は海外旅行には行きたいと思う。そして、もっと冒険してみてもいいんじゃないかなぁと思ったりする。何のために東京ライフを選んだのか?とたまに思い悩むときもあるけど、結局は『自分の道を行く』ためなのだと思う。そのために今年、メタファーとしての船を手に入れるためにTOEICの勉強を激しくやったんだと思う。

今年は全然本を読まなかったけど、これは年数百冊読んでいたとしても、断然にお勧めできる本だと思う。ぜひ『人生の100のリスト』とともに、年末年始に読んで自分の人生の旅について考えてみてほしいと思う。



エグザイルス (講談社プラスアルファ文庫)
エグザイルス (講談社プラスアルファ文庫)
著者:ロバ−ト・ハリス
販売元:講談社
(2000-01-20)
販売元:Amazon.co.jp

読むべき人:
  • 放浪や旅が好きな人
  • 自分の人生に行き詰まりを感じている人
  • 「島流し人間」として自分らしく生きたい人
Amazon.co.jpで『ロバート・ハリス』の他の本を見る

bana1 魂のEXILEクリック☆  にほんブログ村 本ブログへ



February 22, 2009

だから、あなたも生きぬいて

だから、あなたも生きぬいて (講談社文庫)
だから、あなたも生きぬいて (講談社文庫)

キーワード:
 大平光代、自伝、波乱万丈、自殺未遂、生きる
波乱万丈な人生を送ってきた弁護士である著者の自伝。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 いじめ
  2. 第2章 自殺未遂
  3. 第3章 下り坂
  4. 第4章 どん底
  5. 第5章 転機
  6. 第6章 再出発
  7. 第7章 司法試験に向かって
  8. 第8章 難関突破
  9. 第9章 後悔
(目次から抜粋)
大分前にベストセラーになった本なので、この本のタイトル、装丁は誰でも一度は見たことがあると思う。実際、自分はリアルタイムでテレビで著者の波乱万丈のドキュメント映像を見た記憶がある。ベストセラーは基本的にわざわざ自分が読むものではないと思っている部分が多少あるが、この本はある人に薦められたので、買って読んでみることにした。読了した結果、率直な感想を示すと、売れるものには売れるだけの理由があるのだなと思った。そして、がんばって生きていこうと思った。

著者は、中学時代のいじめが発端となって割腹自殺未遂をし、一命を取り留めるが精神科通いにさせられ、そしてさらに落ちぶれて16歳で極道の妻となる。その後ホステスをしているときに、大平のおっちゃんに出会うことで人生をやり直すきっかけを得て、宅建、司法書士、司法試験と合格し、現在は非行少年たちを救うための弁護士として活躍している。

著者の波乱万丈の経緯は、この本を読めば分かると思う。自分はいじめられた経験がほとんどないので、著者の辛さが感覚的には分からない。しかし、誰にもわかってもらえない孤独な状況が生きていて一番辛いし、絶望なのではないかと思った。それこそ死に至る病だ。そういう辛い状況で生きてきて、大平のおっちゃんに出会って立ち直ろうと思えて、実際に立ち直った著者は、自分と同じような境遇を味わった少年たちを救うことに使命を感じられているのだと思う。これは、誰かを救いたいという想いは、同じように苦しんだ人だからこそそう強く想えて、実際に行動を起こせるのだろうと思った。こういう部分は見習って生きたいと思った。

正直に申せば、5章までの中学時代からのいじめから、極道の妻になるまでの描写があまりにも単調すぎて、高尚ではないなと思ってしまった。極道の妻になった前後のところなど、あまり細かいところまで書かれていないような気がした。これが小説などの文学作品であれば、読み続ける気はなかった。もっと描写がうまく、そしてさらにグロテスクなものを読んだことがあるので、引き込まれなかったから。そう思いながら読み進めて行き、『終わりに』で、この本について以下のように示されていた。
 なにかいい方法はないものかと考えていたところ、今回、講談社児童局から出版のお話をいただいた。喜んでお受けしたものの、文章にするには多大な苦労が伴った。私以外の人たちのプライバシーには配慮が必要なため記述に限界があったことと、これを書くと特定の人を傷つけてしまうということもあり、だいぶ苦慮したが、その点を考慮したうえでも十分お伝えすることができると思い、作業を続けた。なお、当時の出来事については、その当時に抱いた感情を、そのままお伝えすることを心がけた。
(pp.269)
この部分を読んで、自分の浅薄さを恥じた。きっといじめの詳細や極道の妻の生活などの詳細を読ませるように書くこともできたのだろうが、意図的に書かなかったのであり、それを高尚ではないと思ってしまったことに。そもそも、これはフィクションではなく、ノンフィクション、つまり実話であるし、著者がこの本で一番伝えたかったのは、過去の自分がいかにひどい仕打ちを受けたか、そして誰かに分かってもらいたかった、ということではく、同じように苦しんでいる人のために『だから、あなたも生き抜いて』と伝えるためだろう。つまり、いじめを受けている中学生くらいの生徒にも無理なく読めるように、そして余計なグロテスクさを排除して悪影響を与えないという著者なりの配慮だと思った。簡単に読めてしまう分、そういう部分に気づかないままで評価を下しそうだった。

そして、著者の一番伝えたいことは以下だろう。以下に恣意的に抜粋。
 そして、この本を読んでくださったあなたへ。
 もし、あなたが今すぐにでも死んでしまいたいと思っていても、絶対に自殺はしないでほしい。死んでも地獄、運よく助かっても立ち直るまでは地獄。あなたの今現在の苦しみや悲しみは永遠のものではなく、いつかきっと解決する。どうか前向きに生きていってほしい。
(中略)
 もし、あなたがもう道を踏み外してしまっているというなら、今からでも遅くはない。もう一度人生をやり直してほしい。この先も、いくたの苦難があるかもしれないが、あなたはそれに耐えられるだけの力を備えているはず。あなたはこれまで随分と辛い目にあってきたのだから。一つ一つ困難を乗り越えて、そしてその手に幸せをつかんでほしい。
 あきらめたら、あかん!
(pp.270-271)
ということで、自分もあきらめずに、一つ一つ困難を乗り越える生き方を目指すことにした。

やはり、売れる本には売れるだけのしかるべき理由がある。この本は、分かりやすい内容で、一人の人の復活の物語でもあり、そして、読者の心に強く訴えかけるものがあるからだろう。今までベストセラーをあえて回避してきたが、これからはベストセラーも読むことにした。

死にたいと思っていたり、自分の人生の不条理さを感じている人は、ぜひ読んでおいて損はないよ。



だから、あなたも生きぬいて (講談社文庫)
だから、あなたも生きぬいて (講談社文庫)

読むべき人:
  • 死にたい衝動が抑えられない人
  • 自分の人生の不条理さに叫びたい人
  • 誰かの助けになりたいと思っている人
Amazon.co.jpで『大平光代』の他の本を見る

bana1 役に立ったらクリック☆  にほんブログ村 本ブログへ


February 01, 2009

就活のバカヤロー

就活のバカヤロー (光文社新書)
就活のバカヤロー (光文社新書)

キーワード:
 大沢仁 / 石渡嶺司、就活、騙しあい、茶番劇、被害者
ジャーナリストよって、昨今の企業、学生、大学を含めた就職活動の茶番劇が示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 就活生はイタすぎる
  2. 第2章 大学にとって「就活はいい迷惑」
  3. 第3章 企業の「採活」真相はこうだ
  4. 第4章 インターンなんてやりたくない
  5. 第5章 マッチポンプで儲ける就職情報会社
(目次から抜粋)
2月になって、そろそろ就活が本格的になるころなので、この本を取り上げておく。

この本は現在の就職活動状況において、企業、大学、学生もみなどこかで騙しあいの茶番劇が行われていると示されている。そして、三者三様に不満を抱えながら採用活動、キャリア支援、就活を行っているということが示されている。この本の概要が以下のように示されている。
  本書は、企業の人事担当者、大学教職員、学生、就職情報会社、就活コンサルタントなどへの徹底的なヒアリングから得た「生の声」で構成している。
 普通の就活マニュアル本が絶対に書かない、就活の裏側を赤裸々に描き、そのうえで、ある意味青臭く、これからの就活のあるべき姿を提案している。
(pp.11-12)
『ヒアリングから得た「生の声」で構成している』とある通り、企業の人事担当者や大学の就職課、または学生などに実際に会って聞いたと思われる話やエピソードが多く示されている。

この本の対象読者が以下のように示されている。
  • 大学生・・・自分たちの就活がどう見られているか、就活を準備するためのガイドブック
  • 若手社会人・・・自分の就活を振り返り、就活の苦しさなどを再認識するための知的読み物
  • 親世代・・・我が子の就活を見守るための解説書
    それから、若手社員たちの現状を把握するための指南書
  • 企業の人事・・・採用活動をブラッシュアップするためのバイブル
  • 大学教職員・・・就職支援・キャリア教育をさらに進化させるための裏技本
    (pp.12)
自分はもう社会人になって3年目なので、若手社会人という立場でこの本を読んだ。この本が知的読み物かは微妙だが、就活の現状を把握し、自分の就活時代を振り返る良いきっかけになったなと思った。

いろいろと引用してつっ込みを入れたいところが多いんだけど、自分の年齢に近い学生の立場に立ってこの本の内容を一部示しておくことにする。ということで、『第1章 就活生はイタすぎる』を主に取り上げることにする。

1章では、最近の就活をしている学生がいかにダメかが示されている。勘違いをしている学生が多く生み出される原因が、『自己分析』にあると示されている。自己分析に関しては、以下のように示されている。
 さて、この「自己分析」こそが、学生を悩ませているうえに、無限に広がる可能性を奪っているという議論がある。それどころか、かえって早期転職の一因にもなっている、との評すらある。
 そもそも、今まで何も考えずに生きてきたバカ学生に自己分析をしろと言っても無理がある。「バカでした!」という答えしか出てこないではないか。
 具体的に説明しよう。これまで特に何も考えずに大学に入り、サークルやアルバイトなどを漠然とこなす日々を送ってきた人。もっと言うと、これまで平凡な人生を歩んできた人(あるいはそう思っている人)は、自己分析をしても、何も出てこなくて悩むことだろう。
 それはそうだ。自己分析の前は何も考えないで済んだのだから。それでも、それなりに幸せに生きてきたのもまた事実だ。
(pp.27)
学生のほとんどがバカであるというような記述はどうかと思うが、それでも自己分析をしても何も出てこなくて悩むというのはよくわかる。自分の就活時代も、自己分析なるものをやっていたが、何がやりたいのか、どういう方向性がいいのかといったことが明確には分からなかった。そのため、自己分析はある程度方向性だけを見出せたら、それ以上はやる必要はないと思う。

そもそも、入社して社会人になってからもずっと今の仕事は合っているのかどうか、好きなのかどうか?などといったことは思い悩むもので、漠然と志望する仕事をフルタイムで経験したことのない状況でやる自己分析ほど、単なる思い込みに過ぎない。自己分析をするくらいなら、企業分析、職種分析をするべきだと思う。自分のことなんか、考えただけで分かるわけではないんだよ。ある程度いろいろなことを経験していくうちに長い時間をかけて分かっていくんだよ、と思う。

また、『「みんなの就職活動日記」でみんな失敗』という節タイトルでは、就職活動時に得るネット情報について示されている。
 もっとも、ネット上で交わされている情報が選考通過に有益か無益かと聞かれれば、無益な情報ばかりだと言わざるをえない。
 そのそも、学生はまだまだ情報を見る視点や軸が定まっていない。就活はもちろん、世の中全体に対する知識もない。間違った解釈の情報が発信され、それをみんな鵜呑みにし、間違った知識が連鎖していく。
(中略)
 書き込まれている内容も、「学生の不安」が中心で、まったく参考にならない。
(中略)
 結局、「みんなの就職活動日記」でみんなが失敗という現象が起きている。
 これは「2ちゃんねる」やミクシィなどでも同様だと言えるだろう。
 暇つぶしで見る分にはいい。しかし、それを、最終選考のときまで必死になって見て、参考にしようとするのは愚かしいにも程がある。
(pp.57-58)
自分の就活時代も、ネット情報を活用していた。リクナビ、民衆、2chの就職板(就職板 - Wikipedia)が三種の神器のごとくであるかのように利用していたなぁ・・・。自分はほとんどネット情報ばかりを収集して就活していたけど、それはあまりよろしくないよ。本質的で有益な情報などネットにはまず出てこないもので、そういうバイアスがかかった情報をいくら取り入れても無駄に思い悩んだり迷ったりするだけだよ。特に就職板なんかは学歴至上主義、企業ランキング主義が横行しているので、そういうのはネタとして受け止めておかなければならない。自分が提案するのは、ネット上のクリックだけで得られる情報を収集するのではなく、自分の足で本質に近い情報を獲得しろということになる。つまり、企業説明会に1社でも多く参加するとか、OB訪問をするということだ。

自分はOB訪問を一切しなかったけど、今ならOB訪問の価値がよくわかる。有益な情報は人しか持っていない、ということが人脈本などに多く示されており、実際そうだなと実感することが多い。特に学生となると、社会人と話す機会はそんなに多くないものだから、例え選考にはまったく関係ないとしても、OB訪問をして社会人のリアルな声を聞いておいたほうがいい。そういう積み重ねが、コミュニケーション能力の向上にもなるし、自己分析の変わりに見えてくるものがあると思う。だから、自己分析、ネット情報を得るよりもまずOB訪問を積極的に行え!!ということが重要だと思う。まぁ、そういうことを学生時代の自分に言ったとしても、準ひきこもり(「準」ひきこ森―人はなぜ孤立してしまうのか?)に近いものがあったので、やったかどうかわからないけどね・・・。それでも、一度勇気を出してやってみて、うまくいったら好循環に乗れると思う。

ネット情報で有益だと思われる確率が高いのは、ブラック企業ランキングだと思う。これだけは、ある程度信用してもいいと思う・・・。人生のリスクを減らすという意味で。これだけやばいということがネットに書かれるというのは、やはり何かあるんだと思う。もちろん、ネタをネタとして(ry

次は面接の話題。『「好き」だけで一点突破しようとすする学生たち』では、面接で志望企業の商品やサービスを好きだからと主張してくる学生が多いと示されている。
 好きなだけでは決め手にならないのだ。
 知りたいのは、「好きな理由の本質」と、それをなぜわざわざ「仕事」や「職場」にしようと思っているものか、ということである。
 好きなことを仕事にすると、嫌な部分が見えてしまうことがあるのは言うまでもない。
(中略)
 それでも「好き」と言えるのか?その「理由」はなんなのだろうか?それを「仕事」にまでしたいと思うのはなぜか?
 面接官はここを知りたいと思っている。
(pp.64-65)
『好き』にもいろいろあって、表面的な部分だけを見て好きと言っているのか、それとも泥臭さやあまりよろしくない部分も認めたうえで好きと言っているのかが重要になる。そもそも、仕事を選ぶときに、『好き』というものを選択基準にするということが必要なのか?ということも一度考えたほうがいい。それは、養老孟司氏が言うように、やりたいこととか好きなことという観点から仕事をするのではなく、道に穴が開いていて、その穴を埋められるのは自分だからその仕事をするべきという考えに通じる。つまり、好きとかやりがいを基準に仕事を選ぶのではなく、自分のできることを仕事にするべきということになる。そういう考えは、以下の本に示されている。とはいえ、これからの競争の激しい時代では、『好き』を貫かなければ勝ち残れないという主張の本もある。そもそも、『好き』なことだと思っていても、好きじゃないこともあるし、やってみたら意外に好きだったかもということもある。だからあまり『好き』を軸にしすぎないほうがいいのだと思う。これらは、早期転職に陥る原因にもなるのではないかなぁと思った。

自分自身に関しては、ITが好きという観点で今の仕事、SEをやっている感覚はあまりない。たまたま大学時代に勉強したことがITだったし、適職診断をやったら必ずプログラマーとかSEが上位に出てくるから、志望業界はITしかないと思って就活した。そして仕事をしてみると、あんまりITが好きじゃないのかもしれないと思い悩んだりもした。今でもITが好きだと断言できない自分がいる。しかし、自分の理想どおりのシステムやプログラムを作れたときは、とても面白いと思える。それは多分、『好き』とは別の感情だと思う。まぁ、何が言いたいかというと、『好き』よりも『面白さ』を軸に考えたほうがいいと思う。

この本で面白いのは、各章のまとめにある。1章のみ一部抜粋。
  • 自己分析は「電気のように明るい性格のテレビっ子」を量産します。ラジオっ子はそれほどではありません。
  • 面接で珍しさを出したいのであれば、「趣味は女装、日常会話はビスマラ語、修行僧経験あり」くらいは言いましょう。
  • 「就活に有利な資格がある」と主張する人には、就職問題を語る資格はありません。
このように、皮肉たっぷりで示されている。

他の章もいろいろと引用してつっ込みたいのだが、あまりにも長くなるので、この辺で切り上げよう。

最後に、この本の青臭い主張を『おわりに』から引用しておく。
 青臭いことを言わせていただく。
 学生に強く言いたいのは、「就活に正解はない」ということである。
 答えは、「探すもの」ではなく、「探す」「考える」などの行為を経たうえで「決めるもの」であるということだ。
 だから、極論のようだが、本書では自己分析もマニュアル本もいらないと断言している。人生に”答え”はない。もっと言うと、人生とは、その”答え”をつくりだしていくものである。
 就活という茶番劇のなかで踊らされるのはやめて、人生というドラマを楽しむ勇気を持ってもらいたいものだ。
(pp.268-269)
これは自分もその通りだと思う。最低限の就活本を読んで、就活のルールを把握し、その後はひたすら行動しながら自分で考えるべきなんだよ。就活本をいくら読んでも、差別化にはならないから、就活本の読みすぎもどうかと思うよ。それよりも就活に関係ない本を多く読むほうがいい。そうすると、3年(修士1年)の秋から本を読み出したのでは、正直遅い。もっと言えば、就活は大学生になった瞬間から意識するべきで、さらに言えば、大学卒業後のキャリアを思い描きながら大学を戦略的に選ぶべきで・・・。

最近の就活本はまったく把握していないけど、自分が最後に読んだ就活本でよかったのは、以下の本。この本は、企業選びの方法、戦略的なエントリーの仕方、さらには入社後の働き方にまで言及されている。読んでおいて絶対損はない。

この『バカヤロー』本は、冒頭に対象読者が示されていたが、誰が読んでもいろいろとつっ込んだりできる部分や考えさせられたりする部分があると思う。社会人になって、就活本などもう読まなくてもいいかなと思っていたけど、たまに読むと、いろいろと今後のキャリアを考える上でも良いきっかけになると思った。

著者の一人、石渡嶺司氏は『転職は1億円損をする』の著作がある。社会人の人は、こっちを読めばいいかも。

学生はもちろん、自分のキャリアを考えたり転職を意識している社会人が読んでも損はない一冊だと思う。しかし、直接この本が役に立つことはあまりないが。



就活のバカヤロー (光文社新書)
就活のバカヤロー (光文社新書)

読むべき人:
  • 就活戦線に出陣する学生
  • 転職しようかと思っている若手社会人
  • 就活の問題点から日本全体まで考えたい人
Amazon.co.jpで『就活』の関連書籍を見る

bana1 役に立ったらクリック☆  にほんブログ村 本ブログへ


October 17, 2008

転職は1億円損をする

転職は1億円損をする (角川oneテーマ21 A 89)
転職は1億円損をする

キーワード:
 石渡嶺司、転職、人材ビジネス、損失、焼き畑農業
転職をすると、長期的には確実に損になるということが示されている本。以下のような目次となっている。
  1. はじめに 転職すれば人生は変わる!望まない方向に
  2. 序章 転職で人生をムダにした!―早期退職者の大失敗
  3. 第1章 転職は1億円損をする―定年退職組と転職組の損得勘定
  4. 第2章 10分でわかる人材ビジネスのカラクリ―転職市場はこうして儲ける
  5. 第3章 転職があおられるカラクリ―四兆円ビジネスは焼き畑農業だった
  6. 第4章 間違いだらけの転職観―だから転職希望者はカモになる
  7. 第5章 転職サバイバル!―それでも転職したい人のために
(目次から抜粋)
昨今では、入社3年以内で早期転職する人が多いし、転職雑誌、転職支援サイトなどを展開している人材会社の躍進によって、気軽に転職しやすい世の中になっている。しかし、実際は「転職すると損をする」という、人材会社、転職ビジネスに関わっている人なら誰でも知っている事実は、あまり世間では知られていない。そこで、この本は、転職によっていくら損をするのかをデータ面からまとめたもので、本書を読むことによって転職で損をしない情報が身につくと示されている。

結論から言えば、転職ビジネスの実態や転職でどのような損失があるのかということの網羅性にはなるほどなぁと思ったが、若干全体的な分析が甘いと思った。なので、読み物として転職の実態を知っておくには良い本だが、これを手放しで全面的に受け入れるということは少し考えたほうがいいかもしれない。

まず、転職で1億円の損失になるというのは、生涯賃金・退職金、年金、健康保険、生命保険、住宅補助、社宅、ローン、交通費など定量化できるものを定年退職組みと転職組みで算出し、それらの差額を出したときに1億円の差になるとある。正直この算出方法は結構突っ込みどころが多い。両者の項目で乖離の大きいケースを採用すると、1億9千万円の差になるので、2億円近くの差を話半分としても1億円の差になるとある。これでは定量化の信頼性が落ちる。コンサルタントであればこのような根拠の示し方は間違いなく突っ込まれる。なので、この本の1億円の損失というのは、話半分に受け止めておけばいいと思う。

自分としては、転職市場の実態がとても参考になった。転職は損であるということを隠しながら、「転職は得である」と示すことで、人材会社は人売りで収益を儲けていっている。その構造は、早期退職をしてもらったほうがより転職会社にとって儲けのチャンスになるので、転職をあおっているにすぎないとある。元関係者は、転職ビジネスが大きくなればなるほど早期退職者が増え、日本企業の活力が失われていくので、このような状況は、焼き畑農業のようなものだと危惧しているようだ。

また、他にも面白かったものとして、早期転職をする人のタイプ分けがあった。ジョウゲンタイプ、自己成長タイプ、ブラック企業タイプ、衝動タイプ、シュガー社員タイプとある。それぞれの特徴は示さないが、例えばジョウゲンタイプとは、社会人として優秀で、マネジメント能力の高い幹部候補生で、会社を踏み台としか見ていないタイプで、このタイプはどこに行っても通用するので、転職しても問題ないタイプらしい。反対に、最悪なのはシュガー社員タイプで、コミュニケーション能力が低く、モチベーションも低く、仕事ができず、残業や雑用を嫌がるくせに、目立つことはやりたがるタイプで、このタイプは転職で間違いなくキャリアダウンするらしい。自分はどれに当てはまるのかなと考えると、衝動タイプかなぁと思った。

一箇所なるほどなと思う部分があった。『早期退職者は「商品価値がない」』という部分で、転職ビジネス会社の担当者は以下のように語っている。
「個人事情があるにせよ、総じて言えば、早期退職者は社会人としてのマナーもスキルもないし、大学時代に卒業後のプランをきちんと考えていない、要するに欠陥が多い人材です。転職を市場に見たてた場合、人材ビジネス企業にとって、転職希望者は商品と言ってもいい。しかし、欠陥が多ければ商品価値がないのは当たり前です。」
(中略)
「企業にとって、転職者はある程度の専門性を持っているから評価できる。でも早期退職は一体何ができます?数年どころか数ヶ月で辞めて、技術や専門知識などろくにあるわけがない。そもそも、彼らは最初に入った会社にどれだけ損失を与えているか、わかっていない」
(pp.36-37)
これはなるほどなぁと思った。厳しい意見だが、客観的に見れば、そのとおりだなと思う。だから、自分自身まだ転職しないのは、転職先で自分の能力を使ってどのように貢献できるのか?ということがまだわからないし、まだ未熟な存在であるから。だから自分は3年は絶対転職しないと心に誓っている。なので、はっきり言って、『早期転職したら負けかなと思っているニート・無職頻出AA)』という考えで、あと1年は修行しようと思う。まぁ、自分自身に関して言えば、転職はないと思う。独立か、今の会社にずっといるかのどちらかしかないと思う。

転職するには、自分の強みがどこにあるのかをしっかり把握すると良いとあった。

いろいろ考えさせてくれる本で、これは本当なら就職活動直前の大学生が読んでおけばいいと思う。また、転職を考えている人も一読しておいたほうがいいと思った。



はてブトルネード発生につき、ここから追記。このラインより上は出社前に45分で適当に綴っていた部分なので、わかりにくい部分もあったので、文章を少しブラッシュアップした。また、やむなくそぎ落とした部分をもう少し示しておくことにする。

特に示しておきたかったのは、早期転職者のタイプ分けの部分。以下に、すべてのタイプの特徴を示しておく。

No.タイプよく言うセリフ主な特徴
1ジョウゲン
タイプ
「今の会社は踏み台」
「(前の会社には感謝しているが)自分のキャリアが優先」
・優秀な幹部候補生
・どの業界でも上にいけるタイプで、転職する方が得になる
・退職する企業に対しても心遣いを見せる
2自己成長
タイプ
「自分をもっと成長させキャリアアップしたい」
「愛社精神とか言われても困る」
・ジョウゲンタイプに似たタイプ
・見通しの甘さがあり、ジョウゲンタイプになりきれない
・売りとなるのは若さだけで、「自分は優秀」と誤解している
・転職ビジネスの最良の顧客で、長期的に確実に損をするタイプ
3ブラック企業タイプ「もっと普通の会社に移りたい・・・」
「辞めたくても辞められない・・・」
・無理に働き続けると体や心を壊してしまう可能性があるタイプ
・給料が安いので転職を考える
・ブラック体質に染まっており、「普通」が何なのか想像できていない
4衝動
タイプ
「とにかく疲れた、しばらく休みたい」
「二五歳までならやり直せるかもしれない」
・仕事への取り組みが熱心であり、優秀
・ジョウゲンタイプよりも独立・転職志向が低い
・仕事に対する相談システムの不備に不満がある
・一度思い込んだらダメで、疲れから退職、転職をしてしまう
5シュガー社員
タイプ
「多分、大丈夫」
「だったら解雇してください」
・周囲に迷惑をかけ続ける若手社員
・コミュニケーション能力、モチベーションが最低評価で仕事もできない
・ジョウゲンタイプと同様に能力が高く、ブラック企業と同様に酷使されているとの思い込みが強い
第四章 間違いだらけの転職観』を参考に作成

このように、タイプによって、仕事に対するモチベーション、思考、能力がぜんぜん違うようだ。転職して成功するのは、『ジョウゲンタイプ』だけと示されており、そのようなタイプは多分、かなりの少数派だろうなと思った。ちなみに、『ジョウゲン』とは早期退職を是とする論者である、城繁幸氏と山崎元氏の名前を取って命名されたようだ。

自分が優秀かどうかは別として、多分自分は『衝動タイプ』に当てはまると思う。疲れやすく、思い込みが激しいし・・・。しかし、今日の夜に上司とキャリアカウンセリングをしっかり行ってきた。上司曰く、『3年では何もわからないので、転職しないほうがいい』と。また、『3年目が1つの壁で、これを乗り切れるかどうか』というようなことを教わった。そういう観点からも、自分は相談システムをしっかり有効利用できているので、しばらくは転職はないと思う。

他にもそぎ落とした部分として、転職したいと思ったらどうするかという部分。まずは、自分の売りは何かをしっかり把握する必要があるらしい。それが分かっていない人は、転職を希望してもどこかで失敗しているようだ。また、自分の強みをしっかり理解できない人は、転職できてもまた繰り返すことになるようだ。ある転職コンサルタントは以下のようにアドバイスをしている。
「転職するなら、その前に自分の強みがどこにあるのか、きちんと棚卸しをして把握しましょう。自分では大したことがない、と思っていても実は求人企業が高く評価することがあります。転職は自分という商品をいかに高く売るか。それが『商品?さあ、なんでしょうね?』では買い手がつきません。もっとも、これをきちんとできる人は少ないですけどね」
(pp.171-172)
このように、自分の市場価値をしっかり把握する必要があるようだ。転職をしようと思ったら、一度かなり自分を深く分析する必要がありそうだ。

この本の特徴として、「ハミダシ転職情報」といって、奇数ページに転職を考える上で参考になる本が欄外に示されている。そこに本に対する著者個人の感想・疑問などが示されており、結構参考になる。この書評ブログでも取り上げているのは以下の本。特に、エンゼルバンクが本文の中でも取り上げられていた。

この本は、『あるあるwww』、とか『ねぇよ!!』とかいろいろ突っ込みながら読むことができる本で、いろいろと考えさせてくれる内容となっている。自分なりの結論を述べるなら、新卒採用で転職しなくてもいい企業に行けばいいということなになる。しかし、就職活動そのものが競争であるので、必ずしも希望企業にいけるとは限らないし、たとえ第1志望の企業に入社できたとしても、理想と現実のギャップに戸惑ったり、やりたいことが変わっていったり、労働環境が悪かったり人間関係のもつれなどと、転職する理由はいくらでも出てくる。なので、転職せずに1社の会社で定年まで勤め上げるのは、結構すごいことなのかなと思った。

転職とか人材ビジネスのビジネスモデルに関心がある人は読んだらいいと思う。

思いのほかにこの記事にはてブがついた。ここまで読んでくれた方、登録してくれた方、どうもありがとうございます。

読むべき人:
  • 転職考えている入社3年以内の人
  • 就職活動を始めた大学生の人
  • 企業の人事担当者の人
Amazon.co.jpで『石渡嶺司』の他の本を見る

bana1 ランキング上昇中、感謝☆  にほんブログ村 本ブログへ


October 12, 2008

コスプレ

コスプレ-なぜ日本人は制服が好きなのか (祥伝社新書128) (祥伝社新書 128)
コスプレ-なぜ日本人は制服が好きなのか

キーワード:
 三田村蕗子、コスプレ、制服、思考停止、日本論
ジャーナリストによって、制服を取り巻くに本論が示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 制服界のクイーン、それがスチュワーデスの制服
  2. 第2章 OLの制服は、なぜ日本で流行るのか
  3. 第3章 ナースは「白衣の天使」じゃない
  4. 第4章 セーラー服は、究極のコスプレである
  5. 第5章 強制されない擬似制服
  6. 第6章 思考停止力を逆手に取る制服パワー
  7. 第7章 制服ニッポンよ、どこへ行く
(目次から抜粋)
日本は学生時代から制服があり、スチュワーデス、OL、ナースなどの特定の職業にも制服というものがある。そして、その制服というのは、その仕事の役割を演じるためのコスプレであると示されている。また、その制服を着ることで、着る服を自分で考えなくてもよいという思考停止状態にも陥らせるものであるとある。そして、その制服とコスプレを取り巻く日本論、日本企業論が示されている。

自分のようにタイトルに惹かれた人、残念ながら怪しい話は載ってないよ。若干怪しい話を期待しつつ読んでみたが、そういうものはなくかった。女性視点で女性の制服、コスプレ感が多く示されている。

以下、気になった部分を列挙しておく。
  • ステイタスや世間の注目度の高さ、女の子に「あの服を着たいから志望する」と本末転倒な動機づけをさせてしまうパワーを加味したトータルでの評価となると、スチュワーデスの制服に勝るものはない
  • 初期のスチュワーデスは、恵まれた環境、恵まれた資質を育んだ女性のみが就ける職業だった
  • スチュワーデスは「ばりばり働くお姉さん」、ではなく「てきぱきと働くお姉さん」に見せなくてはいけない
  • スチュワーデスに求められているサービスは「優しくさりげない気遣い」であり、そのための有効なコスプレツールがエプロンである
  • 制服は若いOLを「よく気がつき、にっこりと明るく働く職場の花(もしくはアシスタント)風」に演出する力がある
  • 学生の制服は、3年間着用可能な耐久性を確保するために、高額になっている
スチュワーデスネタばかりにぴんときたのは、たぶん自分が一番好きな女性の格好がスチュワーデスだから・・・?かもしれない。でもこれは、実際に飛行機を乗ったときに実感する。スチュワーデスの制服がパンツではダメで、あくまでスカートでかつ首にスカーフを巻いて華やかさを演出されていると、機内が華やかになる感じがする。そして、機内での飲み物や新聞を配っているときは、上着を脱いでエプロンであるというのがやはり重要なんだと思う。飛行機という乗り物は、電車や船よりもハイクラスなものなので、そのようなホテルのサービスのように、さりげない気配りが求められるのではないかと思う。

まぁ、スチュワーデス幻想がある人は、この1章を読むだけでもいいと思う。自分は別にスッチー(死語!?)と合コンしたいとか思うほうではないが、それでも機内でのスチュワーデスの立ち振る舞いには惹かれるものがあるのは確か。

また、ナース服に関しては、スカートからスクラブ(白衣ナース用【チェロキー】の医療スクラブ)に変わってきているようだ。それはより機能的なものを求められているからのようだ。

著者によると、制服には、『楽しい』、『悲しい』、『情けない』の三種類あるようだ。以下その部分を抜粋。
 楽しし制服は、「いやいや強制された服」ではない。帰属する組織だけでなく、個人にも力を与える。見ているほうまで楽しくなる制服だ。
 悲しい制服は、これとは対極に位置している。着用者にいやな思い出、悲しい記憶しかもたらさない、プラスの感情につながらない制服だ。
 情けない制服は、制服自体が情けないのではなく、制服を選ぶプロセスが情けないことからこう呼んでいる。自分の頭を働かせず、安易にお墨付きを求め、楽チンだから、たくさんの選択肢の中から選ぶのが大変だからという理由で選ばれる思考停止型制服だ。
 いい大人がそれで情けなくない?と問いかけたくなる制服が氾濫する光景は、どう考えても変である。
(pp.210)
この本では主に女性の制服がメインに示されていたが、男はスーツがあるので、制服は不要であるということが示されている。しかし、そのスーツ選びも没個性的でみなと同じようなネイビーや黒のものばかりだと、『情けない制服』に成り下がってしまうとあった。これは気をつけようと思った。スーツ選びも人目を気にしすぎず、自分の着たいものを選ぶようにしている。

日本人という国民性は、制服との親和性が高く、その意味は、与えられた役になりきろうとする傾向が強いといことらしい。なるほどと思った。

自分自身に関しては、制服に対する思い入れはほとんどない。高校生まで普通に学ランだったし。着るものを選ばなくていいというのは確かにあった。逆に社会人になって、スーツを着るときは、自己演出するためにかなり熟考して選ぶようにしている。制服が、与えられた役を演じるためのものならば、ビジネス用のスーツも制服ということになるのかもしれない。スーツを着ないと仕事をしている気がしないし。

自分はこの本に客観的な分析を求めていたが、これはどちらかというと著者の主観が多い気がする。

制服やコスプレから日本人の国民性がわかる本となっている。服に興味がある人、コスプレが好きな人には面白く読めるかもしれない。

読むべき人:
  • 社会人になっても制服を着ている人
  • スッチー、ナースなどのコスプレが好きな人
  • 日本人とコスプレの関係を知りたい人
Amazon.co.jpで『三田村蕗子』の他の本を見る

bana1 面白かったらクリック☆  にほんブログ村 本ブログへ


October 07, 2008

ブログ論壇の誕生


ブログ論壇の誕生

キーワード:
 佐々木俊尚、ブログ、論壇、メディア論、公共圏
ITジャーナリストによって、ブログによる情報発信について分析されている本。以下のような目次となっている。
  1. I ブログ論壇はマスコミを揺さぶる
  2. II ブログ論壇は政治を動かす
  3.  ブログ論壇は格差社会に苦悩する
  4.  ブログ論壇はどこへ向かうのか
(目次から抜粋)
著者は、新聞社出身のIT系のジャーナリストで、この本では、ニュース系、ネタ系、社会情勢に言及しているさまざまなブログの状況を分析し、そのブログの影響力を解き明かそうとしている。

そもそも、ブログ論壇は何かというと、以下のように示されている。
 インターネットの世界には、いまや巨大な論壇が出現しようとしている。このブログ論壇の特徴は次のようなものだ。―発言のほとんどはペンネームで行われ、したがってその社会的地位はほとんど問題にされない。そしてマスメディアがタブー視してきた社会問題に関しても積極的な言論活動が行われている。その発言が無視されることはあっても、発言内容をネット空間から排除されることはない。その中心にはブログがあり、2ちゃんねるのような掲示板があり、ソーシャルブックマークがある。
 この論壇は、マスメディアとアカデミズム、有識者たちによって構成されてきた日本の空間に、強いインパクトを与えつつある。
(pp.12)
そして、この本の目的は、『ネット論壇のダイナミズムの全容を紹介し、その世界がもたらすインパクトを解き明かすことである。(pp.15)』とある。

取り上げられている社会現象は、毎日新聞の低俗記事事件、ウィキペディアの編集の公平性、小沢代表のニコニコ動画出演、官僚出身教授に対する若者の反発、中国四川大地震時のトリアージ、JJモデルブログのクチコミ記事による炎上などさまざまなものとなっている。それらの社会情勢に対して、さまざまなネットの論客であるブロガーが自分のブログで意見を書き、それを著者が本書で取り上げ、解説をしているという内容となっている。

以下簡単に感想を示しておく。

日本ではブログの使用目的の大半が、日常生活の身辺雑記、つまり日記のようなものだが、アメリカなどは、個人のジャーナリズムとして社会情勢などに言及しているものが多いようだ。しかし、自分もいろいろなブログを見ていると、社会情勢に言及しているブログも結構あるし、それらは鋭い考察がなされているなと思う。本書では、新聞社出身の著者によって、新聞はブログ論壇のような論考・分析の要素に限ってしまえば、負けていると示されている。これは、自分もそのとおりかなと思う。社会情勢の事実のみを知るには、やはり既存のマスコミによるもののほうが正確で早いが、その本質、論考・分析は新聞より圧倒的にブログのほうが参考になるし、マスコミが言及しない裏の部分も知ることができる。

なので、この本を読むと、既存のマスメディアの存在価値はなんだろうな?と考えてしまったりする。ブログという新しい表現の場が出てきたことによって、マスコミとの付き合い方も大きく変えられたと思う。少なくとも、自分は新聞やニュースを積極的に取り入れようとはまったく思っていない。新聞は、書評欄と芸術欄のみを目的とした、日曜日の日経新聞しか読んでない。ニュースもネットニュースや社会情勢に言及しているブログを見れば十分な気がしてならない。

巻末に著者が選んだ著名ブロガーリストというものが載っている。その中で、自分もRSSリーダーに登録していて、よくチェックするものは以下。どれも超有名どころばかり。正直、これらとさまざまなブログを追っているだけで、世の中の流れを読むのに困ることはあんまりないと思う。

既存メディアと新メディアの対立構造として読むと面白いと思う。また、ブログの可能性について再考するのもよいと思う。

読むべき人:
  • ブログの可能性について知りたい人
  • マスコミ情報にうんざりしている人
  • ブログ論壇の論客になりたいと思っている人
Amazon.co.jpで『佐々木俊尚』の他の本を見る

bana1 役に立ったらクリック☆  にほんブログ村 本ブログへ


July 22, 2008

グーグル・アマゾン化する社会


グーグル・アマゾン化する社会
jjkk

キーワード:
 森健、グーグル、アマゾン、一極集中、Web2.0
世の中の一極集中化について示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 多様化が引き起こす一極集中現象―巨大な一極とフラット化した世界
  2. 第2章 Web2.0の世界―「ユーザー参加型」「膨大なデータベース」
  3. 第3章 Amazon―参加のアーキテクチャー
  4. 第4章 Google―半強制的な参加のアーキテクチャー
  5. 第5章 スケールフリー・ネットワーク―金持ちほどますます金持ちになる理由
  6. 第6章 個人への一極集中―タグとパーソナライゼーション
  7. 第7章 「民主主義」によってつくられる“主体性ある思考”
(目次から抜粋)
検索エンジンのグーグル、オンラインショッピングのアマゾンを筆頭とするウェブサービスが出現したことにより、社会は多様化を目指しているように見えて、実際は本やCD、映画、金融などの経済、政治の動きといったさまざまな分野でひとつのところに情報やお金が集中する結果となっている。そしてそれには、それにはインターネットなどの情報の多様化が関係しているようで、その疑問をグーグルとアマゾンのアーキテクチャを参照しながら、世界に訪れている一極集中的なありようを考察してみるという本らしい。

この本が出版されたのが、2006年の9月なので、今から2年前の出来事が多く示されている。そのため、どうしてもWeb2.0の現象やグーグル、アマゾン、Wikipedia、Youtubeなどの解説などの真新しさはない。それなりに似たような本を読んでいるからというのもあるし、どうしてもそれらの現象を表面的に解説しているだけのような気がして、いまいち得るものがなかった。きっと出版当時にすぐに読んでいたら、もう少し得るものがあったのかもしれない。

Web2.0の技術的な特徴として、API、Ajax、マッシュアップの3つのキーワードで説明されている。Ajaxの説明には『Javaスクリプトというプログラミング言語を使ったAjax(pp.84)』と『Javaスクリプト』と表記されていることに違和感を覚える。正確にはJavaScriptだと思う。『Javaスクリプト』と書くと、Sunが提供しているJavaの派生言語のような印象を与えてしまう。もともとJavaとJavaScriptは名前意外に互換性はないのだから、このような書き方はよろしくないなと思う。

1つへーと思ったのは、Amazonアフィリエイトの始まりについて。それは、創業者のベゾスが開業から1年経ったときにパーティである女性から、『あなたのショップで出されている本、私のサイトでも売りたいのだけど、どうにかできないかしら』と言われたことから始まったらしい。また、アフィリエイトの仕組みを最初に開発したのは、1995年からCD販売サイトのCDNowという企業が最初らしい。CDNow自体はすでにアマゾンに取り込まれているようだ。

2006年の一極集中化の現象を振り返るという点では良いかもしれないが、技術的な側面やもう少し突っ込んだ内容が欲しい場合は、この本には期待できないと思う。

読むべき人:
  • Web2.0を復習したい人
  • アマゾン、グーグルに関心がある人
  • みんなの意見は正しいと思う人
Amazon.co.jpで『森健』の他の本を見る

にほんブログ村 本ブログへ bana1 ランキングへ


July 10, 2008

若者を喰い物にし続ける社会


若者を喰い物にし続ける社会

キーワード:
 立木信、若者、世代間戦争、老害、弱者
真の弱者は若者であるということが示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第1章 若者政策がこの日本でなぜ必要なのか
  2. 第2章 若者政策へのパラダイム・シフト
  3. 第3章 世代間戦争はすでに始まっている
  4. 第4章 年長者優先社会が解体してきた家族機能
  5. 第5章 メディア、ジャーナリズムの本音を見破れ
  6. 第6章 お年寄り帝国のまだ見ぬ全貌
(目次から抜粋)
ポイントを絞って列挙するというよりも、引用ベースで内容を紹介しておく。

本書の内容は以下のように示されている。
 本書はこうした年長者が若者に対して功名に仕掛けてくる「目隠し」をはずすために書かれている。年長者が若者を使って「お涙ちょうだい」の情報を垂れ流しする状況の裏に隠されている「何か」をあなたに探してもらうのがこの本の狙いだ。「目隠し」は、情報の背後にある「年長者帝国」の全体像に想像をめぐらせなければ、取ることはできない。仕組まれた「哀れな境遇」や「自分探し」に踊らされるのは、もう懲り懲りではないか。
 本書が最近ブームになった若者の雇用環境の厳しさを前面に打ち出してルポする本と決定的に違うのは、この点にある。
(pp.46)
そのため、若者が置かれている境遇の解説はあるが、ではそこからどうするべきか?ということがあまり書かれていない。それは次のように示されている。
 本書を通じて「自分で毎日政策を考えようぜ!」などと筆者が言うと、若い読者は「はぁ?」と戸惑うに違いない。
(中略)
 私は「なるほどこういう考え方もあったのか」と読後の感動を引き出すために本を書いているのではない。読者を挑発して、行動に移してほしいのだ。とにかく、妄想でも何でもよいから、若者政策に恋心を抱くことが大切だ。
 あなたは負け犬ではない。自分から進んで年寄りが用意したレッテルをもらって、弱者を装うのは50年早いと言うべきだろう。
(pp.116-117)
自分は負け犬だとは思っていない。しかし、若者政策自体にそもそも関心がない。明らかに本書の対象年齢層ではあるが。

世代間戦争についての説明が以下のように示されている。
 年長者のつくったシステムから若者や子ども、さらには将来世代がはじき出され、年長者の繁栄のために使った巨額債務がツケ回されることによって起きる問題を、私は「世代間戦争」と呼んでいる。
(中略)
 世代間戦争をわかりやすく言うと、主役は若者、適役は年長者で、既得権に浴する側、つまり様々な公的サービスを優先的に受ける側とそれを負担する側の戦いだ。
(pp.151-152)
この世代間戦争はもうすでに始まっているようだ。年金を支えているのは今の若い世代で、少子高齢化で一人当たりの負担が大きくなると様々なところで問題視されている。他にも日本の天文学的な不良債権の問題やなかなか雇用にありつけなかったり、労働派遣やワーキングプアといった問題もあるようだ。

社会の情勢を知るという点では、とても参考になった。本書の当事者である若者に属する自分としては、そんなに不利益をこうむることが多いのかと思った。しかし、自分自身の生活に関しては、そのような不利益を具体的にどこでどのようにこうむっているのかが実感できていない。なので、示されていることの実感がわかない。だからいきなり、では若者政策を考えようと示されると、戸惑ってしまう。自分自身のこととして捕らえられないことが、大きな問題なのかもしれない。上の世代から巧妙に隠されているのかもしれないのだから。もちろん、自分自身もこの問題にもっと関心を持たないといけないが。

このような社会問題は、自己責任論とか、日本がダメな原因はどこにあるかといった話に終始しがちで、ではそこからどうするのかという部分まであまり詰められていない。それは当事者である自分たちの世代から何とかしていかなければならないのかなと思う。とはいえ、マクロ的に政策を打ち出してそれを広めて改善するというよりも、社会の要素である一人ひとりが幸福を追求し、そうなるように行動することが重要なんじゃないかと思った。要は、まずは自分でできることから少しずつ始めるべきかなと。では、自分自身は何を始めるべきかというと、もっと社会情勢に関心を持つということか。

また、個人的には喰いものにされないように、もっと金を稼げるようになればいいんじゃないかと思った。自分自身の生活が楽になればいいんだよなと。そのためには努力が必要だがね。とはいえ、全ての人が努力をして、その努力量に対する見返りを享受できないのが現代日本社会の問題だと言われればそれまでだが。

自分と同世代の人はこのような問題をどのように考えているのか気になった。なので、若者世代の人にぜひ読んでもらいたいと思った。
  • 自分は若者だと思う人
  • 就職氷河期世代の人
  • 老害は逝ってよしだと思う人
Amazon.co.jpで『立木信』の他の作品を見る

にほんブログ村 本ブログへ bana1 ランキングへ


June 02, 2008

おカネになる文章が書ける


おカネになる文章が書ける

キーワード:
 和田秀樹、いい文章、書く、作品、発表
精神科医によって、おカネになるいい文章の書き方が示されている本。以下のような目次となっている。
  1. プロローグ 「とにかく書こうよ」と時代が背中を押している
  2. Part1 「いい文章」の見本はあなたの「好きな文章」でいい
  3. Part 2 わかりやすい文章は「短く」「シンプル」に書こう
  4. Part 3 この決めワザであなたの文章は「いい文章」になる!
  5. Part 4 「ネタ」はどこに転がっているのか
  6. Part 5 他人が読むと「いい文章」に変身する!
  7. Part 6 「動く」「感じる」「考える」「書く」を一つの流れにしよう
  8. Part 7 自分の文章を発表できる「場」を見つけよう
    エピローグ 楽しんで生きよう、楽しんで書こう
(目次から抜粋)
著者は、あまり文章を書くのが得意ではなかったが、雑誌の寄稿、書籍の執筆などで文筆修行をしてきた経験から、著者なりのいい文章の書き方を身につけてきたようだ。そして、著者がこの本を書こうと思ったのは、昨今はパソコンやブログを利用して誰でも文章を気軽に書けるようになっているが、多くの人がそのチャンスを活かしていないと思ったからのようだ。そして、著者が身につけてきたいい文章の書き方を示し、多く人にお金になるような文章を書いてもらいたいという思いがあるようだ。

お金になる文章というのは、「プロの文章」ということになり、さらに「プロの文章」とは「いい文章」ということになるようだ。そして「いい文章」の条件として以下の2つが示されていた。
  • わかりやすい文章であること
  • 気持ちのいい文章であること
わかりやすい文書というのは、ビジネス文書やプライベートな文章など、どんな文章にも欠かせない条件となっているようだ。また、気持ちのいい文書とは、リズムやことば遣い、表現が気持ちいいということらしい。なるほどなと思った。

いい文章を書けるようになるには、苦行をするというよりも、楽しみながら書くというのがよいらしい。そのためには、わかりやすい文章、気持ちのいい文章をたくさん読む必要があるようだ。

また、おカネになる文章を書くには、「わかりやすく書け」、「短い文章を書け」ということが重要なようだ。これが基本になると示されている。そして、いい文章を書ける人が小説を書いて文学賞を受賞したり、あるいはビジネス社会において大切な提案、交渉などにおいて重要な役割を果たすとあった。なるほどと思った。

以下、いい文章を書くために必要な具体的な方法を列挙。
  • 1行にあれもこれも盛り込まない
  • 意識的に短い文章を書く
  • いちばん書きたいことから書いてみる
  • 意味の伝わりにくい箇所、唐突で説明不足な箇所はないかなどをチェックする
  • 文章の頭に「しかし」や「けれども」はできるだけ使わない
  • 改行を増やして余白スペースを広げる
これはブログを書くときにそのまま役立てられそうな内容だなと思った。ついつい自分の文章は1文でたくさんの情報を盛り込みすぎて長くなりがちになる。そのため、推敲段階で、主部と述部がねじれていて意味が通じないことが多い。これは気をつけよう。

また、ブログはどちらかというと、短い文章のほうが読みやすいなと思う。はてなブログとかはやたらとカラム幅が大きくて、そこに長文が書かれていると、読む気があまりしない。

文章は他の人に読んでもらうことで上達していくとあった。そのためには、何かテーマを決めてブログで書いていき、プロの文章を目指したりすればよいとあった。なるほどと思った。

一番重要だと思った部分を以下に抜粋。『楽しんで生きよう、楽しんで書こう』というタイトルの部分。
 あなたがかりに会社員だとして、思うようにいかない仕事や少しつらい毎日を送っているとしても、文章を書く生活があれば気持ちを切り替えることができます。
 わたしは文章を書く意味はそういうことかなと思うのです。
 人間はこころにつらいことがあっても、そのこころが楽しんでくれるものを持っていると、大丈夫ちゃんとやっていけるからです。
 したがって、最後は精神科医としてのアドバイスとなってしまいますが、文章を書くことで日々の抑圧感や、行き場のない不満を解き放つこともできるのです。これは精神分析用語でカタルシスと呼ばれるものですが、書くことでわたしたちは気持ちの整理がついたり、元気を取り戻すのはほんとうのことだと思います。
 書くということにはそういった効果もあります。
(pp.189-199)
なるほどなと思った。これは自分も当てはまるのではないかなと思った。書くことで自分の内面のバランスをとっているのだと思った。もちろんこの書評ブログで何か抑圧しているものを吐き出しているわけではないが、抑圧感を緩和してくれる本を読んで書評することで代替効果が現れているのだと思う。

自分自身が書評ブログを書くのは、わかりやすい文章を早く正確に書くという文筆修行のためだ。また、自分と同じような興味関心、悩みや考えるヒントとなる本を紹介して、多くの人に知ってほしいという理由もある。

この本は、著者の文章を書くときのポイントにしたがって書かれており、1ページの文章量が少なく、また漢字も意図的に使われていない。なので、かなり読みやすく、すんなり頭に入ってきた。随想的な内容でもあるので、気軽に読めると思う。

読むべき人:
  • 将来文章でお金をもらいたい人
  • 文章を書くのが苦手な人
  • 小説家になりたい人
Amazon.co.jpで『和田秀樹』の他の本を見る

にほんブログ村 本ブログへ 役に立ったらクリック☆  bana1


May 20, 2008

私塾のすすめ


私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる

キーワード:
 齋藤孝 / 梅田望夫、私塾、鼎談、パッション、志
教育学者の齋藤氏とウェブの伝道師梅田氏の鼎談。以下のような内容となっている。
  1. 志向性の共同体
  2. 「あこがれ」と「習熟」
  3. 「ノー」と言われたくない日本人
  4. 幸福の条件
何が書いてあるのかを一言で示すのはちょっと難しい本。内容自体が難しいわけではないが。簡単にまとめると、これからのウェブ時代を学び生きていくために志を同じくした仲間と切磋琢磨する「私塾」願望が著者二人によって共有され、その二人の生き方、ライフスタイル、考え方が示されている。具体的に示されていることは結構広範囲になるので、自分なりに印象に残った部分を示しておく。鼎談なんで、どうしても引用が多くなるが。

『「寒中水泳」ではもぐってしまったほうが楽』という節の一部。齋藤氏の発言。
「この三年」「この五年」という限定した期間は、希望をもつというよりも、この期間は積極的な意味で「あきらめる」という感じです。この期間にお金が入らなくても、それはあきらめる。その期間、仕事が評価されなくてもあきらめる。人からの評価や金銭的な評価はあきらめて、自分自身で意味づけする。自分で背負う。
(pp.124)
寒中水泳というのは仕事で会社組織にどっぷりつかってしまったほうが、足だけ水に浸して不快になるよりもよいという意味。そして、3年、5年という区切りで自分なりに意味づけをしてアイデンティティを獲得するとよいとあった。なるほどと思った。

他には『「組織に与えているもの」と「組織から与えられているもの」』という節の梅田氏の主張。
一つのことを最低何年かはやらないとものにならないというところは確かにあります。ただどうにもこうにもとんでもないところは、早く逃げ出してもいいと僕は思っています。それなりにまともな場所であれば、三年くらいは続けてみるべきだと思う。よく僕は「三十代で三社移ってもいいんじゃないか」という言い方をします。二十代というのは未熟な時代なので、組織に属したら組織から得るもののほうがたいていは多い。特に、組織に勤めた人の場合は、大組織は社会そのものだから、未熟な二十代は学ぶことのほうが多い。「自分が組織から与えられるもの」と「自分が組織に対して与えているもの」の天秤が傾いたとき(「与えているもの」のほうが重くなったとき)に辞める、というのが、僕のロジックなんです。そうしていくと、ある時期に「辞める」という判断になると思うのだけれど、最初のうちは学ぶことが多いですね。
(pp.125)
ここはとても勉強になった。なんというか、漠然と会社を辞めようかなと脳裏をよぎるときがあるんだけど、客観的にそれなりにまともな組織なはずなんで、辞めるのはもったいないなと思ったりもする。まだ学ぶことはたくさんあると思うし。そして梅田氏が示すように、自分が会社から得ているものよりも与えているもののほうが多いときに辞めるべきなんだろうなと思った。自分はまだ間違いなく、会社から与えられているものの方が多い。むしろ何かValueを発揮していたっけ?と細かく振り返らないと何も無いような状況だし。この部分は会社をやめる時の判断基準としてとても参考になった。

『「好きな仕事」でいないとサバイバルできない』という部分。前著『ウェブ時代をゆく』にも主張されていたことに関連して梅田氏の発言。
 僕が「好きなことを貫く」ということを、最近、確信犯的に言っている理由というのは、「好きなことを貫くと幸せになれる」というような牧歌的な話じゃなくて、そういう競争環境の中で、自分の志向性というものに意識的にならないと、サバイバルできないのではないかという危機感があって、それを伝えたいと思うからです。
 僕はもともと理系だったのが、方向転換していろいろ模索をしながら今日に至るのですが、理系の大学院生だったときに、周りの人たちを見て、「この人たちほど対象のことを愛せない」と思いました。朝から晩までプログラムを書いたり電気回路の設計をしたりというように、その対象に没頭できる人しか、エンジニアリングの世界では大成しません。毎日、夜になるとどこかへ飲みにいきたくなったりとか、いつも友達と話しているほうが楽しいようでは、そこでもう「負け」なんです。
(pp.145-146)
この部分を読んで、自分もまたエンジニアリングの世界、特にプログラマーとして大成することはないのだなということを改めて再認識した。著者と同じように、そこまでプログラムにのめりこむことはなかった。没頭できなかった。大学時代もプログラムを書くよりも読書をして思索にふける時間のほうがどうしても多く、またそれが一番好きなことなんじゃないかと思い始めている。そうなると、自分自身のプログラマーとしてのキャリアに限界があり、インド、中国などの単価が安いところとのグローバル化の競争社会では生き残れないのだということになる。さて、自分はどう方向転換すべきかなということを考えなければいけないときかもしれない。オライリーを筆頭とする技術本を読むよりも、思想書を読むのが好きなのはそれはそれでしょうがない。そのような志向性をどのように活かすかが今後の一番の課題かなぁ。

最後の引用箇所は『「いかに生くべきか」を考えることは無駄か?』という部分。両者の発言を引用。
齋藤 人生観をつきつめて考える時期が、青年期といわれる時代に、かつてはあったんですね。「生きるとは何か」という問いを問い詰めた時間というのが、その後の活動にとってどういう影響を与えたかというのは、はっきりとは計れないし、無駄にも思える時間だけれど、今の時代は、そんなに濃縮した人生観をつきつめる時間が少なくなってきているのかもしれません。たとえば、実存主義がはやっていたころは、人生の意味を問うことが当たり前でしたよね。梅田さんは、つきつめきらないタイプと、つきつめたタイプの違いみたいなものを感じますか。
梅田 感じますね。そこをつきつめた人からは、ある種の強さを感じます。僕自身、どう生きるべきかみたいなことばかり考えていました、昔は。それを考えた量だけは誰にも負けない、みたいに思っています。専門の深堀はあまりやらなかったけれど、自分がどういうふうに生きたらいいかということは、誰よりも考えたという自負があります。
齋藤 それは二十歳前後ですか?
梅田 十代から二十代の、十年間から十五年間です。
齋藤 十五年間くらい、いかに生くべきかを考えるというのは、実務的な人間からすると、無駄といえば無駄に思えるかも(笑)。僕も同じタイプだと思います。僕も、人生観をひたすら養うという一見不毛な活動に没頭して十数年間を費やしましたから。それが日常生活でたいへん足をひっぱっていたんですね。いかに生くべきかばかり考えて、現実には進展がない。
(中略)
あえて不毛な人生観をつきつめていく。それは人から教わってやるものじゃないかもしれないけど、でも、現に僕ら二人の間では、その時間が石油作りみたいなことになっていた。
(pp.169-171)
なるほどなぁと思った。自分もまた、毎日脳内で無限ループするかのごとく『いかに生くべきか』ということを考えている。そしてその考えの足跡やヒント、記録になるのがこの書評ブログということになる。だから普通の人が読まないような本も読んでいるほうだと思う。かといって、自分はつきつめられていない。まだまだ考えがまとまっていない。せいぜい考え始めてから7年くらいしかたっていないし。この一見無駄に思える思索が将来実を結ぶのかなと思ってなんだか安心した。齋藤氏と同じようにまったく現実に進展がない状態だからね・・・。両氏がどのように20代をつきつめて過ごしていたかが他の書籍などからよくわかる。梅田氏は前著『ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか』で、齋藤氏は『孤独のチカラ』でそれぞれ示されている。

引用がかなり多くなってしまったが、それだけ印象に残った部分だったので。他にもいろいろ勉強になるところが多い。両氏の本はよく読んでいるので、なんというか、考え方、志の部分が似ているんだなということがよくわかる。二人ともパッションがあるなぁということが伝わってきたような気がした。

二人の座右の書やロールモデルなども示されていて参考になった。また、鼎談なのでそこまで難しい内容ではない。けれど、いろいろなところから引用が出てくるなぁと思った。あと、事前に『ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか』を読んでいたほうがより文脈の意図がわかると思う。

二人の考え方がわかって面白かったし、とても勉強になったなと思った。なんというか、いろいろなことを考えるきっかけになった。なんというか、人によって読んでいて印象に残る部分はだいぶ違ってくるんじゃないかなとも思った。

読むべき人:
  • 私塾に関心がある人
  • 志を同じくした人と学びたいと思っている人
  • 自分の人生について考えてみたい人
Amazon.co.jpで『齋藤孝』の他の本を見る
Amazon.co.jpで『梅田望夫』の他の本を見る

にほんブログ村 本ブログへ bana1 ランキングへ


March 22, 2008

3年で辞めた若者はどこへ行ったのか

3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代 (ちくま新書 (708))
3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代

キーワード:
 城繁幸、働き方、アウトサイダー、昭和的価値観、多様性
前著、『若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来』の著者による、昭和的な働き方の価値観に対するアンチテーゼを示す本。キャリア編、独立編、新世代編の3部構成となっている。昭和的価値観を全て目次から列挙してみる。
  1. 「若者は、ただ上に従うこと」―大手流通企業から外資系生保に転職、年収が20倍になった彼
  2. 「実力主義の会社は厳しく、終身雇用は安定しているということ」―新卒で、外資系投資銀行を選んだ理由
  3. 「仕事の目的とは、出世であること」―大新聞社の文化部記者という生き方
  4. 「IT業界は3Kであるということ」―企業ではなく、IT業界に就職したという意識を持つ男
  5. 「就職先は会社の名前で決めること」―大手広告代理店で、独立の準備をする彼
  6. 「女性は家庭に入ること」―女性が留学する理由
  7. 「言われたことは、何でもやること」―東大卒エリートが直面した現実
  8. 「学歴に頼ること」―会社の規模ではなく、職種を選んで転職を繰り返し好きな道を切り開く
  9. 「留学なんて意味がないということ」―大手企業でMBA取得後、安定を捨てた理由
  10. 「失敗を恐れること」―大企業からNFLへ
  11. 「公私混同はしないこと」―サラリーマンからベストセラー作家になった山田真哉氏
  12. 「盆暮れ正月以外、お墓参りには行かないこと」―赤門から仏門へ、東大卒業後、出家した彼の人生
  13. 「酒は飲んでも飲まれないこと」―グローバルビジネスマンからバーテンダーへ
  14. 「フリーターは負け組みだということ」―フリーター雑誌が模索する、新しい生き方
  15. 「官僚は現状維持にしか興味がないということ」―国家公務員をやめて、公務員の転職を支援する生き方
  16. 「新卒以外は採らないこと」―リクルートが始めた、新卒以外の人間を採用するシステム
  17. 「人生の大半を会社で過ごすこと」―職場にはりついているように見える日本男子の人生
  18. 「大学は遊んでいてもいいということ」―立命館VS昭和的価値観
  19. 「最近の若者は元気がないということ」―日本企業を忌避しだした若者たち
  20. 「ニートは怠け者だということ」―「競争から共生へ」あるNPOの挑戦
  21. 「新聞を読まない人間はバカであるということ」―情報のイニシアチブは、大衆に移りつつある
  22. 「左翼は労働者の味方であるということ」―二一世紀の労働運動の目指すべき道とは
括弧の部分が昭和的価値観を示し、その後のダッシュ以降が、その価値観に対極な価値観を持ちながら生きている人のことが示されている。

昭和的価値観を簡単にまとめてみると、それは戦後50年に形成されてきた年功序列、終身雇用を基盤とした会社に養われている働き方であり、そこにはなんとなく銀行、新聞社などの大企業を企業名でのみ目指す傾向があり、そして入社してしまえば一生安泰であるかもしれないが、入社後は有給消化ができず深夜残業、転勤、過労死など滅私奉公を求められる企業文化に染まっていく閉塞した生き方のこと。結構乱暴なまとめ方か・・・。

そしてそのような価値観はもはや21世紀には通用しないということを著者が示している。昭和的価値観の対極として、著者がインタビューした人によって示されている平成的価値観がある。平成的価値観は、一言で言えば多様性であるようだ。そしてそこには、自分が中心となって何かをやりたい、自分の目的地を探しだしそこにたどり着きたい、また自分が望む何かを手に入れようとする主体性がある。そういう人たちは、まず終身雇用、年功序列を基盤とするような日本企業には行かず、外資に行ったりする傾向があるようだ。

著者の考え方が端的に現れている部分があるので、そこを抜粋。
「俺は会社で死ねれば本望だ」という人はそれでいい。が、今の境地に違和感をおぼえるボーダー上の人は、違う価値観にも目を向けるべきだ。定期昇給も無く、一生平社員であるにもかかわらず、休日も使わず転勤を繰り返し、残業続きの人生を送るのが幸せだというのなら、そいつはだたのバカか、それによって搾取する側の人間に違いない。日本的サラリーマンカルチャーは、終身雇用と年功序列というご褒美と引き換えに成立してきたものだ。だが、そのバーター関係は既に崩れたのだから。
 これからは、レールを降りて、各自がそれぞれの道を探す時代が間違いなくやってくる。突っ走ってもいい。でも、何人かで歩いていくのも悪くはない。
(pp.193)
そしてレールを降りた人がアウトサイダーとして本書で多く示されている。

さて、以上がだいたいの本の内容。以下自分の感想。

自分自身に関して言えば、あまり昭和的価値観に染まっていないなと思う。まず染まっていたら、外資になどに行かなかった。この本では一貫して年功序列、終身雇用企業が日本の成長や働き方の閉塞間の元凶であるというような主張があり、外資礼賛の記述が多い。しかし、必ずしも年功序列が悪いわけではなく、外資的な実力主義の給与体系が必ずしも良いわけでない。確かに能力に応じた給料をもらうべきであるが、その激しい競争社会で生きていけない人もいるわけで。要は、著者も示しているように多様性だと思う。年功序列企業があってもよいし、昭和的価値観にどっぷりつかって生きて生きたい人はそれでいいと思う。けれど、大局的に見ると、そのような企業に未来は無いと示されているので難しいところで。

自分がなぜ外資に行ったかというと、たまたま自分が望んでいる企業文化がそこだったから、としかいいようがない。この本で示されているように、学生時代からインターンシップに行って企業間の違いに目が覚めて意識が変わった、ということも無い。そもそもインターンシップにすら行ってないし。けれど、常に成長していきたいという気持ちがあった。だから年功序列組織は選ばなかった。

また、自分は会社という組織で働くということ自体あまり向いていない思っているので、この本に示されているように、会社勤めをしなくても生きていける方向性が示されているのがとても参考になる。自分自身も将来アウトサイダーになるべくしてなるのだろうなと思う。

アウトサイダーになった人たちの考え方や生き方が面白いなと思った。本当にいろいろな生き方があるのだなと思った。

多様性という言葉は便利で、1つの価値観に縛られず、自由な生き方ができる。しかし、どのような生き方をしようとも、結局は自己責任が付きまとう。けれど、その分自分の本当にやりたいことに専念した生き方ができるのではないかと思った。

読むべき人:
  • 年功序列、終身雇用の会社員の人
  • アウトサイダーになりたい人
  • 本当に自分のやりたいことをやりたい人
Amazon.co.jpで『城繁幸』の他の作品を見る

にほんブログ村 本ブログへ bana1 ランキングへ


January 12, 2008

モテたい理由


モテたい理由

キーワード:
 赤坂真理、モテ、ファッション誌、サブカル、男女論
小説家による男女の社会論。以下のような内容となっている。
  1. 女の目から見た世界
  2. 獰猛な恋愛資本主義
  3. 蔓延するライフスタイル語り
  4. 女子が生きるファンタジー
  5. ライフタイルの先祖たち
  6. 男たちの受難
  7. 女という水物相場
  8. 戦争とアメリカと私
別にモテたいと思ってこの本を読んだわけではない。ただ、なんとなくタイトルに惹かれて読んでみた。内容は実に興味深い。これこそ良質な新書だなと思う。いろいろな切り口から書評できそうだが、自分の印象論で書いてみる。

男の価値が下落し、女性ファッション雑誌は十代向けから五十代まで本質的にモテることを目的として構成されている。「モテ」の定義を以下に抜粋。
モテとは、関係性(特に異性との)において優位に立つことである。
(pp.29)
そういった中で「モテ」とはあるのはしかたがないがそれを追求しても幸せになれない質である女の「業」であり、その「業」の部分を取り出して拡大したものであるとある。多くのファッション雑誌に示されている「モテ」とは『出し抜き』であり、「愛され」は『オンリー化』の記号であるようだ。

そして、ファッション誌で示されるめちゃモテやどじっ娘アイテムなどに物語性を付与するという態度が、オタクに見られるような猫耳に萌えている態度と本質的に変わらないとあった。なぜなら、オタクは脳内恋愛という妄想をし、負け犬は現実世界で恋愛という妄想をしているという、妄想に変わりないということかららしい。

前半はさまざまな女性ファッション雑誌のウォッチが示されていてとても興味深い。かならずモデルに細かい仮想プロフィールが入っているのが特徴で、そこで展開される着まわし劇場は、恋愛、交通事故、記憶喪失、三角関係、嫉妬といった韓流ドラマ的かつオタクの好きなパソコンゲームと同様な物語構造を持つらしい。なるほどなぁと思った。

後半は男の受難、女性の結婚観、そして著者がアメリカ送りになってしまった経緯、文化論まで話が膨らむ。

実に面白い内容だと思った。何でそんなに女性ファッション誌はみな同列に「モテ」に走るのかがよくわかった。そして、現代社会で男女として生きていくことの困難さも垣間見た気がする。

例えば、自分が女に生まれたとして今と変わらない精神構造を持つことになったとして、JJやCanCamを追従して「モテ」に走ったりするだろうか?と考えてみた。多分、最初は見てみると思うけど、きっと次第にその態度に辟易としていき、著者のように眩暈を起こすのだろうな思う。

自分と同世代の女性は、この本を読んで何を感じるのだろう?そもそも、「モテ」に走る女性は、こんな本なんか読まないのだろうなぁ。。。

小説家だけに文体はかなり読ませるものとなっている。引き込まれていく。これも面白さの大きな要因だと思う。著者が小説家であることをまったく知らずに読んでいたので、今後小説も読んでみようかなと思った。

読むべき人:
  • 「モテ」に興味がある人
  • 女性ファッション雑誌が好きな人
  • 男として生きにくさを感じている人
Amazon.co.jpで『赤坂真理』の他の本を見る

にほんブログ村 本ブログへ bana1 ランキングへ


December 11, 2007

ウェブ人間論


ウェブ人間論

キーワード:
 梅田望夫、平野啓一郎、ウェブ、アイデンティティ、人間論
Web2.0の伝道師と小説家の対談本。『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』を読んだときに、あちら側とはそういうことなのか!!と衝撃を受け、また最近梅田氏の本が出たので、そちらを読む前にこっちをチェック。本当は半年以上積読状態だったんだけど・・・。

人間論とタイトルについており、内容が幅広い。おわりに梅田氏が端的にこの本の内容を表している部分があるので、そちらを長めに抜粋。
 ところで『ウェブ人間論』というタイトルの本書は、「ウェブ・人間論」と「ウェブ人間・論」との間を往来していると言える。
 ウェブが広く人間にどう影響を及ぼしていくのか、人間はウェブ進化によってどう変容していくのだろうかという意味での「ウェブ・人間論」。
 グーグル創業者や世界中に散らばるオープンソース・プログラマーのようなウェブ新世界を創造する最先端の人々、ウェブ進化とシンクロするように新しい生き方を模索する若い世代、そんな「ウェブ人間」を論ずる「ウェブ人間・論」。
 この二つ「論」が「クモの巣」(ウェブ)の放射状に走る縦糸と同心円を描く横糸になって、本書は織り成されている。そんな視点から改めて本書を眺めていただくのも一興かと思う。
(pp.202-203)
結構満足して読めた。ところどころ線を引いた。なんというか、自分がなんとなく考えていたことが示されている部分に。それなりに多いので、一箇所だけまた長めに抜粋。
梅田 ネットの魅力の感じ方って、リアルな空間での自分の恵まれ度に反比例すると思うんですよ。リアルの世界で認められている人やいい会社に勤めている人たちに、いくら僕がネットは面白いよと話してもなかなかわかってもらえない。日本のいい会社はいいコミュニティでもありますから、給料の多寡の問題でなく忙しく働き、嫌で仕事しているんじゃなくて、楽しいでしょう。そこにいる人に「ネットでこんなことが起きているんですよ」って話しても、リアルで完全に充足してるから、別の世界なんて必要としていないわけですからね。
平野 実際にネット参加者でSNSやブログをやってる人たちの年収とか職業満足度とかを調査したら、満足してない人たちの方が多いんですかね?
梅田 そう思います。満足の定義にもよるけど、例えば学生を含めて若い世代って、現状に満足できず、何かを求めていつも某かの飢餓感があり、不安や焦燥感を持っている。会社に入ったら、入ったで、若いうちは皆、今の会社で自分はいいのか、という不安にかられているでしょう。
(pp.70-71)
ここなんかまさにおっしゃるとおり!!と思った。個人的な話をすれば、やはり自分がブログをやったり、このように書評ブログを書いているのは、リアル空間では満足し切れていないからというのがある。読書なんてただ誰にもひけらかさずに淡々と読んでいればいいと思っていたけど、それを披露する場がなければ、その価値は誰にもわかってもらえない。言ってみれば、ネット空間で承認欲求を求めているというのが本音だと思う。虚栄心みたいなものもある。リアル世界では自分は何にどれだけ関心があって何を読んでいるかをまったくといっていいほど語らない代わりに、ネット上の分身としてどれだけ自分は世界のことに関心を持っているかということを示すために。もちろんそれだけでなく、単に自分が何に興味を持って考えてきたのかという履歴を残すためという側面がメイン。

また、ブログをつけていくことで、梅田氏は自分のことを再発見したとあった。例えば、読んだ本の一部を抜き書きしたりするのって本当に幸せだとか。そして常にネットにどっぷりつかっている生活をしているようだ。ここも共感できた。

梅田氏はウェブ技術を第一に考えている、あちら側の人という印象に対して、小説家である平野氏はより一般人的な感覚を大事にしている印象を受けた。例えば、梅田氏はネットで膨大な情報を得ることで頭がよくなっていき、量が質に転化するという考えに対して、平野氏は、どれだけネット情報を多く得ても自分で考える時間が必要で、ネットで十万字哲学について読むのと、哲学書の原書を一冊読むのとはぜんぜん違い、ネットで何時間も費やした後は、本を何時間も読んだ充実感はないと。両氏の言うことは自分はどちらも同意できる。程度問題と思うけど。

他にも、ネット時代の教養の話や、Amazonにみる出版、本の媒体の行方の話なども面白かった。

この本は『ウェブ進化論』ほど技術的なことが書いてあるわけではないので、平野氏の人文思想系の話以外はすんなり受け入れられると思う。

読むべき人:
  • ウェブの現象を知りたい人
  • ブログをやっている人
  • 情報はネットと本どちらが上かという議論に興味がある人
Amazon.co.jpで『梅田望夫』の他の本を見る
Amazon.co.jpで『平野啓一郎』の他の書籍を見る

にほんブログ村 本ブログへ bana1 ランキングへ


November 25, 2007

バカにならない読書術

バカにならない読書術 (朝日新書 72)
バカにならない読書術 (朝日新書 72)

キーワード:
 養老孟司/池田清彦/吉岡忍、書評、鼎談、博覧強記
解剖学者、生物学者、作家の3人による古今東西の書物についていろいろ語っている本。2部構成で、1部は、養老孟司氏による、『「養老流」本の読み方』で、2部は『バカにならないための本選び』となっている。

1部は、養老氏の本に対する考え方が書いてある。以下恣意的に抜粋。
  • だから本というのは非常に大事で、つまり、ふだんは見えていない普通の人の考え方が、本の中で発見できるわけです。(pp.65)
  • 本を読むって、結構余裕がいります。人生から一歩引いていないと読めない。(pp.68)
  • 人間は一人ひとり違うという前提から入ると、本を一生懸命読むんです。(pp.69)
  • だって、引っかからないところは自分がわかっているところだから。だから飛ばしていいわけです。(pp.88)
  • 本は、それぞれに読むテンポがあって、そのテンポを崩したらだめなのです。(pp.90)
  • 私は自分で考えるということを書物から教わろうとしたら、デカルトが一番教師として優れていると思います。(pp.96)
たぶん、1部は養老氏自身は書いていない。『バカの壁』と同じように口述筆記だと思われる。環境や虫、脳、文学賞、村上春樹の人気のヒミツなども語られていて面白い。

2部は、雑誌AERAで連載されているものを書籍にまとめた部分になる。たまに面白そうな記事のときは読んでいた。それぞれのテーマごとに好きなことを語り、3人がお勧めの3冊を示している。それらはどれも自分が読んだことのないものばかりで、自分の世界を広げてくれた気がした。

面白かったテーマは以下のものになる。
  • 科学を楽しむ本
  • 鴎外VS.漱石
  • 勝手にノーベル文学賞
  • 京都でマンガ三昧
  • 太宰と安吾
  • 居酒屋で哲学を
  • 唸る写真集
例えば、マンガのテーマのとき、3人はそれぞれ以下を取り上げている。

池田清彦
  1. 海辺の叙景(つげ義春全集)
  2. ジョジョの奇妙な冒険
  3. 寄生獣
吉岡忍
  1. カムイ伝
  2. じゃりん子チエ
  3. グーグーだって猫である
養老孟司
  1. ナニワ金融道
  2. 伊賀の影丸
  3. らんま1/2
どのテーマでも、政治、主義、社会情勢、思想の話に広がっていく。3氏による鼎談から、博覧強記とはどういうことか?ということがわかる気がする。なんというか、自分の読んでいるものの幅はまだ狭いなぁと再認識させられる。3人とも年配で教授、作家なので、それなりの蓄積はあるのだから当然といえば当然だけど。

本質的な内容はそれなりに難しいものが多いけど、(笑)とか結構出てくるので、割と読みやすい。

こういう本について語られた本は好きでよく読んだりする。自分の世界を広げられるから。

読むべき人:
  • 本が好きな人
  • 読みたい本がいまいちない人
  • 博覧強記を目指す人
Amazon.co.jpで『養老孟司』の他の本を見る
Amazon.co.jpで『池田清彦』の他の本を見る
Amazon.co.jpで『吉岡忍』の他の本を見る

にほんブログ村 本ブログへ 役に立ったらクリック☆  bana1


November 07, 2007

勝手に絶望する若者たち


勝手に絶望する若者たち

キーワード:
 荒井千暁、世代論、ロストジェネレーション、仕事、就職氷河期
産業医という立場から25歳から30代半ばの世代を仕事という側面から論じている本。いわゆる就職氷河期世代とか無気力世代、バブル入社世代とか超売り手市場世代などいろいろあるが、それらが気になったので読んでみた。以下のような内容となっている。
  1. 若い人たちの離職理由と「世代」
  2. バブルに翻弄された世代
  3. 働くことと人材育成教育
  4. 未来を夢想するより、現在の直視を
  5. 産業医からのメッセージ
正直、全体的にぴんとこなかった。完全に読解できていないという側面もないではないが、結局この本の主張は何?ということがいまいちわからなかった。

まずぴんとこなかった理由は、この記事を書いている現在、自分は23歳である。そのため25歳から上の世代の境遇を実感するということができないので、ここで示されていることの深刻さがわからない。それに関連する部分を抜粋。
現代の新入社員、つまり2006年と2007年に入社した人たちは、それより上の世代と明らかに異なっているという印象があります。ひとことでいえば、数年前に見られたシラーっとした感じがなく、総合的に〔デキる〕のです。バランスがよいのでしょうし、気になる歪みがほとんど感じられません。年相応のオトナらしさを伴っているのだろうと、わたしは理解しています。
(pp.143)
これはなんというか、上の世代が悲惨だと散々いろいろなところで報道されてきた反動ではないかと思う。だから自分は大学時代に必死になって勉強して、就職時にあぶれないようにした。そういう危機感が自分の世代に共通して持っていたのではないかと思う。

あと、このような世代論はどうしても集合の一部をサンプリングしてあたかもそれが全体の共通認識であるように論じられがちである。本当に世代全体がある共通の特性を共有しているのだろうか?部分集合を全体化して論じているだけではないか?という部分に気をつけなければならない。だから、一言に自分の世代をひとくくりされてしまうことにいつも違和感を覚える。

少なくとも、若者と称される自分は、勝手に絶望してはいない。誰が絶望しているのか、勝手にとはどうゆうことか、それらがいまいち示されていない気がする。もし若者が絶望しているというのなら、それは若者が勝手にではなく、遠く離れた上の世代から意図的に絶望させられているというのが本質ではないかと。若者という世代は結局上からの負の遺産を押し付けられる世代なんだから。

実際にカウンセリングした少数のサンプルだけで世代間を論じて傍観しているだけのこの本は、ではそこからどう対処するかという本質が完全に抜け落ちている。
 働いていようといまいが、わたしも、わたしたちの世代も、それより上の世代も下の世代も、若い人たちをを救うことはできません。生きてきた環境から派生するはずの価値観が大きく異なっている以上、救うなどとい概念を持つこと自体が誤っているのでしょうし、不遜なことです。自らの力で歩け、という他はないのです。
(pp.151)
こんなことを言われたら、就職氷河期世代はかなり反発するだろうなぁと思う。大局的に日本をだめにした元凶はどこにあるんだろうか?そんなことも考えてしまう。

この手の本は世代論を考えるにはよいかもしれない。けれど、ではその問題をどう対処するかということはいつも抜け落ちている気がする。

あと、自分と同じ世代の人はどう考えているのか?ということが気になった。

読むべき人:
  • 就職氷河期世代の人
  • 世代論を考えてみたい人
  • 自分の望んだ未来が手に入っていない人
Amazon.co.jpで『荒井千暁』の他の本を見る

にほんブログ村 本ブログへ bana1 ランキングへ


July 25, 2007

格差社会の世渡り 努力が報われる人、報われない人


格差社会の世渡り 努力が報われる人、報われない人

キーワード:
 中野雅至、格差社会、高学歴ノーリターン、努力、ぼやき評論
元官僚による大学助教授による格差社会をぼやきのごとく分析している本。以下のような内容となっている。
  1. 「明日が楽しみ」と言えますか?
  2. 長期不況は庶民の責任か
  3. 報われない高学歴者
  4. ワーキングプア
  5. 「勝ち組」の根拠
  6. イバリーマンの勝利の理由
  7. 格差社会のゆくえ
  8. 見た目が10割社会を生き抜く処世術
  9. 努力が報われる社会へ
この本の内容がよくまとまった部分が、Amazonの著者からのコメント部分にあるので、一部抜粋。
 格差をもたらす要因から説明しますと、バブル経済が崩壊してから、日本では「格差社会は是か非か」を巡って随分と議論がなされてきました。その中で、格差を肯定する人の意見として、私が違和感を覚えるものが一つありました。
 それは、「努力する者が報われるのは当たり前だ。今、日本はようやく「当たり前の国」になったのだ」というものです。私にはどう見ても、努力に基づいて格差が発生しているとは思えなかったからです。フリーターも富裕層も、みんなそれぞれの立場で努力したのであって、がんばりが勝敗にそのまま反映されているとは思えなかったからです。
 私には、富裕層や出世しているビジネスマンをみていると、格差社会を勝ち抜いている人は「アピールするのが非常に上手い」ということの方が、強い印象として残っていました。「私はこんなに優秀です」「私はこんなに仕事ができます」とアピールするのが上手い人が、どんどんと上り詰めていったのが、ポストバブルの特徴だったと思うのです。
 この事実を踏まえた上で、格差社会を生き抜くための知恵をつける必要があるというのが、私なりの結論です。「努力しました」だけでは不十分で、報われる努力と報われない努力があることをきちんと認めた上で、どういう努力をすればいいのか。そんなことを、この本では言いたかったのです。
ちょっと長すぎるか・・・・。この部分がこの本の内容を全て語っているので。書評での引用は、引用部分が自分の主張と主従関係が逆転してはいけないので、自分の意見をたくさん書かなければ。

まず、リンク先の著者からのコメント部分を読んでもらえば分かるが、学術的な分析よりも著者独特のぼやきのごとく世の中の格差社会を分析している。それはどちらかといえば、著者の官僚時代の東大卒エリートをたくさんみてきた経験則的な主張が多い。そのため、分析が甘いし、著者の主観が多く入り込んでいるところが多い。そこは要注意点であるが、他の格差論の本よりも読みやすいし、一つのケーススタディ的な側面としてはとても参考になる。

では、以下に本の内容を基に自分の意見を。

『報われない高学歴者』の部分では、中央省庁では学歴の価値が大暴落しているようだ。何よりも世間が成功者として認める価値として、昔は学歴(出身大学)、職業権威(官僚、エリートサラリーマン等)、所得(いくら稼いだか)の順番で認められていたものが、昨今のIT長者やプロスポーツ選手を筆頭とした所得がどれだけ多いかといことのほうが重要視されているからだとある。そして東大ブランドは大企業入社の近道という利点はいまだ少なからずあるが、昨今のグローバル市場において、会社の倒産やリストラというリスクが高く、以前のような年収1000万円は保証しないと示されている。そして、小学生から受験勉強を一生懸命やって東大卒になってもこのようなリスクがあり、また学歴は所得の増加に必ずしも結びつかないとある。特に起業家などに注目すれば、学歴は関係ないとある。なので偏差値的な受験による大学の序列化は無意味で、報われないだけだとある。

受験勉強によって身につく能力は精神科医の和田秀樹氏がよく論じている(受験エリートがビジネスエリートになる)ので、かならずしもリターンが少ないとはいえないと思う。また、昨今の正社員、非正社員の論点として、新卒時に非正社員になってしまうと正社員になれる可能性が極端に低くなる現状としては、高学歴であるというのは入社時に格段に有利であるということは否定できない。一流企業に入社するというのは、一生安泰ではなくなったが、それでもフリーターや非正社員として日々を過ごすよりもよほどましだと思う。

『イバリーマンの勝利の理由』の章では、成果主義とは名ばかりの典型的な年功序列の日本企業において、人事評価はあいまいで、上司からの資料作成などの下請け的な仕事しかできず、仕事の範囲が不明確で残業も多いような組織では、できる人ほど辞めやすく、出世している勝ち組は、「何が何でも会社にしがみつく、出世するという執念に勝っている人」、「仕事に疲れない人」、「声のでかい人」らしい。要はアピール上手な人がよいらしい。そしてそんな会社は辞めにくく首になる可能性が高いという世界の起業と比較すると最悪な組織なようだ。このようにいろいろ会社組織の本を読んでいると、年功序列的な日本企業にいるということがいかにリスクの高いことかと思い知らされる。自分は外資に行ってよかったなと思う。その反面、新卒で外資に入社するということは、もうこのような年功序列的な組織に転職してもやっていけないだろうなという側面もある。カルチャーになじめなさそうだし・・・。

この本の8割がたが著者のぼやきであるが、最後のほうは結構参考になる提言がある。『見た目が10割社会を生き抜く処世術』の章で、以下のようなことが示されている。
  • 会社のために働くという考えは捨て、会社を利用しつくし、自分の市場を高め、会社は能力を生かすための場と考えるべき
  • 若いうちから、就職する会社は自分にとってプラスかマイナスかどうかを考えながらキャリアパスを明確にすること
  • 東大入学という一時的な努力をするのではなく、一生続けらる努力は何かを考えて継続すべき
  • 学歴の価値が暴落しているのだから、必死に受験勉強して東大に行くよりもよく遊んだり、スポーツしたりして健全な時間を過ごし、名前の知られた程度のレベルの大学にいければよいと考えるべき
どれもなるほどなと思った。

勝ち組か負け組みかは著者も言うように、努力で何とかなるレベルではないのかなと思う。どう考えても運という要素が大きいと思う。運が半分くらいあるのではないかと思う。それでも、まだ自分で努力していける部分があるので、自分は必死になって努力して成功を掴み取りたいとは思う。無駄な努力にならないように、努力のベクトルを間違えなければ成功者になれると自分は信じている。

この本はけっこうつっこみどころも多いが、それでもいろいろ考えるためのヒントが多かったので参考になった。自分はAmazonでの評価はそこまで高くないと思っていたが、かなり高かった。

読むべき人:
  • 格差論に関心がある人
  • 学歴論に興味がある人
  • 気軽に世間のぼやきを読みたい人
Amazon.co.jpで『中野雅至』の他の本を見る

にほんブログ村 本ブログへ bana1 おかげさまでランキングが上昇中です。。


July 16, 2007

若者はなぜ「会社選び」に失敗するのか

若者はなぜ「会社選び」に失敗するのか
若者はなぜ「会社選び」に失敗するのか

キーワード:
 渡邉正裕、会社、キャリア、カルチャー、大転職時代
日経新聞、IBCSと渡り歩いてきた著者による有名企業の企業文化を社員のインタビューによりまとめられた本。自分の就職活動時には、『これが働きたい会社だ 社員が教える企業ミシュラン』がとても参考になったので、同じように他の企業はどのようなカルチャーがあるのかなと気になったので読んでみた。

この本の成り立ちは著者の就職活動時に企業選びの基準が不明確だったことと、新聞社時代でのキャリアの築き方に対する不満があったことにより、企業の内部事情を示し、自分にあった企業を選ぶときの助けになるように書かれている。以下の12の指標で有名企業が分類され、解説されている。
  1. 転職力が身につくか
  2. やりたい仕事ができるか
  3. 社員定着率は高いか
  4. 英語力を活かせるか
  5. 働く時間に納得できるか
  6. 社員の人柄は自分に合っているか
  7. 社内の人間関係は心地よいか
  8. 女性は活用されているか
  9. 報酬水準は高いか
  10. 福利厚生は手厚いか
  11. 評価に納得性はあるか
  12. 雇用は安定しているか
ざっと取上げれている会社を挙げると、日本IBM、ソニー、リクルート、NEC、マイクロソフト、外資コンサル、外資金融、三菱商事、ヤフー、サントリー、三井物産、テレビ局各社、新聞社、楽天、JTB、富士通、電通、トヨタ、日産、NTT東日本、NTTドコモ、野村総研、野村證券、JAL、ANA・・・・といろいろ。

それぞれの指標をマトリックス上に図示されていて分かりやすい。自分が気になった部分は、『転職力が身につくか』と『働く時間に納得できるか』、『報酬水準は高いか』の部分。

転職力が身につく分かりやすい見分け方として、「平均年齢が若い」、「人材を輩出している」、「規制なし&軽薄短小企業」の企業が該当するようだ。3つの円によるベン図のちょうど中心にリクルートが位置している。平均年齢が若いのがいいのは、若いうちから多くの仕事を任せてもらえるからであるようだ。逆に長期安定志向の場合は、鉄道、航空、ガス、電力などインフラ企業、金融、自動車、電気メーカーがよいらしい。規制に守れらて競争が少なく、年功序列的な会社が特徴だ。しかし、30歳になっても社内でしか通用しないスキルしか身につかないところもあるので、転職先がないという実態もあるようだ。

『働く時間に納得できるか』の部分では、若いうちからより付加価値の高い仕事ができるかどうかで今後の収入が変わってくるということが示されている。その部分を抜粋。
 今後、確実に、労働の「市場化」は進む。これは、労働の付加価値と、それに対する報酬が、グローバル規模の市場原理で決まるようになる、ということだ。ホワイトカラー業務でも、プログラマーなどはインド人や中国人と戦わねばならない。
 そういったなかで、働く時間を短くしたい人の報酬は、二極化に向かう。一方は、フリーターのように低付加価値業務を、時給でやりつづける人。もう一方は、時間単価が高い仕事ができて、短時間でも高収入をもらえる人。
 後者は、若い段階に"詰めこみ仕事"を1度は経験し、キャリアを上積みしないかぎり、不可能だ。幸運なことに、日本は、ラクをした人が報われるような社会には、向かっていかない。投資対効果は、若いうちほど高いので、短時間勤務を目指す人は、若いうちに成果主義の会社で自分の時間を投資し、キャリアの上積みに励むのがよい。
(pp.154)
やたらと読点が多い文章だが、そのとおりなのかなと思う。幸い自分は成果主義的で、成長スピードの早い組織に属しているので、よいほうなのかなと思う。いつまでそこで働けるか分からないけど。しかし、そのような成長を目指すにはしっかり勉強し続けなければならない。

あとは報酬水準のところ。他の業界、企業はどの程度の年収がもらえるのかが分かって参考になった。「ガチンコ」勝負エリアにある外資コンサル、外資金融は破格だなと思う反面、やはりそれだけの能力があり、仕事としてアウトプットできるからその額になるのだと思う。逆に新聞、放送局は規制に守られており、競争もないので、使えない社員でも年功序列的に破格の報酬を得ていることが示されている。著者の新聞社時代の経験から、新聞社は腐った業界だと断罪している。確かに新聞に対して自分もいろいろ思うところがある。ろくな記事を書かずに国民を馬鹿にしているようなものもあるので一度淘汰されるべきじゃないかと思わないでもない。

著者は後書きで一生サラリーマンを続けるのは損な時代だと述べている。この本を読むだけと、最高の企業というのはないのではないかと思えてくる。どこまで本当なのかは自分では完璧に判断できないが、各企業の社員にインタビューして解説しているので、信憑性は高いと思う。そう考えると、本当にサラリーマンをやっていれば搾取されるだけで、人生楽しくないのではないかと思えてくる。結局、自分は何を目指してどこまでたどり着きたいのか、何を人生で優先するのかということを自分で決めて、現状に折り合いをつけて妥協したりしていくしかないのかなと思った。

この本で挙げられている企業は、一部上場企業や有名企業である大企業ばかりである。世の中の9割9分の会社は中小企業であるということを考えれば、これらの会社に所属するというだけで、ある程度まともなんじゃないかと思う。昨今はワーキンブプアとかまともに正社員なれない人もいるというのだから。

企業によってカルチャーや評価制度、報酬がここまで違うものかということが分かって面白かった。その反面、自分は今の会社に入れてよかったなとも思った。そんなことも再確認した。そうはいっても、会社や世の中がどうなっても生き延びられるだけの能力を必死で身につけようとも思った。

読むべき人:
  • 就職活動中の人
  • 会社選びを間違えた人
  • サラリーマンが嫌な人
Amazon.co.jpで『渡邉正裕』の他の本を見る

にほんブログ村 本ブログへ bana1 ランキングへ


July 08, 2007

2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?


2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?

キーワード:
 ひろゆき(西村博之)、2ちゃんねる、インターネット論、メディア論、プログラマー
2ちゃんねるの管理人、ひろゆき氏のインターネット論。口頭記述なので、実際にひろゆき氏が書いているのはあとがき部分のみ。それでも全体的に興味を持って読めた。以下のよう内容となっている。
  1. まずは結論
  2. ITのウソ
  3. 明るい未来への誤解を解く
  4. [対談]佐々木俊尚×ひろゆき
  5. 間違いだらけの法律
  6. メディアと2ちゃんねる
  7. [対談]小飼弾×ひろゆき
いきなり潰れない結論が載っており、それによれば、金銭的な問題、社会的な問題、法的な問題が原因として考えられるが、今のところありえるのは広告収入減により維持ができなくなるということだが、利用者数がそこまで大きく変動があるわけではないので潰れないと。そして全編を通して、2ちゃんねるがたとえなくなったとしても、似たようなシステムを誰かが作って同じようなものがまた出現すると主張されている。そりゃそうだと思う。需要と供給がしっかり一致しているから利用者数が減ることもないだろうし。

2ちゃんに特化した章は1章だけで、他はインターネット論が展開されている。GoogleやYouTube、セカンドライフ、mixi、マイクロソフトなどIT企業のビジネスモデルや特性がひろゆき氏独自の観点から解説されている。特に昨今話題のWeb2.0という抽象的な概念はひろゆき氏に言わせれば今までの技術的なものと何も変わったことがなく、みなその言葉になんとなく惹きつけられて使っているに過ぎないと。確かにそういう部分があるかなと思う。

YouTubeがGoogleに買収された経緯の解説や、ニコニコ動画ができるまでの解説などもとても参考になった。また、インターネットの明るい未来など何もなく、昔からある技術を見せ方を変えて売っているだけで、何も新しいものが出てきたわけではないという悲観的ともとれる現実的な主張もなるほどなと思った。

法律に関する部分は、現行の日本の法律の矛盾点やよいところ悪いところを自身の訴訟問題に関して述べられている。特に著作権やWinny問題など考えさせられる。

ひろゆき氏は2ちゃんねるの管理人でやたらに訴訟を起こされており、悪いイメージが付きまとうが、ひろゆき氏のブログなどを見ていてもけっこう素朴で現実的な考え方がしっかり根付いているなと思う。何もひろゆき氏が逮捕されるような悪行をしているわけではないので、この本を読むと結構印象が変わると思う。何よりも、ひろゆき氏はプログラマーなんだなということを意識させられた。技術的なことに関してもかなり詳しいので、インターネット論は興味を持って読めた。

また、人気アルファブロガーの小飼弾氏との対談も面白かった。ここはプログラマー同士の対談なので、正直技術的に疎い人にはついていけないような濃い話だと思う。自分もプログラマーの端くれとして読んだけど、ちょっとついていけない部分もあり・・・・。例えば、2ちゃんはPerlで作られていたり、ニコニコ動画はPHPで作られていたり、データベースのスケールアウトの問題だったり、ハードウェアの話だったり、経営の話だったり多岐にわたる。そのため、ひろゆき氏がどうしても分からないときはぐぐってくれと言っていた(笑)。

自分はなんだかんだ言って、2ちゃんねる利用歴がもう7年くらいになる。確か2000年くらいから利用し始めている。VIP板のような濃い板などを新規開拓することはあまりせずに、定期的に同じ板、スレを見ているだけ。たまに書き込む程度。2ちゃんの何がよいかというと、書き込まれる内容の情報は玉石混合だけど、たまに本当にダイヤモンドが紛れていることがある。そういう情報を手に入れたときほどの価値といったら計り知れない。それは人によってはかなり違うが。例えば、自分は就職活動時にはかなり就職活動板の情報が参考になったし、何か新しい本を新規開拓しようと思ったら、一般書籍板や本紹介スレを見たりしてクチコミ的に利用しているし、何かの分野について詳しくなりたいと思ったら必ず誰かがまとめサイトのようなものも作ってくれているのでそれを参考にしている。他にも自分と同じ特性を持つ人と情報共有できるのも利点だと思う。これらはやはり普通に日常生活を送っていたら絶対に手に入らない情報だったと思う。それらをうまく有効利用できるので、自分としては2ちゃんねる肯定派で、月数百円を払ってでも利用したいと思う。

いろんな分野の情報や知識を溜め込む癖のあるタイプ5の自分にとっては2ちゃんねるはなくてはならないもので、その本質が分かってよかった。ひろゆき氏は鋭い視点の持ち主だなと思った。

読むべき人:
  • 2ちゃんねるについて知りたい人
  • 現実的なインターネット論が読みたい人
  • プログラマーの人
Amazon.co.jpで『西村博之』の他の本を見る


June 09, 2007

働かないで年収5160万円稼ぐ方法


働かないで年収5160万円稼ぐ方法

キーワード:
 川島和正、アフィリエイト、副業、ブログ、マーケティング
ネットオークション、アフィリエイト、メールマガジン、情報ビジネスにより楽に儲ける方法が書いてある本。タイトルがタイトルだけに買うべきかどうか迷った。タイトルにある年収は著者の現在の年収。実際に読んでみると、まぁ、買って損はないかなと思った。以下のような内容となっている。
  1. 今なぜ副業が注目されるのか?
  2. 「楽して儲ける方法」の入り口 副業選びのポイント
  3. 楽々簡単! オークションで月30万円稼ぐ方法
  4. アフィリエイトで月100万円生む仕組みを作る
  5. 情報ビジネスならノーリスクで月300万円稼げる
  6. 副業から起業、そして年収1億円への道
1章では働くだけのために生きるべきではなく、副業などで楽して儲けることで自分の時間を多く使えることで自分の本当にやりたいことができるようになり、幸せになれますよという啓蒙的な内容が示されている。

2章では副業を選ぶときに、初期費用が10万円以下で個人で行え、法律に違反しないようなリスクの低いものを選ぶべきだとある。また、バイトのような時間の切り売りをするよりもマニュアル販売のように儲かる仕組みをつくって儲けるべきだとある。

3章はオークションで儲ける実践方法が示されている。本のせどりやCD、古着などを相場を考慮し安く仕入れておき、それらをYahoo!オークションなどで売れば儲けられるとある。最初は家の要らない家財道具などを1円でもいいから売ってみると良いとある。練習にもなり、家の中が広くなり精神的にも落ち着くとアドバイスされている。

4章はアフィリエイトでの儲け方。アフィリエイトの形態として、メールマガジン、ブログ、ウェブサイトの3つあるようだ。そのなかで一番早く大きく儲けられるのはメールマガジンであると示されている。まぐまぐ!などでグルメや映画などのノウハウをまとめた無料レポートを提供していき、読者数が1000部超えた段階でアフィリエイトを始めるべきとある。それまでは無料レポートの充実と読者数を増やすことに専念すべきとある。

ブログの場合は、基本的にメルマガと同じであるが、メルマガよりは儲からないようだ。なぜなら表示されている商品を一度見ただけで衝動買いする人は少なく、多くの人は繰り返し目にした商品が欲しいもので、同じお客さんに何度も広告することが難しいからだとある。そのため、ブログでメールアドレスを収集し、そのメールアドレスに繰り返し案内するようにすべきだとある。

またブログのアクセスアップ方法として、トラックバック、Pingを送る、他のブログへコメントを書き込む、相互リンクをする、ランキングに登録する、SEO対策をするなどが示されている。これらはそこまで詳しくは書かれていないので、他のSEO対策本などを見たほうが良いと思う。

5章では一番稼げるのは情報ビジネスであるとある。グルメなど売れそうな情報を扱い、競合が強すぎないジャンルを選び、セールスレターを効果的に書いて売るべきとある。これで著者は始めてから一年で4000万円売り上げたようだ。

6章では儲けられるようになってからは確定申告をしっかりすべきといったことや、事業化して会社を作って節税対策をすべきといったことが示されている。

どれも儲けるための基本的なことが書いてあると思う。ネット環境でのマーケティングの本として読めば面白いと思う。どの方法にも共通することは、売れそうな商材を選択し、それらを効果的に加工、宣伝し、時間と空間の制約のないネット上で多くの人に知ってもらい、多く売るということのようだ。

著者のように副業が本業になった場合、組織に属して消耗しながら働くということから脱却できそうだ。自分も病気持ちの身としては、将来的にはこのような生活がしたいと思う。それはそうと、このような収入を得る方法が出現してきたことで、働く意味や意義、そして人生の目的なども見直しが必要になるのだと思う。

現在、自分はこの書評ブログでアフィリエイトをやっているが、なかなか儲からない。なによりも著者が示すようなアクセス数アップ対策をしているが、まだ2桁アクセスしかないし、何万円も儲けるのは夢のように思えてくる。他に収入源の確保を考えるなら、自分は本のせどりなどが向いているかもしれないと思った。あとメルマガとかも興味がわいてきたな。

どこまで儲けられるか分からないけど、会社では働く以外の新たな収入確保の道を示す本として読んでみる価値はあるのではないかと思った。

読むべき人:
  • 楽して儲けたい人
  • 働きたくない人
  • ネオニートになりたい人
Amazon.co.jpで『アフィリエイト』の他の書籍を見る


June 05, 2007

会社を辞めるのは怖くない


会社を辞めるのは怖くない

キーワード:
 江上剛、早期退職、第二の人生、人脈、独立心
元銀行員で現在小説家による会社で働く以外の生き方を示した本。主に50、60代の会社員向けに書かれている。

書かれている内容は、会社で働くだけが人生ではなく、早期退職し、第二の人生として別の仕事につくこともありだと示している。まず最初の章では、著者の銀行員時代から退職に至る経緯が示されており、会社というものは社員を平気で放り出すものだと示している。だから会社に依存しすぎず、自分から辞めていく勇気も必要だとある。

2章では会社を辞めるときの心構えが示されている。まずは気持ちの整理をしなければならないということ。会社を辞めるということはよりどころをなくすということになり、不安が増大し、以前にいたポストのような仕事に再就職できる可能性が低いので覚悟が必要だと。

3章では早期退職にむけての具体的な準備が示されている。何よりもよりよい人脈を築いておくべきだとある。また会社名で再就職をするべきではないといったことや前の会社での仕事のやり方に固執すると失敗するといったことが示されている。また、何か事業を始める場合などはリスクをとることを恐れてはいけないとある。さらにそうなるために在職中に会社の外で十分通用するように自分を磨き、強くなっておくことが大切とある。

4章では、著者が小説家になったきっかけなどが示されている。さらに、退職後の妻との関係についてや時間や健康管理もしっかりやるべきだといったことが多い。

著者は日本の銀行という世界にいたため、典型的な年功序列的な日本企業に勤める会社員をターゲットにこの本を書いているのだと思う。そのため、どうも今の自分が読むのには適さない部分が多い。年齢的にもキャリア的にも。しかし、考え方や心構えは今の自分にも参考になる部分が多かった。例えば以下の部分。
 どこかで”会社は人生のすべてではない”との思いを持つこと。それは、今後、定年退職を迎える場合でも、早期退職をする場合でも、一番大事なことでしょう。会社の人生がすべてだと思うから、トップになっても出処進退を間違えてしまう。地位にしがみついておかないと、自分が何者であるかわからなくなってしまう。こんなに立派な地位に就いたのに、次の人生で惨めになるなんて考えたくもない、というわけでしょう。
 しかし、”何事にも終わりはある”のです。だから最初の人生で死期を迎えたら、”ヒョイと身軽に次の人生に乗り換えよう”そんな気持ちを持っておく必要があるのではないでしょうか。
(pp.45)
ここに共感できたのは、自分の現在おかれた状況により先が見えないことがあるから。自分は一応会社員だが、Up or Outのような側面があるところにいるし、何よりも健康状態があまりよろしくないので、辞めざるを得ない時が案外早いかもしれない。だからこのように考えておこうと思った。

また、会社を辞めて生きていくのに必要なことは以下の3つだとある。
  1. 自分の足で立つという気構え
  2. 人脈
  3. 家族の支え
何とかやっていくという独立心と、自分を支えてくれる友人、知人、家族がいてこそ第二の人生が成功する可能性が高いようだ。

この本を読んでいつ会社を辞めてもいいだけの心構えは身についたような気がする。

読むべき人:
  • 会社を辞めようかと思う人
  • 第二の人生を考えている人
  • 早めにキャリアを考えたい人
Amazon.co.jpで『江上剛』の他の本を見る


April 11, 2007

読書の腕前


読書の腕前

キーワード:
 岡崎武志、読書論、書評、読み方、カタログ
書評家による読書の醍醐味などが語られた本。以下のような章となっている。
  1. 本は積んで、破って、歩きながら読むもの
  2. ベストセラーは十年後、二十年後に読んだほうがおもしろい
  3. 年に3千冊増えていく本との闘い
  4. 私の「ブ」攻略法
  5. 旅もテレビの読書の栄養
  6. 国語の教科書はアンソロジー
  7. 蔵書のなかから「蔵出し」おすすめ本
最初の章では、本を読むことはどういうことかということが示されている。2章では、現在進行形でベストセラーになっているものは価値がないとみなし、10年後などに当時ベストセラーになったものを読むほうがより客観的に自分の視点で読むことができて面白いとある。

3章では書斎でのほんの管理についてや、古本屋で本を売るコツなどが示されている。4章の「ブ」というのは、「ブックオフ」のことで、このブックオフに自分だけの掘り出し物があるので、それを見つける楽しみなどが示されている。5章は、本を読むためだけに鈍行列車に乗るというのは贅沢でいいというような話。6章は著者の小学生ころからの読書体験など。7章は著者のお勧め本が紹介されている。

自分が線を引いた部分を以下に抜粋。
 本を読む時間がない、と言う人は多いが、ウソだね。その気になれば、ちょっとした時間のすき間を利用して、いくらでも読めるものなのである。たとえ、それが二分、三分といった細切れ時間であっても、合計すれば一日二十、三十分にはなるはずだ。一ページ一分かかるとしたって、毎日三十ページ近くは読める。土日に少し時間を稼げば、新書程度の分量なら一週間に一冊は読了できる。要は、ほんとうに本が読みたいかどうか、なのだ。
(pp.34)
最近仕事が忙しくなってきて、読めなくなってきていたので、ここがとても身にしみる・・・。本当に細切れ時間を利用しないことには読みこなせないなと実感してきた。

このような本を読む理由は、自分の読書遍歴が偏っていないかをチェックするため。他の人が何をどのように読んでいるかということがとても参考になる。また、自分の知らない世界を広げてくれるような気がする。たとえば、著者はどちらかといういうと文系的な本を多く読んでいるので、それらの紹介がとても参考になる。文学作品や詩、エッセイ、紀行文、自伝、古典、思想書など。普段自分が読まないようなものが多く紹介されていた。

読書の腕前を上げるには積読は欠かせないようだ。自分も最近積み上げてきているので、励みになる。

新書にしてはページ数が多く294ページもある。結構面白かった。読書好きなら共感できる部分が多いと思う。しかし、それは違うなと思う部分もないこともない。

読むべき人:
  • 読書が好きな人
  • 何を読めばよいかわからない人
  • 積読していることに自己嫌悪を感じる人
Amazon.co.jpで『岡崎武志』の他の書籍を見る


March 10, 2007

親より稼ぐネオニート


親より稼ぐネオニート―「脱・雇用」時代の若者たち

キーワード:
 今一生、ネオニート、不労所得、アフィリエイト、労働観
雑誌『SPA!』の記事を基に不労所得を得ながら生きるネオニートの実態を示している本。結構共感を得る部分が多かった。

最初のほうでは、若者の就業状況について解説されている。正社員として働きたくても働けず、フリーターやもしくはまったく働かず家で引きこもるニートになる人が多いという現状がある。しかしその一方、ニートであるような状況でありながら、株やネットのアフィリエイト、古本のせどりで月収100万円まで稼ぎ出すニートを超えたニート、ネオニートと呼ばれる人たちがいると示されている。

2章ではアフィリエイトをしながら南の島で暮らす女性が示されている。そこで特になるほどと思ったのは、アフィリエイトでどのように儲けているのかといったことだった。ここは単なる社会学的なレポートではなく、実用的な部分だった。それによると、単純にアクセス数を伸ばし、訪問者の欲しいものを広告に載せることであるとある。また、数ヶ月では利益が出ることはないので、少なくとも半年は継続しなければならないようだ。アフィリエイトを副業の傍らやるのではなく、本業として取り組むと月収20万円はいくとのことだ。なるほどなと思った。

後半は、現代社会を生きるための労働観のようなものが解説されている。曰く、何も会社員として安定した収入を得る生活だけが生き方ではなく、自由に自営業者として生きていくこともできるんだし、ニートやフリーターのままで正社員になることができない人たちは、絶望する必要はないということだった。自営業などで収入を得ていくことで自分なりに動労観が形成されていき、楽しく働いていける道もあるのだと示されている。

最後のほうでは、『下流社会』を書いた著者やエコノミストと本書の著者との座談会が載っている。ネオニートとして多くの所得を得て、そこから税金を多く納めることで国にも貢献できるはずなので、国はネオニートを支援するのもありなのではないかといった内容。

ネオニートという生き方もあるんだなと思った。自分は今正社員として働いているけど、いつ働けなくなるかわからないような状態にあるから、そうなったらこのブログのようにアフィリエイトやネットビジネスを立ち上げて自営業として生きていくこともできるのではないかと思った。しかし、著者も指摘しているように、まず些細なことから行動しなければだめだとあり、全ての人がこの本の人のように成功するとは思えない。それなりに運とかもともともの嗜好性や能力もあって高収入を得られるネオニートという存在になれるのだと思う。

今の若者の労働観などもわかって結構面白かった。また、アフィリエイトをやっている身としては、結構参考になる部分が多かった。

読むべき人:
  • 正社員になれない人
  • 自由に生きたい人
  • 労働に疑問を持つ人
Amazon.co.jpで『今 一生』の他の本を見る


February 14, 2007

作家の読書道


作家の読書道

キーワード:
 WEB本の雑誌、作家、読書遍歴、オムニバス、インタビュー
WEB本の雑誌というホームページの『作家の読書道』というインタビュー記事が書籍になったもの。さまざまな小説家にどのような本を読んできたのかといったことを質問している。基本的に、本の内容は全てホームページで見れる。以下に気になった作家を列挙。
  • 綿矢りさ
  • 石田衣良
  • 北方謙三
  • 長嶋有
  • 垣根涼介
  • 村山由佳
インタビューでは、小説の書き方やどんな本を読んできたのか、またよく行く本屋はどこかといった内容。それらのどれもがなるほどなぁと思うような回答が多い。登場する作家はミステリ、純文学、歴史、エンタメなどいろいろ得意ジャンルがあるが、読んできた本が全然違ったりしているんだなと思った。また、読んできたような本を書いているという印象が強かった。ミステリ好きな人はアガサクリスティなどのミステリものばかり読んできたとかあった。

やはり小説家になる人はみな例外なく小学生ごろから無意識のうちにかなりの量の作品を読んできているんだと思った。いつまでに何を読んでいたのかが分かって面白かった。また、各作家が影響受けた作品なども紹介されているのでそこもとても参考になる。

このようなインタビュー記事はその人の人生までわかって面白いなと思った。本屋の片隅にあったのをなんとなく手にとって見て買った。掘り出し物のような気がした。また、ホームページ上にあるこの書籍に載っていない作家のインタビューもチェックしようと思った。

読むべき人:
  • 作家が何を考えているか知りたい人
  • 小説が好きな人
  • 読みたい小説を探している人



January 23, 2007

なぜ勉強するのか?


なぜ勉強するのか?

キーワード:
 鈴木光司、勉強、意味、教育、リテラシー、貢献
『リング』、『らせん』などの著作のある小説家である著者が、勉強の意味を対話形式で語っている本。以下のような内容となっている。
  1. すべてに通じる理解力、想像力、表現力
  2. 明確に、論理的に、分析的に
  3. 正しい学習法
  4. 世界に通用する論理
  5. 未来をよりよくするために勉強する
はじめの章では、何のために勉強するのかとという問いに対しては、理解力、想像力、表現力を向上させて、リテラシー能力を身につけるためだとある。そのため、直接的に学校で学ぶ知識は忘れてもよいという主張である。また、勉強の成果が表れるのは成人になってからであり、社会に出てから勉強してきたことは必ず役に立つとある。役に立つ理由として、しっかりした判断ができる人間になることで、社会をよりよい方向に導くことができるとある。

単純に著者の大学自体の勉強経験や自分の子供に勉強の意味を説いてきた経験だけでなく、宇宙の始まりや生命の仕組み、脳死に対して取るべき態度、戦時中の特攻とイスラム原理主義の自爆テロの比較などあらゆる事象に対して著者の見解が示されている。これらはどれも、しっかり考えて自分なりの判断ができなければ、周囲の雰囲気に流されていくだけだとある。そのためにも、理論を身につけるべきだとある。

主張されていることはどれも納得できることばかりだ。しかし、それは現在社会に出てそれなりに世の中を知った立場であるからそう思えるが、特に中学校時代の自分にとってはこの主張がどこまで納得のいくものかは微妙だと思う。自分の経験からしてみれば、勉強は激しくつまらなかった。何のために勉強するのかと本当に疑問に思っていた。他にも楽しいことがあるのになぜこんなことに時間を費やさなければならないのかと思っていた。確かにマクロ的な視点から見れば、社会貢献という動機があるかもしれない。でも、本質的なことを言えば、勉強などは楽しいからやるもんであって、強いられてやるものではないと思う。かといって、本当に楽しんで勉強する人間なんて、きっと一握りだろう。他の大多数の人間は楽しいと思ってやっていない。だから、誰かがこのようなマクロ的な意味を示して愚民に陥らないようにする必要があるのだと思う。

勉強の高尚な理由はそれなりに納得できるが、現在の自分にとってなぜ勉強するのかと問われると、金持ちになるためということだろう。もちろんそれだけではなく、教養を高めて知ることを楽しんでいるという側面もあるが。

幅広い分野の例を挙げて説明されている。また、さまざまな質問に答えるという形式をとっているので読みやすい。

読むべき人:
  • 勉強する意味が分からない人
  • 教育期の子供を持つ親
  • 小説家の考えに興味がある人
Amazon.co.jpで『鈴木光司』の他の本を見る


November 26, 2006

「書ける人」になるブログ文章教室


「書ける人」になるブログ文章教室

キーワード:
 山川健一、ブログ、文章、書き方、小説、なぜ書くのか?
小説家によるブログにおける文章読本。以下のような内容となっている。
  1. 「タダの日記」ではいけないのか?
  2. 記事、論文、コラム、エッセイ、小説
  3. あなたのブログがつづかない三つの理由
  4. なぜ書くべきか、何を書くべきか
  5. 読みやすく魅力的な文章とは何か―文体をめぐって
  6. ブログ文学の誕生
  7. ブログを書籍化する
  8. 小説を書くためには
なぜ人は文書を書くのかといったことを本質的なテーマに捉え、ブログでの文章作法が示唆されている。けっこう線を引く部分が多かった。どの章も重要だが、普通の文章読本と違って、ブログをテーマにしているのでブログに関する部分を主に取り上げてみる。

ブログは、気軽に書ける半面、テーマを絞ることが重要だと示されている。そのときに自分の得意分野は何かということを考え、例えば映画なら映画論を書いていけば読者に喜ばれるとある。自分の場合だと、このブログのように読書ブログということになる。

3章では、ブログで気をつけなければいけないことが示されている。例えば、炎上を防ぐ方法。以下に示されていることを引用する。
  • 誤解を与えそうな表現を避け、可能な限り正確な文章を書く。
  • 自分が書いた文章によって誰かを傷つけることがないかどうかを考える。
    (pp.75)
正直、ブログのようにネット上で文章を書くということはいろいろな人の目にとまる可能性があり、コメントを受け付けている場合は、いろいろなことを書かれる可能性がある。そのため、これは自分自身かなり気をつけなければいけないと思った。

また、アクセス数を伸ばすためには、本音を書く必要があると示されていて、それもなるほどと思った。

文書を書くことはどういうことかといったことが示されている部分がある。以下その部分を引用。
 文章を書くという行為は、「自分はどんな人間なのだろう」ということを不断に問いつづけることなのではないだろうか。それを問いつづけることの延長線上に、自分は誰に何を伝えたいのか、ということがぼんやりとながら見えてくるにちがいない。
 それこそがテーマであり、想いであり、あなたが書きたいことなのである。
(pp.101)
この部分がこの本で一番なるほどと思った部分だった。自分自身この書評ブログ以外に日記のような記録ブログを持っているが、過去の書き込みを振り返ってみると、そのとき自分はどのように考えていたのかがよく分かって、結果的に自分自身がよく分かる気がする。

また、ブログを書籍化することも可能になるが、その場合は書き手自身が編集者にならなければならないといったことが示されている。

最後には小説家らしく小説の書き方が示されている。ここは別にブログに限った話ではなかった。

結構いろいろな引用が多い。ブログは日記形式がほとんどで、それは日本に古くからある習慣だということを示すために平安時代の枕草子などを例に挙げたり、万葉集が出てきたり、エッセイの部分では谷崎純一郎がなども引用されている。また、ブログがテーマなので、既存のブログの文章も引用される。

一般的に小説家などの作家は、ブログなどネット上の素人の文章をあまり評価しないような傾向にある。しかし、この著者はむしろブログなどの表現形態を高く評価しており、自身もブログを書いているようだ。また、アメーバブックスでブログの書籍化の編集も行っているようだ。そういう部分も結構参考になった。

ただ、文章を書くということをテーマにいろいろなことが網羅されている反面、一つ一つの項目がそこまで深掘りされていないような気がする。どうも主題から外れてあっちへいったりこっちへいったりし、具体的なことがあまり示されていない。

小説家らしい観点からブログの書き方が示されていて、新鮮だった。結構良書だと思う。

読むべき人:
  • ブログの書き方が分からない人
  • 文章がうまくなりたい人
  • 編集関係の仕事をしている人
Amazon.co.jpで『山川健一』の他の本を見る


September 17, 2006

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来


若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来

キーワード:
 城繁幸、年功序列、閉塞感、格差論、レール、リヴァイアサン
年功序列批判本。年功序列による大きな損失、また働き甲斐の喪失などが問題だと述べられている。具体的には以下のような内容となっている。
  1. 若者はなぜ3年で辞めるのか?
  2. やる気を失った30代社員たち
  3. 若者にツケを回す国
  4. 年功序列の光と影
  5. 日本人はなぜ年功序列を好むのか?
  6. 「働く理由」を取り戻す
年功序列がなぜさまざまな問題を含んでいるとかということを内容に沿って簡単に説明すると、年功序列は年齢や勤続年数に応じた報酬体系となっている。しかし、不況下の業績悪化では、ポストがない割りに年功者にはそれなりの金額を払わなければならない。そのときに、若手の賃金削減などでしわ寄せが起こり、さらに派遣などで人件費を抑制している。そのため若手には雇用の機会がなくなり、使い捨ての存在に成り下がり、組織内では技術の継承が困難になっていく。また、そのような組織で正社員になったとしても、権限が与えられて本当にやりたい仕事が出来るのは、順調に出世したとしても入社後20年先の話。むしろ、ほとんどの人間が昇進していけないという制度。そのため同じような作業を何十年も行っていくようなことになる。そして気づいたときには、昇進も出来ない、やりがいのない仕事をずっと続けるしかない・・・・。

著者が年功序列を端的に示している部分がある。その部分を以下に抜粋。
 それは、企業内に年功序列というレールを敷き、安定性と引き換えに、労働者に世界一過酷な労働を強いている。そのレールから降りることを許さず、一度レールから外れた人間はなかなか引き上げようとはしない。
 それは、自分に適した人材を育成するための教育システムを作り上げてきた。小学校から始まるレールのなかで、試験によってのみ選抜されるうち、人はレールの上を走ることだけを刷り込まれ、いつしか自分の足で歩くことを忘れ果てる。最後は果物のように選別され、ランクごとに企業という列車に乗り込み、あとは定年まで走りつづける。
(pp.184-185)
このように年功序列をものすごく悪いことのように主張している。また、既得権益を保守しようとする年配者に挑戦的な内容となっている。この年功序列が少子高齢化の原因にもなっていると主張されている。

この本を読むと、年功序列がいかにダメがということが分かる。しかし、自分はまだ就職して間もないし、しかも年功序列的な組織にいるわけではない。そのため、この内容がどこまで真実味を帯びているかは実感できない。それでも、かなり説得力はあるように感じる。

最終的には、年功序列というレールから外れるということは、自分で道を決める自由を獲得することであると主張されている。そのためには、なぜ働くのかということを考え、自分でキャリアを構築していくことが重要とある。確かにそのとおりだと思う。しかし、一体どれだけの人が、年功序列神話から脱却できるのだろうか?と思った。

この本を読むと、いかに若い世代が割を食うかということがわかった。かなり損なことが多い。負の遺産を自分たちの世代に押し付けられているような気がしてくる。また、年功序列的な組織で働くことなどばかげてくるような気がした。

これから就職する人や、自分と同じような世代の人こそこの本を読んで現状を認識するべきだと思った。

こう言っては何だけど、自分は年功序列的な組織に従属していなくてよかったと思った。自分で自分のキャリアを形成していきたいと望んだアウトサイダーということになる。それだけに厳しい側面もそれなりにあるが。それでも、エキサイティングな世界だとも思う。

自分は、囲われた羊ではなく、荒野の狼になりたい。

読むべき人:
  • 出世の先が見えてしまった人
  • やりがいのない仕事をしていると感じている人
  • これから就職しようとする人
Amazon.co.jpで『城繁幸』の他の本を見る


June 17, 2006

英語より日本語を学べ


英語より日本語を学べ―焦眉の急は国語教育の再生だ

キーワード:
 竹村 健一、齋藤 孝、英語教育、国語、教育論、対談
竹村健一氏と齋藤孝教授の対談本。以下のような内容となっている。
  1. 日本は「読書立国」をめざせ
  2. いま、教育の何が問題なのか
  3. 日本語が豊かな文化を生み出す
  4. 東洋的身体技法を現代に生かす
  5. 文脈でコミュニケーション力を磨け
  6. 一瞬のひらめきを大切にしよう
主に日本の教育問題に関して話題が繰り広げられている。

自分自身教育問題に関心があったので、勉強になった。なによりも、現状の教育問題に関してこうすればいいんじゃないかということが的確に書いてあり、その通りだと思った。

特に、教員の質に関する部分。齋藤教授が語っている部分で、先生の役割は触発と習熟であるという主張。触発というのは、生徒が先生のやっていることに興味を持って自分もやってみようと思わせることで、習熟というのは、生徒が何か技術を学ぶことができるということ。これが先生には重要だということ。自分自身の経験から、おもしろくない授業をやっている教員は価値がないと思っていたし、そういう科目は学ぶ意欲が全くわかない。

また、質の悪い教員はもっとリストラされるようにすべきだといった主張もなるほどと思った。

英語教育の是非に関しては、『国家の品格』の藤原正彦教授の国語教育優先の主張と同じようなことが主張されている。齋藤教授と藤原教授は確か、何かの雑誌で同じようなことを対談していたし、竹村健一氏も国語力が重要だと主張している。また、竹村健一氏は、英語を学べば経済は発展するか、英語は全ての国民に必要かということをよく考える必要があるとあった。

自分自身、英語早期教育はあんまり必要ない気もする。それより、竹村健一氏が、英語を身に付けたければ、英語で仕事をする、何かを勉強するというはっきりした展望や具体的計画をもってやったほうがいいと主張する部分に賛同である。

個人的には、齋藤教授の提案している呼吸方法などおもしろいと思った。溜めが重要で、それをスポーツや教育に応用すればいいといった主張で、自分も試してみようかなと思った。

対談本なので、わかりやすい内容となっている。また、固有名詞や専門用語には脚注に説明が載っている。

齋藤教授の本を何冊も読んでいれば、特に真新しいことが書いてあるわけではないが、教育論などが参考になった。

読むべき人:
  • 日本の教育問題に関心がある人
  • 齋藤教授の本が好きな人
  • 対談本が好きな人
Amazon.co.jpで『齋藤孝』の他の本を見る


June 10, 2006

青春漂流


青春漂流

キーワード:
 立花隆、インタビュー記、青春、落ちこぼれ、人生論、謎の空白時代
博覧強記の評論家、立花隆氏がさまざまな一流の特殊な職業の人々にインタビューし、どのように人生を送っていたのかが書かれた本。

最初に青春とは何かということが書かれている。
迷いと惑いが青春の特徴であり特権でもある。それだけに、恥も多く、失敗も多い。恥なしの青春、失敗なしの青春など、青春の名に値しない。自分に忠実に、しかも大胆に生きようと思うほど、恥も失敗もより多くなるのが通例である。
(pp.8)
そして、このような青春を送っている男たちにインタビューをし、どのように生きてきたのか、また迷ってきたのかということを語らせ、まとめたものらしい。

インタビュー対象の男たちは次の11人である。
  • 稲本 裕(オーク・ヴィレッジ塗師 32歳)
  • 古川四郎(手づくりナイフ職人 33歳)
  • 村崎太郎(猿まわし調教師 22歳)
  • 森安常義(精肉職人 33歳)
  • 宮崎 学(動物カメラマン 34歳)
  • 長沢義明(フレーム・ビルダー 36歳)
  • 松原英俊(鷹匠 33歳)
  • 田崎真也(ソムリエ 25歳)
  • 斉須政雄(コック 34歳)
  • 冨田 潤(染織家 34歳)
  • 吉野金次(レコーディング・ミキサー 36歳)
この本は約20年前の出版となっていて、各人の年齢はその当時のもの。また、フレーム・ビルダーというのは、競輪用の自転車職人のこと。

この11人全てに共通する人生の物語構造というようなものがある。
  1. 高校、大学を中退する
  2. とりあえず、何かの仕事につく
  3. その仕事で下積みする
  4. 仕事を変えてみたりする
  5. あるとき、今の仕事を極めてみたいと思う
  6. 必死で努力をする
  7. 海外に留学したりどこかに弟子入りし、その道の勉強をする
  8. 時間はかかったが、その道のプロフェッショナルとして高い評価を受けている
だいたいみなこのような構造を持っている。

みな、最初はおちこぼれで、それでも好きなことには人一倍努力をしていて、貧乏で失敗も多く不安だけど、なんとか生きてこれて、最終的には一流になっているという話。

それぞれの職人の専門的なことが垣間見れてとても面白い。例えばソムリエの田崎氏は、ワインの勉強のためにフランス語も分からないがとりあえず行ってみて、ワイン畑を歩き回ったりしたとか、動物カメラマンの宮崎氏は、タカなどの巣の写真を撮るために絶壁にぶら下がって何時間も待っていたりなど、その道を極めるために何を行っていたのかということも分かる。

みんな今は一流だけど、それまでにはかなり苦労しているんだなということが分かった。それと同時に、大学卒業後、会社員になるというような大多数の人がたどるような道とは全然違う生き方もあるんだなということが分かって面白かった。なんだか、そんなに人生を気負わなくても何とかなるんじゃないかということを感じた。

また、立花隆氏のこのようなインタビュー本として、『二十歳のころ〈1〉1937‐1958―立花ゼミ『調べて書く』共同製作』がある。これは、オウム真理教信者からノーベル賞作家まで幅広くインタビューし、その人たちが20前後のころにどう生きていたのかということがまとめられたもの。たぶん、『青春漂流』が少し影響していると思う。その証拠に、『青春漂流』のあとがきに書いてある空海の「謎の空白時代」が『二十歳のころ』のはじめにの部分に載っているから。

『二十歳のころ』の文庫版は元モーニング娘。のメンバーのインタビューも載っている。こちらもお勧め。

他の人がどのように生きていたのかということを知るのはとても面白い。自分自身、人生を計画的に生きようとしすぎているので、何もそんなに気負わなくてもいいんじゃないかと思い、気が楽になったような気がした。よい本だった。

アマゾンで評価を見てみたら、20レビュー中18が満点で2つが星4つの高評価だった。もちろん、自分も満点でお勧めする本。

あとぐぐったらこんな特集があった。
第71回 ソムリエ田崎真也さんらと語った『青春漂流』その後の20年 - 立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」

読むべき人:
  • 青春って何だ?と思う人
  • ありふれた人生とは違った人生を送りたいと思う人
  • どう生きていけばよいか不安でたまらない人