歴史物

January 05, 2014

人生の短さについて

キーワード:
 セネカ、人生、幸福、平静、時間
セネカによる人生論哲学。以下のような目次となっている。
  1. 人生の短さについて
  2. 心の平静について
  3. 幸福な人生について
  4. 訳注
  5. 解説
(目次から抜粋)
もうすぐ30歳を迎えるので、積読状態であった本書を読んだ。正確には5年前くらいに少し読んでいたのだけど、結局最後まで読まずに放置していたので、良い機会だから再読した。本記事では主に、なるほどねと思った部分を引用しておく。読んだのは、茂手木元蔵訳のほう。

人生の短さについて』から以下の部分。
諸君は永久に生きられるかのように生きている。諸君の弱さが諸君の念頭に浮かぶことは決してない。すでにどれほどの時間が過ぎ去っているかに諸君は注意しない。充ち溢れる湯水でも使うように諸君は時間を浪費している。
(中略)
では、おたずねしたいが、君は長生きするという保証でも得ているのか。君の計画どおりに事が運ぶのを一体誰が許してくれるのか。人生の残り物を自分自身に残しておき、何ごとにも振り向けられない時間だけを良き魂のために当てることを、恥ずかしいとは思わないか。生きることを止める土壇場になって、生きることを始めるのでは、時すでに遅し、ではないか。有益な計画を五十・六十歳までも延ばしておいて、僅かな者しか行けなかった年齢から始めて人生に取りかかろうとするのは、何と人間の可死性を忘れた愚劣なことではないか。
(pp.15-16)
いつ死ぬか分からないからね。やりたいことがあるならやっておかないとね、と思った。無駄な時間を過ごさない、とまでは言えないけど、それでもやりたいことを少しずつ実現していってもよい時期なんじゃないのかなと思った次第。

次は、『心の平静について』から仕事に関する部分。
 次には、今から始めようとする仕事そのものの内容を正しく検討するべきである。そしてわれわれの力量と、今企てようとしている仕事とを比較検討するべきである。行為者の力量のほうが、仕事内容を常に上回らねばならぬからである。運搬人の力に余る重荷が当人を圧しつぶすことは必定である。そのうえ、或る仕事は重大なものというよりは、むしろ多産ともいうべきもので、それからそれへと沢山の仕事を生み出す。このような、新しい雑多な用務を生ずる仕事は避けねばならない。また、自由には引き下がれないような仕事にも近づいてはならない。着手してよい仕事は、完成できる見込みがあるか、あるいは少なくとも完成を期待することができる仕事であって、本来の活動以上に広範囲に進む仕事や、留めようと思ったところで、留まらない仕事も放棄しなければならない。
(pp.83-84)
この時代の仕事は、運搬人というように肉体労働のことであるけれど、これは現代のデスクワーク的な仕事にも当てはまることではないかと思った。つまり、無謀なデスマーチは全力で避けろ!!と僕には解釈できたww

いわゆるストレッチジョブと言って、求められる能力が自分の能力以上のプロジェクトで修行してレベル上げするという考えもありだけど、それは程度問題であって、潰れてしまってはダメだしね。まぁ、もともと持病もあるので、今年から特に健康第一で行こうと思った。会社員だとどうしても、仕事は選べないことのほうが多いけど、それでも『ガンガンいこうぜ』ではなく、『いのちをだいじに』で。

岩波文庫はフォントが小さくて読みずらいという部分があるけど、この訳は割と読みやすかった。どこぞの皇帝や哲学者がこう言っているとかいろいろと例を挙げているけど、そこは適当に飛ばして、気になる部分だけを重点的に読めばいいかもしれない。

今年の1冊目はこの本からスタートとなる。年末の記事で示したように、なるべく技術書メインで読み込んでいく予定。そのため、更新頻度が落ちるかもだけど、なんとか2週間に1回のペースで更新はしていきたいなと。想定冊数は、技術書が10〜15冊、小説が10冊前後、その他が10冊前後という配分になるかな。

また、一記事当たりの分量を少し減らすかも。気合が入っていたり、スゴ本の場合は大体3,000字程度の記事になるけど、今年はあまり記事更新に時間をかけすぎないようにしようかと。

ということで、2014年もよろしくお願いします。




読むべき人:
  • 自分の人生について考えたい人
  • 幸福について考えたい人
  • 何かやりたいことがあるけど保留にしている人
Amazon.co.jpで『セネカ』の他の本を見る

bana1 時間クリック☆  にほんブログ村 本ブログへ



September 19, 2009

William Shakespeare

William Shakespeare: (700 Headwords) (Oxford Bookworms Library, True Stories; Stage 2)
William Shakespeare: (700 Headwords) (Oxford Bookworms Library, True Stories; Stage 2)

キーワード:
 シェイクスピア、演劇、自伝、歴史、英国
初ペーパーバック。あらすじをカバーの裏から抜粋。
William Shakespeare. Born April 1564, at Stratford-upon-Avon. Died April 1616. Married Anne Hathaway: two daughters, one son. Actor, poet, famous playwright. Wrote nearly forty plays.

But what was he like as a man? What did he think about when he rode into London for the first time… or when he was writing his plays Hamlet and Romeo and Juliet …or when his only son died?

We know the facts of his life, but we can only guess at his hopes, his fears, his dreams.
(カバーの裏から抜粋)
TOEICのリーディング対策のために読んでみた。オックスフォードのペーパーバック。STAGE 2なので、700語レベル。知らない単語は3,4個程度で、読めないことはない。

物語というよりも、シェイクスピアの自伝的な内容となっている。といっても、シェイクスピア自ら書いているという設定ではなく、Tobyというシェイクスピアと同時代を生きた友人、という架空の人物が物語っている。そのTobyが83歳のとき、1579年のStratfordでシェイクスピアと初めて出会った時を回想するところから始まる。

シェイクスピアは、18歳のときに、26歳のAnne Hathaway(某ハリウッド女優と同名!!)と結婚して、双子が生まれたり、ロミオとジュリエットの演劇では、ジュリエットの父、キャプレットを自分で演じたり、息子と死別したりといろいろ示されていた。また、当時は疫病が蔓延して、何人も死んだとか、劇場が火事で燃えたとかも示されていた。

この本によれば、シェイクスピアは1616年、4月23日、52歳のときに、風邪をこじらせて死んだとある。

当時のイギリスの様子やシェイクスピアの人間関係、劇団とエリザベス女王などの関係も示されていて、なかなかおもしろかった。ただ、電車の中で細切れで時間をかけて読んでしまったので、なかなか全体像が頭に入っていない。もっと一気に読むべきだったと思う。

ペーバーバックを読んでいると、高校生ときの英語の副読本を思い出す。夏休みの宿題で、必死に「ハムレット」とか「ロミオとジュリエット」を翻訳家になった気分で1文ずつ訳していたのを懐かしく思う。思えば、そこからシェイクスピアに関心が出てきたのかもしれない。

シェイクスピアの概要は、やはりWikipediaが参考になる。また、過去に取り上げた作品は以下になる。さらに、映画で楽しむなら以下の2作品かね。

ロミオ&ジュリエット(特別編) [DVD]ロミオ&ジュリエット(特別編) [DVD]
出演:レオナルド・ディカプリオ
販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日:2009-02-13
おすすめ度:5.0

恋に落ちたシェイクスピア コレクターズ・エディション [DVD]恋に落ちたシェイクスピア コレクターズ・エディション [DVD]
出演:グウィネス・パルトロウ
販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
発売日:2003-11-21
おすすめ度:4.5

この本のWord Countは9,135だった。STAGE 2レベルは、60ページくらいなので、簡単な英文を速く読む訓練になる。このレベルをもっと多読しようと思う。

人生の100のリストに、シェイクスピアを英語で議論するとか書いてしまった以上、もっと読まなければね。



William Shakespeare: (700 Headwords) (Oxford Bookworms Library, True Stories; Stage 2)
William Shakespeare: (700 Headwords) (Oxford Bookworms Library, True Stories; Stage 2)
著者:Jennifer Bassett
販売元:Oxford Univ Pr (Sd)
発売日:2007-12-31
おすすめ度:4.5

読むべき人:
  • シェイクスピアに関心がある人
  • 徳川幕府時代の英国の様子を知りたい人
  • ロミオとジュリエットが好きな人
Amzon.co.jpで『シェイクスピア』関連の他の本を見る

bana1 ペーパーバック多読クリック☆  にほんブログ村 本ブログへ


June 27, 2008

「独りバー」はこわくない


「独りバー」はこわくない―カウンター初心者用バイブル

キーワード:
 根津清、酒、バー、歴史、文化
ジャーナリストによる世界の酒のエピソードが示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 第一夜 今宵は定番スコッチで楽しみたい
    1. 1杯目 「カティサーク」―これを飲んで順風満帆といきましょう
    2. 2杯目 「ジョニー・ウォーカー」―世界一有名な酒って本当?
    3. 3杯目 「オールド・パー」―これを飲めば、長寿間違いなし
    4. 4杯目 「ザ・フェイマス・グラウス」―どうして雷鳥なんだろう
  2. 第ニ夜 気分を変えてスピリッツはいかが
    1. 5杯目 「ビーフィーター」―最初は腎臓の薬でした
    2. 6杯目 「キャプテン・モルガン」―カリブの海賊の大好物
    3. 7杯目 「スミノフ」―アメリカの恐妻家が世界の酒にした?
    4. 8杯目 「マーテル」―コニャックこそ、蒸留酒の女王様
  3. 第三夜 華やかなリキュールの世界へ
    1. 9杯目 「リカール」―水割りにしたらミルクみたいに・・・・
    2. 10杯目 「カンパリ」―紅色の甘い顔した苦いヤツ
    3. 11杯目 「ベネディクティン」―坊さんたちが酒造りに励んでいたとは!
    4. 12杯目 「ドランブイ」―王子と島娘の情が生んだ酒
    5. 13杯目 「カルーア」―コーヒーも酒も一緒に楽しめる
  4. 第四夜 ワインの仲間たちを味わおう
    1. 14杯目 「チンザノ」―色気さえ感じる親しみやすさ
    2. 15杯目 「ティオ・ペペ」―世界で愛されるペペおじさん
    3. 16杯目 「サンデマン」―パイオニアの誇りと自信
    4. 17杯目 「ドン ペリニヨン」―泡を食うほどうまかった
  5. 第五夜 最後の夜は、各国自慢のウィスキーを
    1. 18杯目 「プッシュミルズ」―北アイルランドの歴史に思いを馳せて
    2. 19杯目 「ワイルド・ターキー」―アメリカ大統領の七光り
    3. 20杯目 「山崎」―日本のウィスキー、復活なるか
    4. 21杯目 「ザ・マッカラン」―ぶれない信念と貫禄
    5. 22杯目 「ボウモア」―カモメのように飛び立とう
(目次から抜粋)
目次が長すぎ・・・。本当にもう、出版社の怠慢によって、全部タイピング・・・。入れ子構造だからさらにマンドクセ。おかげで書評意欲が半減・・・・。やはり、小飼弾氏も言うように、目次は全部必須だよ。省略するなー!!

気を取り直して書評。

この本は、タイトルにあるように、バーの初心者が独りでもバー通いができるようになるためのテクニックが書いてある・・・・というわけではなく、世界の酒の歴史やエピソードが多く示されている。この本も明らかにタイトルと内容が乖離している。バーの話はどっちかというとおまけに過ぎない。バーの歴史やバーでの飲み方などが書いてあるということを期待してはいけない。バーの話は、コラムで以下のように示されているだけだ。
  1. 手始めはホテルのバーで
  2. 注文する時の注意
  3. 飲みたい酒の伝え方
  4. 値段の心配
  5. バーで役立つ試し飲み
  6. いいバーの条件とは
  7. 酒も喜ぶグラス選び
  8. バーデンダーになるには
  9. 本場のバーと比べると
  10. ロンドンおすすめのパブ
これらが1項目1ページのみの分量となっている。

ホテルのバーは、それほど高くはないらしい。普通のバーと大差ないようだ。また、いいバーの条件は、著者によれば「あそこにいけば何かいいことがある」と思えるバーらしい。

バーの話はもういいや。

それより、せっかく目次を打ち込んだ酒の話を取り上げよう。むしろこの酒の話がこの本では主題になるのだし。ポイントを絞って簡単に列挙。
  • ジョニー・ウォーカーは1820年、スコットランドのエア州キルマーノックで酒も扱う小さな食料品店を開いた
  • オールド・パーは、1483年イングランドで生まれ、152年生きたいう記録が残っている男
  • ビーフィーターは、1660年のオランダのシルヴィウス医学教授が、アルコール液にネズの実を浸して蒸留し、腎臓薬(利尿剤)、解熱剤として薬局に販売したことから始まる
  • ワインを蒸留して最初にブランディーを造ったのは、スペイン生まれの医師兼錬金術師アルノ・ド・ヴィルヌーヴで、彼はこれを「アクア・ヴィテ」(生命の水)と呼んだ
  • カルーアは氏素性も生い立ちもはっきりしておらず、1930年代にメキシコで作られたといことぐらいしか分かっていない
  • 「チンザノ」はスティル・ワイン(普通のワイン)に薬草、香辛料、色素などを加えて造るアロマタイズド・ワイン(香味付けワイン)の中のヴェルモットというカテゴリーに属する
  • ドン ペリニヨンは、17世紀のドン・ペリニヨンという修道士がワイン造りとして造った
  • 世界五大ウィスキーは、スコッチ、アイリッシュ、バーボン、カナディアン、ジャパニーズ・ウィスキー
こんなところか。ほとんど世界史の話といってもいいくらい、酒はその当時の文化に根付いているのだなと言うことがよく分かった。著者も相当酒が好きなんだなということがよく分かる内容だった。あとがきにも楽しんで書けたとあった。

取り上げられている酒は、ほとんど飲んだことがないし、知らない酒ばかりだった。飲んだことがあるのは、カルーア、カンパリなど、度数が低めのカクテル系か。この本の読みかけのときに、チンザノを飲んでみたが、これは、フルーティでおいしかった。ワインベースもいいなと思った。

飲んだことのないのもで、自分が気になるのは、ビーフィーターかな。腎臓を病んでいる身としては、今度飲んでみたい。他にもジョニー・ウォーカー。ジョニー・ウォーカーといったら自分は村上春樹の小説の『海辺のカフカ』のカフカ君の父を思い浮かべる。あの恐怖のジョニ赤の・・・。

酒は奥が深いなと思った。バーめぐりとかもしたいなと思った。成功者を気取って高級ホテルのバーラウンジにでも行ってみようかな。

酒の薀蓄や歴史、文化を知りたい人にはお薦めの本。

読むべき人:
  • 独りでバーに行きたい人
  • 酒の薀蓄を語れるようになりたい人
  • 世界史が好きな人
Amazon.co.jpで『根津清』の他の本を見る

にほんブログ村 本ブログへ bana1 ランキングへ




June 24, 2008

貧乏するにも程がある


貧乏するにも程がある 芸術とお金の"不幸"な関係

キーワード:
 長山靖生、貧乏、小説家、負け組み、自分らしさ
歯科医であり、評論家でもある著者による、芸術と経済の関係が示されている本。以下のような目次となっている。
  1. 序章 「自分らしさ」は悪なのか
  2. 第1章 経済格差と「文化」の値打ち
  3. 第2章 「文化」は差別的である
  4. 第3章 芸術家の貧乏はロマンチックか
  5. 第4章 貧乏にも程がある
  6. 第5章 作家的貧乏・借金生活の覚悟について
  7. 第6章 作家では「食えない」のが本道
  8. 第7章 夏目漱石の経済戦略
  9. 第8章 交渉する作家たち
  10. 終章 マイナスがプラスになる世界
(目次から抜粋)
朝は速読で自己啓発本を。夜はこのような本をゆっくり読むのがいい。ということで、少し多めに内容を紹介するようにする。

少し内容が硬いので、ポイントを絞って列挙するということができないので、引用ベースで内容を示すことにする。かなり恣意的なものになるが。

まずは、この本は何が書いてあるかが示されている部分を序章から抜粋。
 私はこの本のなかで、「自分らしく生きる」ということが、どうしたら可能なのかを、さまざまな作家たちの生き方をとおして、追求してみたいと考えている。といっても、文化論や精神論を振りかざして、社会を糾弾するつもりはない。経済効率VS.文化的価値といった安易な構図を持ち出すことも控えたい。そうではなく、あくまで関心は、自分らしく生きたいと思う人間の経済状態にある。
 自分らしさを貫くあまりに、しばしば損をし、常々貧乏をしていた作家たちは数多い。それでも彼らは作家をやめなかったし、どうにか生き延びた。どうすればそれが可能なのか。彼らから低空飛行の経済戦略を学ぶのである。なかには、本当に破滅してしまった作家もいるが、それならそれで、破滅に至った経緯をつぶさに観察し、その回避法を学べばよい。
 そういう目で見ると、作家たちはけっこうしたたかに、さまざまな生き残り戦術を駆使して、社会と切り結んできたことが分かる。それはわれわれに、今後の自分の生き方や社会のあり方を考える上で、大きな示唆を与えてくれるだろう。
(pp.14)
この本に引用されている作家、小説家は主に以下のようになる。
  • 正宗白鳥
  • 夏目漱石
  • 石川啄木
  • 葛西善蔵
  • 内田百
  • 森鴎外
  • 芥川龍之介
  • 永井荷風
  • 二葉亭四迷
  • 田山花袋
その他、名前だけなら山ほど出てくる。ほとんどが、幕末から明治、大正、昭和の文豪や作家が取り上げられている。それらのみなが生活に困っているような人が多く、借金をし、そして借金を踏み倒すのが常識みたいな感じで、借金取りを感心させたりしていたとある。作家になるということは、不幸になるということと同義だったようだ。その中で、特に夏目漱石の戦略は意外だなと思った。朝日新聞に就職するにあたって、給料の交渉をしていたり、脱税をしようとしていたらしい。漱石も貧乏するほどではないが、金に困っていたりしたようだ。

以下、恣意的に自分が惹かれた部分を抜粋。
文学でも音楽でも美術でもいいのだが、何らかのジャンルで「自分らしい表現」を、仕事としてやっていくのであれば、芸術を経済的にも「仕事=報酬を得られる労働」として成立させ、なおかつ世間から「芸術は特別だ」とみなしてもらえるような「仕事=独創的な成果」として示すことが重要である。つまりもし芸術を仕事として選択しようとするなら、「芸術は特別だ」という感想は、前提ではなく結論として、自分ではなく他人に感じさせなければならない。そこにこそ、芸術の(そして、芸術家の)勝利があるのだし、「自分らしさ」が他人にとっても意味のあるものとなる契機が潜んでいるはずだ。
(pp.47)
何かを表現するようなもので食っていくためには、それを享受する人に特別なものとして示さなければならないようだ。なかなか難しいことだなと思った。

作家というものは、アウトローな存在で、文化資本の豊かさに基準を置いてないと示されている部分がある。
 そもそも世の人々の安寧の底に潜む何事かただならぬもの、恐るべき真実を暴き出そうというのが物書きだ(上手く暴ける作家は少ないが)。である以上は、実生活の幸福なんて願うべきではなく、出家遁世を超えて蟄居閉門、生まれてきてスミマセンの心構えでなければならないのだ(何だかこの辺り、書いていて、自分に言い聞かせているような気もするが、でもそうなのである)。
(pp.107)
だから作家は貧乏になってしまうようだ。

最後に一箇所。小説を読む理由について。
 われわれはこれまで、文学に取り込んできた人たちの、文学的営為ではなく、もっぱら下世話な生活面について眺めてきた。それはかなり情けなく、有名人であるという点を除けば、「負け組」に分類される体のものだった。
(中略)
 にもかかわらず、われわれはやはり小説を読むし、情けない人間像を描いた作家に、一種の畏れにも似た敬意を抱かずにはいられない。われわれは、自分もまたそういう人間の一人であることを、薄々は知っているからだ。知っているからこそ、自分の心の奥底を眺めるのをやめて、代わりに小説を読む。自分で英雄的冒険をする代わりに、冒険小説を読むのと同じように、自分自身の真実を見つめる代りに、小説の中の他人の真実を見つめるのである。
(pp.236)
これはなるほどなと思った。逆にとことん自分の内面を曝け出し、恥もかなぐり捨てて何かを書くことができる人が作家になるのだなと思った。もちろん貧乏になることを厭わずに。

とても興味深く読めた。いつの時代も作家というのは、一部の人気作家を除いてまともに生活していくのも困難なほど貧乏らしい。もちろん作家の借金癖とかもあるが、色々あるんだなと思った。また、文学作品を書くような人にはどのような特性が求められるのかといったことも示されていて、とても参考になった。

著者の文体は結構好きなほうだなと思った。どこか冷淡に作家を見つつも、同情心も含めているような文章。リズムがあっていい。けれど、一気には読み進められなかった。

作家とはどういう生活をしていたのかということを知りたい人には、面白い本だと思う。お薦め。

読むべき人:
  • 明治の文豪の作品が好きな人
  • 自分らしく生きたいと思っている人
  • 小説家になりたい人
Amazon.co.jpで『長山靖生』の他の本を見る

にほんブログ村 本ブログへ bana1 ランキングへ


September 09, 2007

努力論

努力論 (ちくま新書)
努力論 (ちくま新書)

キーワード:
 斎藤兆史、努力、精神論、偉人伝、修行
英語が専門の准教授による努力についての本。『しばらく日本人のなかで眠っていた勤勉の遺伝子を活性化し、発言させること』を目的として書かれている。立志編、精進編、三昧編、艱難編、成就編の5章立て。

努力がなぜ必要かといったことや努力の過程などが過去の偉人を例に挙げて語られている。線を引く部分がかなり多かったので少し引用を多めに書評。

まず何かを成し遂げるには意欲がなければならないとある。そして努力目標は高いほどよいとあり、「棒ほど願って針ほど叶う」ものだと示されている。だから大きな目標でなければ針ほど叶ったときの達成感が得られないようだ。

精進編では努力を続けるときの「型」について示されている。何か習得するときには学の語源である「まねび」を実践する必要があるようだ。それが型であり、型は長い時間をかけて結晶となった知恵の塊であるようだ。

努力をするためには時間を効率的に使い、毎日目的達成のために精進しなければならないとある。時間の価値という部分でなるほどと思った部分を恣意的に抜粋。
 時間だけは万人に平等に与えられている、というような言い方がなされることがある。たしかに時計や暦で計られる時間の長さは、誰にとっても同じかもしれない。だが、寿命の違いだけ見ても、かならずしも時間は平等に振り分けられていはいない。
 (中略)
 人の一生もまた、生物として生きた長さではなく、その人が天から与えられた時間の中でどれだけ価値のある仕事をしたかで計られるべきものだ。
 (中略)
 我々は、みな充実した人生を送りたいと願っている。そして、それができるかどうかは、どれだけ有効に時間を使えるかどうかにかかっている。まして、大きな目標を立てて精進しようとする人間にとっては、時間の使い方は成功への鍵だと言ってもいいだろう。まずは、時間を無駄遣いしない心掛けが大切である。
(pp.80-82)
これはもっともだと思った。最近いつも自分が考えていることがそのまま載っていたので、自分の考え方の裏づけになったと思う。そして、何も成し遂げられずに無為な100年を生きるよりも、偉業を成し遂げられ充実した50年を生きたほうが自分にとって価値がある。自分の寿命はまず平均寿命までいかないだろうという予感もあるので、時間があまりなく無性に焦る。

三昧編では、過去の一流の偉人は努力を努力として認識してやっているのではなく、すさまじい努力を日常的に埋没させてやっているので、努力の「苦労」を意識化していないようだ。そこまでやらなければ努力をしていることにはならないというような主張があり、厳しいなぁと思った。例えば、福沢諭吉の逸話で、諭吉はいつも日々の勉強の合間に机で寝ていたので枕が不要だったそうだ。あるとき病気になって布団で寝ようと思って枕を探したけど、なかったのでそれは枕をして寝たことがなかったからだと気づいたようだ。

また訓戒になりそうな部分を抜粋。
 自分はこんなに頑張っているのにどうして誰も認めてくれないのだろうと嘆いているようでは、いつまで経ってもその先に進むことはできない。誰も認めてくれないこと自体が努力不足の何よりの証拠なのである。本当に努力をしている人は、天知る、地知るで、早晩かならず人目に留まる。人に認められないことがつらいなら、認められるまで努力をすればいいだけの話しだ。
(pp.108)
心にとどめておこう。

艱難編では、努力の過程で苦しいときに見舞われるときに、どう対処するかが示されている。また抜粋。
 もちろん、苦難が面白いわけではない。だが、それが目の前に立ちふさがっている以上、逆境を嘆いているだけではどうにもならない。先に進むには、気合を入れ直してそれを乗り越えなくてはいけない。どうせ気合を入れるなら、苦難を克服することによって自分が人間的に大きくなる過程を楽しんでやろうというくらいに明るく開き直ってしまうにかぎる。
(pp.130)
また、過去の偉人は病に侵されようとも苦難に見舞われても自暴自棄にならず最善を尽くして乗り越えてきたようだ。自分も頑張ろうと思った。

著者の趣味である将棋の偉人や漢語辞典作者、幸田露伴、福沢諭吉、新渡戸稲造、鑑真などさまざまな人物が出てくる。それらの偉人が何を成し遂げようとして、どのように努力をしてきたのかが読み物として単純に面白かった。

自分もまだまだ努力が足りないのではないかと思った。最終的には三昧の悟りの境地まで達することだなと思った。その過程としてこの書評ブログがある。一冊一冊こつこつと積み上げていかなければならない。

読むべき人:
  • 努力が好きな人
  • 成功者になりたい人
  • 楽して生きたいと思う人
Amazon.co.jpで『斎藤兆史』の他の本を見る

にほんブログ村 本ブログへ bana1 ランキングへ


July 17, 2007

ブランドの条件


ブランドの条件

キーワード:
 山田登世子、ブランド、伝統、戦略、ラグジュアリー論
ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルを筆頭とする高級ブランドがブランドたる条件を歴史、売り手から紐解いている本。以下のような内容となっている。
  1. ブランドの誕生――ルイ・ヴィトンはいかにしてルイ・ヴィトンになったのか
  2. 希少性の神話――エルメスの戦略
  3. 貴族のいない国のブランド――シャネルとマス・マーケット
  4. ブランドは女のものか――贅沢文明史にむけて
  5. 「変わること」と「変わらないこと」
ちょっと期間を長く読んでしまったので、全体像がぼやけているので、簡潔に書評。

簡単に説明すると、ルイ・ヴィトンは皇室、貴族御用達の伝統的で丈夫、修理志向であり、その名は象徴資本である。また、エルメスはハンドクラフトによる希少性を売り、ライセンス契約による量産を否定し、高級バッグブランドを確立した。一方シャネルは、伝説のモダンガール、ココ・シャネルにより貴族からストリートの女性を客層に大衆化を目指し、偽者を容認し、偽者こそが本物を引き立たせるという思想でブランドを展開している。

街を歩いているとこれでもかと目に入るモノグラムの歴史的な背景とかも分かってとても面白い。19世紀半ば、創始者のルイ・ヴィトンが16歳のときに木造製造業兼荷造り業者として見習いとして働き始めたとか。

また、4章では、19世紀以前は贅沢はそもそも男のほうが主流であり、女が主流になったのは19世紀以降でしかないとある。性役割分担が発生し、生産が男、消費が女性の領分となり、ブルジョワジーの時代においてラグジュアリーは以前のパブリックなものからプライベートなものになったようだ。そしてそれが、贅沢の「即物化」になり、女性が「消費者」になったということらしい。

贅沢が女性の主流になったことに続き、それはいつまで続くのかということに関して気になった部分を抜粋。
 高価な贈り物に託して、男は女に愛の印をあえたいのである。高価な「贈り物」は恋人の愛の象徴なのだ。そして、その逆はまずありえない。それというのも、いささかクラシックだが、性愛のシーンで女が「自分をあたえる」のにたいし、男があたえたいのは最高の愛の表現だからだ。男が女に「自分をあたえる」時代が来るのを想像するのはたいそう難しい。
 こうしてラグジュアリー・ブランドを贅沢の文化史からとらえなおすとき、わたしたちはいつも「贈与」の論理にゆきあたる。太古の昔、贅沢は神々への捧げものであった。二一世紀の現在、贅沢はブランド品化し、ときに男の女への贈りものと化している。
(pp.175)
なるほどなぁ、と思った。大衆にブランド品が好まれる理由もこれに尽きるのかもしれない。逆に女は男の愛を試すためにブランド品という貢物を要求する・・・・。

あと、みんなが持っているからという理由だけで自分もモノグラムを所有しているような人とはお付き合いしたいくはないな。

ブランド論や歴史がよく分かって面白かった。ブランド品がただ値段の高いだけではなく、ラグジュアリー・ブランドとして存在する理由がしっかりあるのだと分かった。

読むべき人:
  • ブランドが好きな人
  • ファッション史が好きな人
  • マーケティングを勉強したい人
Amazon.co.jpで『山田登世子』の他の本を見る

にほんブログ村 本ブログへ bana1 ランキングへ


February 24, 2007

腕時計一生もの


腕時計一生もの

キーワード:
 並木浩一、腕時計、歴史、科学、ムーヴメント、ブランド
一生ものの腕時計を選ぶプロセスを演繹的に解説している本。以下のような内容となっている。
  1. デザインで考える
  2. ムーヴメントで考える
  3. 機能で考える
  4. 性能で考える
  5. 歴史で考える
  6. 素材で考える
  7. 象徴とイメージで考える
  8. 作家とブランドで考える
腕時計を選ぶときに考慮しなければならないポイントがよく分かって面白かった。また腕時計一つとってもただの時間が分かるだけの機械ではないということがよく分かった。特にムーヴメントに関する部分では、まずムーヴメントとは「時計を動かすための機械」と説明があり、そこから機械式とクォーツの違いや特徴が細かく説明されている。機械式の時計の説明では、小さな器の中にたくさんの歯車が詰まっており、それは一流の職人が作り上げているということがよく分かった。その機能美や時計の正確さ、デザイン性なども含めて時計の価格が決まるのだということも分かって面白かった。高級腕時計がタダ高いわけではないということだろう。

また、機能の面では、ムーンフェイズというその日の月の形を示す機構があるということも分かって面白かった。さらに天空図を持つ天文時計というものあるらしい。よくこんな小さなものの中に非コンピュータ的に作っているなぁと思った。

歴史の部分では、腕時計の歴史からスイスの機械式時計ブランドが陥ったクォーツク・ライシスについてやスイスの時計見本市なども紹介されていて、時計は奥が深いものだなと思った。

時計の写真も多く載っている。主に取り上げられているブランドは、オメガ、ロレックス、エルメス、フランク・ミュラー、セイコー、シチズン、ブライトリング、タグホイヤー、ピアジェ、IWC・・・と幅広い。

最近時計が欲しいなと思っていたので、腕時計の全般知識が学べてよかった。著者の文体もなんだかよかった。本当に自分にとっての一本を見つけて欲しいという気持ちが伝わってきたような気がした。

腕時計は単に時間が分かればいいという機械以上の存在なんだなあと思った。

読むべき人:
  • 自分にあった腕時計が欲しい人
  • 歴史が好きな人
  • ブランドが好きな人
Amazon.co.jpで『並木浩一』の他の本を見る


July 31, 2006

古代への情熱―シュリーマン自伝


古代への情熱―シュリーマン自伝

キーワード:
 シュリーマン、トロイア戦争、自伝、ギリシャ、考古学、勉強術
トロイア戦争は実際にあったことだと信じ、晩年になってから独自に発掘し、それを証明したシュリーマンの自伝と発掘状況を記した本。新潮文庫で読了。簡単に本のあらすじをカバーより抜粋。
トロイア戦争は実際にあった事に違いない。トロイアの都は、今は地中に埋もれているのだ。―少年時代にいだいた夢と信念を実現するために、シュリーマンは、まず財産作りに専念し、ついで驚異的な語学力によって十数ヵ国語を身につける。そして、当時は空想上の産物とされていたホメーロスの事跡を次々と発掘してゆく。考古学史上、最も劇的な成功を遂げた男の波瀾の生涯の記録。
(カバーより抜粋)
トロイア戦争についてはwikipediaによくまとまっている(wikipediaのトロイア戦争の記事)。詳しいことはその記事を参照したほうがよい。

内容は、シュリーマン自身が書いた自伝の部分とエルンスト・マイヤーが書いた当時の発掘状況の説明で構成されている。

自伝部分で注目すべきは、10数カ国の言語の習得方法だろう。その習得方法のコツについて述べられている部分があるのでそこを抜粋。
そしてこの際、必要に迫られて、私はどんな言語でもその習得を著しく容易にする方法を編み出したのである。その方法は簡単なもので、まず次のようなことをするのだ。大きな声でたくさん音読すること、ちょっとした翻訳をすること、毎日一回は授業を受けること、興味のある対象について常に作文を書くこと、そしてそれを先生の指導で訂正すること、前の日に直した文章を暗記して、次回の授業で暗誦すること、である。
(pp.31-32)
こういうことを地道にやっていったので多数の言語を習得できたようである。

他に各国を転々としながら商人として金持ちになり、世界中を旅し、江戸時代末期の日本にまで来たようだ。そして幼いころから信じていたトロイア戦争の痕跡を発掘し始める。

一般的に言えば、幼いころに抱いた夢は後になってもかなえられるということだろう。それにはタイトルにあるように、情熱が必要だということか。このようにしめくくりたいが、wikipediaのハインリッヒ・シュリーマンの記事には、全然違うことが書いてある。本当だろうか。うーん。

この本は発掘状況を解説している部分が大半なんだが、どうしてもその状況を想像するのが難しかった。なによりも、ギリシャ神話やミュケーナイ、古代史などに疎いので、いまいちぴんとこなかった。読みすすめるのが少し苦痛だった。またそれらの知識が増えたころに読み返してみるか。

読むべき人:
  • 自伝が好きな人
  • 夢はかなうと思う人
  • 考古学が好きな人
Amazon.co.jpで『考古学』の他の書籍を見る


July 19, 2006

そうだったのか手塚治虫―天才が見抜いていた日本人の本質


そうだったのか手塚治虫―天才が見抜いていた日本人の本質

キーワード:
 中野晴行、手塚治虫、作品解説、日本人論、日本史、手塚作品入門書
手塚治虫の作品から日本人の本質を見出そうという本。著者のまえがきからそのことについて書いてある部分を抜粋。
ただ、この本の目的は「マンガ学」的に手塚マンガの研究をすることではない。あくまでも、手塚マンガをテキストとしながら時代と世相をあぶり出し、手塚を含めた戦後の日本人とは何だったのかを考えることにある。
(pp.6)
取り上げられている作品はかなり多い。有名なものを少し挙げると、鉄腕アトム、ジャングル大抵、リボンの騎士、どろろ、火の鳥、ブッダ、ブラック・ジャック、アドルフに告ぐなど他にもマイナー作品もいろいろある。

手塚治虫のデビューからその当時の日本の状況がどうだったのか、そしてその世相が手塚作品にどう影響していったのかということがよく分かる。例えば『どろろ』に関する部分。その部分を抜粋。
 百鬼丸とどろろの旅は、当時の日本人の心情と密接に重なっている。
 戦争で失ったものを取り戻すために、がむしゃらに働き続けた結果が、高度経済成長であった。しかし、高度経済成長が生み出した歪みが、公害であり、受験競争であり、仕事漬けの人生だった。戦争で失ったものを取り戻して、それ以上に物質的には豊かになったのに、ちっとも幸せではない。それは、本当の目的を見失っていたからだ。本当の目的とは「生きがい」である。
(pp.135)
こういうように解説されている。

この本は、手塚作品の入門書とも言える。約700作品ほどあるようだが、それらのどれを読むべきか迷ったときに、ガイドになると思われる。割と作品の解説も載っているので、何が描写されているのかということもよく分かって参考になる。まだ読んだことのない作品が多くあると分かった。

この本を読むと、手塚治虫という人は、世の中の出来事にとても敏感だったのだということが分かった。そして人間の根本的な、生きるとはどういうことかということなどを徹底して突き詰めていったのだと思われる。

ちなみに著者は、中学生のときに自作マンガを手塚治虫に送ったらしい。そしたらはがきで返事が来たようだ。人の真似はよくないといった内容だったらしい。

なかなか面白い本だった。日本史の勉強にもなった。

読むべき人:
  • 日本人論に興味がある人
  • 手塚作品の時代背景を知りたい人
  • 手塚作品を極めたい人
Amazon.co.jpで『手塚治虫』の他の作品を見る


June 24, 2006

天才の勉強術

天才の勉強術

キーワード:
 天才、勉強、偉人、伝記、教育、エッセイ
過去に存在した天才と称される人々のすごさは何かと考えたときに、それは勉強ではないかと考え、偉人がどのように勉強してきたのかに注目した伝記的な内容。以下にプロローグからそのことについて述べられた部分を抜粋。
 一般には、天才とは、生まれつき特異なすぐれた能力を持っている人間と思われているようであるが、はたしてそうだろうか。私は次のような仮説を立てたい。
 天才とは、学習の産物である。
 この仮説を、世に天才と呼ばれる人びと、あるいはもっと広く、過去にすぐれた仕事をなしとげた人びとの生き方や学習法、仕事ぶりなどを通して検証し、その「勉強術」の秘密をさぐり、それはけっして天才だけのものではなく、程度の差こそあれ、ごくふつうの人びとにも可能であることを考えてみたい、というのがこの本の意図するところである。
(pp.12)
採り上げられている偉人たちは、以下の9人である。
  1. 「真似」の天才 モーツァルト
  2. 超人的な集中力の持ち主 ニュートン
  3. 女性遍歴から学ぶ詩人 ゲーテ
  4. 読書家の皇帝 ナポレオン
  5. 大きくなりすぎた子供 ダーウィン
  6. 首相になった落第生 チャーチル
  7. 変身にとりつかれた画家 ピカソ
  8. 笑いの芸術家 チャップリン
  9. 大江戸を駆けめぐった「なんでも屋」 平賀源内
一人だいたい20ページが費やされている。

どちらかというと、偉人の伝記物的な内容となっている。そのため、天才とは何かといった学術的で客観的な分析が書いてあるわけではない。どうしても著者の主観が大きく入り込んでいる。

しかし、これらの偉人がどう生きてきたのかということがわかっておもしろかった。歴史とか、偉人の伝記物が好きな人にはおもしろく読めると思う。

モーツァルト、ピカソ、チャップリンなどは芸術家なので、どうしても作品名や曲名が出てくる。そのときに、それがどういうものかわからないと、どうしてもすごさがいまいちぴんとこない。自分の想像力を働かせるしかない・・・。逆に、これをきっかけにそれらを鑑賞してみようという気にはさせてくれる。

天才たちの勉強術で真似できそうなのは、ナポレオン、チャーチル、チャップリンの3人か。それぞれ本質的な勉強術は違っているけど、共通している部分があり、それは読書だった。みんな何か劣等感や必要性に駆られて哲学、文学、歴史、経済などの分野の本を読みまくったようだ。自分も見習ってもっと読もうと思った。

それぞれの偉人の章の最後には偉人たちの自伝などが参考文献として載っているので、それを読んでみようという気になった。特に先ほどの3人に関連する本を読んでみようかと思った。

天才と称されるような人々は、かなりの独自の努力をしているんだなということがわかっておもしろかった。また、どうしてもそのときの偉人の環境もかなり影響されるよなと思った。

また、歴史的な教養を深めるためにもよい本だと思った。

読むべき人:
  • 偉人の伝記物が好きな人
  • 天才はどのようにして天才になったのか知りたい人
  • わが子を天才に育て上げたい人
Amazon.co.jpで『天才』関連のほかの書籍を見る


June 05, 2006

一冊でつかむ日本史


一冊でつかむ日本史

キーワード:
 日本史、世界史、歴史哲学、文明
日本史を軸に、「文明」の発展を中心に一通り流れを押さえた内容となっている。そのため、瑣末なできことはほとんどかいていない。以下のような章立てとなっている。
  1. 歴史哲学によって文明の形をを知る
  2. 原始・古代の日本
  3. 中世の日本
  4. 近世の日本
  5. 近代・現代の日本
  6. 世界地図のなかの日本
  7. 東アジア世界のなかの日本
  8. 世界史のなかの日本
  9. 歴史哲学の今後の役割
歴史哲学というものは、歴史の大きな流れに目を向ける歴史研究のことらしい。そしてこの本で、歴史の流れで、日本はどのように発展してきたのかが書いてある。

近世までは、日本国内の家や共同体、政治などの構造を主になぞっている。また、それにあわせて、信仰や文化、生活様式なども一通り解説されている。構造図や絵などが多く入っているので、イメージしやすい。しかし、中には一見しただけで分かりにくい図がある。特に共同体の構成図とか。じっくり見ないと、構造が見えてこない。単にこういうテーマの図を自分が見慣れていないからだろうが・・・。

最後のほうに歴史哲学の目的が示されている。以下その部分を引用。
歴史哲学にはさまざまな手法があるが、私の歴史哲学の目的は、
「歴史を知ることによって、人間のすばらしさを再認識する」
ことにある。
(pp.198)
これが歴史を学ぶ意義につながるのだと思う。

正直、内容の全てを理解したわけではない。なによりも日本史はかなり苦手意識があったし、受験時代の暗記しなければという強迫観念に駆られてしまう。しかし、バカみたいに暗記することに何の意義もないと思うので、自分が興味を持って歴史を学んでいくうちに自然に知識を身に付けていく態度が望ましいんじゃないかと思う。だから、他の書籍などでまた同じような内容の本を読めばいいんだと思い込んでおく。

教養のための日本史の勉強。この本はそのきっかけになった。

読むべき人:
 日本史の勉強をやり直したい、文明、歴史の流れをつかみたい、受験で日本史がある人