June 22, 2013
仕事漂流 就職氷河期世代の「働き方」

仕事漂流 就職氷河期世代の「働き方」 (文春文庫) [文庫]
キーワード:
稲泉連、転職、ロスジェネ、仕事、物語
ロスジェネ世代の転職事情をインタビューしてまとめられた本。以下のような目次となっている。著者は1979年生まれのいわゆるロストジェネレーション世代であり、その著者と同年代で一般的に勝ち組と言われるような企業に就職しているような8人の仕事観、転職事情がインタビューされたものがまとめられた本となる。
- 第1章 長い長いトンネルの中にいるような気がした
第2章 私の「できること」って、いったい何だろう
第3章 「理想の上司」に会って会社を辞めました
第4章 現状維持では時代と一緒に「右肩下がり」になる
第5章 その仕事が自分に合ってるかなんてどうでもいい
第6章 「結婚して、子供が産まれ、マンション買って、終わり」は嫌だ
第7章 選択肢がどんどん消えていくのが怖かった
第8章 常に不安だからこそ、走り続けるしかない(目次から抜粋)
同著者の他の本に引きこもりやニートなど一般的な就職をしないで仕事をしている人たちに焦点を当てた以下の本がある。この本は世間一般的なレールを外れた人たちが出てくるが、そのレールをたどった人たちのことが気になって、本書が生まれたようだ。
そしてこの本を書いて以来、僕にはずっと心の中に引っかかっていたことがあった。―では、当時の自分が描こうとしなかった同世代、あの就職氷河期の時代に「良い大学から良い就職」を勝ち取り、いま企業組織の中で二十代を終えようとしている同世代は、その後どのような世界を見ることになったのだろうか―。8人の内訳は以下のようになる(番号は目次の各章に対応)。
その風景を知ろうとするとき、いま目の前にある職場に何らかの違和感を抱き、次の職場でその違和感を相対化することになるに違いない「転職」は、確かに働く彼らの姿や思いを取材するうえで相応しいテーマになるように思えた。(pp.343-344)
- 都市銀行→証券会社 大橋寛隆(33)
- 菓子メーカー→中堅食品会社 中村友香子(30)
- 中堅IT企業→人材紹介会社 山根洋一(30)
- 大手電機会社→大手電機会社 大野健介(32)
- 中堅広告代理店→大手広告代理店 藤川由紀子(29)
- 大手総合商社→ITベンチャー 今井大祐(29)
- 経済産業省→ITベンチャー役員→タイルメーカー役員 原口博光(32)
- 外資系コンサルティング会社→外資系コンサルティング会社→MBA留学 長山和史(33)
全員が最初に希望通りの就職をしているわけではないし、大学進学も必ずしも希望の大学に行けているわけではない人が多い。そして入社後の配属先や仕事なども同様となる。それから職場の雰囲気、評価制度、仕事の内容、人間関係などなど、それぞれが違和感を覚えるきっかけは様々。そんな8人が自分なりに試行錯誤しながら次の道に行くには何が必要で、どう考えていき、実際に何が決め手で転職を決意したのかがよく分かる。
一番共感できたのは2章の中村友香子さんの志向性かな。早稲田大学文学部でマスコミ、出版社志望で就職活動をするもうまくいかず、2年留年し、再挑戦するもうまくいかず。その間にアルバイトで培った惣菜屋の在庫管理経験をもとに洋菓子メーカーに就職するも、今までの経験が活かせず『使えない』と言われて体調も崩し、結局辞めてしまう。その後、大学のキャリアセンター経由で氷菓子を作る食品メーカーに就職し、総務部の経理部門にその当時会社では少ない4大卒の女性事務職として新たなキャリアを積み重ねていくというもの。
経緯などは全然僕とは違うけど、最後の著者を通した中村さんの姿勢が特に共感できた。
「自分のやりたい仕事ができるか」に固執するかつての姿は、そこにはもう見られない。僕は一応第一志望と言える会社に入れた。しかし、順調に物事がうまく行ったことはなく、例え第一志望の会社に入れても、必ずしもやりたい仕事ができるということはほとんどなかった。経験も成果も出せていない下っ端はまず、仕事は選べない。そしてさらに根本的なこととして、そもそも何が本当にやりたかったのだろう?と思い悩むことも多かった。大体3,4年目くらいまでは特に。
社会に対して自分は何を加えることができ、そして何を期待されているのか―意識するにしろしないにしろ、「働くこと」の中にあるもう一つの意味を彼女は確かにつかみつつあるのかもしれないと、そのとき僕は思った。(pp.95)
大学で学んだことをそのまま役立てたいという志向性で今のSEという職種を選んだのだけど、そこには本当にやりたいとか好きという基準はあまりなかった。ただできそうなこと、という観点ととりあえずその道なら就職にはそれほど困らないというのもあったから。しかし、予想外の持病というハンデもあったりで結局思い描いた通りのキャリアは全く進めなくて、そろそろ8年目、ちょうど本書のような登場人物と同じ年齢に差し掛かっている。
しかし、今はそれほどやりたいことに固執はしていない。個人的にはやりたいことではなくても仕事はできるし、面白みもやりがい、充実感もそれなりに感じられるようにはなってきたなと思う。そこまでに至るにはそれなりの経験と思考過程が絶対に必要なのだけどね。求められること、自分のできることを少しずつ増やしていく過程で、自分のやりたいことをより明確化して、それが確定できたらそこに向かって努力すればいいのかなと。少なくとも20代ですべてを決められなかったし、決めなくてもよかったと思う。仕事の期間はそれなりに長い、マラソンみたいなものなのだし。
30歳前後というのは、学部卒で8年、院卒や浪人、留年だと5,6年の仕事経験を経ることになるのだけど、その過程で誰でも8人の登場人物と同じように迷ったり、うまくいかなかったり、思い悩んだり、なんか違うという違和感を覚えることは程度の差こそあれ、それなりにあるだろう。そういうときに、他の人は何がきっかけで、どういう志向で別の道に行ったのか?ということを知るのはとても参考になった。8人の転職の物語を読みながら、自分のこれまでを振り返って、そしてこれからどうしよう?ということを少なからず考えることになるだろう。
そして別に僕はまだ転職する必要性も意思も持ち合わせないことを再確認した。単に転職活動がめんどくさいというのもあるし、プロジェクト単位の仕事だから、プロジェクトごとに一緒に働く人、職場環境、仕事内容もガラッと変わるので、社内で転職しているようなものだし。何よりも一番の決定的な理由は、会社組織、仕事内容を変えるべき決定的な要因が何もないから。まだ外に出る前に自分のできることを地道に増やしていかなくてはいけない時期だなと。
本書は文庫本で350ページもある。そして、一応ジャンルはノンフィクションではあるが、なんだか小説を読んでいるような感覚になってくる。それは著者の筆力によるところが大きい。単純なインタビュー会話をそのまま文字にされているわけでもないので、筆者のフィルターを通して描かれている部分もある。それでも、8人の生い立ちからこれまでの働き方、仕事観はどのようなものだったのかがよく描写されていた。
著者を含めて8人の生きた時代はちょっと違うかもしれないけど、時代に影響されない根本的な仕事に対する感じ方などは、何年たってもそんなに変わらないので、転職しようかなと思っている人はぜひ読んでみたらよいね。

仕事漂流 就職氷河期世代の「働き方」 (文春文庫) [文庫]
著者:稲泉 連
出版:文藝春秋
(2013-04-10)
読むべき人:
- 転職しようかと思っている人
- 最近仕事がうまくいってないと思う人
- 仕事って何だろう?と考えたい人
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